【人財版令和の虎|51人目】「なめんな、このボケ!」人財版令和の虎で虎たちが買った悪役。主宰・榊󠄀原が明かす、剝き出しの覚悟を引き出した「対話の真価」
こんにちは。株式会社EMOLVA代表の榊󠄀原清一です。
私たちが運営に関わり、私自身が主宰を務めさせていただいているYouTube番組「人財版令和の虎」。日々、多くの情熱を持った若者やビジネスパーソンが、自身の人生をかけて虎たち(経営者陣)の前に立ち、社内ベンチャーや雇用を通じた挑戦への切符を掴もうと鎬を削っています。
今回、これまでお届けしてきた数々の熱い闘いの中でも、私にとってとりわけ印象深く、そして「人財版」という場の真髄を最も体現していた屈指の傑作回について、当時の緊迫した空気感を振り返りながらじっくりと解説したいと思います。
取り上げるのは、久代 達也(くしろ たつや)さん(43歳)が挑戦された、第51人目の回です。
この回の何がそれほどまでに傑作だったのか。
一言で言えば、それは志願者の圧倒的な「変貌っぷり」にあります。最初はどこか冷めていて、本気度が伝わらず、虎たちの激しい怒りを買った一人の男が、限定された時間のなかで「対話」を重ねるうちに、泥臭い本音を剥き出しにして変わっていった。その人間が変わる「瞬間」のドラマを、主宰の視点から紐解いていきます。
最初に:志願者のバックボーンと今回の挑戦の概要
まずは、初めてこの記事を読む方にも状況がすぐに伝わるよう、今回の志願者である久代さんの経歴や、この場に挑んだ前提条件を整理しておきましょう。
- 志願者: 久代 達也(くしろ たつや)さん(43歳)
- 居住地: 鳥取県米子市
- 最終学歴: 高校中退
- 現在の職業: 「スタンプDIYカンパニー」代表(空き家の片付け、リサイクル、内装・駐車場工事などを展開)
- 希望する雇用形態: 社内ベンチャー(虎の会社に所属し、新規事業として展開)
- 希望年収: 350万円
- あなたが思い描く未来の姿(ビジョン): 社内ベンチャーで町おこしがしたい
- 結果: リクルーティング不成立(ALL NOTHING)
実は、久代さんが「令和の虎」のスタジオに足を運ぶのは、これが初めてではありませんでした。本家である「令和の虎(資金調達版)」に挑戦してナッシングとなり、その後「リベンジ版」に挑むも再びナッシング。今回の「人財版令和の虎」へのエントリーは、まさに「3度目の正直」をかけた挑戦だったのです。
久代さんが掲げたプランは、地元である鳥取県米子市を舞台に、彼が愛してやまない「スケートボード」や「BMX」といったストリートカルチャーの大型イベントを企画し、県外や海外から人を呼び込むことで、地域経済を活性化させたいという「町おこし」の提案でした。
しかし、この「3回目」という前提が、冒頭からスタジオに重苦しい違和感をもたらすことになります。
【第1章】噛み合わない対話と、虎たちの間に走る強烈な違和感
スタジオの扉が開き、久代さんが登場した瞬間、私たちは以前との雰囲気の違いに気づきました。過去の出演時は、スケートボーダーらしい非常にラフなストリート系の服装だったのですが、面接官である虎たちに信頼してもらえるようにと、彼なりに外見を「ビジネス仕様」に変えてきた努力は伝わりました。
しかし、肝心の対話が始まった途端、司会席からも、そして1枠に座る私自身の目からも、拭いきれない違和感が膨らんでいきました。
久代さんは自身の事業内容や町おこしへの想いを語り始めますが、話があちこちに飛び、具体的に「何をして、どうやってマネタイズ(収益化)するのか」が全く見えてこないのです。さらに、彼の話し方や態度に、どこか他人事のような、あるいはこの場を「資金調達の単なる延長線」として捉えているような甘えが透けて見えました。
ここで、虎たちから本質を突く厳しい質問が相次ぎます。
本家やリベンジ版の「資金調達」と、この「人財版」の決定的な違いは何か。それは、単にお金を出して終わりではなく、「私たちの会社で雇用し、仲間として一緒に働く」という点にあります。企業の看板を背負い、お互いの人生を預け合う覚悟があるかどうかが問われる場なのです。
しかし、久代さんは「虎の社長たちの高い能力を借りたい」「イベントで自分たちのトラックを走らせて広告宣伝にしたい」といった、自分本位のメリットばかりを口にします。
これに対し、虎たちが一斉に動きました。 まず口火を切ったのは、2枠に座る株式会社ウェルネスランド代表の森脇 悠人社長です。森脇社長は、久代さんの曖昧な姿勢に対し、非常に鋭い口調でこう切り込みました。
「なんか久代さん、おちょくってます? いや、350万で社内ベンチャーで一緒に働きたいって、一緒に働くかどうか決めるのは僕らなんですよ」 —— 森脇 悠人(株式会社ウェルネスランド 代表取締役)
森脇社長のこの指摘は、人財版の核心を突いています。雇う側に対する敬意や、組織に貢献するという姿勢が、当時の久代さんからはまったく感じられなかったのです。
