上野亜揮(うえの あき)
Imperial Nexus株式会社 代表取締役社長(CEO)
1996年7月23日生まれ。神奈川県横浜市出身。元プロジャグラーとして日本チャンピオン、世界大会個人ファイナリストの実績を持つ。開成中学校・高等学校やフェリス女学院中学校・高等学校で情報科講師として勤めたのち、2019年にSofairlo合同会社(現・Imperial Nexus株式会社)を設立。「令和の虎」出資者としても知られ、SNS総フォロワー数は100万人を超える。個人事業主時代を含めると、経営歴はすでに10年を超えた。
※所属・肩書および内容は取材当時のものです
これまでSNS運用代行事業「バズハック」を中心に、法人営業やWebマーケティング、パフォーマー事務所やホワイトニング事業まで、事業領域を大きく広げてきたImperial Nexus株式会社。今回はその舵をとる上野社長に、経営者としての本音をとことん聞いてみることにした。
目次
「自己実現」を終えた今、やりたいこと
——これまでジャグリングで世界を舞台に活躍されたり、開成高校で情報の講師を務められたりと、独立起業される前から華やかなご経歴をお持ちですよね。個人事業主の頃を含めると経営歴10年以上とのことですが、この10年を振り返ってどう感じていますか?
上野社長:この10年間を通して、母子家庭の子ども支援を進めたい、かつ社員の生活をもっと良くしていきたいという気持ちがずっとあります。それって多分、20代のうちに日本チャンピオンや世界大会という舞台で、自己実現がもう終わっているからなんですよね。だから楽なんです。そこが20代の経験でいちばん良かったことかなと思います。
——自己実現に満足した瞬間って、具体的にいつ頃だったんですか?
上野社長:多分29歳ですね。令和の虎のニュースとかで知名度が一気に上がった時期があって、あのあたりで最後の自己実現が終わったのかなと思っています。
——令和の虎に出演されてから、周りからの見られ方は変わりましたか?
上野社長:はい。訳の分からない誹謗中傷は間違いなく増えました(笑)でもそれって、世間に知ってもらえているということでもあるので、プラスに捉えています。曲解されることも多いんですけど、世の中に浸透していく過程だと思えば悪い話じゃないんですよね。
御社を一言で表すとしたら?
——ホームページやVoicyを拝見していて、体育会系というか、他社にはない独特の空気を感じました。御社らしさを一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?
上野社長:一言で言うなら「動物園」ですね。
——動物園……その中に、草食動物はいるんですか?
上野社長:草食動物…まあ、一番の草食動物は僕かもしれません。でも立ち位置としては、園長か飼育員くらいの感覚でいますね。世間に放ってはいけないタイプの動物たちを、うちの園で飼っているようなものです(笑)
——社員の方々は、とても優秀な印象があります。
上野社長:人間で言うとライオンみたいなタイプが多いんですよ。ライオンって、世に放つと危ないじゃないですか。でも力自体はとんでもなく強い。うまく生かしてあげれば、世の中や人のためになる存在なんですよね。馬やキリンだって、本気を出したら人間なんて簡単に傷つけられる。うちにいる社員も突出した力を持ちながら、一般的な枠には収まらないタイプが結構いるんです。そういう人たちをきちんと扱ってあげると、ものすごい力を発揮する。だからこそ、会社が彼らにとって力を最大限発揮できるような場所であるよう整える努力は惜しみません。枠に収まらない人こそ、うちの会社にはぴったりだと思います。
こんな人と働きたい!
——御社が求める人物像について伺いたいのですが、率直にどんな人と働きたいですか?
上野社長:性格がいい人ですね。仕事ができるかできないかって正直どうでもよくて。だって得意不得意って人それぞれあるじゃないですか。僕だって野球選手にはなれないけど、頭は良いからコーチならなれるかもしれない。得意なことで補い合うのが経営だし、チームだと思うんです。仕事ができなくても、場を明るくしてくれる人がいればそれだけで十分価値がある。性格がいい、ただそれでいいんです。
——Voicyでは「高学歴な人がいないと、会社にいる高学歴の社員が息苦しくなる」というお話もされていましたよね。あれはどういう意味なんでしょうか?
