「人財版令和の虎」主宰の榊󠄀原清一です。
「人財版令和の虎」は、志願者が自らのキャリアを切り開くために、虎たる経営者たちに挑む真剣勝負の場です。
この番組の核心は、決して「魔法」ではありません。自分の人生を変えたいと願う志願者が、現実に待ち受ける高い壁と、自身の内なる課題に気づき、そして乗り越えようと「変わる瞬間」を捉えることにあります。
今回、その「変わる瞬間」が凝縮された、まさに傑作とも言える回がありました。
山口大介さんの挑戦です。
(前編:http://www.youtube.com/watch?v=ImyFYKvg1Kc)
(後編:http://www.youtube.com/watch?v=TbW-6zxFlTQ)
山口さんが見せた、現在の環境からキャリアアップを目指すひたむきな姿と、そこで待ち受けていた厳しい現実。そして、その先の覚悟が未来を切り開くまでの軌跡を、主宰である私の視点から解説させていただきます。
(1) 山口 大介さんについて
志願者として現れた山口大介さん(48歳)は、非常に特異な経歴をお持ちでした。
彼は、これまでゲーム開発の企画・ディレクションといったデジタルエンタメ業界での実績を積んできた人物です。
10年前に独立・起業し、一時は自分の会社を持っていましたが、新規事業(動物将棋アプリ)での大失敗を経験。
多額の借金を返済したものの、現在は「ほぼ開店休業状態」 となり、フリーターとして生計を立てているという現状でした。
虎たちの前に立った彼は、これまでの経験を活かしつつも、
一歩引いた「企業内お助け番」 として虎の会社に貢献したいと宣言しました。
- 年齢: 48歳
- 経歴: ゲーム開発企画・ディレクションなどデジタルエンタメ業界での実績。後に独立・起業したが、事業に失敗。
- 応募理由: 48歳という年齢で再度チャレンジし、過去の経験から「個性的なトップの2番手、3番手という立場で働くのが一番向いている」 と考えたため。
- 希望雇用形態: パート・アルバイト
- 希望年収: 240万円
特に驚きだったのは、その希望年収です。
経験豊富な48歳という経歴からすれば、低すぎると言わざるを得ません。
この設定は、「採用ボードを確実に取ることを一番重視」 し、ハードルを下げるための戦略だという説明でした。
しかし、このアンバランスさこそが、彼の持つ本質的な課題を炙り出すことになります。
(2) 現状打破への挑戦:現状の課題など
山口さんの抱える課題は、「現状の実力と自己認識のギャップ」でした。
彼は、自身の強みとして「分析を基準とした課題発見と解決」 の能力を挙げ、新規事業の失敗は「マネタイズのミス」 だったと分析していました。
しかし、私たちはすぐに疑問を投げかけました。
まず、私から
「本来、その能力(企業内お助け番)こそ専門知識ではなく組織構築やフロー作りといったディレクション能力が必要であり、年収は上がるべき」ではないか」
と指摘しました。
彼が設定した240万円という金額は、実績に見合わないどころか、彼の能力自体を疑わせる要因になってしまったのです。
また、アナアドバイザーズ株式会社代表の荒木杏奈社長は、その姿勢に対し
「ご自身に軸がないな」
と厳しく問います。
何でもやります、会社の課題を解決します、と言いながら、自分の価値を最低限の金額に設定している姿は、「本当に自信がないのか? それとも俺に値をつけてみろなのか?」 と、その真意を疑わせました。
そして、議論は彼のプライベートにまで踏み込みます。
Imperial Nexus株式会社の上野 あき社長が、提出資料にあった政治活動の経歴に触れ、離婚と子供の連れ去り問題について質問しました。
山口さんは、当初「DV的なことはしていない」 と主張しながらも、新庄社長の問いに対し、家庭の事情で負担が大きくなった際に「わがままなことを妻に言われた時にちょっと癇癪を起こしてしまい、1回自分から離婚だと言ったことはあります」 と認めました。
この「癇癪」の告白は、新庄社長から「DVしてないってさっき言いませんでした」 と鋭く指摘され、彼の自己認識の甘さと、問題を外に転嫁しがちな「多責」の姿勢を露呈することになったのです。
(3) 虎たちの「問い」が引き出す本質
虎たちの「問い」は、志願者が目を背けてきた「本質」を容赦なく引き出します。
