リバネスキャピタルは、「ヒューマンキャピタルの力で効果的な組織経営をデザインする」をミッションに掲げ、単なる投資活動にとどまらず、創業初期のベンチャー企業の経営機能そのものを担うことで事業成長を加速させています。
今回は、共に研究者としてのバックグラウンドを持ちながら、経営のプロとして数多のディープテックベンチャーを支えてきた共同代表の池上さんと髙橋さんにインタビュー。
リバネスキャピタルの創業ストーリーから事業への想い、そして、この環境だからこそ得られる経験について語っていただきました。
池上 昌弘 / 代表取締役社長
修士(技術経営)。東京工業大学生命理工学部卒業。2002年6月に株式会社リバネスを立ち上げ、取締役CFOに就任。リバネス創業期の財務・経理・労務などコーポレート業務を一手に引き受け、経営の土台構築に貢献しながら、これまでに70社以上の研究開発型ベンチャー企業のコーポレート・ファイナンス面を支援。2020年1月リバネスの子会社として株式会社リバネスキャピタルを会社分割により設立し、代表取締役社長に就任。
髙橋 修一郎 / 代表取締役
博士(生命科学)。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。株式会社リバネスの設立メンバー。リバネスの研究所を立ち上げ、研究支援・研究開発事業の基盤を構築した。これまでに「リバネス研究費」や未活用研究アイデアのプラットフォーム「L-RAD」など、独自のビジネスモデルを考案し、産業界・アカデミア・教育界を巻き込んだ事業を数多く主導している。2010年より株式会社リバネス代表取締役社長COO。2022年8月、株式会社リバネスキャピタルの代表取締役に就任。
研究室から始まった「巻き込まれ」創業。そして経営のプロフェッショナルへ
ーーお二人はリバネス本体の設立メンバーでもありますが、研究者からどのような経緯で経営の道へ進むことになったのでしょうか?
池上: 実は僕、最初は起業なんてこれっぽっちも考えていなかったんです(笑)。大学時代は研究室にこもって実験に明け暮れる、ごく普通の学生でした。きっかけは本当に偶然で。ある日、友人に「イベントやるからバイトしに来てよ」と誘われて行った講演会で、現リバネスグループCEOの丸に出会ったのが全ての始まりでした。
ーーそうだったんですね!そこからどう起業へと進んでいくのでしょうか?
池上: そこで丸の「科学技術で世界を変えるんだ」という圧倒的な情熱に、訳もわからず巻き込まれてしまって(笑)。気づけば一緒に会社を立ち上げることになっていました。
ただ、「会社は作ったけど細かい経営のことは誰も知らない」という状態で、走りながら考える毎日でした。その中で、「誰かがお金の管理や法務をちゃんとやらないと会社が潰れるぞ」と気づきまして。じゃあ自分が勉強も兼ねてやってみるか、と大学院を中退してバックオフィスの道に進んだのが、僕のキャリアの原点です。
ーー髙橋さんはどのような経緯でジョインしたんですか?