上野社長:言葉が通じないからなんです。高学歴な人たちは独自の言語を持っていて、こちらがうまくコミュニケーションを取ろうとしないと伝わらないことがある。うちの社員は学歴も能力も高いけれど、コミュニケーションの取り方がちょっと独特だと感じる場面があります。例えば女子校特有のやりとりってあるじゃないですか。片方が嬉しかった話をしているのに、もう片方がスマホをいじりながら「へー、よかったじゃん」って返す。傍から見たら喧嘩になりそうな空気なのに、当人たちはまったく気にしていない。そういう独特な間合いを持つ子たちがストレスなくコミュニケーションをとれる環境を作りたくて、最近はもう少し高学歴の層が増えてもいいなと思っています。
——特に魅力を感じるのはどんな人ですか?
上野社長:自分の限界を知っている人ですね 。そういう人は自分ひとりでできることの小ささを知っている。だから「会社でみんなと大きなものを作ったほうがいい」と伝えると、素直に納得してくれるんですよね。高学歴の人たちも同じで、死ぬほど努力した結果としての今の自分の限界を知っている。僕自身もジャグリングの世界大会で銅メダルを取って、絶対に勝てない世界があることを思い知りました。限界を知っている人ほど、人の話を素直に受け止められる。その一方で「まだ自分はもっとできるはずだ」と思っている人ほど、こちらの言葉が届きにくい傾向にあると感じています。
一日の過ごし方
——上野社長の一日のスケジュールを教えていただけますか?
上野社長:9時30分に出社して、そこから15分は朝礼です。そこで社員とのコミュニケーションをとりますね。9時45分から13時30分くらいまでは、会議や社員との面談など、会社の内側に向き合う時間。午後からは撮影や外部との打ち合わせが中心で、19時くらいまでかかることが多いかな。その後、19時から24時くらいの間は、とにかく未来のことを考えています。僕、1日8時間睡眠は絶対に崩さないので、遅くとも24時までには寝ますね。
——午前と午後と夜で、時間の使い方がきれいに分かれているんですね。
上野社長:そうですね。午前中はマネージャー、午後はプレイヤー、夜は経営者という感じです。会社の内側を整える時間、現場で動く時間、会社の未来を考える時間と、切り替えながら1日を過ごしています。
未来を見据え、失敗とも向き合う
——未来というのは、何年先くらいまで見据えているものなんですか?
上野社長:恥ずかしながら、1年先くらいまでですね。3年後や5年後のことは、正直まだ読み切れていません。経営理論としては、3年後、5年後、10年後まで見据えて動くのが正しいとされているんですけど、そこはまだ未熟なんだと思います。1年後までの経営計画はかなり正確に立てられる自信があるんですが、その先はまだ見えていない。周りにいる年商50億円を超えるような経営者たちは、3年後どころか10年後まで見えていると思うんです。僕はまだそこまで到達できていなくて、だから打ち手を間違えることもある。3年後が見えていれば打たない手を、見えないから打ってしまうことがあるんですよね。
——打ち手を間違えたと気づいた時は、どう軌道修正するんですか?
上野社長:方法は二つあって、一つはすぐにやめること。つまり損切りです。もう一つは、そのまま頑張って続けることなんですが、これはあまり良い未来が待っているとは思えません。損切りができないと結局長く苦しむことになるので、パッと切ったほうがいいと思っています。
経営判断と、未来の描き方
——新しい事業を始める時、何を決め手にしているんですか?
上野社長:色々ありますが、最後は勘ですね。もちろん儲かるかどうかは、数字を見ればある程度わかります。ただ最終的な決め手は、朝起きた瞬間にふっと降りてくる感覚のようなものなんです。この勘は、今のところよく当たっています。
——逆に「これはやらない」と決める基準もあるんですか?
