「研修をやらなきゃ」は増えるのに、現場の時間は増えない。福祉現場の"教育疲れ"に向き合う〜Special Learning新機能の裏側 Part1〜
福祉施設の管理者は、今日も忙しい。
利用者支援、職員のシフト調整、ご家族対応、行政対応――。
目の前の利用者のために時間を使いたいと思っていても、現実には多くの「やらなければならない仕事」に追われています。
その一つが、義務研修です。
虐待防止、身体拘束適正化、感染症対策、BCP(業務継続計画)……。近年の法改正や報酬改定に伴い実施すべき研修は増え続けています。もちろん、どれも大切な研修です。
しかし現場からは、
「研修そのものより、管理が大変なんです。」
そんな声をいただく機会が増えてきました。
今回、Special Learningでは、義務研修管理機能をリリースしました。ですが、この機能で本当に解決したかったのは、「管理を楽にすること」だけではありません。私たちが目指しているのは、管理者が本来向き合いたい"人材育成"や"支援の質"に、もっと時間を使える環境です。
今回は、Special Learningの開発責任者・浜田と、日々お客様の声を聞くカスタマーサクセスの責任者・外崎の対談を通して、その背景をお届けします。
浜田 亮(CX部門 プロダクトチーム マネージャー) ITエンジニアとしてキャリアを積み、Lean on Meへ入社。福祉現場の課題解決に向けて、Special Learningをはじめとするプロダクト開発をリードしています。「現場が本当に使いやすい仕組み」を追求し、日々開発に取り組んでいます。
外崎 翔太(CX部門 カスタマーサクセス マネージャー) 理学療法士としての経験を経て、障がい福祉事業所の立ち上げ・運営を経験。その後Lean on Meへ入社し、現在はカスタマーサクセスとして全国の福祉事業所に伴走しながら、現場の声をプロダクトづくりへ届けています。
「学びたいのに、学べない」をなくしたかった。
Special Learningが生まれた理由
──まず、Special Learningはどのようなサービスとして始まったのでしょうか。
浜田
もともとは、代表志村が障がい福祉の現場に未経験で入った職員でも学べる環境を作りたい、という想いから始まりました。
創業者の志村自身が支援員として働き始めた頃、「何を学べばいいのか分からない」「教えてくれる人もマニュアルもない」という経験をしたことがきっかけです。
だったら動画で学べる環境があればいい。それがSpecial Learningの原点でした。
当初は、「動画さえあれば学びは進む」と考えていました。しかし、実際にサービスを提供していく中で、新たな課題が見えてきます。
「動画はある。でも見られない。」忙しい現場では、どうしても優先順位が下がってしまうのです。
外崎
実際、お客様からも
「見る時間が取れない」
「導入したけれど活用しきれない」
という声は少なくありませんでした。
そこでリーンオンミーは、「動画を提供する会社」ではなく、「研修が定着するところまで伴走する会社」へと考え方を変えていきました。
年間研修計画を一緒に作り、運用まで支援する。
そうしたカスタマーサクセスの取り組みによって、少しずつ現場で活用されるサービスへと変わっていったのです。
そして、この数年で、現場から寄せられる相談にも変化が生まれました。
「研修を実施する」から、「管理する」時代へ
──ここ数年で、現場の課題はどのように変わってきたのでしょうか。
外崎
一番大きいのは、「研修そのもの」より、「研修を管理すること」に関する相談が圧倒的に増えたことです。
背景には法改正や報酬改定があります。
数年前までは、「毎年同じ研修を実施すればよい」という印象を持つ事業所も少なくありませんでした。しかし近年は、虐待防止や身体拘束適正化に加え、BCPや感染症対策など、求められる研修や体制整備が増えています。研修を実施するだけでなく、計画・記録・委員会運営まで求められるようになり、現場の管理者が担う役割は大きく変わりました。
つまり、「やった方がいい研修」ではなく、「必ず実施しなければならない研修」が増えてきたんです。
しかも今は、実施したかどうかだけではありません。
計画があるか。
誰が受講したか。
