愛犬の健康管理アプリ
家族の一員である「犬」と、より長くより親密に暮らしていくための健康管理やコミュニケーションができるプラットフォームサービスです。これまで煩雑な管理になっていた愛犬の健康やお世話の記録を一元化し、それを飼い主間で共有することで、アプリを通じて家族全員で愛犬の健康をサポートすることができます。
https://www.g-mark.org/gallery/winners/9e5f17f5-803d-11ed-af7e-0242ac130002
愛犬の健康管理アプリ「onedog」のリードデザイナーをしているZackyです。
この記事では、「onedog」が昨年2021年度のグッドデザイン賞を受賞するまでにやったことや制作のポイント、感想や反省などを実例ベースでご紹介していきます。
ぼくたちが応募する際、過去の事例収集をしましたが、あまり参考にできるものがなく、ほぼ手探りでした。今回は、ちょうど応募期間直前ということで、この記事が応募を控えている方や興味はあるがまだ迷っている方の目に留まり、応募検討や制作の参考になればいいなと思います。
まずは簡単にグッドデザイン賞の説明をします。
と言いたいところですが、公式ページで丁寧に説明されているのでこちらの引用文を読んでください笑
過去受賞例
グッドデザイン賞は、日本のデザイン分野の賞では一番認知度の高い賞で、ぼくたちの日々の生活の中に溶け込んでいる道具や施設などでもグッドデザイン賞を受賞しているものは数多くあると思います。
2020年の認知率調査によると、「良いデザインを選ぶ賞であることを知っている」という人が約60%となっており、見たことのある人まで含めれば約88%もの認知率があるようです。
2020年実施グッドデザイン賞認知率調査
そんなグッドデザイン賞にぼくたちが応募しようと思った理由は2点あります。
1つ目の理由は「ターゲットユーザーに合っていると思ったから」です。onedogユーザーの方々は、一般層でマス向けのプロダクトやサービスに触れている方々が多く、認知率やその年代から考えても、グッドデザイン賞を受賞した時のプロモーション効果に期待できると思いました。
2つ目の理由は「チームビルディングやモチベーションアップの一助になるから」です。2020年になり開発チームの体制が整い、ユーザーの方々からの声も、インタビューやお問い合わせ、ストアレビューを通じて得られ始めていたため、プロダクトの質が上がってきたことをチームメンバー全員で実感し始めていました。そこで追い打ちをかけるように、グッドデザイン賞に応募して、プロダクトのコンセプトや機能、提供価値など全て含めたサービス全体のデザインを客観的に評価してもらうことができれば、チーム間で更なる達成感やモチベーションの向上に繋げられると考えていたため応募に至りました。
まず、グッドデザイン賞全体のプロセスは、こんな感じです。
もっと細かいプロセスや日程やこちら
グッドデザイン賞のプロセス
冒頭でも書いた通り、今年度の応募期間開始が4月1日に迫っています。
グッドデザイン賞の一次審査は、一般的なところでいう「書類選考」です。2021年度の実際のページがこちらです。
特に、概要・デザインのポイント・背景・経緯とその成果・仕様の項目はチームないし企画メンバー交えてちゃんと考えてレビューする必要があるかと思います。個人的に重要視した部分は背景の項目です。以下、実際の内容です。
背景の書き方のポイントとしては、課題のもとになる事実を述べ、そこからどんな課題を感じてプロダクト開発を進めているかをストーリーづけて簡潔に書くことをおすすめします。
文章のチューニングには時間がかかるかもしれませんが、思いつきで作った商品やサービスでない限り、既に語り尽くしてきた内容を文字に起こすだけといえばだけです。文字数もあまり多くないためあまりハードなものではないと思います。
ページトップに使用される画像は、このために新しくグラフィックを作ったため地味に時間がかかりました。あとはアプリのキャプチャをはめ込んだ1分程の簡単な動画も用意しました。
ページトップの画像
二次審査はオンラインでなく現物展示にて行われます。
場所は、2021年度の場合はAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)でした。
展示場の中にブースがあり、現物や模型、掲示物等を使って展示されているところを、各カテゴリの審査員が実際にブースを回って審査をします。展示の区画サイズや展示方法は決められたいくつかの選択肢の中から事前に申し込むようになっており、それに応じて設備の使用料金などが変わってきます。
二次審査の展示の設計にあたっては、まずは社内メンバーにアイデアを募り、展示の条件や参考を共有しつつ、社内メンバーのアイデアから展示方法を探っていきました。
社内メンバーからアイデア募集しました
ネットで探した過去の展示事例
その後、具体的な制作に関する参考がなくやや手詰まりを起こし始めていたところで、ちょうどその頃にご縁があった、Catlogの開発元であるRABO, Inc.でVP of Designをしている香林(通称zomi)さんとオンラインでお話しすることができました。
Catlogは2020年にグッドデザイン賞を受賞しており、その時に書かれたnoteの記事は隅から隅まで読ませていただいた上で、質問や相談をさせていただきました。実際にお話を聞くと、現場の製作工程であったり、どこにこだわり持って作ったかなど、裏側のお話も聞けたので、すごくありがたかったです。神様かと思いました。
そんなこんなで展示ブースのレイアウト・デザインを進めていきました。