さらに、5枠の株式会社CBTソリューションズ代表・野口 功司社長も、過去の回を知っているからこその、深いもどかしさを滲ませながら苦言を呈しました。
「今回リベンジ版ダメだったから人財版に来たのが本当によくわかんなくて。あのもしかしたらやってることとか思いとかはすごいのかもしんないんだけど、なんかもう一緒にやりたいっていう気に全くなれないのね。何だろう、もうふざけてるようにしか見えないのよ。本気で来てんの?」 —— 野口 功司(株式会社CBTソリューションズ 代表取締役)
「ふざけているように見える」——これは非常に重い言葉です。決してふざけているつもりはなかったのでしょうが、ビジネスとしての論理的な準備のなさ、そして「雇われる側」としての覚悟の欠如が、百戦錬磨の経営者たちにはそう映ってしまったのです。
私も主宰として、そして1人の虎として、彼に問いかけました。 「明確に人財版だから来た、という理由を教えてほしい。雇用になるということは、虎の会社の看板を背負って1事業としてやっていくということ。ちょっと出資して失敗したら終わりという話ではない」と。
しかし、返ってくるのは「本家に出れないって言われたんで」という、滑り止めのような回答でした。スタジオの空気は、前編の時点で完全に冷え切ってしまったのです。
【第2章】限界の先で剥き出しになった、魂の叫びと変貌の瞬間
後編に入ると、スタジオの空気はさらに緊迫し、ほとんど「修羅場」と呼ぶにふさわしい激論へと発展していきました。
久代さんの提案するイベントの収支計画書を精査すると、驚くべきことに利益が「トントン(ゼロ)」になる計算になっていました。これでは、彼を雇用して毎月給与を支払い、リスクを背負う会社側に1円のメリットもありません。その点を突かれても、久代さんは「トントンだったら面白そうだからいいじゃないか」という、到底ビジネスとは思えない甘い認識を口にします。
言語化ができない、数字も作れていない、態度もどこか冷めている。 このままでは、ただのALL NOTHINGで終わる。それは主宰である私にとっても、彼を信じて席に座っている虎たちにとっても、本望ではありません。
人財版令和の虎は、単に志願者を打ち負かす場所ではない。「本気と本気がぶつかり合い、人の可能性を引き出す場所」であるはずです。
だからこそ、虎たちはあえて「悪役」を買って出ました。綺麗事の対話では引き出せない久代さんの「本音」を、感情のフィルターを引っぺがすことで、なんとか表に引き出そうとしたのです。
森脇社長が「感情を動かさないと僕らはこれ(お金・採用)を出せない。怒りを引き出すしかないじゃないですか。ボコボコに言いましょうかもっと!」と叫び、あえて「田舎やからそんな雰囲気なんすか」「あなたをバカにしています」と、最もプライドを逆なでするような言葉を投げかけました。
「打ち返してほしい」「悔しくないのか」という、虎たちからの必死のメッセージ。
それでもなお、久代さんは「馬鹿にされても何も思わない」と、のらりくらりとかわそうとします。その姿に、スタジオのフラストレーションは頂点に達しました。
そして、背負っているものの重さ、家族の存在にまで話が及んだその瞬間、ついに久代さんのなかで「何かが弾けた」のです。
のらりくらりとした態度から、ついに「剥き出しの久代達也」が顔を覗かせました。彼は声を震わせ、感情を爆発させるようにして、スタジオの虎たちに向かって頭を下げ、こう叫んだのです。
「いや本当、じゃあですね、もうあの、本当に皆さんのお力を借りて町おこしがしたいです!本当によろしくお願いします!もうあの、言葉足らずなんで、これくらいしかできなくて……本当にありがとうございます、代弁していただきたい、よろしくお願いします!!」 —— 久代 達也(志願者)
この瞬間、スタジオの空気がガラリと変わりました。 これまでいくら問いかけても出てこなかった、彼の「本物の熱量」と「泥臭い本音」が、スタジオ全体を包み込んだのです。
スマートなプレゼンでも、完璧な事業計画でもない。しかし、そこには間違いなく、一人の人間が虚飾を捨て去り、自らの無力さを認め、それでもなお「助けてくれ、やりたいんだ」と魂を叫ばせた、圧倒的な「変貌の瞬間」がありました。
これこそが、私がこの記事で最も強調したい、限られた時間のなかで人が変わる「瞬間」のドラマです。
【第3章】審判の時、そして虎たちが贈った「最後のメッセージ」
魂の叫びは見せた。しかし、ビジネスとしての現実は非情です。 熱意が伝わったことと、社内ベンチャーとして採用し、投資することとは、経営者として明確に切り離さなければなりません。
緊迫のなか、ファイナルジャッジメント(最終決断)の時間が訪れました。
結果は、冒頭に述べた通り、5人の虎全員が「採用しない」を選び、リクルーティング不成立(ALL NOTHING)となりました。
しかし、このナッシングの言い渡しは、過去のどの回よりも温かく、そして愛に満ちた、それぞれの虎からの「人生のフィードバック」の場となったのです。
