「未経験OK」「ポテンシャル採用」
ここ数年、IT業界ではこうした言葉を掲げる企業が一気に増えました。
慢性的なエンジニア不足を背景に、経験者だけでは人が足りない。
だからこそ、未経験から育てる――それ自体は、決して悪いことではありません。
むしろ、業界としては健全な流れです。
ただし、その裏側にはあまり語られない現実があります。
今回は、実際に未経験採用で失敗した側の立場から、そのリアルをお話しします。
「やる気があれば大丈夫」と思っていた
面接でよく聞く言葉があります。
- 「エンジニアになりたいです!」
- 「スクールで学びました!」
- 「毎日勉強しています!」
どれも間違ってはいませんし、むしろ素晴らしい姿勢です。
だからこそ、私たちはそのやる気のある言葉を「そのまま信じて」採用していました。
でも、結果はどうだったか。
現場に配属された直後から、歯車が狂い始めます。
「全然使えない」という現場の声
配属から間もなく、現場からフィードバックが上がってきました。
「指示しないと何も進まない」
「エラーが出ると完全に止まる」
「正直、フォローに工数を取られすぎている」
いわゆる、「全然使えない」という厳しい言葉です。
もちろん、未経験だからできないのは当たり前です。
問題は「できないこと」ではありません。
問題は、「そこから動けないこと」でした。
エラーが出たときに調べることができない。
何をどう調べればいいかも分からない。
結果として、すぐに周囲に頼るしかなくなる。
その積み重ねが、現場の負担を大きくしていきました。
誰も悪くないのに、うまくいかない
このとき痛感したのは、「誰も悪くないのに、うまくいかない」という現実です。
未経験者は本気で頑張ろうとしている。
現場もなんとか育てようとしている。
会社としても、成長の機会を提供したいと思っている。
それでも、噛み合わない。
その結果、どうなるか。
- 本人は自信を失い、メンタルを崩す
- 現場は疲弊し、受け入れに消極的になる
- 組織として「未経験は難しい」という空気が生まれる
これは、かなりしんどい状況です。
そして、この失敗をきっかけに、私たちは採用と育成の考え方を大きく見直しました。
見るべきは「熱意」ではなかった
結論から言うと、採用で見るべきポイントは変わりました。
それは、「熱意」ではありません。
「エラーにどう向き合うか」です。
エンジニアの仕事は、うまくいくことよりも、
うまくいかないことの方が圧倒的に多い。
エラーが出る。
原因が分からない。
試行錯誤する。
この繰り返しです。
だからこそ重要なのは、
- 分からないことをそのままにしないか
- 自分なりに調べようとするか
- 試しながら前に進もうとするか
いわば、「泥臭く進める力」です。
面接で必ず聞く、たった一つの質問
この考え方に変えてから、面接の質問も大きく変わりました。
ポートフォリオの完成度は、もちろん見ます。
でも、それ以上に重視している質問があります。
・エンジニアとしての経験がある方には
「一番つまずいたエラーは何ですか? それをどうやって解決しましたか?」
・未経験でこれからエンジニアを目指す方には
「これまでで一番困難だったこと、悩んだこと、成果を出すのが難しかったことはなんですか?それをどうやって工夫し乗り越えましたか?」
この質問には、その人の「本質」が出ます。
- どんな壁にぶつかったのか
- どれくらい試行錯誤したのか
- 最終的にどうやって乗り越えたのか
ここに、再現性のある成長力が表れます。
逆に、ここが語れない場合は、
まだ「自走する準備が整っていない」可能性が高いと判断します。
「手厚く教える」は、育成ではない
もう一つ、大きく変えた考え方があります。
それは、「手厚く教える=育成ではない」ということです。
もちろん、最初のサポートは必要です。
ただ、すべてを教えてしまうと、どうなるか。
自分で調べる力が育ちません。
重要なのは、
- すぐ答えを与えることではなく
- 自分でたどり着くためのヒントを渡すこと
- ありきたりの表現ですが、魚を与えるのではなく魚の獲り方を教える
そして、挑戦できる環境を用意することです。
環境を用意し、小さな成功体験を積ませます。
挑戦できる環境で、成功体験を積み重ねることでモチベーションの維持に繋がり「自分もエンジニアとしてやっていける」という自信に繋がり、もっと挑戦したいという良いサイクルに入るサポートをします。
時間はかかります。
効率も一見悪く見えるかもしれません。
でも、このプロセスを経た人は、確実に「自走できるエンジニア」になっていきます。
未経験採用は「優しさ」だけでは成立しない
未経験を採用することは、決して簡単なことではありません。
理想だけで進めば、誰かが必ず苦しくなります。
だからこそ必要なのは、
- 現実を直視すること
- 適切な基準で見極めること
- 成長できる環境を設計すること
そして何より、「本人の力を信じて任せること」です。
最後に
未経験からエンジニアになる道は、決して楽ではありません。
でも、正しい環境と向き合い方があれば、確実に成長できます。
大切なのは、「教えてもらうこと」を前提にするのではなく、
「自分で進む力を身につけること」。
その覚悟がある人にとって、未経験という立場はむしろ強みになります。
そして企業側もまた、
その力を信じて育てられるかどうかが問われているのだと思います。