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【COOインタビュー】Digital Platformer×北國銀行の挑戦 ~日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」開発ストーリー~
こんにちは!Digital Platformer株式会社(以下「DP社」)採用担当です。
DP社では、北國銀行と共同で日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」を開発し、2024年3月にリリースしました。
そこで今回、佐藤COOにインタビューを行い、トチカ開発の舞台裏や現在の組織づくりについて語ってもらいました。ぜひご覧ください!
取締役COO 佐藤 浩之
東京大学経済学部ニューヨーク大学経営大学院スターン校卒業。DOCOMO Digital CEOとしてロンドンをベースにモバイルペイメント事業を展開。DXコンサルティングファームパートナーを経て2023年6月より取締役COOとして参画。
日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」とは
――佐藤COO、本日はよろしくお願いします!
このたび、北國銀行と共同開発した「トチカ」が2024年3月25日にリリースされました。まずはプロダクトの概要を教えてください。
佐藤:トチカは、北國銀行が発行する日本初の「預金型ステーブルコイン」です。スマートフォンアプリの「トチツーカ」を通じて、いつでも・どこでも銀行口座からチャージでき、銀行口座に戻して換金することもできます。
同じアプリ内で、自治体が発行するポイント「トチポ」も利用できます。1トチカ・1トチポは、いずれも1円として決済が可能。トチカは石川県内の全てのトチツーカ加盟店で、トチポは発行された自治体にあるトチツーカ加盟店で利用できます。現在、加盟店が続々と増えているところです。
――「民間のサービス(トチカ)」と「自治体のサービス(トチポ)」が1つのアプリ上で共存している。これは画期的ですね。
佐藤:ブロックチェーン上に、金融機関が発行する「通貨」の基盤と、マイナンバーカードによる「本人確認済みのID」をベースとした「地域通貨」の基盤を構築する。この2つの基盤を連携させることで、民間サービスと自治体サービスを1つのアプリケーションの中でシームレスに使える構造をつくった。これが今回のプロジェクトの一番ユニークな部分です。
――改めて従来のキャッシュレス決済との違いについて教えていただけますか?
佐藤:「○○pay」といった既存のキャッシュレス決済は「提供事業者が用意した経済圏」に閉じています。これに対し、今回のプロジェクトでつくるのは「北國銀行が用意した経済圏」ではなく「地域(エリア)の経済圏」です。
利用者である住民が主体となって、地域の中でどのように活動するか選択し、それを1つのブロックチェーン基盤の中に記録していく。これにより、一人ひとり違う「自分の経済圏」をつくっていくことができます。
――利用者が自ら経済圏をつくっていく。対象の地域や利用シーンを広げるためには、北國銀行以外の地方銀行との連携も重要ですね。
佐藤:そうですね。各地方銀行がステーブルコインを発行し、サービスをつくる。そのステーブルコインを同一のブロックチェーン基盤上に載せていけば、銀行同士が個別にアライアンスを組まなくてもアプリ内で連携できます。これから地方銀行にどんどん呼びかけていく予定です。
「銀行」×「ITスタートアップ」による挑戦 ―トチカ開発の舞台裏―
――トチカのプロジェクトが始まった経緯を教えてください。
佐藤:今回のプロジェクトは、北國銀行が現金のコストの高さに強い課題意識を持ったことから始まりました。ATMの維持コストは高く、詐欺被害などのリスクもある。そこで北國銀行では、クレジットカードやデビットカードを導入するなどキャッシュレス化を積極的に進めてきました。
しかし、これらは全てがデジタル化されているのではなく、「利用者による決済」の裏で「決済情報に基づく現金(=資産)の移転」を銀行が行っています。この資産の移転も含め完全にデジタル化できないか検討し、ブロックチェーンを使ったステーブルコインに着目しました。
ちょうどその頃、資金決済に関する法律が改正(※)され国内でのステーブルコインの発行が認められることになり、本格的な開発を決意。技術を提供するパートナーを探す中で目に留まったのが「ソラミツ株式会社」でした。
※2022年6月改正・2023年6月施行
――それから、ソラミツの共同創業者である松田CEOに話が入ったと。
佐藤:当時、DP社では国内向けに分散型ID・VCやブロックチェーンを使った地域通貨の開発を進めているタイミングで。ソラミツのノウハウを引き継ぎ、新しいテクノロジーを取り入れながら、北國銀行と共に「日本初の預金型ステーブルコイン」を開発することになりました。
――北國銀行によるキャッシュレス化の取り組み、国の法改正、DP社の技術開発がうまくマッチした。運命的な出会いから始まったのですね。
――開発の過程で大変だったことはありますか?
