前回の続きです。
4.自分がやるという決断
2番目のプロジェクトの受注前の2019年末に話は少し遡ります。2番目のプロジェクトの受注前に、イタリア本社から数人来日して、今後の日本マーケットに対しての展望を語り合いました。その際に商社としての立ち位置では、競合も多い日本のマーケットに参入して戦っていくには限界があり、日本法人としてしっかりと拠点を構え、営業活動及びマーケティング、納入後のサポートに至るまでを行っていかなければならないとの結論に至りました。もちろん、誰がやるのかというところで私がやるしかないと思い手を挙げたのですが、(多分イタリア側もその気だったとは思うのですが)その時はキャリアアップを狙うという考えよりは、自分が日本に持ってきたビジネスだし、自分で面倒みなければならない、納入先のお客様に対する責任感のような感覚の方が、強かった様に感じます。
もちろん当時勤めていた会社を退職する必要があるので、かなり悩みましたが、まずは目の前のプロジェクト(E80グループのシステムだけでなく、他のメーカーの機器やシステムも一緒に提案)の受注と立ち上げまでは自分がやらなければという責任があるので、このプロジェクトが終わるまでは当時の商社に在籍したい、それまで待ってほしいとE80グループとは約束をしました。
この直後、いざ日本法人を立ち上げるんだという決断はしたものの、自分に足りない知識や経験を強く意識し始めました。2019年の年末はすごく自分を内省する期間だったと思い出します。足りない知識や経験を少しでも埋めるために2020年頭から、MBA(経営学修士)を志すことになったのですが、話がかなり逸れるのでまた別の機会にしたいと思います。
5.コロナ禍でのプロジェクト
2019年末の約束の後、前回記載の通り、無事2番目のプロジェクトも受注したのですが、時はコロナ禍真っ最中。仕様の打合せも慣れないリモート会議で何とかこなし、1年後の機器の納入時期には海外から据付試運転エンジニアを派遣できるものとたかをくくっていたのですが、いつまで経っても渡航制限は解除されず。通常はFATといって機器の出荷前検査をするためにイタリアの現地工場に出向くのですが、海外への渡航が禁止されている中なので、両社の信頼のもとリモートで済ましてしまいました。2か月後、機器が到着しても一向に渡航制限は解除されないため、一部の機器(E80 Groupの所掌範囲外の機器)の据付はリモートでスタートさせることになりました。とはいっても商社なので、そんな据付指導ができるようなエンジニアはいません。私とチームのメンバーがずっと四国の現場に入り、時には図面を読み、場合によってはリモートでイタリアを繋ぎながら機械据付を行い、ある程度の試運転までを行いました。その後、特別な渡航許可を得ることで、数名の技術者の派遣が叶い、無事E80 Group社の所掌範囲(自動搬送リフトシステム)までの試運転を行うことができました。半年以上に渡って現場に入り、時には深夜まで技術者やチームのメンバーと一緒になって色々な問題を一つずつ解決していった経験は、時には辛かったこともありましたが、今となっては誰にでもできるようなことではない、かけがえのない経験になったと振り返って感じます。
6.退職・日本法人の立ち上げ
プロジェクトは2021年10月末に一旦の終了を迎え、当初の約束通り、私は2021年末で当時勤めていた商社を退職しました。会社側とは2021年の頭に既に話を終えており、快く送り出してもらえました。今でもその商社とは円満な関係のもとビジネスを続けています。
2022年からは個人事業主としてE80 Groupと契約。日本法人の設立とマーケティング、営業活動をスタートさせ、その後色々とすったもんだもありましたが、2022年9月に無事日本法人を設立することができました。
平行して進めているマーケティング・営業活動で、幸いながらも多くの日本企業から複数のお引き合いを頂いています。営業活動を行う中で感じることとしては、弊社の自動化技術は世界的に見てもかなりの高水準にあるということです。我々の自動化ソリューションは今後日本に確実に訪れる人口減少による労働力不足に対して、大きく貢献できるものであり、2019年末の決断が間違っていなかったと、確信を深めています。
↓ 2021年9月 ドイツでの展示会 Drinktec 弊社ブース。日本からもたくさんのお客様が来場しました。
↓ 2021年12月の展示会ドリンクジャパンにて
こうやって立ち上げの経緯を筆に起こして書いてみてみると、なんだか少し恥ずかしい一面、当時の自分の決断や大変だったことを改めて振り返り、これからも頑張っていかなければならないという気持ちが沸き上がってきますね。
こんな私や、イタリアだけでない世界中のメンバーと仕事をしてみたいと思った方、是非一度話を聞きに来てください。