上野社長:需要が先に見えないものはやらないですね。例えばSNS運用代行を始めるとしたら、いきなりサービスを作るんじゃなくて、まず知り合いの経営者に「SNS運用代行、欲しい?」と聞いてみる。欲しいと言われて金額の相場も見えたら、そこで初めて動き出します。逆にそこが見えないうちは手を出しません。僕みたいな臆病な経営者にとっては、需要を先に見つけたほうが近道なんです。
——たとえばの話ですが、大きな金額と引き換えに今の仕事を止めて個人で動いてほしいと言われたら、受けますか?
上野社長:そうですね・・・もし「3年間、毎年1億円あげるので個人で仕事をしてください」と言われたら、僕は断ります。1億円では足りないというより、そのお金だけをもらっても意味がないんです。誰のためにもならないですしね。逆に「1年間という期限つきで、何もできなくなる代わりに5億円あげます」と言われたら、迷います。1年後までの予想は自分の中である程度立てられるので、その金額と比較して判断できるから迷えますね。3年、5年先が読めないぶん、まとまった額のキャッシュより、ずっと残る仕組みを作る方がよっぽど価値を感じるんです。キャッシュは自分がいなくなったら減っていく一方だけれど、仕組みがあれば会社として残り続けて、支援も続けていけますから。
“かっこいい”人間としての選択を
——営業代行やSNS運用事業など、完全成果報酬というスタイルを貫かれていますが、その背景にはどんな考えがあるんですか?
上野社長:正直に言うと、怒られたくないからです(笑)成果報酬なら、うまくいけば儲かるし、うまくいかなければ儲からない。それだけの話で、誰も怒らない。お互い気持ちよく仕事ができるので、シンプルに楽なんですよね。
——成果が出ているのにも関わらず、返金対応をされたこともあると伺いました。
上野社長:ありましたね。再生数や採用実績を見れば結果が出ているのは明らかなんですけど、それでも納得いただけないケースがあって。窓口をしていた社員から「これはもう手に負えません」と相談を受けて、最終的に僕が判断しました。返金するかどうかを決める権限は、社員には持たせられない。会社にダメージが出る判断だからこそ、その責任は僕が引き受けるべきだと思っています。社長の一言で担当社員が楽になれるなら、その権限はそのために使いたいですね。
——内心では、割り切れない気持ちもあったんじゃないですか?
上野社長:正直、腹の中では穏やかじゃないです(笑)でも社員の前で愚痴を並べても格好悪いじゃないですか。文句を言うか「大丈夫だよ」と大きく構えるか、それは自分で選べること。だったら格好いいほうを選びたい。僕は周りから慕われたい人間なので、そういう選択をしているだけなんです。まともな人間というより、かっこいい自分を選んで演じています。そのことを社員にもオープンに伝えています(笑)
——社員の皆さんと働く中で、上野社長ご自身が学ばされたことはありますか?
上野社長:多すぎて、正直ひとつには絞れないですね。強いて言うなら、経営そのものの楽しさかもしれません。僕は経営者というより、おままごとのように経営者ごっこをやっている感覚に近くて。社員という役割をしてくれる人がいて、僕は経営者という役割をしているだけ。学歴で言えば負ける相手ばかりですし、子育てという仕事では、うちのシングルマザーの社員には絶対に敵いません。上下関係というより、それぞれが役割を演じているだけの話なんです。うちで導入している「識学*」という組織理論も、役割上の上下をはっきりさせるためのルールであって、人としての優劣とは別物だと思っています。
*識学(しきがく)とは、組織の成果を最大化させるために、人間の意識構造をロジック化する、株式会社識学が発案した独自のマネジメント理論のこと
これから仲間になる人へ
——最後に、この記事を読んでいる方々にメッセージをお願いします。
上野社長:仕事選びの際に「好きなことを仕事にしたい」という声が多くあがる印象があります。でも、好きな仕事、嫌いな仕事という考え方自体、僕はあまり信じていないんです。たとえば野球が大好きでも、デッドボールを当てられ続けたらきっと嫌いになりますよね。結局のところ、仕事というのは「誰とやるか」がすべてなんです。だからうちの会社に来てほしいのは、性格が良く、楽しくワイワイやりたいと思ってくれる人です。お待ちしています。