「心が疲れている人に対しては、『指導』だけでは不十分」そう語るのは、ニューロリワーク 梅田センターでインストラクター兼支援員として活躍されている伊藤 一成さん。
フィットネス業界で25年、運動指導や店舗マネジメントに携わってきた伊藤さんが、なぜ福祉の現場である就労移行支援へとキャリアチェンジを果たしたのか。そこには、ご自身の経験や部下との関わりから生まれた「心の健康」への強い思いがありました。
伊藤 一成 / 就労支援員・インストラクター
学生時代のアルバイト期から卒業後にかけて、フィットネス業界にてフリーインストラクター(水泳・スタジオ系)として5年間活動した後、公共スポーツ施設にて障害者・高齢者指導に4年間従事。その後、大手フィットネスクラブにて10年間にわたるトレーニング指導や各種プログラム担当を経て、店舗管理職として7年間、売上管理や人材育成、スタッフ研修をはじめとする店舗運営全般を牽引。通算25年以上にわたりフィットネス業界に携わり、健常者から障害者・乳幼児から高齢者まで幅広い層への指導経験を深めるとともに、現場指導の最前線から組織の運営管理・マネジメントに至るまで総合的な実績を有する。2023年6月インクルード株式会社に入社。
「人の成長に関わる喜び」と、心の健康ケアへの気づき
ーーまずは、これまでのご経歴やインストラクターを目指したきっかけを教えてください。
学生時代はずっと水泳に打ち込み、もともとは選手として競技に取り組んでいました。
インストラクターを目指すきっかけになったのは、高校時代に水泳未経験の後輩が入部してきたことです。
当時は自分自身の競技に集中していましたが、その後輩から「水泳を教えてほしい」と熱心に声をかけてもらったことをきっかけに、技術や練習方法を伝えるようになりました。すると、後輩は少しずつ成長し、最終的には大会で入賞できるレベルまで上達しました。
その時に「教えてもらったおかげです」と感謝の言葉をもらい、自分の経験や知識が誰かの成長につながることに大きなやりがいを感じました。
そこから、「指導を通じて人の成長を支えられる仕事がしたい」と思い、インストラクターの道へ進みました。
ーーその後、公共スポーツ施設やフィットネスクラブで長くご活躍されました。その中で、心の健康ケアの重要性を感じるようになったそうですね。
はい。きっかけは大きく2つあります。
1つ目は、私自身の休職経験です。現場での指導経験を積んだ後、店舗運営や管理職として、人を支える立場にも携わるようになりました。その中で、私自身も心身のバランスを崩し、2ヶ月ほど休職を経験しました。
そのとき、上司のすすめもあり、思い切ってリフレッシュする時間を取ったことで、自分自身の状態を整えることの大切さに気づきました。この経験から、心の健康ケアは一部の人だけに必要なものではなく、誰もが長く働き続けるために大切なものだと実感しました。
そして2つ目は、管理職として部下のメンタル不調に向き合った経験です。自身の休職を経験してからしばらく経っていましたが、コロナ禍で部下が心身の不調を抱え、サポートすることがありました。
その中で感じたのは、心が疲れている人に対しては、これまで自分が大切にしてきた「指導」だけでは十分ではないということです。まずは相手の気持ちに寄り添い、話を聴くこと。そして、その人自身の状態を理解することが大切だと学びました。
ーーその経験が、就労移行支援の仕事に興味を持つきっかけにもなったのでしょうか?
はい。部下との関わりを通じて、「心身の不調で悩んでいる人が、もう一度社会に戻れるように根本からサポートできる仕事はないだろうか」と考えるようになりました。
その思いは日を追うごとに強くなり、管理職として机に向かう時間が増える一方で、「もっと一人ひとりと直接関わりたい」「これまで培ってきた経験や知識を、人を支えるために活かしたい」「大好きな運動を通じて心と身体の健康に貢献したい」という気持ちが再び大きくなり、転職を決意し、さまざまな仕事を調べる中で出会ったのが「就労移行支援」という分野でした。
正直に言うと、最初は「就労移行支援」という言葉から、少し専門的で、自分には遠い世界のような印象を持っていました。しかし、インクルードの採用サイトを見たことで、その印象は大きく変わりました。
サイト全体から伝わってくる雰囲気がとても温かく、他の企業にはない「人を大切にする姿勢」を強く感じたんです。
特に心に響いたのが、インクルードのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)でした。
そこに込められた考え方は、これまで部下と向き合う中で大切にしてきたことや、自身の経験を通じて感じてきた「心身の健康を支えることの大切さ」と深く重なっていました。
「自分が大切にしてきた想いと、この会社の考え方は同じだ」と感じ、「ここで働きたい」と思い、応募を決めました。
ーー未経験の業界への転職に不安はありませんでしたか?