理解しているか。
記録が残っているか。
そこまで確認される時代になっています。
研修は、施設運営に欠かせない基盤になりました。
義務研修は、「経営」にも直結する
義務研修は、単なる社内教育ではありません。
福祉サービスは公的制度のもとで運営されており、運営基準に沿った研修の実施が求められます。もし適切に実施・管理できなければ、運営指導で改善指導を受けたり、報酬の減算につながったりする可能性があります。場合によっては、事業継続にも影響を及ぼしかねません。
外崎
福祉サービスは、公的な制度に基づいて運営されているサービスです。
人員配置や設備、必要な書類、運営基準など、守るべきルールがあります。その中の一つに、法定研修や委員会運営があります。
一部の研修や体制整備については、適切に実施できていない場合、報酬上の減算につながることもあります。
福祉サービスは、報酬体系の中で売上の上限がある程度決まっています。
その一方で、人員配置や設備など、事業所として必要なコストもあります。そうした中で減算が起きると、経営への影響は決して小さくありません。
義務研修は"やった方がいいこと"ではなく、法人経営を支える土台になっています。
一方で、管理者が本当に時間を使いたいのは、書類づくりではありません。
利用者支援であり、職員との対話であり、人材育成です。それでも現実には、管理業務は増え続けています。
紙やExcelで管理されている法人さんはまだ多い
──現場では、研修はどのように管理されているのでしょうか。
外崎
お客様と話している感覚では、紙やExcelで管理されている法人さんはまだ多いです。
たとえば、WordやExcelで年間研修計画を作って、印刷してファイリングする。
研修ごとに概要や参加者をA4一枚にまとめて、「2026年度 研修ファイル」のような形で保管する。
そういう運用はよく見ます。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
むしろ、皆さんすごく丁寧に管理されています。
ただ、義務研修が増えてくると、紙やExcelだけで管理し続けるのはかなり大変です。
本来なら支援や育成に使える時間が、「探す」「確認する」「まとめる」といった事務作業に費やされてしまう。そこに、大きな課題を感じていました。
「研修をやらなきゃいけない」のに、「管理する時間がない」
ここまで見てきたように、近年の法改正や報酬改定を背景によって、福祉施設で求められる義務研修は年々増えています。
しかし、現場で多く聞かれるのは「研修内容」そのものよりも、管理に関する悩みです。
本当に大変なのは、「研修を実施すること」ではなく「管理すること」
──管理者の皆さんからは、どんな相談が多いのでしょうか。
外崎
「何をやればいいか分からない」という相談は、本当に多いですね。
特に新しく事業所を立ち上げた法人さんからは、
「今年は何の研修を実施すればいいですか?」「年間計画はどう作ればいいですか?」という質問をいただきます。
長く運営されている法人さんであれば、前年の資料をベースにできます。
一方、新規事業所は前例がありません。さらに開設から1年ほどで運営指導を迎えることも多く、「これで本当に大丈夫なのだろうか」という不安を抱えています。
地域のネットワークや管理者同士のつながりもまだ少ないため、相談できる相手がいないケースも珍しくありません。
もちろん、厚生労働省や自治体から資料は公開されています。しかし、それらは制度を理解するための資料です。実際に職員向けの研修へ落とし込むには、多くの管理者が頭を悩ませています。
外崎
「虐待防止研修をやらなければならない」のは分かる。でも、
「何を話せばいいのか」
「どこまでやればいいのか」
で止まってしまう。
そういう管理者の方は少なくありません。
管理に時間を使うほど、本来やりたいことから遠ざかる
管理者の皆さんは、義務研修が重要であることを理解しています。
だからこそ、手を抜きたいわけではありません。ただ、そのために膨大な事務作業が発生しています。
受講者の設定。
受講状況の確認。
外部研修の記録。
委員会の開催記録。
運営指導に向けた資料整理。
それらが積み重なることで、「本来やりたかった仕事」に使える時間が減ってしまいます。
