──起業直後、僕たちの事業計画はすべて吹き飛んだ。それでも、この町の「1つでも欠けてはならない灯火」を守るために。
2026年1月7日、僕たち「株式会社ぷ」は、北海道訓子府町(くんねっぷちょう)で産声を上げました。
「自ら稼ぎ、地域の未来を創る」民間主導のまちづくり会社として、緻密な事業計画書をつくり、パンフレットやWebサイトの準備も完了。「さあ、いよいよここからスタートだ!」と全員で拳を突き上げた、まさにその矢先のことでした。
一本の、急転直下の電話が飛び込んできたのです。
末広地区で、77年もの長きにわたり地域の暮らしを支え続けてきた小さな商店「末広ストアー」。そのお店を二人三脚で営まれてきたご夫婦の奥様が、突然、急逝されたのです。悲しみに暮れるなか、ご主人は「もう、2月でお店を閉めようと思う」と漏らされました。我々にもたらされたのは、その事実。そして町民の方からの
「株式会社ぷで、末広ストアーを、引き継ぐことはできないだろうか?」
との言葉でした。
葛藤:事業計画書には、1文字も書いていなかった。
正直に言えば、パニックでした。
起業したばかりの僕たちには、自分たちの拠点を立ち上げるだけで手一杯。商店の事業承継なんて、3ヶ月前につくった事業計画書には1文字も書かれていません。
すぐには決められませんでした。綺麗事だけでは、お店は経営できないからです。
でも、ただ「準備不足ですから」と断ってしまえば、77年続いた地域の灯火は2月で完全に消えてしまう。
僕たちは、すぐにスタッフを1名、末広ストアーへと派遣しました。
現場に入り、ご主人と話し合いを重ね、数字を鑑み、地域の人の顔を見て、何より「自分たちは何のためにこの町で会社を創ったのか」という原点に立ち返りました。
出た結論は、ひとつでした。
「やろう。僕たちが、このバトンを受け取ろう。」
すべての予定をひっくり返し、突如として始まった激動の事業承継。 2026年4月1日、末広ストアーは「株式会社ぷ」の手によって、無事に次のストーリーへと歩みを進めることになったのです 。
リアル:うまくいかないことだらけ。老朽化した店舗と、課題続出の毎日
「事業承継して、地域に感動が生まれました!」……なんて、キラキラしたハッピーエンドで終わるほど、地方の現実は甘くありません。
4月に引き継いでからというもの、僕たちの毎日は、課題とトラブルの連続です。
何十年も使われてきた店舗はあちこちが老朽化し、設備トラブルが続出。
想像以上に多様な業務をされていて、そして想像以上にディープな少数の顧客とのコミュニケーション。
長年地域の人たちの「好みの商品」や「買い物のリズム」を完璧に把握していた、亡き奥様の“職人技”のような運営を、昨日今日入った僕たちが一朝一夕でトレースできるわけがありません。
「前はあの商品が置いてあったのに」
「やり方が変わって、少し不便になった」
「もっと安かった」
最初の頃は、不慣れな点からお客様にご不便をおかけすることもありました 。スタッフも毎日、頭を抱え、泥にまみれ、それでも「どうすればいいか」を必死に考え、奮闘し続ける日々が今も続いています。
大義:学校給食、こども園、老人ホーム。この町のインフラを守る防衛戦
なぜ、僕たちはそこまでして、この小さな商店にこだわるのか。
それは、末広ストアーが単なる「地域の買い物スポット」ではなく、この町の生命線を握る「極めて重要な流通インフラ」だったからです。
実はこのお店は、町内の学校給食、こども園、そして老人ホームへの食材卸を担う、数少ない拠点の1つでした。
もし、ここが2月で突然閉鎖されていたら、子どもたちの給食や、高齢者の方々の食事が止まりかねない事態になっていたのです。「1つでも卸業者が欠ければ、町の機能が麻痺する」という、町役場側が抱えていた巨大な不安。
僕たちがこの事業を引き継いだことは、末広地区の買い物の場を守るだけでなく、訓子府町全体の行政・福祉・教育のインフラに穴があくのを、民間主導のスピード感で未然に防いだということを意味しています。
これこそが、僕たちの目指す「速さの民間×安心の行政」のハイブリッド体制の本質なのです。
結び:教科書通りの地方創生はいらない。修羅場を面白がれる「同志」へ
店名も「末広ストアー」のまま変えず、4月・5月はとにかく今まで通りの、地域に愛されたお店づくりを必死に守ってきました 。 そして今、お店をリアルに存続させるための土台がようやく整い、これからは新しい商品やサービスを追加していく、攻めのフェーズへと移行していきます。
と思った矢先!今度は超重要なインフラである冷蔵ケース類の室外機が故障・・・これまた事業計画を大幅修正することになりました。どこへ向かうのかどうなるのか、日々ジェットコースターのようなまちづくり会社のリアルです。
今回の募集で、僕たちが本気で求めているのは、スマートで綺麗な「地方創生」を夢見る人ではありません。
事業計画書通りにいかない修羅場が起きたとき、
「うわ、計画と違う!でも……これ、めちゃくちゃ面白くないですか!?」
と目が輝いてしまうような、圧倒的な当事者意識を持った「同志」です。
株式会社ぷには、突発的なピンチを最高の打席(チャンス)に変えて、泥臭く打って出られるフィールドが無限にあります。
こんな事業を面白がる方、うちに向いてますよ