もちろん、最初は不安もありました。ただ、面接の中で私自身の経験や想いを丁寧に聞いてくださったことで、その不安は次第に安心感へと変わっていきました。
特に印象に残っているのは、私がインクルードのMVVへの共感や、自分がこれまで大切にしてきた考え方をお伝えした際に、「まさに私たちが大切にしていることです」と受け止めてくださったことです。
これまでの経験や価値観を理解してもらえたことが、とても嬉しかったですね。
また、良い面だけを伝えるのではなく、給与などの条件面や仕事の大変さについても包み隠さず説明していただきました。
その誠実な姿勢から、「ここなら安心して挑戦できる」と感じ、入社への気持ちがより強くなりました。
「指導」から「伴走」へ。就労移行支援における運動の役割
ーー実際に就労移行支援の現場でインストラクターとして働いてみて、フィットネスクラブとの違いは感じますか?
大きな違いを感じています。
フィットネスクラブでのインストラクターは、お客様の前に立ち、目標に向かって引っ張っていく「指導」の要素が強い仕事でした。また、「運動」に対して自らの意思でお金を払い、明確な目標と高いモチベーションを持って来られるお客様がほとんどでした。
一方で、就労移行支援における支援は、前へ立って引っ張る「指導」ではなく、利用者様一人ひとりに「寄り添い、共に歩む伴走者」であることが求められます。
最も大きな違いは、アプローチの前提にあります。フィットネスでは「運動そのもの」が目的でしたが、就労移行支援におけるプログラムは、あくまで「社会復帰や生活リズムの安定」を目指すための手段に過ぎません。
また、通われる方の多くは疾患や挫折体験から強い不安や葛藤を抱えてスタートするため、エネルギッシュな集団指導よりも、微細な体調変化を見逃さない観察力や、個別のペースを見極める丁寧な傾聴力が不可欠です。フィットネスで培った「目標達成を支える経験」を土台としつつも、より深く個人の人生やメンタル面に寄り添う姿勢が必要だと実感しています。
一人ひとりの体調や状態を見ながら、その方に合った目標やスモールステップを一緒に考えていく役割を担っているのが、インクルードに求められるインストラクターだと思っています
だからこそ、私は「指導」ではなく、「運動支援」という姿勢を大切にしています。
ーー現場では、利用者さんの心身にどのようなアプローチをしているのでしょうか?
まず大切にしているのは、「興味を持ってもらうこと」です。
運動は最初から「頑張らなければいけないもの」と感じてしまう方もいるため、まずは小さな気づきから効果を実感し、興味に繋げてもらうことを意識しています。
例えば、梅田センターではストレッチポールのレクチャーを実施しています。心が疲れているときは体が内側に丸まり、筋肉が緊張して呼吸が浅くなることがあります。そこでストレッチポールを使って胸を開くことで、「呼吸がしやすくなった」「体が少し楽になった」という小さな変化を体感し、運動への関心を高めるきっかけにしています。
また、全利用者さんに対して「生活習慣日誌」を活用し、自分自身の心と身体の状態を振り返る機会も作っています。個々の体調や状況にあわせた行動選択を目指し、「気持ちは元気だけど体力が落ちているから今日は休もう」といったように、自分の状態を客観的に把握する力を身につけてもらうことを目的としています。
最終的には、利用者さん自身が自分の状態を理解し、無理なくセルフコントロールできるようになることを目指しています。
今後の展望とメッセージ
ーー今後、インクルードでチャレンジしていきたいことはありますか?
まずは、梅田センターで取り組んできた運動支援の成功事例を、他のセンターにも広げていきたいと考えています。
運動には、身体の健康だけでなく、気持ちの変化や生活リズムの改善につながる力があります。その価値をより多くの利用者さんに届けられるよう、支援の質を高めていきたいです。
また、社内における「インストラクター(運動を通した支援)」の専門性や役割を、さらに高めていきたいと思っています。現在は、見学に来られた方に対して、運動面からその方に合わせたアドバイスを行う取り組みであるパーソナル診断を実施しています。
単なるスタッフの一員ではなく、利用者さんの再出発を支える専門職として、インストラクターの価値を確立していきたいですね。
ーー最後に、フィットネス業界などから福祉業界への転職を考えている方へメッセージをお願いします!
フィットネス業界で培ってきた「運動を通じて人を健康にしたい」という想いは、福祉の現場でも大きく活かすことができます。
就労移行支援では、利用者さん一人ひとりと深く関わりながら、体調や気持ちの変化に寄り添い、再スタートを支援することができます。
できなかったことが少しずつできるようになる姿や、小さな変化・成長を間近で感じられることは、この仕事ならではの大きなやりがいだと思います。
私自身も、利用者さんの変化に関わる中で、自分の仕事の価値や可能性を改めて感じています。
これまでフィットネス業界で培ってきた経験や、人を支えたいという想いを、ぜひ新しい形で活かしてみてほしいと思います。
ありがとうございました!次回は、伊藤さんに聞く「インクルードの好きなところ10選」をお届けします。どうぞお楽しみに!
インクルードでは、これまでのキャリアを活かしながら、利用者さんの「心身の健康」と「社会復帰」を共に支える仲間を募集しています。少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひお気軽にエントリーしてください!