『スキル不足で契約終了になりました』。落ち込んでいるエンジニアに伝えたいこと
SESエンジニアとして働いていると、いつか必ず耳にする可能性がある言葉があります。
「今月末で契約終了になります」
いわゆる「リリース」です。
この言葉を告げられた瞬間、多くのエンジニアは大きなショックを受けます。
「自分の実力が足りなかったんだろうか」
「コードの品質が悪かったのかもしれない」
「エンジニアとして向いていないのではないか」
真面目な人ほど、自分を責めてしまいます。
実際、私自身もこれまで数多くのSESエンジニアと面談をしてきましたが、リリースを経験した方の多くが、必要以上に自己否定に陥っていました。
しかし、人事として、また現場や営業の話を数多く聞いてきた立場からお伝えすると、技術力不足「だけ」が原因で契約終了になるケースは、実はそれほど多くありません。
もちろん、著しくスキルが不足していたり、期待されているレベルとの乖離が大きかったりする場合は、契約終了につながることもあります。
ただ、現実にはもっと別の要因が絡み合っているケースがほとんどです。
では、実際にはどのような理由でリリースが決まるのでしょうか。
今回は、現場ではあまり語られない「契約終了の本当の理由」についてお話しします。
理由① プロジェクトの予算消化・フェーズ移行
──あなたに非がないケースは想像以上に多い
最も多いのが、このパターンです。
プロジェクトには必ず予算があります。
たとえば、開発フェーズでは10名体制だったプロジェクトが、テストフェーズに移行するタイミングで5名体制に縮小されることは珍しくありません。
また、
- 当初予定していた開発が前倒しで完了した
- 顧客企業の予算が削減された
- プロジェクト自体が中止になった
- 社内方針が変わり外部要員を減らすことになった
といった理由で、現場全体の人数調整が行われることもあります。
この場合、誰かが「悪かった」わけではありません。
極端な話、現場で高い評価を得ていたとしても、予算の都合で契約終了になることは普通にあります。
特にSESでは、「現場から高評価だったのにリリースになった」というケースも少なくありません。
しかし、当事者からすると、その事情は見えません。
その結果、
「評価されていなかったんだ」
「自分は役に立てなかった」
と考えてしまうのです。
ですが、プロジェクトはビジネスです。
会社の予算や事業戦略によって人員調整が行われることは、ごく自然なことです。
まずは、「リリース=自分の能力不足」と短絡的に結び付けないことが大切です。
理由② 現場の社風やチームとのミスマッチ
次に多いのが、現場との相性の問題です。
どれだけ技術力が高くても、すべての現場にフィットできる人はいません。
たとえば、
- 積極的なコミュニケーションを求める現場
- 指示待ちではなく自走力を重視する現場
- ドキュメント文化が強い現場
- 雑談やチームワークを大切にする現場
など、現場ごとに求められるスタイルは大きく異なります。
一方で、エンジニア側にも働きやすい環境、得意な進め方があります。
そのため、能力の優劣ではなく、単純に「相性が合わなかった」というケースも少なくありません。
たとえば、慎重に物事を進めるタイプのエンジニアが、スピード重視の現場に入れば「動きが遅い」と評価されることがあります。
逆に、スピード感を持って進めるタイプが、品質重視の現場に入れば「確認不足が多い」と評価されることもあります。
どちらが正しい、間違っているという話ではありません。
環境が変われば評価が180度変わることは、SESではよくあることです。
実際、ある現場では評価が伸び悩んでいたエンジニアが、別案件に移った途端にエース級の活躍をするケースも珍しくありません。
だからこそ、一つの現場での評価が、あなたの市場価値のすべてではないのです。
理由③ 「小さな不信感」の積み重ね
そして、最も見落とされがちなのがこの理由です。
現場で問題視されるのは、必ずしも技術だけではありません。
むしろ、
- 報告が遅い
- 困っているのに相談しない
- レスポンスが極端に遅い
- 遅刻や勤怠の乱れがある
- 指摘された内容を改善しない
といった、日々の小さな行動の積み重ねが、最終的に契約終了につながることがあります。
一つひとつは些細なことです。
しかし、こうした行動が繰り返されると、現場側には少しずつ不信感が蓄積されます。
特にSESでは、「技術は多少足りなくても、誠実にコミュニケーションを取ってくれる人」のほうが高く評価されることが少なくありません。
なぜなら、技術は育成できますが、信頼関係を築く姿勢は短期間では変えにくいからです。
逆に言えば、技術面に多少不安があっても、
「困ったらすぐ相談する」
「進捗をこまめに共有する」
「指摘を素直に受け止め改善する」
といった行動ができる人は、現場から継続を希望されるケースも多いのです。
「本当の理由」を知ろうとしすぎなくていい
リリースを告げられたとき、誰もが「本当の理由」を知りたくなります。
もちろん、その気持ちは自然なものです。
ただし、自社の営業やマネージャーに詳しく聞いたとしても、顧客側からは建前の理由しか伝えられていないケースも少なくありません。
「スキル不足」
「体制変更」
「契約満了」
こうした曖昧な表現で終わることも多いのが現実です。
だからこそ、見えない理由を追い続けて、自分を責め続ける必要はありません。
- 自分はどんな環境で力を発揮できるのか
- どんな仕事が得意なのか
- 次の現場では何を意識すべきなのか
これらを、自社のマネージャーや営業としっかりすり合わせることです。
それこそが、次の現場を勝ち取るための最大の生存戦略になります。
SESにおいて、現場選びはキャリアそのもの。
しかし、一度のリリースでキャリアが終わることはありません。
むしろ、その経験を通じて自分に合う環境を知り、次の現場で活躍できれば、それは決して失敗ではないのです。
リリースを経験したすべてのエンジニアに伝えたいのは、「あなたが切られた理由は、技術力だけではないかもしれない」ということ。
必要以上に自分を責めず、次の一歩に目を向けてほしいと思います。