髙橋: 池上と似た流れです。僕は池上の大学時代の友人で、彼が「何か面白いことを始めるらしいぞ」というので、「じゃあ俺も混ぜてよ」と一緒にやり始めたのがきっかけです。
ただ、僕の根底には「研究成果を社会に役立てたい」という想いが強くありました。素晴らしい技術があっても、大学の中に閉じているだけでは食料問題などの課題は解決できません。それを事業として世の中に出していくためには、研究室を出て社会と接続しなければならない。その手段として、リバネスという場所が一番面白いと思ったんです。
ーーまさにゼロから手探りで会社を作ってこられたのですね。そこからさらに、「リバネスキャピタル」として分社化した理由も教えてください。
池上: 自分たちが創業期に苦労した経験が大きいです。研究者が社長になって会社を始めると、どうしても不慣れな資金繰りや書類作成に忙殺されてしまい、肝心の研究開発が止まってしまう。自分たちもぶつかった壁ですし、同じように苦しむベンチャー企業を何社も見てきました。「誰かがそばで経営の土台を支えてあげれば、このベンチャーはもっとうまくいくのに」。そう思う瞬間が数え切れないほどあったんです。
ーーその「もったいない」状況を解決したかったんですね。
池上: そうですね。僕がリバネスで培ってきた「経営の土台を作る経験」そのものをサービスとして提供し、研究者がフロント業務に集中できる環境を作ろうと思いました。僕のような「縁の下の力持ち」を増やし、チームとしてベンチャーに寄り添うために作ったのがリバネスキャピタルです。
髙橋: 加えて、リバネスグループ全体としての機能をより高度に分化させる狙いもありました。親会社のリバネスは「知識製造業」として、修士・博士だけの純粋な集団として尖り続ける必要があります。一方で、投資やバックオフィス支援といった「経営を支える機能」は、また別の専門性が求められる領域です。
これらを一つの組織に混ぜるのではなく、別会社として切り出して明確に役割を分ける。そうすることで、それぞれの専門性を突き詰め、グループ全体としてより高度な価値を提供できると考えたんです。
ーー実際、分社化によってどのような変化やメリットが生まれましたか?
池上: 一番大きかったのは、バックオフィス業務の価値が「言語化」され、「形式知化」されたことです。これまでは、フロントとバックのメンバーが同じオフィスで渾然一体となって働いているからなんとかなっていた部分がありました。
しかし、会社を分けたことで、僕たちが提供するサービスとは何か、それにどういう価値があるのかを明確に定義し、契約として結ぶ必要が出てきた。これにより、ブラックボックス化していた業務が可視化され、フロント側もバック側も、互いの仕事の重要性を再認識するきっかけになりました。
ーーバックオフィス業務の定義そのものが明確になったんですね。
髙橋:そうですね。これは非常に重要なポイントです。多くのベンチャーでは、経理や労務といった業務は「コスト」と見なされがちですし、担当者は疲弊していることが多い。でも、僕たちがそれをプロフェッショナルなサービスとして定義し直したことで、リバネスグループ内だけでなく、支援先のベンチャーに対しても「環境開発」という新しい価値として提供できるようになりました。
「環境開発」と「投資開発」。二つの機能で実現する、真の伴走支援
ーーリバネスキャピタルの事業は大きく「環境開発」と「投資開発」に分かれています。まず「環境開発」について、一般的なバックオフィス支援とは何が違うのでしょうか?
髙橋: 僕たちが提供するのは「テンプレート通りの正解」ではありません。ベンチャー企業は一社一社、フェーズも課題も全く異なります。
例えば、「最新のAI契約書管理システムを入れるべきか?」という相談に対して、ただ機能比較をして導入支援をするのが一般的なサービスだとすれば、僕たちは「今の会社のフェーズや組織文化において、それが本当に最優先事項なのか?」という問いから始めます。
ーー相手の状況に合わせた最適解を一緒に探すということですね。
髙橋: その通りです。正解がない中で、経営者と同じ目線に立って議論し、優先順位をつけ、時には泥臭く手を動かす。この「意思決定のプロセス」そのものを共に歩むことが、僕たちの言う「環境開発」であり「伴走」です。
池上: その一環として、僕たちは「CxO会」というコミュニティを運営しています。これは、CEO以外の、CTO、CFO、あるいは管理部長といった「No.2以下の経営幹部」が集まる場です。
彼ら・彼女らは普段、経営者のビジョンと現場の現実の板挟みになりながら、このポジションならではの孤独と戦っている。だからこそ、そんな方々が悩みを共有し、実務的な知見を交換し合える場を提供したいと考えているんです。
ーー確かに、No.2ならではの悩みは誰にも相談できなさそうですね...!