特に厳しかったのは、彼が抱える「多責の姿勢」でした。離婚の原因を「妻に突然出て行かれたこと」、政治活動を「運営に勧められたから資料を追加した」 という姿勢は、終始「他人のせい」と受け取られかねない言動に繋がっていました。
CBTソリューションズ代表の野口功司社長は、政治活動自体は評価しつつも、
「頂いた文面からはあまり伝わってきてなくて、自分が連れ去られて苦しかったからこの活動をしてましたっていう話にしか多分文章からは受け取られなかった」
と、俯瞰して自己を見せる力の弱さを指摘しました。
私は、彼のキャリアの不整合性を突きました。
「なぜ、専門知識を持つゲーム業界に戻らないのですか?」 という問いに、彼は「自信がない」 からと答えます。
さらに、彼の経歴書にある「社長の直下」というポジションについても、派遣社員としての入社という背景を考慮し、本当にその実績が本物なのか、厳しく問い詰めました。
これらの鋭い問いかけは、山口さん自身が設定した「分析力」という強みが、自分の人生においては発揮されていなかったという「現実」を突きつけるものだったのです。
(4) 「変わる瞬間」:覚悟が未来を切り開く
議論の終盤、山口さんはついに自身の弱さを認めます。
「私自身が(中略)全然そういった(分析)部分は強くなかったです」
と自ら修正した上で、
真の強みは「組織を良くするため、自分から率先して前に進めていける能力」であると再定義しました。それは、「やりたがらないっていうことでも率先してやる」 という、泥臭い仕事も厭わない覚悟です。
しかし、4人の虎の最終決断は、いずれも「採用しない」でした。
私からの決断は、「採用しない。して欲しいことは、まずもう一度自分自身で考えてもらいたいです」 という、採用を先送りにするもの。アナ社長、新庄社長からも不採用が告げられました。
誰もが山口さんの持つポテンシャルを感じながらも、この場での「軸のなさ」と「自己認識の甘さ」が、経営者として採用の決断を躊躇させたのです。
そんな中、株式会社山本君 代表の山本 雅俊社長が立ち上がります。
「なんか悔しいですね。(中略)なので見返してやりましょう」
経営者として正解かどうかわからない。しかし「人としてかっこいい」 とも評価された山本社長のオファーは、山口さんの現在の能力ではなく、「ここから変わろうとする覚悟」に投資するものでした。
「まずはそこからのスタートということですね」 という条件付きのオファーに対し、山口さんは目を潤ませながら「山本さんお願いします」 と応じ、リクルーティング成立となりました。
彼がオファーを受けた直後の心境として語った、「やっぱし最後の山本社長から頂いたみんな見返してやろうっていうのにちょっと僕も同じようにちょっと目が緩みそうになりました」 という言葉は、彼が「他責」から脱却し、「自責」と「未来への挑戦」へと覚悟を決めた、まさに「変わる瞬間」を物語っていると言えるでしょう。
(5)「人財版令和の虎」の真価
山口さんの挑戦を通じて、改めて「人財版令和の虎」の持つ真価が浮き彫りになりました。
この番組は、単なる面接やオーディションの場ではありません。人生の岐路に立つ人間が、限られた時間の中で、自分の人生を丸裸にされ、そして新たな一歩を踏み出すための「劇薬」のような場です。
志願者は、虎たちの厳しい質問によって、自分自身では気づいていなかった「現実」と向き合わされます。山口さんの場合も、ビジネスの失敗分析、希望年収の妥当性、そして離婚の原因という、キャリアと人生の最もデリケートな部分を問われました。
人財版令和の虎は魔法ではありません。
しかし、自分の人生を切り開くために努力する「ひたむきな姿」と「覚悟」を見せた人間には、必ずチャンスが訪れます。山口さんが最後に得たリクルーティング成立は、彼の48年間のキャリアへの評価というより、**「変わろうと決意した瞬間のエネルギー」**に対する投資だったと、私は考えています。
採用に至らなかった私自身の判断は、「まだその時点ではない」 という、もう一度、自分と徹底的に向き合うことを促すためのものでした。しかし、結果として山本社長という熱い虎の力添えを得て、彼は次のステージへ進むことができました。
「人財版令和の虎」は、これからも、未来を切り開こうとする志願者と、ポテンシャルに賭ける虎たちの真剣勝負の場であり続けます。
もし、あなたが今、現状打破を目指し、キャリアアップのために熱い想いを抱えているのなら、ぜひ一度、この「真価」に触れてみてください。