こんにちは、株式会社EMOLVA代表取締役の榊󠄀原 清一(さかきばら せいいち)です。
私たちが展開するSNSマーケティングの世界では、1本のショート動画、たった数秒のクリエイティブで世の中の認知やトレンドがガラリと変わる瞬間を日々目の当たりにします。しかし、それ以上に劇的で、それ以上に私の心を震わせる「人が変わる瞬間」があります。それこそが、私が現在主宰を務めさせていただいている「人財版 令和の虎」の舞台です。
今回は、これまでに配信された数々の回の中でも、私自身が「傑作の会」として今でも深く胸に刻んでいる、52人目の志願者・佐藤 千春(さとう ちはる)さんの回を振り返りたいと思います。
限られた時間の中で、虎たちとの容赦ない対話によって一人の人間が驚くべき変貌を遂げたあの「瞬間」の裏側を、私の視点から余すことなくお話ししましょう。
(1) 志願者・佐藤 千春さんに関する背景と「生活保護からの脱却」
まずは、佐藤 千春さんがどのような背景を持って私たちの前に現れたのか、当時の状況を丁寧に振り返ります。
佐藤さんは、出演当時、4年間にわたり生活保護を受給しながら2人のお子さん(当時10歳と9歳)を育てるシングルマザーでした。彼女が抱えていた最大の障壁は、ご自身の「聴覚障害(難聴)」です。
「聞こえが悪くて会話にならない」という恐怖心から、社会に出る一歩を踏み出せず、いつしか心に深いブレーキをかけてしまっていました。
過去4年間で挑戦した面接はわずか5回。
不採用が重なるうちに社会への恐怖が肥大化し、身内などの頼れるサポートもない過酷な環境下で、身動きが取れなくなっていたのです。
そんな彼女が「人財版 令和の虎」に応募した理由は、
「子供に我慢をさせたくない」
「子供の通いたいダンススクールの月謝を自分の力で払えるようになりたい」
という、母親としての切実な願いでした。
希望する雇用形態は「アルバイトからでも正社員からでも、とにかく生活保護を脱却して自立したい」というもの。
しかし、オーディション当初の彼女は、緊張で足がガタガタと震え、声も細く、お世辞にも「今すぐビジネスの最前線で活躍できる」と言い切れる状態ではありませんでした。
実力値やこれまでのスキルだけで測れば、厳しい評価をせざるを得ないスタートだったのです。
(2) 厳しい質問の応酬と、露呈する「基準値の低さ」
本番が始まり、虎たちの厳しい視線が佐藤さんに注がれます。
質疑応答が進む中で、まず議論の的になったのは、彼女の「4年間で5回しか求職活動をしていない」という過去の行動に対する整合性でした。
これだけ対面できちんと質疑応答ができているのに、なぜ4年間も生活保護から抜け出せなかったのか。私の目から見ても、求職活動の少なさと現在の受け答えのスムーズさの間に違和感があったため、私は思わずこう切り出しました。
「もし令和の虎っていうきっかけがなかったら、今まで通り生活保護での生活を続けちゃってたんじゃないですか?」 —— 榊󠄀原 清一
厳しい言葉だったかもしれません。
しかし、本気で社会復帰を目指すのであれば、過去の自分に対する「甘え」を自覚してもらう必要がありました。
佐藤さんは食い気味に「それは(生活保護を続けることは)ないと思ってます。ずっと社会復帰をしたかった」と答えましたが、まだ具体的に動けていなかった事実は否めません。
このやり取りを見ていた他の虎たちからも、ビジネス視点での現実的な指摘が飛び交います。特に、彼女の働くことへの「基準値」や「覚悟」に対して、議論は白熱していきました。
リフォーム業をはじめ多角的なグループ経営を行う株式会社やまもとくんの山本 正社長は、彼女の母親としての理想を受け止めつつも、プロの経営者として冷徹に、かつ愛を持ってこう問いかけました。
「母親としての理想ってのは分かったんですけど、社会人になった時の佐藤さんの理想像、今後目指したい姿ってどこにあります?」 —— 山本 雅俊(株式会社やまもとくん)
