I&CO Tokyoは2020年7月に1周年を迎えました。アジア初のビジネス・インベンション・ファームとして、世の中の「NEXT」を創るべく日本に拠点を構えてから1年。共同代表の高宮と間澤へのインタビューを通して、ビジネスの成長や組織づくりのこれまでを振り返ります。
▼意思決定の原理原則
- そもそもお2人はなぜ I&CO Tokyoに?
間澤:前職の戦略コンサルファームは多くを学べる環境でしたが、立てた戦略の実行フェーズになると自分が関われないことに疑問を感じていました。その疑問を解決できる会社がないかと調べていたときに、「ビジネス・インベンション・ファーム」を標榜するI&COの存在を知ったんです。当時イノベーションを謳う企業はたくさんありましたが、インベンションの言葉を使っている企業は他になく、「これだ」と思ってレイさんにコンタクトを取りました。
高宮:僕はTokyoオフィス立ち上げの数年前から仕事でレイさんと組んでいて、I&COが日本に拠点を構えることを考え始めたときに「代表をやってもらえないか?」と打診を受けたのがきっかけです。新しいビジネスや、仕組みで世の中に良い影響を与えるという目線は一緒だったのですが、正直に言うと返事は1年以上保留していました。最終的に自分の中でスイッチとなったのが、業務を通じて経営者の方々と話をする中で、同じ目線でないと共感できないことや、分かり合えないことがあると感じる場面が増えたことです。僕自身の課題として、一社の代表という立場で経営に携わる必要性を感じ始めていました。その意識と、レイさんや間澤さんのタイミングが重なったことが、始まりですね。
間澤:2018年の秋だったと思います。レイさんが仲介役となってくれて、3人で初めて会って、いろいろな意見交換をするところから始まりました。
- 当初はどんなことを意識していたのでしょうか?
高宮:間澤さんも僕も、I&COがニューヨークで築き上げてきたものをそのまま移植するというより、I&COが掲げるビジョンを「日本やアジアに最適化して実現したい」という考えをもっていました。NYチームの思想や制度を下敷きにしながら、日本に合ったより良いカタチを作るためにどうすればいいのか。NYチームも現在進行形で新たなチャレンジを続けているので、ある意味、日本とニューヨークで競争していこう、というようなことを考えていました。
間澤:例えばMaximという行動指針のようなものがあるのですが、そういったものはニューヨークと同じですし、企業文化として大事にするものも共通にしています。とはいえ、全てをそのままもってきた方がいいかと言うと、それでは意味がないだろうな、と。いかに日本オリジナルの部分を作れるかということを考えていました。
企業文化を下敷きにしつつ、I&COが標榜する「ビジネス・インベンション・ファーム」を日本で具体化するために、どうすればいいのか。この部分に関しては、あえてゼロから考えています。お互い、会社をやるということに関しては初めて同士だったので、それぞれの領域を補い合いながら、組織をゼロから立ち上げるということを自然にスタートできました。
- この1年間でメンバーも増えました。急な組織の拡大には難しさもあったんじゃないでしょうか。
高宮:まず意識したのは、「ポジションや役割に関わらず、全員にチャンスがある組織」にしたいということです。ボードメンバーが代替わりしてもずっと続いていくような、長期にわたって事業を継続できる組織を志向していたので、レイさんや間澤さん、僕のような一部のメンバーがものすごく頑張る会社では長続きしないな、と。
そういった状態を見据えて、間澤さんと2人の時から、多くのメンバーを迎え入れられる土台を整えていきました。具体的には、意思決定や判断のルール、根拠を明確にしていくことを徹底しました。といっても、ルールをたくさん作ってガチガチに運用するということではなくて、むしろ細かいルールがなくても機能するように、判断を支える原理原則を早いうちから決めていきました。それをもとに採用や評価の基準、会社制度を設計しています。2人しかいないときから財務、法務、労務、採用方針などの土台を固めてきた甲斐あって、「来週から社員が30人になります」といわれてもやっていけるな、というところまでは来れた感覚はあります。
間澤:去年(2019年)の秋くらいに形が見えてきましたね。1年目を終えて社員が10人を超えた今、当初構想して必要だとリストアップした柱はある程度立ったと思います。組織づくりに関しては”オンスケジュール”です。中でも、組織づくりの要である採用にはかなり時間をかけました。面接はどのような結果であれ、社外の方と接する機会なので、I&COのことを理解していただくための活動という意識で最優先で取り組んでいました。
▼連携による相乗効果を狙う
高宮:採用は外部の人材会社と連携して取り組んでいて、僕たちと同じような熱量で採用活動を進めていただけるのでありがたく思っています。大切にしていることは、自分たちのビジョンや方針を、外部メンバーにもしっかりと理解していただくこと。採用計画の進展や変更がある度に会話する機会を設定し、現状や将来像について、変更がある場合はその意図や狙いについて、共有するようにしています。泥臭いのですが、会社の根幹となる部分なので、丁寧すぎるぐらいがちょうどいいのではという思いです。
設立当初はそもそも僕と間澤さんしか面接をする人間がいなかったこともありますが、採用プロセスの最初の段階で代表という立場の人が出ていくことも大事だと考えています。本当は今でも全てそうしたいくらいですが、組織が大きくなり実際にはそういうわけにいかないこともあるので、最初のステップは社外のプロフェッショナルに信頼して任せています。
- 全部自分たちでやろうとせず、周りの力を借りるという考え方も大切なんですね。
高宮:僕たちだけでうまくいったとは思っていません。最初の顧客獲得にしても、ニューヨークの実績がなければ、そもそも獲得できなかったと思っています。オフィスもPARTY社とシェアさせてもらうことで、日々の情報交換につながっていますし、協業するプロジェクトも多くあります。プロジェクト単位でご一緒する各分野のプロフェッショナルとの相乗効果で、より良いアウトプットを実現できています。
そういったアドバンテージがあるおかげで、先ほど話したような原理原則を決めるところに時間と頭を使えたのは、ありがたい状況でした。
間澤:とはいっても、法務や財務については、正直、苦労しました。これまでコンサルやファイナンスの業界を経験してある程度勘所はあったものの、私自身はその領域の専門家ではありませんから。外部の専門家の力を借りながら、何とかルールを整備することができました。その他の仕事でもそうですが、「自分たちの強み、フォーカスする領域はどこか」「いかにプロフェッショナルの力をうまくお借りするか」がポイントになると考えています。
高宮:たしかに間澤さんが大変そうでした。
間澤:直接の経験や知識がなくても「誰に、何を聞けばいいか」は把握できている、という状態が大事だと思っています。自分たちの方針が定まっていたことで、周りの力を借りつつもI&COの軸をもって、各領域を整備していくことができました。結果として、多くの相乗効果を得ることができたと思います。
高宮:この過程で、ぼくと間澤さんという専門領域の違う2人がいたのはすごく良かったと思います。たぶん僕1人でやっていたら、いまだに経費精算のルールもできていなかったと思うので(笑)お互い、相手の専門領域については最終的に分からないことがあるからこそ「間澤さんがそう言うならそうしよう」「高宮が言うならそうしよう」と思い切って任せることができました。それぞれの専門領域への尊敬が前提にあれば、共同代表制はいい方法だと思います。
(後編に続きます)