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コーヒーの未来を「デザイン」でつくる。Kurasuで見つけたMizの新しい仕事観

Kurasuには、デザインの力でチームをけん引し続けているメンバーがいます。商品パッケージやWebサイトのデザイン、そして店舗のブランディングまで、様々なシーンでKurasuブランドをビジュアライズしてきたグラフィックデザイナー、Mizです。

そんなMizがグラフィックデザインと出合ったのは、メルボルン。生きる意味を問い直して渡ったその土地は、彼女にコーヒーの魅力も教えてくれたといいます。「Kurasuらしさ」を考えるうえで欠かせない存在である彼女に、これまでの経歴と現在の仕事、将来のビジョンについて聞きました。

人生をリセットし、メルボルンでグラフィックデザインと出合う

——Mizさんのこれまでの経歴について教えてください。

私、高校生のときはギャルだったんです。京都生まれで、京都の学校に通って、高校を卒業したら四条河原町のファッションビルで働きたいと考えていました。でも、学校の先生から「あなたは(洋服を)売るより作るほうが向いていると思う」と言われて、京都造形美術大学(現京都芸術大学)のファッションデザインコースに進学しました。

そこで4年間ファッションデザインを学んだものの、洋服が作っては捨てられるファストファッションの波を目の当たりにして、「こんな時代に、いったい何を提案したらよいのだろう」と迷ってしまって……。そして、思い描いていたキャリアとは違いましたが、卒業後は大阪に本社を置くアウトドアの部品メーカーに就職しました。

当時その会社はアパレル分野に注力しており、「ファッションデザインを専門的に勉強した人」として初めて採用されたのが私でした。それまではアウトドアとあまり関わってこなかったのですが、周りは当然、そういうことが好きな人ばかりで。私もそこに馴染みたくて、ロードバイクなどの新しいアクティビティに挑戦し、レースに出てみたりもしました。

私のチームはいわゆる「体育会系」の雰囲気があって、平日は朝から夜までハードに働き、休日はアクティビティに打ち込む、そんな毎日でした。しかし、限界を超えて頑張りすぎてしまったのか、3年目のときに身体がおかしくなりました。

「自分は鬱にはならないタイプだろう」と思っていたのに、生理が来なくなったり、会社で涙が止まらなくなったり、普通のことが普通にできなくなってしまって……。やむなく病院へ行ったところ、やはり鬱と診断されて、すごくショックを受けました。

いい給料をもらえる会社に入って、新築の寮に住めて、車も買えて、海外出張もできるなんて、「幸せのチェックリスト」をコンプリートしたような生活のはず。それなのに鬱になってしまうのなら、いったい何のために生きているんだろう……と混乱しました。

結局会社を辞めて実家に戻ったのですが、半年間ほどの記憶は断片的です。誰にも会えず、喋れないけれど、そんなことには関係なく世の中は動いていると思ったし、みんながバリバリ働いていて自分だけが置いてきぼりになったような気がしていました。

鬱になると、悲観的・否定的な考えに囚われやすくなります。でも、通院しながら認知療法の本を読んで、少しずつ思考のバランスを整えていけました。時間はかかりましたが、朝起きられるようになり、外に出かけられるようになり、薬も必要なくなって、ようやく「もう一度働けるかも」と思えたんです。

——それから転職活動を始めたのですか。

いえ、そのとき25歳だったのですが、転職する前に英語を喋れるようになりたいと考え、ワーキングホリデーでオーストラリアに行くことにしました。前職で海外出張も含めて英語を使う機会があったのですが、全然喋れず悔しかったので……。

「(英語力をつけるために)日本語を喋らない」と決めて、選んだ場所は日本人の少なそうなメルボルン。最初は現地のカフェで皿洗いのアルバイトをし、その後インターンシップでグラフィックデザインの仕事を見つけることができました。社長とデザイナー数名だけの小さな会社でしたが、IllustratorやPhotoshopを使って目の前のデザインに没頭できる仕事はとてもおもしろく、夢中になりました。

メルボルンのデザイン事務所のボス・同僚と共に

現地に行くまで知らなかったのですが、メルボルンはとてもカフェ文化が盛んな街でした。私はそれまでコーヒーが飲めなかったのに、メルボルンで飲んだラテがすごくおいしくて、すっかりハマってしまいました。

友達と遊ぶときも、まず「Let's grab a coffee!(コーヒーを飲もうよ)」と言うし、すべてがコーヒーから始まるんです。働いていたオフィスにもエスプレッソマシンがあったので、私はよく周りに「コーヒー飲む?」と聞いて、全員分のラテを作っていました。英語が拙いながらもみんなと会話したくて、コミュニケーションのきっかけにしていましたね。