展示のレイアウトはシンプルな構成にし、文脈がわかりやすくなるようデザインしました。
レイアウトの叩き
展示に向けた制作のポイントとしては2点があり、1つ目は「 実際にブースを人間が回って目視することを意識すること」、2つ目は「現場を想定して展示設備の準備すること」です。
1つ目は「実際にブースを人間が回って目視することを意識すること」でした。その中で一番制作時に気を付けたのは展示の構成です。
世界観・成果物 → 背景 → 課題 → 解決方法 → 成果物
というように、読むだけでプロダクトのストーリーを理解してもらえるように意識しました。また、短い時間の中でどれだけ多くの情報に目を通してもらい、魅力に感じてもらえるかが重要だと思ったので、デザイン制作時には以下のことを気にして作りました。
実際にデザインに落としたものがこちらです。展示する時に無理が起きないように、サイズ比を計算して、限りなく実物に近いイメージで作成しました。
二次審査ブースデザイン
2つ目のポイントは「現場を想定した展示設備の準備」です。これはかなり地味なのですが、けっこう大変です。
二次審査の実施スケジュールは、月曜搬入・設置 → 中3日で審査 → 金曜撤収、という流れで、中3日の審査期間中はぼくたちがブースに立って説明したりはできず、初日に設置したブースをそのまま見てもらうことになります。つまり、3日間継続して展示の状態を保たなければいけません。
パネルや掲示物のみの展示ならば楽なのですが今回のぼくたちの展示は、iPadでのPR動画を流すこととiPhoneでの実機操作も展示の一部にすることにしていたため、その点を考慮する必要がありました。
動画を流すiPadは、スリープしないようにしたり、動画はループで流せるようにしたり、充電は常にしておくようにしたり、もしも何かの事故でスリープしてしまった場合の復帰方法をサポートするポップを用意したり、iPhoneのモックアップにおいては、スリープにもしも入った場合の復帰方法だけでなく、オンラインの状態を保たなければいけなかったため、ポケットWi-Fiをレンタルして常時繋ぎっぱなしにしておいたりしました。とかとかとかとか……かんがえることいっぱいでした😦
などなど、考慮する点が多く大変でしたがなんとか乗り越え、3日間の審査期間で問題なく展示ができました。もしものことがあったら……と考えると正直不安でいっぱいでした。
受賞の内示を9月にいただき、10月に公示でした。
内示をいただいた時にはもう嬉しくてSlackの中で跳ね回りました。
こうみえて跳ね回ってます
社内へのお口チャックの徹底を頑張ったくらいです。
公示(正式発表)までの期間にやったことはこんな内容になります。
ストア用スクリーンショット
応募から受賞までを簡単に紹介しましたがいかがだったでしょうか。
はじめての事だらけで感想や反省がかなりありましたので、そのうち3つを共有します。
1つ目は、「結構考えることも作るものも多いな」という感想です。一連の取り組みを経験してみて一番感じたことで、普段のデザインの業務の合間に少しずつ進められたり、時間をとって集中して取り組む時間が取れるリソース・体制でないと時間の捻出の部分で課題が出てくると思います。
2つ目は、「トーンを揃える大変さがあった」という感想です。一次審査にしても二次審査にしてもサービス側として考えていること、またその伝え方のトーンを揃えなきゃいけないことが多いので大変でしたが、役割分担しにくく、デザイナーが一人で受け持つのが無難だったりすると思います。
とはいえ、開発チームみんなで考えられる部分も多分にあるので、一人で抱え込まずに周りを巻き込みながらみんなで進められる部分はどんどん切り出して協力体制を組めるといいと思います。
3つ目は、最大の反省になりますが、受賞ページのデザイナーの箇所には「個人名だけでなく部署やチーム名も入れられることをあとから知った」という反省です。それを知っていれば絶対にチーム名にしたのに…という後悔がありました。ぼくだけの名前が入っていますが、実際は多くのメンバーがプロダクト開発には関わっており、チーム全体でデザイン・開発しています。それはこのnoteでぜひ伝えたいと思い書きました。
\ かなり嬉しかったです。/
前評判では「お金を払えば受賞できるんじゃないの?」とか「応募すれば大体受賞できるんじゃないの?」というような声を聞くこともありました。ぼくも正直、あまり内容の知らない頃は心のどこかでそう思っていた節がありました。
ただ、数字を見てみると分かるのですが、2021年度の応募が約5,800件で受賞が約1,600件。受賞率は約28%です。司法試験の合格率で40.5%、東大の現役合格率で35.4%です。これを見たら、あれ?なんかすごいんじゃね?と思うようになりました。単純ですね。でも、冗談抜きにしても、ぼくたちは決して広くない門をくぐり抜けることができたんだなとは思います。やったね!
そして、何より開発チームみんなで作ってきたものが、こういった形で評価を得られることはとても喜ばしいことですし、これまでやってきたことが報われた瞬間に感じました。また、受賞を受けて、チームだけでなく会社全体でも盛り上がりましたし、開発に直接携わっていないメンバーも含めて、いいサービスを作っている会社に所属して仕事をしている、という自信・自覚を持って過ごせるようになるのも受賞のメリットだと思います。
いっぬ
少し長くなりましたがonedogがグッドデザイン賞を受賞するまでの道のりや制作のポイントをシェアさせていただきました。
もし、もっとお話聞きたい方や迷っていることがある方がいれば、お話することもできますのでご連絡ください!