1枠の私は、こうお伝えしました。 「人間性を否定する気はない。ただ、この1時間のなかでは、リベンジ版に落ちたからただ来たという風にしか見えなかった。一緒にやっていくことは考えられない」
続いて、2枠の岡田竜馬社長からは「43歳の発表としては幼稚すぎる。採用は考えられない」と厳しいビジネスの現実が突きつけられます。
そして3枠の森脇社長。彼は、劇中で最も激しい言葉を久代さんに投げかけ、怒りを引き出そうとしてくれた立役者です。その森脇社長が、ファイナルジャッジメントで放った言葉は、彼の熱い魂と、志願者への規格外の愛が詰まったものでした。
「ま、せっかくここに出てきてもらったんで、ここに出てきたことで人生が好転できればなと思って、えー強い言葉とかを投げかけたんですけども。最後もう一発強い言葉をかけるとするならば、『なめんな、このボケ』って感じっすわ。350万なんかこんなんでな、雇ったるわけへんわ、そんなんで。3回も出てきやがって!その先に座るんはな、命かけて座るねん、みんな!絶対に採用なしわ!」 —— 森脇 悠人(株式会社ウェルネスランド 代表取締役)
文字だけを見ると非常に過激に映るかもしれません。しかし、動画を見ていただければ分かりますが、森脇社長の目は、本当に久代さんの人生が変わることを願う、深い情熱に満ちていました。「命をかけてこの席に座れ」という、経営者からチャレンジャーへの、これ以上ない本気のメッセージだったのです。
また、4枠の株式会社やまもとくん代表・山本 雅俊社長は、違った視点から久代さんに寄り添いました。激しい非難の構図になってしまった現場を振り返り、優しく手を差し伸べたのです。
「いやなんか、引き出してあげられなくて申し訳ない気持ちと……(中略)結論、採用はできません。ただ、えーま、同じリフォームだとかDIYだとかやっているので、もし何か携わることがあれば、はい、壁打ちとかできますので頑張りましょう」 —— 山本 雅俊(株式会社やまもとくん 代表取締役)
そして最後に、5枠の野口社長が、久代さんという人間の「本質」を見事に捉えた言葉で、この審判を締めくくりました。
「人財版っていう番組の中で、人財版ってそのビジネスモデルとかじゃなくて『人』じゃないですか。うん、だからそういうような話になったら(森脇君を)止めるべきだって思ってこの枠に座って今日来たんすよ。なんですけど、野口の話も分かりながらも、止める気にならなかったです。それぐらい酷い。あなた、本当に人生かけてここに座ってねえよ、準備もしてきてねえし、本当幼児と変わんねえよ。ただ、あなたは本当は良い奴だと思ってるし、別に経営者としても優秀だから自分でやれるよ。雇われるような人間じゃねえ、どう見ても」 —— 野口 功司(株式会社CBTソリューションズ 代表取締役)
「あなたは雇われるような人間じゃない。自分でやれる人間だ」 この野口社長の言葉は、採用否決という結果でありながら、久代さんのこれまでの努力と、一人の男としてのプライドを承認するものでした。
最後に:榊󠄀原社長が語る「人財版令和の虎」の真価
久代達也さんの3度目の挑戦は、リクルーティング不成立という結末を迎えました。 番組の最後、司会者から「市議会議員に立候補してみたらどうか」という驚きの提案があり、久代さんが「しようかなと思ってるんですけどね」と答えてスタジオがドッと沸くという、彼の人徳を感じさせる不思議な幕引きとなりましたが、この回が残したインパクトは、私たちの中に今も深く刻まれています。
主宰として、私はこの回を通じて改めて「人財版令和の虎」の真価を確信しました。
本家である「令和の虎」が「事業の可能性や数字」に投資する場所であるならば、この「人財版」は徹底的に「人間の本質、覚悟、そして成長の可能性」に向き合う場所です。
今回の久代さんのように、最初はどれだけ格好をつけていても、準備が不足していても、虎たちという「本気の大人」と正面からぶつかり合うことで、人はわずか1時間の間に、自分の殻を破り、本音を剥き出しにして変貌することができる。
完璧な人間だけが素晴らしいのではない。不器用で、言葉足らずで、何度も失敗を繰り返してきた人間が、他者との真剣な対話によって「自分の足らなさ」を自覚し、本当の覚悟を宿す瞬間に立ち会えること。それこそが、この番組が持つ唯一無二の価値であり、私たちがこの場を創り続けている理由です。
「人財版令和の虎」は、これからも挑戦する志願者と、それを迎え撃つ企業が、互いの人生をかけて本気で向き合う場で在り続けます。
EMOLVAとしても、私個人としても、このような「本気の人間ドラマ」が生まれる組織でありたいですし、これからもそんな熱量を持った仲間たちと、新しい未来を創り上げていきたいと考えています。
久代さん、最高の闘いをありがとうございました。あなたのこれからの米子での挑戦を、私たちは心から応援しています。そして、この記事を読んでくださった皆さんのなかからも、人生をかけた本気の挑戦者が現れることを、スタジオでお待ちしています。