当初、ワーホリは半年間の予定でしたが、「もっと英語を喋れるようになりたいし、もっとグラフィックデザインの勉強をしたい」と思い、期間を延長しました。その後、現地の有名なスタジオでインターンをするチャンスに恵まれ、少しずつデザイナーとしてのキャリアを重ねて、結果的にメルボルンで5年間暮らしました。

友人のお店の裏に壁画を描いたことも

英語もデザインも、やるだけのことをやりきったと感じ、これ以上オーストラリアにいたら日本の生活に適応できなくなりそうと考えて、ビザ更新のタイミングで帰国を決めました。

——日本に帰ってきたあとはどんな仕事をしたのですか。

京都にある「エコノシスデザイン」というデザイン事務所に入り、日本でデザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。社長がユニークな方で、海外のものが好きだし、海外のクライアントを増やしていきたいという考えだったので、帰国したばかりの私を採用してくれたのかもしれません。

キャリアの幅を広げたくて、その事務所でデザイナーとして働くかたわら、副業としてイラストの仕事もするようになりました。そして1年が経つころ「ヨーロッパに住んでみたい」と考えるようになり、社長に相談したところリモートで働くことを快諾してもらえたので、アートやクリエイティブがぶっとんでるイメージのベルリンに行くことにしたんです。

準備を始め、現地で住む家を見つけ、ビザも取り、飛行機も予約して、あとは出発を待つのみ……というタイミングで、コロナ禍が始まりました。それで、結果的にベルリン行きは白紙に戻ってしまいました。

私の友人はその1か月前にノルウェーへのワーホリに出発していたので、あと1か月早かったら、私はベルリンに行けていて、まるで違う人生になっていたのかもしれません。人生ってままならないけれど、だからこそ今があるので、これもまた人生なのでしょう。

デザイナーとしてKurasuで働く面白さ

——Kurasuで仕事をするようになったきっかけを聞かせてください。

実は、Kurasuのことはメルボルンに住んでいるときから知っていたんです。今Kurasuの店舗統括マネージャーをしているAyakaさんはメルボルンで知り合った友人で、彼女が帰国して京都にあるカフェで働き始めたことや、そのカフェのオーナー(Yozoさん)がシドニーに住んでいることなどを耳にしていました。

それで、年に一度帰国するたびに、Kurasuのカフェに通うようになったんです。私はオーストラリアのラテを飲みなれていたせいか、日本のラテが口に合わなくなっていたのですが、Kurasuのラテはオーストラリアのラテみたいにおいしくて、「日本でこんなラテが飲めるんだ!」と感激しました。グローバルな雰囲気もすごく好きだったので、ワーホリを終えて日本に帰ってからも、家からロードバイクで25分かけてKurasuに通いました。

Kurasu入社前、まだお客さんだった頃のMiz

私がベルリン行きの準備をしていたころ、Yozoさんが京都に帰ってきていて、Kurasuで「アーティストコラボをしたい」という話になったそうです。私は自分のイラストをInstagramに投稿していて、共通の友達が多かったYozoさんがそれを見て私に声をかけてくれました。そして、コラボトートやTシャツ、うちわなどを作らせてもらったのが、Kurasuでの初めての仕事でした。

Kurasu Kyoto × Mizの初のコラボトート

——それでKurasuにジョインすることになったのですか。

当時、ロンドン在住の方がリモートワークでKurasuのブランディングをすべて手掛けていて、私はそれを手伝うことになりました。最初はパッケージデザインを替えるところから始めて、社内メンバーと密にコミュニケーションを取りつつ仕事を引き継いでいきました。

仕事として関わる前からKurasuのお店が好きだったので、「もっとこうしたらいいのに」「メニューはこのほうが見やすいのに」と積極的に改善案を出すことができました。そうするうちに任せてもらえる仕事が増えて、「週に何日」という契約で出勤するようになったんです。

そのころのKurasuはなかなかデザインにリソースを割けておらず、日々のオペレーションや、サブスクリプションの配送を行うことに注力している状況でした。なので、私から何か提案をして、うまくいきそうなことはやってみようという感じでしたね。

年月が流れKurasuは成長していきましたが、社内でデザイナーに何かを依頼するプロセスのシステム化はなかなか進まず。ちょうどこの頃、私自身が新型コロナウイルス感染症に罹患してひどい後遺症がでてしまい、積極的に動けなくなってしまったこともあって、もどかしい時期が続きました。

しかしその後、Kurasuにさまざまなバックグラウンドを持つ経験豊富な人たちが入ってきて、フェーズが変わりました。オンラインチームや店舗チーム、グローバルチームが組織され、それぞれのチームの目標に対してこういうものが必要だ、とタスクが明確になったんです。

皆さんすごくレベルが高いので、「求められたものに応えるために、デザイナー視点でしっかり戦略を練らなくては」と燃えてきて、毎日が刺激的になりました。今、すごくやる気に満ちて仕事ができています!

