こちらの記事の続きになります。前半はアダコテックのコアとなる産総研のHLAC技術が中心でした。後半は、導入事例をメインに仕事の醍醐味や、アダコテックの未来についてです。このインタビューがまだ見ぬ素敵なひとたちとの出会いのきっかけになると嬉しいです。
◆導入事例について教えてください!
社名を公開できないものが多いのですが、お客様の事例としては、社会インフラに力を入れている企業との非破壊検査プロジェクトや、自動車部品を製造する企業の検査・検品プロジェクトや装置の経時劣化をモニターするプロジェクト。他にも大手警備会社の監視カメラの動画解析用途など、「異常検出」が求められる様々なシーンでお仕事をさせて頂きました。
三井E&Sマシナリー様とは完成したトンネルに問題や異常が無いかを検査するプロジェクトを実施しました。これまで熟練工が数週間かけて行っていた仕事を電磁波レーダーを分析することによって「検査時間を1/4に短縮することができました。」時間の短縮もさることながら、職人の熟練度の差による検査ムラにも左右されませんので、未来に向けた仕組みとしても貢献できたと考えています。
◆どのプロジェクトも興味深いですね。クライアント企業様とはどのようにして出会われるのでしょうか?
実は最初から弊社に相談頂く事例は少ないんです・・・(笑)
深層学習(Deep Learning)で色々お試しになったお客様が、壁に直面し、解決の糸口を求めて相談頂くパターンが多かったりします。
そういう意味では、ほぼ確実に他社製品と比較されています。例えば、弊社を含めた10社程度の製品の性能比較を行い、最後に弊社が勝ち残り採用が決まったという事例もあります。
◆回り回って相談がくると言う意味では最後の砦感がありますね。
そうですね、他社に相談して技術的に困難だと断られて、お客様も半ば諦めた状態でのお問い合わせだったりするので、匙が投げられた状態とも言えると思います。
相談を頂く際に一番多い課題としては、初期導入に必要なデータ量の準備が思うようにいかないことと、精度を上げていくプロセスがなかなか前に進まないことの二つです。特にDeep Learningの場合は、ロジックが人間にはわからないため、どういうデータをどれだけ読み込ませれば良いのかの見通しが立ちません。ゆえに、プロジェクト自体を継続するかどうかの判断にも困られていると聞きます。
その他の課題としては、そもそもユーザー自身も正常/異常の判断が曖昧であるケースや、検査に数ミリ秒のタクトタイムが求められるケースもあります。
◆それは匙を投げるというのも分かるような気がしますね。アダコテックが競合と比べて優位なのはどういった点なのでしょうか?
根本的な違いとしては、推論も含めて速度が速く、導入するまでのコストが低いことです。ここでいうコストとは、学習に要するサンプル数と学習に要する時間を指しています。低コストの実現には、技術をリードする伊部のSIMD命令などを利用した高速化ロジックがかなり効いています。
アダコテックでは100fpsの映像をリアルタイムに解析しながら、正常モデルの更新もリアルタイムに行うのですが、伊部のチューニングのおかげで、1つのPCで4カメラを同時に分析することが可能になり、1秒間に400枚のデータを解析検査しながら更新ができています。
我々アダコテックの技術もDeep Learning陣営も、お互いベストエフォートを出したら検査精度という観点ではおそらく甲乙つけがたいものになるはずで、場合によっては深層学習の方がいい場合も出てくると思います。
ただ、導入可能な状態に至るまでのコストや、正常ではない現象が起こった場合にどうやって原因を突き留めるかといったトレーサビリティの問題、そして再学習の際の手間暇といった運用にかかるコストを考えていった際に、アダコテックに軍配があがるケースが現状多いと考えています。
◆比較ポイントがわかりやすく、理解が深まりました。ちなみにアダコテックが抱える課題という点ではいかがでしょうか?
課題はあります。やはり専門的な領域のため、導入のところでノウハウが属人的になってしまっている部分があります。
これを解決するために、より少ないデータでパラメーターも自動で決まるようにするための研究や、よりお客様にとって使いやすいサービスモデル(SaaS/クラウドサービス)に移行する必要があると考えています。
◆アダコテックの未来やビジョンについてもお話聞かせてください。
個人的には「これやったの俺だぜ」と言えるものがあると嬉しいので、コンシューマー向けにも何かわかりやすいサービスがあるといいのですが(笑)
真面目に話すと、日本には、規模的には中小企業だけど、売上利益率が高く、実はこの分野では世界シェアナンバー1という企業が多くあります。そういう「実は!」みたいな感じで日本を支える企業の一つに成長できれば嬉しいと思っています。特に今は、GAFAという言葉が出てきて、AIといえばアメリカの企業で、それに対抗して中国のBATHとかがあって、いずれにせよ国外の企業の名前が多いと思います。
昔の話ですが、TRONプロジェクトなど日本国産でもいいものがありました。これはMicrosoftに負けてしまいましたが、日本の技術で世界にはばたく、世界で通用するような仕組みを創ってその結果としてモノづくりの産業に貢献していきたいなという想いがあります。
特に私の場合、修論でお世話になった先生の「研究所で論文書いて終了というキャリアは虚しい。もっと実業に踏み込め。」という想いに共感してベンチャーの道に進んだのが始まりだったので、日本の技術を使って世界に貢献という想いが人一倍強くあります。
※以下トロンについて参考までに。
ずっと伊藤とは一緒にやってきているので、根底の想いとしてはかなり近いのですが、向き合う品質保証領域の課題についてお話しすると、今は検査といっても自動化はなかなか進んでおらず、多くの現場で人が一つ一つ検出しています。
人なのでミスやエラーはどうしても起きてしまいますし、そのミスを責めるのも、責められるのも、なかなかに辛いと思います。こういった品質保証のプロセスを安心安全なものに進化させ、日本のモノづくりを支えていきたいと思っています。
また、どこの産業も人不足の問題があると思いますが、この人手が足りない問題を解決するために自動化や仕組みで解決しようという世の中の流れがあります。私たちアダコテックもそこに取り組んでいますので産業全体が良くなるように日々研究していきます。
上記のような課題に向き合い、その結果「検査といえばアダコテック!」と言われるくらいに成長できたら嬉しいですね。
◆そのためにどんな人と一緒に働きたいですか?
アダコテックは直近4億の資金調達を実施し、プロダクトも組織も含めチャレンジ要素が沢山ある会社です。モノづくりという環境下においては、クラウドサービスという新たな形態に進化させるタイミングでもあります。
手前味噌ではありますが、弊社では現場のリアルなデータを扱えるという強みがあるため、AIエンジニアとして成長していきたい方や、リアルな実際の環境で開発を経験したい方には適した環境だと思っています。
私たちのフェーズや、開発環境、そして目指す今後についてご興味をお持ちいただけましたら、まずはお話させて頂きたいと考えています。
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