「言われた通りに実装している。」
「レビューでも大きな指摘は受けない。」
「納期も守っている。」
それなのに、
「なぜか単価が上がらない。」
「次の案件でも評価が変わらない。」
そんな悩みを抱えたことはありませんか?
エンジニアであれば、「評価されるのは技術力だ」と考えるのは自然なことです。
もちろん、技術力は大切です。
しかし、SESという働き方に限って言えば、それだけでは市場価値は決まりません。実は、客先が自社へ伝えている「裏の評価」には、コードレビューでは見えない項目が数多く存在しています。そして、その評価が次回契約や単価交渉、さらには給与アップにまで影響していることは、意外と知られていません。
今回は、営業や人事だからこそ見える「裏側」の話をしてみようと思います。
技術力の話は、実はそれほど多くない
SES企業の営業は、お客様と定期的に連絡を取り合っています。メールや電話、Slack、Teams、時にはランチや定例会など、その接点は想像以上に多くあります。そこでこんな会話が交わされていると思っている方もいるかもしれません。
「〇〇さんの設計力が素晴らしいですね。」
「アルゴリズムの理解度が高いですね。」
「コード品質が非常に優秀です。」
もちろん、そうした話が出ることもあります。
しかし、実際には技術そのものが話題になるケースは、それほど多くありません。むしろ営業が耳にするのは、
「いつも返信が早くて助かります。」
「困ったことがあればすぐ相談してくれます。」
「安心して仕事をお願いできます。」
そんな一見地味なコメントです。
これが、現場から営業へ伝わる「裏の評価」なのです。
現場が本当に見ているのは「手間がかからない人」
少し言い方は悪いかもしれませんが、多くの現場が求めているのは「ローメンテナンスなエンジニア」です。
つまり、「安心して任せられる人」。
具体的には、こんなポイントが日々見られています。
- 勤怠が安定していて、突発的な欠勤が少ない
- SlackやTeamsでメンションした際の反応が早い
- 問題が起きても抱え込まず、早めに相談できる
- 「できません」で終わらず、「〇〇ならできます」と代替案を提示できる
- チームメンバーとのコミュニケーションが円滑で、一緒に働きやすい
どれも、高度なプログラミングスキルではありません。しかし、現場でプロジェクトを回す立場からすると、これらは非常に重要です。なぜなら、プロジェクトで最も避けたいのは、「何が起きているのかわからない状態」だからです。
返信が何時間も来ない。
進捗が見えない。
困っているのに相談がない。
こうした状況は、プロジェクトマネージャーやリーダーにとって、大きなストレスになります。
反対に、多少技術的な課題があったとしても、
「少し詰まっています。」
「この方法なら進められそうです。」
「30分だけ相談できますか。」
そんな一言があるだけで、現場の安心感は大きく変わります。
顧客が買っているのは「技術」と「安心感」
SESというビジネスモデルでは、「技術者」を提供しているように見えて、実際にお客様が購入しているのは、それだけではありません。
お客様が求めているのは、「この人に任せておけば大丈夫。」という安心感です。
もちろん、技術力が高いことは前提です。
ですが、技術力が同じ二人のエンジニアがいたとしたら、
- 報連相が早い人
- コミュニケーションが円滑な人
- トラブル時にも冷静に相談できる人
こうした人のほうが、現場から「継続してほしい」と言われる確率は圧倒的に高くなります。
営業も、単価交渉の場で「技術はもちろんですが、本当に安心して任せられる方です。」と胸を張って提案しやすくなります。
逆に、技術は優秀でも、
「連絡がつきにくい。」
「相談してくれない。」
「周囲がフォローし続けなければならない。」
という評価が付いてしまうと、単価アップの交渉材料は一気に弱くなります。
これは決して営業の力不足ではありません。現場が感じている「安心感そのもの」が、契約更新や単価の判断材料になっているからです。
「そんなのエンジニアの仕事じゃない」と思うかもしれない
ここまで読んで、「チャットの返信速度で評価されるなんて納得できない。」そう思った方もいるかもしれません。その気持ちもよく分かります。
エンジニアは技術職です。本来であれば、技術力で評価されるべきだという考え方は決して間違っていません。
ただ、現実のプロジェクトはチームで進みます。
一人で完結する仕事はほとんどありません。
だからこそ、技術だけでは測れない「一緒に働きやすいか」という価値が生まれます。
言い換えれば、これはプロジェクトにおける非機能要件のようなものです。
システムに性能や可用性が求められるように、エンジニアにも「安心して仕事を任せられる」という品質が求められているのです。
市場価値を上げるのは、難しい技術だけではない
市場価値を高めようとすると、多くの人は新しい言語やフレームワークを学ぼうとします。もちろん、それも大切です。
しかし、もし今すぐ市場価値を上げたいのであれば、今日からできることがあります。
チャットに早く反応する。
困ったら早めに相談する。
相手が判断しやすい形で情報を伝える。
「できません」ではなく、「この方法ならできます」と代替案を考える。
こうした行動は、特別な才能がなくても実践できます。
そして、この小さな積み重ねが、「この人とはまた一緒に働きたい」という評価につながり、結果として契約更新や単価アップ、市場価値の向上へとつながっていきます。
SESで長く活躍しているエンジニアは、必ずしも誰よりも技術力が高い人ではありません。
「安心して任せられる人」。
実は、その評価こそが、お客様から自社へ伝わる一番価値のある「裏の評価」なのです。