カメラマン、販売職、そして福祉。一見すると共通点が見えないキャリアを歩んできたのは、現在ニューロリワーク 横浜関内センターでサービス管理責任者を務める関口 和宏さん。しかし彼が語る「支援の在り方」を聞くと、すべての点がつながります。
本日は、数々の拠点立ち上げに携わってきた“開拓者”であり、利用者さんの真のニーズを捉えて寄り添う“伴走者”でもある関口さんにインタビューしました。
関口 和宏 / ニューロリワーク 横浜関内センター サービス管理責任者
フリーカメラマンとしてブライダル・学校・企業広報など幅広い撮影を経験し、デジタル移行期の技術革新の中でスキルを磨く。
その後、携帯電話・家電販売員として高い販売実績を上げ、傾聴力と提案力を培う。怪我をきっかけに福祉業界へ転身、株式会社ハローワールドに入社。2022年インクルード株式会社と合併。サービス管理責任者研修を修了し、2025年より西船橋・名古屋センターの立ち上げに参画。名古屋センターの基盤を築いた後、現在は横浜関内センターのサービス管理責任者として従事。
「福祉は未経験」でも、2時間の対話で確信した“ここで働きたい”という直感
――異業種から福祉の世界へ。きっかけは何だったのでしょうか?
実は、最初から「福祉業界で働こう!」と強く志していたわけではないんです。きっかけは本当に偶然で、たまたま見つけた求人広告でした。当時の私はカメラマンとして活動した後、怪我を機に販売の仕事に就いていましたが、「もっと深く、誰かの人生に貢献できる仕事はないか」と模索していた時期でもありました。
正直に言うと、応募するまでは「就労移行支援」という言葉すら知りませんでしたし、面接に向かう段階でも、そこが「福祉」の現場であるという認識は薄かったんです。「仕事として人をサポートできる業務があるんだな」という、非常にフラットで、ある種ライトな気持ちで一歩を踏み出しました。企業研究を深めるより先に、直感で行動に移してしまったという感じですね。
ただ、背景として、私の周りには昔からメンタル不調を抱える友人が多く、相談に乗ったり頼られたりする機会が多かったんです。彼らと接する中で、「自分なりに力になりたい一方で、専門知識のない自分が踏み込みすぎるのは危ういのではないか」という葛藤をずっと抱えていました。そんな時に、「未経験からでも、プロとしてメンタル不調を抱える方に深く関われる仕事がある」ということを知り、自分の中にあった「やりたかったこと」と「仕事」が、パズルのピースがハマるように重なったんです。
――では入社の決め手となったのは何でしたか?
それはもう、当時の代表である留岡さん(※2022年にインクルードと合併したハローワールドの創業者であり、その後インクルードの取締役に就任、2026年3月にご退任)との出会い、これに尽きます。
初めて会った時のことは今でも鮮明に覚えていますね。2時間にわたる面談だったのですが、それが単なる採用面接ではなく、私の人生観や仕事観を揺さぶるような、非常に濃密な対話の時間だったんです。
当時の私には、福祉の世界は「福祉の専門学部を出た人や、資格を持つプロだけが立ち入る場所」という固定観念がありました。でも、留岡さんは「専門性はもちろん大事だが、それ以上に大事なのは、目の前の人にどれだけ情熱を持って向き合えるか、そして自分自身がどれだけ変化し続けられるかだ」と言ったんです。
その言葉を聞いて、不安が希望に変わりました。プロとしての関わり方をここで一から学べる環境があること、そして留岡さんというリーダーの圧倒的な人徳と、福祉をアップデートしようとするビジョン。そのすべてに惹かれました。
「この人のもとで、この環境でなら、自分自身も自信を持って変化していける」という確信を、2時間の対話の末に得たんです。
――実際に「福祉」の現場に飛び込んでみて、ギャップはありましたか?
