目次
運用とは、「動かし続ける」仕事
運用の4工程
①監視──システムの“いつも”を知り、異変に気づく
②障害対応──原因を切り分け、復旧させる
③運用保守──そもそも壊れにくい状態を保つ
④運用設計──“止めずに動かし続ける方法”を設計する
工程を通して見えてくること
最後に
この記事では、インフラ運用という仕事の中身を、工程ごとにじっくり解説していきます。
インフラエンジニアは需要が高く、経験を積めば、会社員としてもフリーランスとしても活躍できる場が大きく広がる職種です。ただ、その「経験」を最初に積む場所こそが、いちばんの難所になります。独学やスクールで学べることと、実際の現場で求められることの間には、はっきりとした違いがあるからです。
たとえば、座学で学ぶことができるのは、おもに次のような内容です。
- 技術や言語を、一つずつ切り分けて学んでいく
- 正しい設定の仕方と、正しく動いたときの挙動を学ぶ
一方で、実際の現場やエンジニアとして求められるのは、こうした力です。
- 複数のシステムを、どう連携させるか
- 想定外の事態やイレギュラーなエラーに、どう対応するか
つまり、「うまく動かないときに、どう振る舞うか」を身につけられるかどうか。それこそが、座学と実務を分ける決定的な違いです。
そして、この違いを埋められるかどうかは、分野によっても大きく変わります。Web開発は参入障壁が低く、誰でも始めることができます。ただ、その分だけ携わる人も多く、市場価値を高めて「選ばれるエンジニア」になるのは、簡単なことではありません。
一方インフラは、サーバーやネットワークをそろえるだけでもコストがかかり、参入障壁の高い分野です。個人が手軽に始められるものではありません。けれど、そのハードルがあるからこそ、一度現場に入って身につけたスキルは、長く通用する一生モノの力になります。だからこそ、どこでキャリアをスタートさせ、経験を積んでいくかが、とても重要になるのです。
では、その現場では具体的に何をしているのでしょうか。インフラ運用の仕事を、4つの工程に分けて見ていきます。なお、この記事では仕事の「中身」と「構造」の解説に絞ります。実際に働くメンバーの声や現場のエピソードは、それぞれ別の記事で紹介していますので、あわせてご覧ください。
運用とは、「動かし続ける」仕事
インフラの仕事は、システムを設計し、構築し、世に出すところまでがゴールだと思われがちです。けれど、本当に重要なのはそこから先です。完成したシステムは、放っておけば必ずどこかに不具合が生じます。それを防ぎ、問題が起きても素早く立て直し、利用者が「いつも通り使える」状態を保ち続ける——それがインフラ運用です。
新しいものを生み出す開発の仕事に対して、運用は「トラブルのない状態を、毎日つくり続ける」仕事だといえます。何も起きていない一日こそが、最高の成果です。表からは見えにくく、地味だと言われることもあります。ですが、その中身を一つずつ見ていくと、印象は変わってくるはずです。
運用の4工程
運用とひとくちにいっても、その中身は一枚岩ではありません。大きく「監視」「障害対応」「運用保守」「運用設計」の4つの工程に分かれ、後ろの工程にいくほど、求められる判断の比重が大きくなっていきます。この4つは、未経験から経験を積んでいく順番でもあります。ここからは、一つずつ詳しく解説します。
①監視──システムの“いつも”を知り、異変に気づく
運用の入り口になることが多いのが、監視です。サーバーやネットワークが正常に動いているかを、絶え間なくチェックし続ける工程です。
一見すると、決まった画面を見続けるだけの静かな仕事に思えるかもしれません。けれど実際には、見るべき角度がいくつもあります。代表的なものを挙げてご紹介します。
- 死活監視(しかつかんし):機器がそもそも動いているか、生きているかを確認します。
- リソース監視:処理がどれくらい混み合っているか、機器に余力があるかを見ます。
- 遅延監視:応答にどれだけ時間がかかっているかを測り、遅れの兆候をつかみます。
- 経路監視:通信が正しい道筋を通っているかを追跡します。
これらを組み合わせ、画面に表示される数字やグラフの意味を読み取りながら、何重もの視点でシステムの状態を見守ります。
監視でいちばん大切なのは、“いつもの状態”を知っていることです。このシステムは、平常時にどれくらいの利用があり、どれくらいの速さで応答するのか。いつもの状態を把握しているからこそ、わずかな変化や、障害が起きる前の、かすかな兆しに気づくことができます。逆にいえば、ここで「正常とはどういう状態か」を身につけることが、その後の障害対応や運用設計まで含めた、すべての土台になります。
監視は、特別な資格がなくても、手順を学べば未経験から取り組める工程です。だからこそ最初のステップになりやすいのですが、入り口の難易度と奥深さとは別です。経験を重ねるほど、異変を察知する精度や、その先に何が起きるかを予測する力が磨かれていきます。
また、システムは昼も夜も止まりません。そのため監視は24時間体制で、メンバーが交代しながら担います。夜勤と聞くと不安に思うかもしれませんが、弊社では勤務後にしっかり休める仕組みや夜勤手当など、無理なく続けられる体制を整えていますので、ご安心ください。夜間も含めた具体的な働き方は、別の記事で詳しく紹介しています。
②障害対応──原因を切り分け、復旧させる
監視で異変をとらえたら、原因を突き止めて元の状態に戻す。それが障害対応です。この工程には、おおまかな進め方があります。
- 影響範囲を確認する:問題が起きているのは一か所だけか、複数にまたがっているか。これを見るだけで、疑うべき原因が大きく絞られます。
- 機器の状態を確かめる:機器が呼びかけに応答するかを確認し、周辺の機器の状況と照らし合わせます。