佐藤さんは「手に職とか、あと資格とかが欲しい」と答えましたが、具体的なビジョンはまだ模索中といった様子。さらに、社会の理不尽に立ち向かうための「ハングリー精神」や「怒りの感情」があるかという問いに対しても、佐藤さんの回答はどこかフワフワとしており、虎たちを完全に納得させるには至りませんでした。
(3) 激論を呼んだ「必死さの定義」と、虎たちの人間愛
中盤、議論はさらに深掘りされ、私と他の虎たちとの間で佐藤さんへの評価を巡る「激論」へと発展します。
私は自身の経験や、これまでのビジネスの基準から、生活保護を本気で抜け出したいのであれば、もっと泥臭い「必死さ」を行動で示すべきではないかと感じていました。
本当に困窮しているのであれば毎日ハローワークに通い詰めるような切迫感があるはずだ、と。
その違和感から、私はつい佐藤さんへ「必死さがそこまで伝わってこない」という意味合いの質問を重ねてしまいました。
この私のスタンスに対して、真っ向から異議を唱えたのが、女性専用24時間ジム「アマゾネス」を展開する株式会社ウェルネスランドの森脇 悠人社長と、山本社長でした。
森脇社長は、佐藤さんが難聴というハンディキャップを抱え、さらに重いうつ病の時期を乗り越えてこの場に立っている背景を汲み取り、私にこう諭しました。
「うつ病を患らってる方に対して、その同じシングルマザーという立ち位置ではあるけれども、なんでそれだけ頑張れなかったのはちょっとお門違いかなと思います」 —— 森脇 悠人(株式会社ウェルネスランド)
山本社長もまた、森脇社長の言葉に強く深く頷きながら、基準値の議論に対して、この「人財版 令和の虎」が向き合うべき本当の対象について持論を展開してくれました。
「普通に採用だったら50点以上じゃないと取らないんだけど、もう25点なわけよ。で、それを本人は認めていて、で、そういう形を応援してくれる人っていう基準で見ないと」 —— 山本 雅俊(株式会社山本君)
山本社長はさらに、佐藤さんが社会のお荷物でいたくないという自尊心を保つために、この数年間、自主的にゴミ拾い活動を続けて社会との関わりを持とうとしていた事実を高く評価しました。
この時、モニターを見ていた私はハッとさせられました。
自分の物差しだけで「必死さ」を定義しようとしていたのではないか、と。
虎たちの言葉は、佐藤さんだけでなく、主宰である私自身の視野をも広げてくれるものでした。
しかし、ビジネスの場は甘くありません。
森脇社長は、佐藤さんの覚悟の度合いを測るため、あえて非常に強い表現を使って彼女の目の色を変えにいきました。
「腐ったみかん1人いたら、お店の生態系が完璧に崩れるんですよ。腐ったみかん入れたくないんですよ。すごい強い言葉使ってるの分かってます。そうじゃないかのジャッジをしたいです」 —— 森脇 悠人(株式会社ウェルネスランド)
「腐ったみかん」——。
強烈なワードが飛び出した瞬間、スタジオの空気は凍りつきました。普通なら萎縮して泣き崩れてもおかしくない場面です。
しかし、この極限のストレスが、佐藤さんの中に眠っていた「本当の覚悟」を呼び覚ますトリガーとなったのです。
(4) 覚悟の覚醒——志願者が見せた驚異の「変貌っぷり」と、最終決戦の結末
森脇社長の「腐ったみかん」という言葉を受けた瞬間、佐藤さんの表情が明らかに変わりました。それまでの怯えたような、自信のなさそうなシングルマザーの顔から、一人の「自立を誓った労働者」の顔へと、一瞬にして変貌を遂げたのです。
佐藤さんは真っ直ぐに虎たちを見据え、力強い声でこう言い放ちました。
「長く続けるつもりで今こう来てます。やめずに頑張る、甘えから脱却するっていう気持ちを込めてこの収録に来てます。収録をすることによって、自分の発言も保存されるので、それを証明にしたいと思ってます」 —— 佐藤 千春(志願者)
この言葉を聞いた瞬間、私は鳥肌が立ちました。「自分の発言がYouTubeに永久に保存されること」を、退路を断つための「証明(人質)」にすると自ら宣言したのです。
これほどの覚悟を、誰が予想できたでしょうか。
最初は足が震えていた女性が、虎たちとの魂のノックを経て、自らの意志で殻を破った「決定的な瞬間」でした。