——現在のKurasuのチームや社内文化についてどう感じていますか。

私は「一般的な大企業」に勤めた経験がありますが、Kurasuはそれとは全然違うと感じています。すごく自由だけど仕事はめちゃくちゃできる人が多くて、一人ひとりが自分の目標に向かってやりたいことをやっている感じです。

「これがやりたい!」と一心不乱に突き進むタイプが多くて、よっぽどのことがない限り、誰も何もいわないし、止められません。なので、上から言われたことだけやっていたい人にはフィットしないかもしれませんが、能動的に自分の人生を楽しめる人ならのびのびと働ける環境だと思います。

私は企業勤めの経験からか、「会社とはこうあるべき」「他の人と足並みをそろえるべき」みたいな考えがあったんです。でも、今のKurasuのメンバーと一緒に仕事をするようになって、「みんなそれぞれ自分の仕事を頑張っているはずだから、私は自分の仕事に集中すればいい」と思えるようになりました。

それぞれが自分のやりたいことを真剣にやれば結果は出るし、それで会社として前に進んでいけると信じられるようになったんです。今Kurasuは変動期にあり、エキサイティングな毎日ではありますが、「絶対に大丈夫!」という気持ちでブランディングやデザインに全力投球できるのは、Yozoさんをはじめ、みんながいてくれるからだと思っています。

仲間と一緒に、グローバルな未来をつくっていく

——Kurasuで達成したい目標やキャリアで成し遂げたいことはありますか。

Kurasuは今、どんどん変動しているフェーズなので、私も毎日いいパフォーマンスを発揮して、みんなでその結果を見たいなと思っています。

今、社内でデザインに携わっているのは私を含めて2人だけなのですが、今後はデザインチームのメンバーを増やし、今後増えていく世界中のKurasu店舗を俯瞰してディレクションできる体制を築いていきたいと思っています。

求めるのは、デザインが好きで、Kurasuの世界観が好きで、コーヒーに興味があって、もっと知りたいと思っている人。Kurasuは海外にも進出していますが、いわゆる「外国人ウケ」を狙ったティピカルな日本っぽさではなく、日本の人にも響く日本らしさを追求できる、そんな人にブランディングをゴリゴリやってほしいです。求めすぎですかね……?(笑)

——デザイナー経験者がKurasuに入ったら、どんな経験ができそうでしょうか。

スタジオで働き、いろいろなクライアントと仕事をするとデザイナーとしてスキルアップできますが、「いいデザインをしたな」と思っても、結局それはクライアントのもの。「やって終わり」じゃないですが、達成感をなかなか共有できなかったり、成果物が生み出す未来を一緒に見られなかったりすることもあります。

でも、Kurasuはチームのメンバーと目的を共有できるからやりがいもあるし、自分のしたことの反応をダイレクトに感じられるんです。Web・パッケージ・店頭のプロダクトなど、範囲を限定されることなく、幅広くデザインに携われることも、スタジオでデザインを経験した人には楽しいんじゃないかなと思います。

Kurasuはこれから世界中に店舗を増やしていくので、海外で自分のデザインを見る機会も生まれるはずです。日本にいながら海外市場をターゲットに仕事ができる楽しさや、京都のよさ、京都のコーヒーのよさを海外の方に伝えられる嬉しさも感じてもらえると思います。

——Mizさん、ありがとうございました。最後に、今お気に入りのコーヒーを教えてください!

Kurasuのコーヒーはどれもすごくおいしくて、どれを飲んでもホッとするので、1つを選ぶことは難しいですね……。

そういえば以前「エチオピア ハマショウ」を飲んだとき、昭和に活躍した陶芸家の濱田庄司さん(ハマショー)の存在とKurasuが重なったんですよね。民芸運動を提唱し、日用品が主であった益子焼に新しい息吹を吹き込んだハマショーさんのように、Kurasuのコーヒーは単なる飲み物の枠を超え、カルチャーを作っていく存在になりえるものだと思っています。

私はKurasuのそういった部分に魅力を感じるし、Kurasuのコーヒーがひらいていく未来を仲間と一緒に見られるのはすごく嬉しいことだなと思っています。


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