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トヨタの金融DXに挑む部長が語る。名古屋・東京2拠点で推進する1400万会員に向けたデジタル化の裏側

トヨタグループにおいて日本国内の金融事業を担うトヨタファイナンス。

1988年の創業以来、自動車クレジットやクレジットカードなどの金融・決済事業を行ってきましたが「100年に一度の大変革の時代」を迎えた自動車業界の影響を受けて、金融DXの促進、BtoCサービスの拡充を加速しています。

2018年にはCX本部やデジタル推進部などの顧客接点のデジタル化の促進を行う部門立ち上げを行って以来、Web・アプリ人材の採用をスタート。ゼネラリスト型の組織からスペシャリスト型の組織にシフトするなど、「CX」「UX」「Web」をキーワードとした組織変革がはじまりました。

今回は、DXを担うデジタル推進部長のY.Tさんに部門創設の経緯や苦労、今後挑戦していきたいテーマについて聞きました。

【プロフィール】
Y.Tさん
IT本部 DX推進部 部長
名古屋本社配属・愛知県在住

2000年トヨタファイナンスに新卒入社。カスタマーセンター部門での受電・運営企画業務、事務IT部門での業務設計やPMO業務などを担当。2018年8月CX本部デジタル推進Gのグループマネージャーに就任し、2022年に現職。名古屋で暮らしながらも、普段は名古屋と東京を行き来しながら2拠点のチーム運営を行っている。

創業30年目の「ゲームチェンジ」に乗り遅れてはいけない。

ーーこれまでの経歴について教えてください。

Y.T:2000年にトヨタファイナンスに新卒で入社して、最初はカスタマーセンターに配属されました。受電対応をはじめ、運営管理業務としてマニュアル整備やオペレーションの構築を行っていました。

2008年から2012年に事務IT部門に配属され、、センター業務に関わる業務運用設計・システム化要件検討、カスタマーサービスセンターの新拠点立ち上げなどを担当し、2013年以降はシステム開発部門の企画やPMOを担当、オペレーションのデジタル化の企画・推進を担当しました。

2018年1月には、デジタル推進部の前身となるデジタルコミュニケーション企画室を高野さん(現CX本部長・取締役)が立ち上げられ、私のチームも2018年8月に部門ごと移管され、現在の部署の前進となる「デジタル推進G」ができました。

当初はカスタマーサービスセンターのオペレーションのデジタル化を目的にしておりましたが、その後マーケティング部門と一緒になり、Web/アプリなどのコミュニケーションチャネルを構築・改善する部門になりました。

ーー入社以来一貫して「業務効率化」というテーマに携わっている印象です。いきなりデジタル部門へのアサインされて戸惑いはありませんでしたか?

Y.T:もともと「業務のデジタルシフト」というのは過去も検討していました。カスタマーセンター業務の効率化を目指すと「Web化」「セルフ完結」というのは延長線上にある仕事という印象でした。

ーーとはいえ「業務効率化」と「ユーザーファースト」の考え方は必ずしも一致しないこともあると思いますが、当時から抵抗がなかったのでしょうか。

Y.T:抵抗感はなかったですね。素直に「なるほど」と思いました。従来のトヨタファイナンスの事業はいわば「BtoBtoC」で、自動車販売店を通じて金融商品を提供する会社でした。カスタマーセンターではお客さまとのやりとりはもちろんありますが、システムの提供先は販売店が多く、BtoBの目線も強かった。

ですが、DX促進を目指して支援していただいたコンサルティング会社から、Webサイトは酷評を受けてしまって。(苦笑)

業務を楽にしたり、削減効果を上げることを第一に考えてきましたが、Web/アプリはお客さまが気もちよく使えない限りは利用率は増えず、効果にもつながらない。

これまで会社で取り組んでいない領域だったので新しいことができるし、もっと大きく効果を出すチャンスだと感じました。

会社が新しいことに大きく舵を切る機会はそうそうないと思いますし、会社の未来を考えると、そこに力を入れていくことに納得感があったし、世の中の流れもありました。乗り遅れてはいけないなと。

過去の成功体験はすべて捨てなければいけない。プレッシャーと戦いながら推進するデジタル化

ーーデジタル推進部の現在の役割、取り組みについて教えてください。

Y.T:デジタル推進部自体の役割は、お客さまとのデジタルコミュニケーションを牽引することです。Web / アプリ / メールなど。新規プロダクトの企画・開発もしますし、既存プロダクトの改善・グロースもしています。

名古屋が主にWeb/アプリの新規開発やリニューアルなど、企画・開発業務を行っています。東京は主に運用やグロース業務を行っています。

とはいえ明確にチームを分けているわけではなく、出張もありますし、毎日リモートワークが基本なので、ZoomやTeamsのMTGが中心。誰が東京で誰が名古屋かわからないくらい混ざり合って一つのチームで業務を行っているというのが実態です。

ーー実際にどのようなプロジェクトを行っているか教えてもらえますか?

