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なぜ日本は諸外国と比較して人材採用コストが高いのか

日本でもようやく語られることの多くなった「ダイレクトリクルーティング」。欧米では一般的な採用手法としてすでに定着し、成熟しています。日本ではまだまだ成功事例も多くはなく、インハウス人事が苦戦しているダイレクトリクルーティング。そこには日本特有の事情もあるように思います。

このブログでは、数々のグローバルIT企業の日本拠点ヘッド採用、スタートアップチーム構築やスペシャリスト集団のリクルーティング活動を精力的に支援してきたマレー・クラーク(エクスペリス・エグゼクティブ株式会社 代表取締役)が、海外と日本のHRサービスのマーケットを比較、俯瞰しながら日本の人材採用マーケットの現状の課題と将来の展望を語ります。

世界的に見ても日本は人材採用が難しく、かつ高コスト

 日本は、世界で最も人材採用が困難な国です。この事実を前提として、今回はなぜ日本の人材採用コストが諸外国と比較して高額なのかをご説明します。

 どのような業界であっても、グローバル企業の本社人事責任者は、世界の各拠点から提出されてくるリクルーティングに関するレポートのうち、とりわけ日本からのレポートを見て驚いていることでしょう。
「なぜ日本は、多くの予算を費やしているにも関わらず人材採用が難しいのだろう」と。

 私は、日本の人材採用コストが高いのには2つの理由があると考えています。今回は、「採用する側=リクルーター側」の視点でお伝えしたいと思います。私自身が痛切に感じていることですが、率直に申し上げて私たちのようなリクルーティング業界が発展を目指していくならば、海外と比較した際の日本の人材採用モデルの非効率性に目を向けなければなりません。

多くのグローバル企業の本当の課題は、有能なリクルーターが少ないこと

 アメリカやヨーロッパは、日本と比較してリクルーティング業界が成熟しています。 そのような国では、大規模な自社(インハウス)採用チームが存在し、LinkedInやGlassdoor、Indeedなどのツール利用も活発であるため、顕在的・潜在的を問わずより多くの候補者データへの直接コンタクトが可能です。また、その多くのインハウス採用チームは、人材発掘(ソーシング)および人材セールスの両面において非常に熟練したスペシャリスト達で構成されていることがほとんどです。

 では、日本での人材発掘(ソーシング)の問題を見てみましょう。ほとんどのグローバル企業にとって本当の問題は、有能なリクルーターの不足です。 誤解を招きたくないのですが、もちろん日本にもインハウスや人材エージェントで働く優秀なリクルーターがたくさんいます。当然のことながら、我々はこれらの優秀なリクルーターたちを(日本人・外国人問わずに)尊重しなければなりません。問題は、トップ層のリクルーターと中間層のリクルーターとの間に大きな質的ギャップがあることではないでしょうか。
リクルーター自身が、自らの仕事の価値、すなわちクライアントや利害関係者に提供する価値の本当の意味を学ばない限り、日本のリクルーティング業界の将来は明るいものとはいい難いと感じます。

 より成熟した人材マーケットが存在する国では、この淘汰の段階はすでに何年も前に済んでおり、コンティンジェンシー(成功報酬型)の人材エージェンシーのフィーは日本よりもはるかに低い価格設定となっています。 さらに最近では、人材エージェンシーの利用よりもインハウス採用チームによる効果的なダイレクトソーシングが主役になりつつあります。これには、グローバルなHRテクノロジーの進化も一役買っています。 そして、人材エージェンシー利用からの脱却を目指し、自社の採用チームに投資する企業が増えています。ここで言う投資とは、優秀なリクルーターの採用、ダイレクトソーシングのためのツール導入、自社サイトの採用情報ページの充実などのエンポロイヤーブランディングへの投資です。

 実際、グーグル、セールスフォース、マイクロソフト、アマゾン、および他の多くのメジャー企業は、質の高いリクルーターを大量採用し、彼らに高い水準の報酬を用意しています。しかし、このような財力とブランド力の両方を持っている企業と異なり、多くの企業にとって、これは単なる夢物語でしかないのかもしれません。

 前述のメジャー企業群とは異なり、ほとんどの企業は予算に限りがあるため、ダイレクトソーシングの経験と能力があるリクルーターの採用に苦心しています。 インハウスの採用チームによるダイレクトソーシングに勝った経験の無い、人材エージェンシー出身リクルーターが、転職してインハウスの採用チームへ加わったとして、果たして結果が出せるのでしょうか。結局、そういった人材がインハウスのリクルーターに転身しても、依然として外部の人材エージェンシーへ依存することは変わりなく、採用コストは高騰し続けてしまいます。

現状維持が”ダイレクトソーシング力”のある採用チーム作りを阻んでいる

 人材エージェンシー経験者もいない、ダイレクトソーシングの実施やその導入の意図さえないインハウス採用チームに新人リクルーターが投入されたとします。 通常のビジネスにおいて、OJTは後継者育成のために明らかに必要不可欠なモデルですが、OJTでの指導が“現状維持型”のリクルーターのものであったなら、残念ながらそのチームのリクルーティングに対する基本的な考え方は変わりません。 そのようなインハウス採用チームが、人材エージェンシーに頼り続けてしまうのは、当然といえば当然の流れなのです。

 最後に、インハウスリクルーターが候補者をダイレクトソーシングしている場合でも、多くの課題があります。 まず、データの分析、報告書の作成やステークホルダー管理に多くの時間を取られていること。
さらに、ダイレクトソーシングと並行して人材エージェンシーの対応も行うとすれば、人材エージェンシーからの問い合わせや、(見当違いも含み)山のように送られてくるレジュメへの対応、面接の日程調整のやり取りなどに多くの時間を割くことになります。 まさにその時間のうちに、ダイレクトソーシングで直接捕まえたかったあの候補者は、他社のスカウトメールを受け取り、それに目を通しているのかもしれません!このようにして、結果的に日本の典型的なインターナルリクルーターはダイレクトソーシングに集中する時間の確保がとても難しくなっているのが現状です。

【セミナー開催のおしらせ】海外に学ぶダイレクトリクルーティング

インハウス人事の皆様向けセミナーです。海外でのダイレクトリクルーティングのノウハウや日本でダイレクトリクルーティングを推進するグローバル企業での実例をご紹介するとともに、コストダウンだけではないダイレクトリクルーティングのメリットも解説します。

【グローバル企業に学ぶダイレクトリクルーティング】
▶日時:2019年5月28日(火)13:30~15:00
▶会場:マンパワーグループ株式会社 浜松町オフィス
▶参加費:無料
▶定員:20名様(先着順/1社につき2名まで)

▶講演項目:※日本同時通訳付きの英語講演です。
 ーなぜ日本の採用コストは諸外国と比較して高いのか?
 ーグローバル企業の採用ノウハウを他社より先取り!
 ー採用コスト減だけじゃない!採用広報へのメリット
 ーダイレクトリクルーティングの始め方・進め方

▶セミナー講師:
マレー・クラーク(エクスペリス・エグゼクティブ株式会社 代表取締役)
ニュージーランド出身。マレーは、数々のグローバルIT企業の日本拠点ヘッド採用、スタートアップチーム構築やスペシャリスト集団のリクルーティング活動を精力的に支援し多くの実績を挙げています。クラウド系IT企業分野のヘッドハンターの日本における第一人者として知られています。

詳細、参加申し込みは こちら からどうぞ。

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