佐藤:山ほどありますよ(笑)。やはり最初は、両社の間でのカルチャーの違いが大きかったですね。当社がプロダクトの開発を優先したい一方で、北國銀行は「金融の枠組みの中で、どのようにレギュレーションを守り、金融庁の了承を得るか」という課題があって。
北國銀行が求めることを当社のメンバーが十分に理解しきれない中で、「なぜこれをやらなければいけないのか」といった葛藤や、スケジュールが予定通りに進まないといったことが多々ありました。
でも、「世の中にないものをつくる熱意」は一緒だった。だからこそ乗り越えられたし、違いがあったからこそ互いに補い合えた部分もあります。
実は、今回のプロジェクトのために北國銀行から当社に2名出向していただき、現在も常駐してもらっています。当社側は余力がなくて出向者は出せませんが、最初の頃は2週間ほど北國銀行のオフィスに座って一緒に仕事をしました。物理的な距離を縮めることで、一体感を得られましたね。
――互いに理解を深めながら開発を進めたのですね。トチカをリリースした今、エンジニアの皆さんの反応はいかがですか?
佐藤:このインタビューの直前に、トチカの開発メンバーに「いま何が一番楽しいか」質問したところ、主に2つあると言っていました。
一つは、「クライアントである北國銀行と直接話せること」。単に要求された機能をつくるだけでなく、その機能をつくりたい意図も理解した上で提案をする。「ここまでやった方がユーザーにとってはいいんじゃないか」「それいいね、やろう」――こういう関係の中で、我々が自発的にサービスをつくっていける現場になっているところが楽しいと。
――もう一つは何ですか?
佐藤:「自分たちのつくるものが社会に実装されていくこと」です。
前回のインタビューで松田さんも話していましたが、我々は「ブロックチェーンを活用して社会課題を解決すること」を目指しています。でも、どんなに言葉で語っても、自分が体感しないとわからないことも多いですよね。
自分の手で社会に実装して、ユーザーのフィードバックを得ながら、前に進めていく。それにより得られる「社会にこんな価値を与えられたんだ」という肌感が楽しいんじゃないかなと思います。社会への貢献を実感する中で、自分が今後どんなエンジニアになりたいかが見えてくるし、人生がより豊かになっていく。私はそう考えています。このような経験を通して、みんながどんどん変化していってくれたら、と密かに期待しているんです。
COOが目指す、「ビジネス」と「開発」が融合したプロダクト開発
――ここからは佐藤COOの役割や組織づくりについてお聞きします!
まずは経歴とDP社にジョインした経緯を教えてください。
佐藤:DP社にジョインする前は3年ほどコンサルティングをしていましたが、その前はずっとNTTグループにいました。大学新卒でNTTに入社し、2006年からNTTドコモに所属。M&Aやジョイントベンチャーのセットアップなどに携わった後、キャリア決済を活用したグローバルプラットフォーム事業の立ち上げを企画・リードしました。2012年に行った大規模買収を機に、ヨーロッパに赴任して自らマネジメントとして参画。2016年には買収した複数の事業会社を統合してロンドンにDocomo Digital社を設立し、2019年までCEOを務めました。
日本に帰国した後、DXコンサルティングファームRidgelinez株式会社でWeb3やメタバースのコンサルティングをする中で、DP社の共同創業者である山田芳幸さんに声をかけられて。2022年の秋からアドバイザーとしてDP社に参画し、2023年6月にCOOに就任しました。
――現在はどのような役割・業務を担当していますか?