- ログを読む:ログ(システムの動作記録)をさかのぼり、「いつから異常が出ているのか」「その直前に何が起きたのか」を読み解きます。
- 原因を特定し、復旧させる:可能性を一つずつ消し込んで原因にたどり着き、再起動や設定の修正、機器の交換などで元に戻します。
- 記録し、引き継ぐ:何が起きてどう対応したかを記録に残し、次の担当者へ引き継ぎます。
手順そのものは決まっていても、難しいのは「どこから疑うか」という見立ての部分です。やっかいなのは、症状が現れている場所と、本当の原因がある場所が、必ずしも一致しないこと。ある機器に異常が出ていても、引き金は別の場所にある、というケースは珍しくありません。似たような障害でも状況は毎回少しずつ違い、起こりうるすべてのパターンをマニュアルに書き切ることはできません。経験を積んだエンジニアほど、少ない手がかりから素早く当たりをつけ、無駄なく原因に近づいていきます。この見立ての精度が、復旧までの時間を大きく左右します。
また、障害対応は一人で完結する仕事ではありません。いまの状況をお客様に分かりやすくお伝えしたり、アプリケーションを担当するエンジニアと連携して原因を探ったりと、周囲とのコミュニケーションも欠かせません。多くの人が日々利用するサービスを、止めずに守り抜く。障害対応には、そうした責任とやりがいが詰まっています。実際の現場の様子は、メンバーインタビューの記事でも紹介しています。
この工程を通して、原因を論理的に絞り込む力や、不測の事態でも落ち着いて動く力、そして周囲と連携して事にあたるコミュニケーション力が養われていきます。
③運用保守──そもそも壊れにくい状態を保つ
障害が起きてから動くだけが、運用ではありません。問題が起きないように、あらかじめ手を打っておくのが運用保守です。日々の業務や取りくむ打ち手には、たとえば次のようなものがあります。
- バックアップ:万一に備えて、データの複製を定期的に取っておきます。
- アップデートと修正プログラム(パッチ)の適用:ソフトウェアを最新の状態に保ち、見つかった不具合をふさぎます。
- 定期メンテナンス:機器やシステムを点検し、不調の芽を早めに摘み取ります。
どれも派手さのない作業です。けれど、これらを怠れば、防げたはずの障害が起き、悪意ある攻撃に対するセキュリティ上の隙も生まれます。先ほど「何も起きないのが最高の成果」とお伝えしましたが、その“何も起きない”という状態は、こうした地道な手当ての積み重ねによって支えられています。この工程では、先を見越して段取りを組む力や、小さな異常を見逃さない丁寧さが身についていきます。
④運用設計──“止めずに動かし続ける方法”を設計する
4つ目が、運用設計です。設計と聞くと、「どんなシステムをつくるか」を決める仕事を思い浮かべるかもしれません。運用設計は、それとは性格の異なる仕事です。
システムをつくる側の設計が“何をつくるか”を決めるものだとすれば、運用設計は“つくったものを、どうやって止めずに動かし続けるか”を決める設計です。
運用設計でとりわけ重要になるのが、手順や基準をあらかじめ整理しておくことです。大きく、平常時の設計と、トラブル時の設計の2つに分けて考えると、分かりやすくなります。
平常時の設計──ふだんを滞りなく運用し続けるための設計です。
- 何を、どこまで管理・監視するか
- どの状態を「正常」とし、何をもって「異常」と判断するか
- その運用に、どれだけのリソース(人員や費用)を割り当てるか
トラブル時の設計──問題が起きたときに、滞りなく動くための設計です。
- 起こりうる障害に対して、誰が、どの順番で対応するか
- どのような連絡・報告の流れ(レポートライン)で動かしていくか
ここで重要なのは、こうした設計は、実際に運用した経験がなければ描けない、という点です。どんなときにシステムが悲鳴を上げるのか、どんな小さな兆候が大きな事故の前触れになるのか——それを知っているのは、現場で何度も向き合ってきた人だけです。だからこそ運用設計は、運用を深く理解した人にしか務まらない、高度な領域だといえます。「運用は決められた作業をこなすだけの下流の仕事」という見方とは、まったく違う世界がここにあります。
監視から始めて、こうした責任の大きな役割まで少しずつ広げていったエンジニアの歩みは、別の記事で紹介しています。
工程を通して見えてくること
こうして4つの工程を並べてみると、共通点が浮かび上がります。運用は、決められた手順をこなすだけの単純作業ではなく、どの工程にも、その場その場の“判断”が宿っているということです。
この判断力は、状況によって最適な答えが変わるため、機械的なルールやAIだけでは置き換えにくいものです。だからこそ、インフラエンジニアの市場価値は高く保たれています。そして、その判断力は、実際に動いているシステムを相手に、試行錯誤を重ねるなかでしか身につきません。これが、冒頭でお伝えした「実際の現場でしか学べない」ということの正体です。
裏を返せば、本物の環境に身を置けたなら、その経験はそのまま、長く通用する力として積み上がっていきます。
最後に
ここまで読んでいただき、インフラ運用という仕事の輪郭が、少し具体的に見えてきたのではないでしょうか。監視から始まり、障害対応、運用保守、そして運用設計へ。この4つの工程は、そのまま一歩ずつ進んでいける成長の道のりでもあります。
私たちIIJプロテックには、こうした運用の現場が数多くあり、未経験から学べる教育の体制も整えています。「いきなり選考に進むのは不安」「まずは会社の様子を知りたい」という方も歓迎です。この記事でインフラ運用の中身に少しでも興味を持っていただけましたら、ぜひ一度、カジュアルにお話しする機会をいただければ幸いです。