池上: そうなんです。実は僕自身、昔から「人に嫌われたくない」「誰かに必要とされたい」という承認欲求が結構強いタイプでして(笑)。だからこそ、目の前で困っている人がいると放っておけないし、その課題が解決されて相手が喜んでくれる瞬間に、何よりのやりがいを感じるんです。
CxO会は、悩みを解消し、個社ごとの課題解決を行うことはもちろん、業界全体のナレッジを蓄積していくことができる取り組みです。
ーーこのCxO会は池上さんや髙橋さんが運営しているんですか?
池上:実は僕たち経営陣ではなく、現場でベンチャー支援を行っている社員たちが主体となって回しています。日々の伴走の中で見つけた課題を、コミュニティという場で解決策に変えていく。決して簡単な仕事ではありませんが、「課題からサービスを作っていく」プロセス自体が、リバネスキャピタルの面白さだと思います。
ーー「投資開発」についてもお聞きしたいのですが、一般的なVC(ベンチャーキャピタル)との違いはありますか?
池上: 誤解を恐れずに言えば、僕たちはキャピタルゲイン(売却益)を第一の目的にはしていません。もちろん事業継続のためにリターンは必要ですが、それが最優先ではないんです。
ーー利益最優先ではない、とはどういうことでしょう?
池上: 僕たちの投資は、「仲間になるための要素」だと考えています。「この技術は面白い、絶対に世に出すべきだ」と思ったら、自分たちも一緒に汗をかくことで少しでも前に進むことを信じ、リスクを取って出資します。自分たちのお金を投じるということは、「あなたたちと一緒に、命やリソースを削ってでも走りますよ」という覚悟の表明なんです。頭の中では、投資したお金はもう「損益計算書の費用」に入れてしまってもいいくらいに思っています(笑)。
ーー「費用」として見てしまうとは、ものすごい覚悟ですね。
髙橋: その覚悟の現れの一つが、僕たちが試験的に導入している「無期限ファンド」という仕組みです。一般的なVCファンドには運用期限があり、期限が来れば株式を売却して現金化しなければなりません。
しかし、ディープテック、特に研究開発型のベンチャーは、技術が確立して社会実装されるまでに長い時間がかかります。「起業家の実現したい世界に共感できるものには全部に張ろう!」というくらいの気概で、500万円程度の小口出資を数多く行い、期限を設けずに長く応援し続ける。これは、既存の金融の論理では絶対にできない、リバネスキャピタルだからこそできる「新しい投資の形」だと思っています。
ーーそこまで徹底して伴走することで、実際にどのような成果が生まれているのでしょうか?印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
髙橋: 印象深い事例として、大学時代にお世話になった僕と池上の恩師が、独自の技術でベンチャーを立ち上げた際の支援があります。先生から相談を受けた僕たちは、まず投資開発の機能を使って創業初期のシードマネーを出資しました。
ーーその後はどう支援を進めたのですか?
髙橋: 会社が立ち上がると、今度は環境開発の部隊が入り込み、経理や労務の体制を一から整えました。さらに、僕たちが運営する金融機関との連携イベントに参加してもらい、そこから大手銀行からの融資やVCからの追加出資が決まっていったんです。 もしリバネスキャピタルが「投資だけ」あるいは「コンサルだけ」の会社だったら、ここまでの支援はできなかったはずです。
ーー資金も、組織作りも、ネットワークも、全て提供したのですね。
髙橋: はい。資金という血液を入れ、組織という骨格を作り、ネットワークという神経を繋ぐ。持てる全てのリソースを投入したからこそ、技術が社会へ出るための道筋を作ることができた。恩師の技術が事業として成長していく姿を目の当たりにした時、自分たちが積み上げてきた機能の全てが繋がり、大きな価値を生んだと実感しましたね!
求めているのは「専門性」よりも「好奇心」
ーー徹底的な伴走型支援ですが、高度な専門知識が必要なのでしょうか?
池上: 専門性はあるに越したことはありませんが、入社前の段階で完璧である必要は全くありません。実際、専門知識が全くない状態から飛び込んできたメンバーもいますし、インターンとして活躍している学生の中には、理系も文系もいます。
ーー未経験からでも挑戦できる環境なんですね!