佐藤:COOは、一言で言うと「何でも屋」ですが(笑)。特に力を入れているのは、「プロダクトの概念をしっかりつくる」ことです。
例えばステーブルコインを他の銀行にも展開していくためには、「北國銀行のために開発する」姿勢ではなく「自分たちのプロダクト」という概念をつくらなければなりません。つまり、クライアントの要望を満たすだけでなく、ユーザーのためになる機能をつくる視点を強化する必要があります。
そのために、CTOが見る開発チームとは別に、今年から私のチームでもエンジニアに入ってもらっています。まずは分散型ID・VC発行サービスの「SHIKI」について、COO直属のプロダクトチームを新設しました。プロダクトオーナー、デザイナー、エンジニアでチームを組み、将来像を描いたり、クライアントと開発チームの間に立って調整する橋渡し役をしたりしています。
これからエンジニアとして入社する方は、開発チームかプロダクトチームのどちらかに入ることになります。
――プロダクトチームに入る場合、エンジニアの専門性を活かしつつ、ビジネスを学ぶこともできますね。
佐藤:これから「ビジネスを理解するエンジニア」を増やしたいと考えています。ビジネスメンバーがエンジニアリングを学ぶのと、両輪でやっていきたい。両輪がうまく回るようになれば、プロダクトチームが開発段階も見据えて構想を練り、スムーズに開発に移行できるようになります。
「自分が何のプロダクトに貢献しているのか」がわかると、そのプロダクトがどういうマーケットをつくり出すか想像しやすくなります。自分の仕事が社会実装にどうつながるかを理解でき、「こういうプロダクトをつくっている」と明確に言えるようになる。これがエンジニアの醍醐味だと思うし、こうした組織やビジネス構造をつくるのがCOOとしての主なミッションです。
多様性を尊重する職場で、「社会に実装する」経験を積む
――今後の事業展開について、展望をお聞かせください。
佐藤:まずトチカのプロジェクトについては、他の地方銀行との連携を進め、各銀行がステーブルコインを発行しつなげていくこと。ある程度投資が必要になるため一足飛びにはいきませんが、来年度中に2~3行での実現を目指しています。また、今後は個人間送金や法人間送金にも対応していく予定です。
このほかにも、ブロックチェーン技術、ステーブルコイン、DID/VCの技術を組み合わせたさまざまな可能性を追求しています。
現在、ブロックチェーンを活用したクリエイターの支援について経済産業省の案件に応募しているところです。簡単に説明すると、タイムラグが生じがちな著作権料などの分配について、ブロックチェーンを使ってトレーサビリティを高めつつ、クリエイターの活動にコミュニティトークンを付与する仕組みをつくる。そのコミュニティトークンにステーブルコインを活用すれば、その価値を安定化できると我々は考えています。
いままさに、実証実験的にいろいろと仕込んでいる最中です。実体経済と結びつけるプロジェクトを近いうちに世に出していきます。
――グローバルな展開も視野に入れているそうですね。
佐藤:今年度(2024年度)から海外にも目を向けていく方針です。海外企業との提携から始めて、海外での認知度を高めていきたいと考えています。
これから海外のディベロッパーコミュニティとの接点もつくっていく方針です。グローバルなマーケットで自分の腕を振るいたい人にもぜひ入ってもらいたいですね。
――佐藤COOから見て、DP社の魅力は何だと思いますか?
佐藤:繰り返しになりますが「社会に実装していること」に尽きます。新しい技術を触っている企業が社会実装するのは本当に難しくて。大企業でも新規事業をマーケットにリリースさせる確率はすごく低いんですよね。
幸いにも我々は、パートナーや株主の皆様からの協力を得ながら、実験は最小限にとどめて実装に注力できています。そのぶん失敗も多いですよ。試行錯誤しながら社会に実装するレベルを体験し、ユースケースを積んでいく。これは経営的にもメンバーにとっても非常に大きな価値であり、その価値は今後高まっていくと捉えています。
――本人の希望に応じて、まずは業務委託やインターンなど正規雇用以外の形で入ることも可能ですか?
佐藤:もちろん!業務委託も、インターンも、パートも可能ですよ。業務委託で数か月様子を見てから正社員を希望することもできます。「複業」をしてもらっても構いません。むしろ、複数の職業を持つこれからの時代に向けて積極的に挑戦してほしいし、我々は応援します。
キャリアについても、弾力的な自由さを用意しています。例えば最初は開発チームに入り、ビジネスに関心を持ったらプロダクトチームに異動することもできますよ。
我々は多様性を大切にしています。将来的に自ら起業したい野心的な人も、やりたいことが明確に決まっていない人も、大歓迎です。
――最後に、この記事を読んでいる方へのメッセージをお願いします。
佐藤:私自身、大企業からコンサルを経てスタートアップに参画と、よりリスクを取るチャレンジをしてきました。その立場から見て、スタートアップで得られる「自分がつくった」「自分がやった」という体験には大きな価値があると思います。
チャレンジしたい気持ちがある人や、エンジニア人生をより豊かにしたい人にぜひ来ていただきたい。後悔はさせませんし、面白い仲間が待っています。
まだ若い会社だからこそ、チャンスがたくさん転がっています。しかも、自分たちがつくるプロダクトが社会に貢献している実感を得られる。とても楽しいですよ。
――佐藤COO、熱意あふれるお話をありがとうございました!
今回は、佐藤COOへのインタビューを通じて、「トチカ」プロジェクトの開発エピソードや組織づくりについて紹介しました。
この記事を読んで、少しでもDP社について知っていただけたら嬉しいです。
当社では、次の時代をつくるビジョンに共感し、一緒に挑戦してくれる仲間を募集中です。
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企画構成:株式会社スリーシェイク 文・撮影:三谷恵里佳