外崎
管理者の方と話していると、
「もっと職員と話す時間がほしい」
「育成に時間を使いたい」
という声をよく聞きます。だからこそ、「研修を楽にする」のではなく、「管理を楽にする」ことが必要だと考えました。
「4クリック」で終わることに、本気でこだわった理由
──今回の新機能では、「4クリックで設定できる」という点を大きな特徴にしています。なぜ、そこまで操作性にこだわったのでしょうか。
浜田
理由はシンプルです。支援に使える時間を少しでも増やしたいという想いからです。
管理者の皆さんは、システムを触ることが仕事ではありません。利用者さんと向き合い、職員を育て、施設を運営することが仕事です。だからこそ、管理画面の操作に時間を使わせたくありませんでした。
今回の新機能では、義務研修のおすすめパックを選ぶだけで、必要な研修をまとめて設定できます。
誰が対象なのか。
誰が未受講なのか。
進捗はどうなっているのか。
そうした情報も一覧で確認できるようになりました。
浜田
画面遷移を一つ減らせないか。
入力項目を減らせないか。
毎回同じ設定をしなくても済まないか。
開発では、そんなことばかり考えていました。
「4クリック」という数字は、開発チームが目指した"現場への約束"なんです。
「楽をする」のではなく、「支援に集中する」ために
一方で、「管理を楽にする」という言葉には、少し誤解もあります。
外崎
義務研修は大事です。虐待防止や身体拘束等の適正化は、絶対に軽く扱っていいテーマではありません。
ただ、本当に時間を使いたいのは、記録を探すことやExcelを更新することだけではなく、研修後に職員さんと話したり、日々の支援を振り返ったりすることだと思っています。
厚労省や自治体の資料を読めば制度の理解はできますが、それだけで現場の支援が変わるわけではありません。
だからこそ、管理の負担を減らして、現場の理解や支援の質につながる時間をつくることが大事だと思っています。
今回の機能は、まだ始まりに過ぎません
今回リリースした義務研修管理機能は、Special Learningの新しい取り組みの第一歩です。私たちはこれまで、動画による研修を提供するだけでなく、年間研修計画の作成や運用支援など、お客様と伴走しながらサービスを育ててきました。
その中で見えてきたのは、「研修を実施すること」よりも、「研修を管理し続けること」の難しさです。今回の機能では、その負担を少しでも軽減できるよう、研修設定や受講管理を効率化しました。
そして今後も、
- 運営指導への対応
- 理解度の可視化
- 人材育成を支援する機能
など、福祉現場の課題に寄り添った機能開発を順次進めていく予定です。
Special Learningが目指しているのは、管理業務を効率化することだけではありません。管理者の皆さまが、本来大切にしたい利用者支援や職員育成に、より多くの時間を使える環境をつくること。Special Learningは、これからも福祉現場とともに進化し続けます。
支援の質を高めるための「インフラ」でありたい
管理者の皆さんには、それぞれ大切にしている支援があります。法人ごとの文化もあります。Special Learningは、そのやり方を変えたいわけではありません。むしろ、その想いを実現するための土台になりたい。
義務研修を適切に管理し、余計な手間を減らすことで、本来やりたい支援や育成に集中できる環境をつくる。
Special Learningは、単なる研修ツールではなく、福祉施設の運営を支える「インフラ」でありたいと考えています。
おわりに
制度が変われば、現場の仕事も変わります。その変化に対応するために、管理者の負担だけが増え続ける状態は、決して望ましいものではありません。
だからこそ、私たちは「管理を効率化すること」をゴールにはしません。その先にある、より良い支援や人材育成のための時間を生み出すこと。それが、今回の義務研修管理機能に込めた想いです。
そして、この機能はまだ第一歩です。これからもSpecial Learningは、福祉現場の皆さまとともに学び、育ち続けられるプラットフォームを目指して進化を続けていきます。
次回は、運営指導への対応をテーマに、新機能開発の背景をお届けします。