池上: もちろんです。むしろ僕たちが大切にしているのは「学び好きであること」です。リバネスキャピタルにいれば、経理や労務といった実務スキルを一から学べるだけでなく、それらを組み合わせて「どう会社を動かすか」という経営視点まで身につけることができます。一つの職種に縛られず、自分の武器を増やしていきたいという好奇心さえあれば、入社してからいくらでも成長できる環境ですよ。
ーーバックオフィスのスキルはもちろん、経営に必要なスキルを幅広く習得できるのは珍しいですね。
池上: そうだと思います。自分のキャリアを「経理担当」などで限定してしまうのはもったいない。「将来は経営に関わってみたい」「誰かのサポートを通じて自分も成長したい」といった想いがある方なら、ここは最高の学び場になるはずです。
髙橋: 僕も同感です。リバネスキャピタルは「実務のプロ集団」であることも目指してはいますが、それは最初から高いスキルを持っている人だけを求めているわけではありません。むしろ、これまでの経験に固執せず、新しいことを素直に吸収できるかどうかが重要です。日々、情熱を持った起業家たちと接する中で、自分自身も刺激を受け、視座が引き上げられていく。そんな感覚を味わえるのが、この仕事の醍醐味ですから。
ーーベンチャーの熱量に触れることが、自身の成長にも繋がるのですね。
髙橋:はい。ここでの経験は、単なる事務処理能力を超えて、変化の激しい時代を生き抜くための「人間力」や「適応力」を養ってくれます。「自分にはまだ何もないけれど、何かを成し遂げたい」と思っている方こそ、ぜひ来てほしい。ここで実務を積み上げれば、将来どんなキャリアにも繋がる力が必ず身につきます。僕たちがその成長を全力でサポートしますので、安心して飛び込んできてください。
世界へ広がる「伴走」の輪。経営者の孤独を解消し、挑戦を加速させるインフラへ
ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。
髙橋: すでに始まっていますが、これからは間違いなく「世界のベンチャーに伴走すること」です。現在、70社以上の出資先のうち、約20社は東南アジアを中心とした海外のベンチャーです。日本で培った「環境開発」と「投資開発」のモデルは、海外でもそのまま通用します。
ーー海外でも「環境開発」のニーズはあるのでしょうか?
髙橋: もちろんです。国が違えば法律や税制は異なりますが、ベンチャー経営者が抱える悩み、組織作りの課題の本質は万国共通です。日本発の技術を世界へ、そして世界の技術を日本へ。そのクロスボーダーな展開を支える基盤として、僕たちの役割はますます大きくなっていくはずです。すでに社内には、シンガポール子会社のバックオフィス支援を行っていたり、英語を使って海外ベンチャーの対応をしたりするメンバーもいます。
ーー中長期で目指したい世界観はいかがでしょうか?
池上: 中長期的に目指しているのは、世界中に「経営者の良きパートナー」が溢れている状態を作ることです。誰かが「新しいことをやりたい」と声を上げた時、すぐに「じゃあ私も一緒にやるよ」と手を挙げる仲間が見つかる世界。リバネスキャピタルを、そんな人材を輩出できる場所にしたいと考えています。
ーー世界中に「経営者の良きパートナー」が溢れている状態ですか。
池上:はい。ここで経験を積んだメンバーが、ある時はベンチャーのCFOとして出向し、ある時は自ら事業を立ち上げ、またある時はリバネスキャピタルに戻って後進を育成する。そんな人材の流動性が生まれれば、挑戦することのハードルは劇的に下がるはずです。
経営者は孤独ですが、その孤独を分かち合い、背中を支えてくれる存在がいれば、人はもっと大胆に挑戦できる。私たちは、その「安心感」と「推進力」を社会実装するインフラになりたい。まだ道半ばですが、このビジョンに共感し、一緒に「伴走者」として世界を舞台に走ってくれる仲間との出会いを、心から楽しみにしています!