現場に入って驚いたのは、想像以上に「クリエイティブな仕事である」と感じました。
福祉という枠組みの中にあっても、私たちがやっていることは利用者さんの人生を再構築するプロデュース業のような側面もあります。
決まった正解を押し付けるのではなく、その人の可能性をどう引き出すか。そこにはカメラマンが最高の一枚を撮るために光を読み、構図を練るのと同じような、繊細で奥深い思考が必要とされるんです。
未経験だったからこそ、既存の福祉の常識に縛られずに「もっとこうすれば利用者さんは喜んでくれるんじゃないか」という視点を持ち続けられたのかもしれません。
一人の人生に寄り添う「伴走者」としての覚悟
――カメラマンや営業で磨いた「観察眼」は、支援にどう活かされていると感じますか?
カメラマンは、ファインダー越しに被写体の「一瞬の本質」を捉えようとします。営業や販売職は、お客様が口にしない「本当の悩み」を汲み取ろうとします。この「言語化されていないものを読み解く力」は、福祉の現場でこそ最も必要とされるスキルだと実感しています。
利用者さんの多くは、「自分が何をしたいのか」「何に困っているのか」を明確に言葉にできない状態にあります。例えば、「企業で働きたい」という言葉。それをそのまま受け取るだけでは不十分です。その裏には「誰かに必要とされたい」という孤独があるのかもしれないし、「自立して親を安心させたい」という願いがあるのかもしれない。
私は、利用者さんが発する「オノマトペ」に近いような感情的な言葉や、ふとした瞬間の表情の変化を見逃さないようにしています。その「モヤモヤ」の正体は何か。対話を通じて、本人すら気づいていなかった「真のニーズ」を射抜く。それができたとき、利用者さんの顔つきは劇的に変わります。自分の本当の願いを言語化できた瞬間、人は自走し始めるんです。
――支援における「伴走者」という考え方について詳しく教えてください。
インクルードの支援バリューにもある通り、支援員は、利用者さんの人生に寄り添いながら共に歩む「伴走者」だと捉えています。主役はあくまで利用者さんご本人です。私たち支援員が「こちらが正解です」と手を引いて導く存在ではありません。
大切なのは、ご本人が納得し、自らの意思で「この道を進む」と決めること。そのために私たちは選択肢を広げ、意思決定に必要な情報を提供します。そして、もし途中でつまずくことがあっても、「大丈夫ですよ」と隣で支え続ける。その覚悟こそが、「伴走者」としての役割だと考えています。
――では、これまで支援をする中で忘れられないエピソードはありますか?
以前、前職でのトラブルから深いトラウマを抱え、自信を喪失していた利用者さんがいらっしゃいました。
当初は「もう以前のような仕事は怖くてできない」と仰っていたのですが、面談を重ね、自己分析を深めていく中で、ご本人の中に「やっぱりあの業界が好きだ。もう一度、元の場所でリベンジしたい」という強い願いがあることが見えてきたんです。
それは非常に勇気のいる、厳しい選択でした。でも私は、その方の「やり直したい」という覚悟を全面的に支持しました。
そこからの変化は凄まじかったです。自分で課題を見つけ、活動量を増やし、最終的には見事に復帰されました。
最後に、その方が「関口さんがいたから、自分の声に嘘をつかずに済みました」と言ってくださったとき、この仕事をやっていて本当に良かったと心から思いましたね。本人が自分の足で立つ瞬間を一番近くで見守れる。これ以上の喜びはありません。
インクルード随一の「開拓者」として
――直近では西船橋センターや名古屋センターなど、多くの新規拠点立ち上げを任されてきましたね。
はい。気づけば「立ち上げ屋」のような役割を担うことが増えましたね(笑)。
新しい拠点をゼロから作るのは、確かにエネルギーのいる仕事です。でも、私は自分自身を「強いリーダーシップでグイグイ引っ張るタイプ」だとは思っていないんです。むしろ、どちらかといえば裏方気質。
そんな私が立ち上げ時に意識しているのは、「いかに自分が引っ張らないか」「土壌を整える」という考え方です。
支援員一人ひとりが持っている強みやポテンシャルを最大限に発揮できる環境さえ作れば、その拠点は自然と成長していく。私よりも事務処理が早い人もいれば、支援のスキルが卓越している人もいます。そうした優秀な支援員の良さを活かしながら、彼らが「ここでなら自分の力を120%発揮できる」と思えるような空気感を作ること。それが私の役割だと思っています。
――「チームで支援する」という文化をどのように浸透させているのでしょうか?
