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日本初!物流事務処理に特化した、AI-OCR WEBスキャナ「@YOMU」は、現場業務における帳票との格闘から誕生した【開発秘話】

株式会社シーネットが開発中のAI-OCR WEBスキャナ「@YOMU」は、手書きでもプリントでも、ハードコピーで流通する帳票の情報をデータ化するクラウドサービスです。

一向に減らない物流バックオフィスの事務処理にいち早く目を付け、canon電子と連携2020年2月にベータ版をリリースし、モニターを募集し読み取り精度を上げることに注力、昨年正式リリースを致しました。

書類の手入力作業を削減 物流向けAI-OCR Webスキャナ「@YOMU」 | 倉庫管理/WMS 株式会社シーネット(C_Net) (cross-docking.com)

折しも新型コロナウィルスの感染拡大による新常態の求めにより、物流現場にもDXの需要が一気に高まる中、順調ともいえる滑り出しに感じられますが、その背景には新たなビジネスモデル開拓に挑むプロジェクトメンバーの血のにじむような努力と、次世代型顧客サービス提供実現に賭ける揺るぎない覚悟がありました。

事業部長としてプロジェクトを率いる佐々木孝洋のメッセージを交えてお伝えします。

■AI-OCR @YOMUは、なぜ物流向けに特化したのか?

シーネットでは2018年9月、新たなデジタルテクノロジーを使って、WMSとは違った切り口で物流業界の課題解決を目指すことをテーマとして掲げ、新たな事業部【PF事業部】を立ち上げました。これまでWMS導入で見てきた数多くの現場から、ターゲットを倉庫事務所や、荷主企業の物流業務部門が日々行う事務処理に定め、事業部としてのミッションを「物流バックオフィス」に対する課題解決としたのです。

佐々木:

『ユーザーを中心としたヒアリングや現場の視察において、どの物流現場でも大量の紙と格闘する状況が残っていることに強い問題意識を抱きました。

最初は、この各種の紙を必要とする業務に対し、新たなサービス機能の開発やデータ交換の標準化を考えましたが、物流業界へ浸透させるためには構造的な課題を解決するのに大きな壁があると感じ、まずは紙ありきでの情報インプット業務に対するアプローチを考察しました。

ここで、注目が集まっていたAI-OCR技術に目をつけました。

AI-OCRとは、従来のOCR機能にAIによる機械学習の機能を搭載し、使えば使うほど帳票類の読み取り精度が高まるというプロダクトです。

機械的に読み取った情報をシステムに直接取り込めるため、従来事務作業者が手作業で入力・処理していた請求書や配送個口表などの事務処理を大幅に軽減できます。

2019年度に入り、複数のAI-OCRベンダーとの打ち合わせを経て、搭載エンジンを決めました。ここでこだわったのは、文字種は手書き/活字両方、文書形式は定型/非定型に対応できるエンジンであり、当時はアライズイノベーション社のAIReadのみがその複数の要件を全て満たしていたため、採用しました。

選定したエンジンを活用し、実運用で使っているサンプル提供ユーザーにも協力してもらい、初期開発を行いました。

このときに、物流特化型のサービスとするため、エンジンメーカーが売りにしているユーザーによるフォーマット定義を可能とする機能を無くし、固定された各項目に対してサービス運営側である我々がフォーマット定義をし、ユーザーは汎用化された業務画面でのオペレーションに集中できる機能を目指しました。』

開発から約1年で、ベータ版をリリース

国際物流展で華々しくデビューするも、コロナ禍により思わぬ状況に

シーネットでは、2020年2月に東京ビッグサイトで開催された国際物流総合展2020で、AI-OCR @YOMUのβ版を発表しました。

まさに新型コロナウイルスの感染拡大前夜となったこのイベントでは、【物流バックオフィス業務に特化したAI-OCR】というコンセプトに惹かれた多くの来場者が訪れ、アテンド担当者は食事をとる暇もなかったといいます。

佐々木:

『展示会では、大きな反響とまではいきませんが、具体的な課題を持った来場者が途絶えず、手応えを感じました。

しかしその直後に、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、潜在顧客となる企業においてこのような新技術を使ったシステムの検討が、軒並みスピード感を失ってしまいました。

そこで、視点を変えて2020年5月から、情報提供型のオンライセミナーを複数回開催しました。ここではAI-OCRの機能を全面に押し出すのではなく、あくまで物流事務現場で起こりそうな課題に対して、コロナ禍でもリモートワークで解決する方法を模索し、その中で有効なソリューションをAI-OCRともに複数紹介したのです。