Y.T:2020年から2022年では新規企画やリニューアルが多く、「TS CUBIC WEBサイト」「TS CUBICアプリ」「LEXUS FINANCIAL SERVICES」などのリニューアルを行っています。開発規模の大きなプロジェクトが多く苦労はしましたが、2018年の発足から徐々に中途社員も増え、体制が安定してきたおかげで、なんとか無事リリースをすることができました。

(「TS CUBIC WEBサイト」と「TS CUBICアプリ」)

(「LEXUS FINANCIAL SERVICES」)

今後は会員向けWebサイトのリニューアルも控えていますが、そこで既存サイトのリニューアルは一区切りする予定です。今後はリニューアルしたサイトを改善しながら、収益性向上のための旅行サイト「TS CUBIC TRAVEL」やECサイトへの送客、カードや自動車クレジットの収益改善施策につなげるなど、制作寄りだった軸足をマーケティング寄りに動かしていきます。


TS CUBIC TRAVEL

これまでの取り組みは基盤づくりだったので、パーソナライズやABテストを行うことができるヘッドレスCMS「Sitecore」の導入や、データ分析ツール「Google Analytics」や「Firebase」の導入、MAやCDPの導入などを行ってきました。

今後は当社製品の「契約〜利用〜再利用」という一連の体験をデジタルでつなげていくために、基盤を活かしていくことが重要になってきます。

ーーこれまでの取り組みにおいて、どのような苦労がありましたか?

Y.T:苦労は色々ありますが、根幹にあるのは「BtoBtoCからBtoCへのシフト」という課題だと思います。従来の組織文化とは価値観も、コンセプトも違えば、届けるための仕組み・技術も根本から違います。

会社内での成功体験が通じない領域で、品質の考え方、UI/UXのこだわり方、アジャイルの考え方など、一つずつ学びながら、着実に成果を出す必要もあり、リリースのプレッシャーはとても強かったです。

ーーたしかにKPIや品質の基準が全く違いそうです。

Y.T:あとは、Web/アプリ領域の「基礎知識」の習得にもとても苦労しました。感覚的な抵抗感はありませんでしたが、中途入社のメンバーたちとの共通言語がなかったのはとても辛かったです。

中途メンバーと一緒に働く中で勉強しなければいけない一方で、スキルも経歴も異なる人たちと同じゴールに向かって、一緒に頑張る方法を考えなくてはなりませんでした。

結果として中途メンバーの多大な協力もあり知識は徐々につき、PCはMacかWindowsが選べるようになったり、リモートワークも標準化されたり、開発工程なども改善しながら業務を行うことができています。未だに課題はありますが、徐々に解決することができました。

1400万会員にデジタルで価値を。伸びしろだらけの白地に爪痕を残せる面白み。

ーー現在在籍している中途入社の方は、どういった経歴の方が多いですか?

Y.T:Webディレクターやプロジェクトマネージャーとして活躍してきたメンバーが多いです。事業会社出身の人もいれば、制作会社出身の人もいます。Webマーケティングの経験がある人も多いですが、今は制作・開発寄りの業務が中心なので制作・開発寄りの経歴の人が割合多いですね。

プロパー社員はIT・事業・カスタマーセンターなどいろいろな出身の人がいます。

ーー中小企業やWeb系企業の出身者もいますか?

Y.T:最近は会社として個人事業主も採用していますし、中小企業の出身者も多いです。会社の大きさは関係ないですね。デジタルに全く関係ない仕事だとしんどい気がしますが、制作会社や開発会社、IT系企業であれば活躍できると思います。

ファイナンス・金融というところに敷居を感じることはあると思いますが、基本的に研修は整備されていますし、デジタル推進部ではそういった業界知識がない人のほうがむしろ多いですね。

ーーどんな方が向いていると思いますか?

Y.T:スキル面では最低2-3年以上の経験があるといいのですが、それ以上にコミュニケーション能力が比較的重要だと思います。

各プロダクトごとに、いろいろな部署のステークホルダーがいるので、「人に伝える」「聞く・理解する」「行動につなげる」という基本的なコミュニケーションをこなせると働きやすく、成果も出しやすいですね。

ーー最後に、これから入社する人にはどんな魅力・価値があると思いますか。

Y.T:トヨタファイナンスはこれまでの文化・習慣・制度も変えて次のステップに移ろうとしています。

一方、まだまだスキル保有者は少ないので、中途の方にとっては挑戦したい領域や企画の提案がとおりやすい環境になっていると思います。実際、レクサスカードの利用促進策や自動車クレジット契約者向けのWebサイトなどは、中途入社のメンバーが企画を検討して実行しています。

1400万以上の会員に対してデジタルで価値を提供していくという、よくいえば伸びしろだらけの白地に1つでも爪痕を残すことができる。手を上げれば挑戦できるチャンスが転がっていると思います。


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