インクルードの強みは、上からの指示をただこなす「イエスマン」が少ないことだと思っています。
私は支援員には常に、「疑問を持つ力」を持ってほしいと伝えています。「これは本当に利用者さんのためになっているのか」「このやり方は適切なのか」そうした健全な違和感を、誰もが言葉にできる環境であることが重要です。
実際に私の所属するセンターでは、上層部の方針に対しても、全員で納得いくまで議論を重ねます。納得感のないまま進めることは、支援の質を下げてしまうと考えているからです。
全員が腹落ちした状態で関わることで、支援には自然と熱が宿ります。また、特定の担当者が一人で抱え込むのではなく、チーム全体で情報を共有し、多角的な視点から一人の利用者さんを支える体制が整っています。
――拠点立ち上げの際、特に苦労したことはありますか?
やはり、その土地ごとのニーズを汲み取ることでしょうか。
例えば名古屋を立ち上げた際は、関東とはまた違った文化や志向がありました。しかし、そこで活きたのが異業種で培った「観察眼」でした。
地域の特性を観察し、関わる支援員たちの声を聴き、何が求められているのかを点と線でつないでいく。
一見すると福祉とは無関係に見える「マーケティング」や「店舗運営」の視点が、拠点立ち上げという局面では大きな武器になりました。インクルードには、そうした「自分の武器を自由に試せる土壌」があるのが面白いところですね。
――今のインクルードで働くことの魅力、楽しさは何ですか?
一言で言えば「枠がないこと」です。
福祉という業界は、良くも悪くも制度に守られ、型にはまりがちな側面があります。でもインクルードは違います。「もっと良い支援ができるなら、AIを導入しよう」「利用者さんのためになるなら、こんな新しい講座をやってみよう」と、現場からの提案が次々と形になっていきます。
私自身、異業種から来たからこそ「これっておかしくないですか?」という視点を大切にしてきましたが、その疑問を一度も否定されたことはありません。むしろ、その違和感を面白がり、一緒に新しい価値を作ろうとしてくれる仲間が揃っています。
今の制度や枠組みの中で小さくまとまるのではなく、一人の人間の人生を豊かにするために、持てるすべてのアイデアを動員できる。この自由度は、他ではなかなか味わえない魅力だと思います。
――これから応募を考えている方にメッセージをお願いします。
「福祉の経験がないから」と躊躇している方にこそ、ぜひ飛び込んできてほしいです。
私がそうだったように、カメラマンでも、営業でも、エンジニアでも、あなたがこれまで歩んできた道のりで磨いてきた「視点」は、必ず誰かの救いになります。
むしろ、異業種での経験という「フィルター」を通すからこそ見える、新しい福祉の形があるはずです。大切なのは、知識の量ではなく、目の前の人の人生にどれだけ真剣に、そして自由に好奇心を持って向き合えるか。
どうすればその人の人生がより良くなるのか。それをチームで考え、対話を重ね、形にしていくプロセスは、何より知的で刺激的で、温かい仕事です。
ありがとうございました。
インクルード株式会社では、「ソーシャルインクルージョンを実現し、全ての人が活躍する社会を創る」というミッションの実現に向けて、ともに歩んでくれる仲間を募集しています。
この記事を通して、インクルードの事業や働き方に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本インタビューの内容は、2026年4月時点のものです。