その後、既存ユーザーやオンラインセミナーの受講者と、ベータ版のデモンストレーションを通して会話をしたり、実環境での検証をユーザー自身に実施してもらうなど、コミュニケーションを重ねることができました。

そして感染拡大が長引くうちに、社会的にウィズコロナにおける今後の働き方において、紙を使った業務を無くし情報をデータ化する手段に対する積極的な検討が、様々な側面で加速してきました。

その結果、物流現場におけるAI-OCRの機能として、下記が重要であることがわかり、開発メンバーは在宅勤務で機能強化を重ねることができました。

結果的にコロナで対外的に動けなかった時期が、製品の利便性・有用性を高めるために功を奏したのです。

・物流帳票では、数字の読み取りが重要であり、まず数字の精度を向上させる

・複写式伝票の取り扱いに対してトライアンドエラーを重ね、読み取り精度を大幅に向上させた

・多数のレイアウトに対しての運用方法を確立した。

また、下記機能を追加開発しました。

・読み取り後の編集画面における選択項目のハイライトと拡大表示

・編集項目の画面上でのアラート(背景色変更)

・アウトプットCSVのレイアウト変更機能

・アウトプットCSV内の項目編集機能

・読み取り時に誤読した不要な文字の削除

AI-OCRはRPAとセットで提案されることが多いのですが、我々はなるべくRPAを使わずに後続業務に使えるデータとするため、システム上でデータを柔軟にアウトプットできる手法を開発できたのが大きかったと考えています。』

KAKUTO(格闘)からKAIZEN(改善)へ―

社会的環境変化によるチャンスを捉え、システム導入の課題も解決

通常の業務系パッケージシステムは、各契約先ごとに個別カスタマイズを施し、徐々にその顧客のオリジナルシステムとなっていく特徴がありました。結果として、顧客の現場業務に最適化されたシステムとなる反面、ベースパッケージへの機能追加やバージョンアップは個別対応にならざるを得ないという課題も抱えていました。

それに対し、@YOMUは、可能な限り個別カスタマイズは行わず、汎用的な設定で各ユーザーの要望に応えようとしています。追加された機能やバージョンアップは、全てのユーザーが使えるようになるのが特徴です。

佐々木:

『事務作業は、庫内作業と異なり従事している絶対的な人数が少なく、費用対効果も少ない人件費とのトレードオフとして試算されることが多いのです。

また、倉庫事務は、パソコンやツールに対する職人的ノウハウを持ち、庫内の様々な情報の取り扱いに精通している人材が従事しているケースが多い。

そのため、ここに少しでも余剰を生み出すことで、現場改善のための新たな発想が生まれやすくなると考えています。

そんな状況の中で、ツールの導入における効果を素早くわかりやすく検証する必要があり、初期段階で高額な投資を必要とせず、まずできる範囲でどれだけの効果を出せるかを検証しながら導入できる価格プランとしました。

物流系帳票は、比較的各社にその形式が委ねられた状態で運用されているケースも多く、全ての帳票をシステム化対象とすると、なかなか導入までこぎつけることが難しいと思われました。帳票での運用を継続する限りは、印刷元システムの改修や送り元へのレイアウト固定のお願い等も視野に入れる必要があり、一筋縄ではいきません。まず、できそうな部分から実運用で利用した後、徐々に全体運用に載せていくことで、導入に対する負荷がかかりづらいサービスとすることを目指しました。』


物流バックオフィスの働き方改革に向けた今後の展望

シーネットでは10月から基幹製品であるクラウド型倉庫管理システムci.Himalayas/WMSへの入荷予定伝票を、荷主から受領するInvoice情報を手入力することで作成していた顧客物流企業へのサービス提供をスタートさせます。その他複数の企業への提供も順次スタートする予定です。

佐々木:

『全ての企業から、事前になるべく多くの複数の帳票を当社に提供していただき、実際に読み取り検証やトライアル利用を念入りに実施した後で本稼働にこぎつけるようにしていますが、実は初回のデモで導入を決めている企業が多々あります。

我々はその初回デモで感じてもらった期待を裏切らないように、検証やトライアル運用もサポートを継続しています。安心・安全なサービス導入をしていただくため、今後もこのスタイルは継続するつもりです。』

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