この佐藤さんの驚異的な変貌っぷりは、スタジオにいたすべての虎たちの心を動かしました。そして、運命のファイナルジャッジメントへと進みます。
私、榊󠄀原の判断は「採用しない」。
これは彼女の人間性を否定したわけではなく、当時のEMOLVAの体制(SNSマーケティング・完全リモート主体の環境)では、彼女の難聴への十分な受け入れサポートが難しいという、企業側のリソースの問題による苦渋の決断でした。続く2枠の岡田社長も同様の理由で不採用としました。
しかし、ここからドラマが始まります。 3枠の森脇社長の決断は、見事な「採用」。
希望金額プラスアルファを提示し、「うちの会社には食材卸の事業やプロテイン事業など、彼女の力を活かせる場所がいくらでもある。一緒に女性の輝く未来を作りたい」と熱く語りました。
さらに、4枠の山本社長も「採用」を表明。
「すごくガッツがある方なんだなっていうのを感じたので、もしよろしければよろしくお願いします」 —— 山本 正(株式会社やまもとくん)
時給1,250円のアルバイトからスタートし、リフォーム業に付随するポスティングや事務作業など、本人の居住地に合わせた柔軟なポジションを用意すると提案したのです。
そして最後に、IT企業の経営者である5枠の野口社長が、この会のすべてを集約するような、涙ながらの素晴らしい名言を残してくれました。
野口社長の会社もIT専門であるため、パソコン経験のない佐藤さんを採用するのは本来極めて困難です。それでも野口社長は葛藤し、ホワイトボードに「採用」と書いた上で、こう叫んだのです。
「彼女を応援できなくて人財じゃねえだろうという中で、僕は採用するの実は書いたんですけど、森脇君、山本君、ありがとう。お前らの方がいいと思う」 —— 野口()
野口社長は、佐藤さんの未来を一番に考え、より適した環境を持つ森脇社長と山本社長に彼女を託すために、涙を流しながら最終的に「採用しない」へと変更しました。これはまさに、志願者を想うからこその「究極の不採用」であり、虎たちの深い人間愛が溢れ出た瞬間でした。
最終的に、佐藤さんは熱烈なラブコールを送り続け、外見のギャップや従業員への想いに惹かれたという理由で、森脇社長の株式会社ウェルネスランドへの入社を選択。見事、リクルーティングが成立しました。
(5) 榊󠄀原社長が語る「人財版 令和の虎」の真価
モニターの裏で、笑顔で現在の仕事について山本社長と語り合う佐藤さんの姿を見ながら、私は改めてこの会が持っていた熱量と、主宰として関わるこの番組の「真価」を噛み締めています。
私たちの番組は、単なる「求人マッチングプラットフォーム」ではありません。履歴書に書かれたスペックや過去の経歴、現在のスキルだけで人間を品定めする場所ではないのです。
もし、佐藤さんが通常の書類選考や数十分の一般的な面接を受けていたら、失礼ながら「難聴」「職歴のブランク」「未経験」というフィルターによって、落とされてしまっていた可能性は高いでしょう。しかし、「人財版 令和の虎」という、剥き出しの魂と魂がぶつかり合う空間だからこそ、彼女の中に眠っていた「本物のガッツ」と「退路を断つ覚悟」が引き出され、虎たちの心を動かしました。
「腐ったみかん」という厳しい言葉に怯むことなく、「動画に保存されることを自分の覚悟の証明にする」と言い切ったあの瞬間。人は、信じてくれる他者(虎)と出会い、本気で向き合わされた時、一瞬にして顔つきが変わり、生まれ変わることができる。それこそが、この番組が世の中に存在する最大の意義であり、真価なのだと私は確信しています。
「彼女を応援できずして人財版は名乗れない」
まさに野口社長の言葉通り、私たちはこれからも、ビジネスとしての厳しさを担保しながらも、一人の人間の可能性をトコトン信じ抜き、人生を変える「瞬間」を創り出し続けていきます。
佐藤さんのように、現状に苦しみながらも「変わりたい」と本気で願うすべての人財の挑戦を、私たちはこれからも全力で受け止めていきます。次は、あなたの覚悟を、このステージで魅せてください。