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目次
既存の教育システムへの違和感と非認知能力の可能性
19歳で描いた人生プラン。教育への情熱が事業の核となるまで
ビジネスモデルが評価され、グッドデザイン賞を受賞
自ら意思決定できる人を増やすために、学校教育のスタンダードを創る
「未来ある子供たちの情報格差をなくして、自ら意思決定できる人を増やす」をミッションに掲げ、テクノロジーとイノベーションで学校教育のスタンダード創りに取り組む、Edv Future株式会社。
子供たちが進路を決めるうえで、住んでいる場所や家庭環境により情報の格差が生まれていることや、偏差値至上主義の学校教育のあり方に問題意識を持ち、多様な生き方が尊重される社会を実現するべく、事業に取り組んでいます。
今回は、Edv Future株式会社代表取締役である山崎泰正に、創業経緯や事業内容、ミッション・ビジョン・バリューについて話を聞きました。
勉強と部活という限られた評価軸、詰め込み型の学習、そして「周りと違う」ことが許されない空気。 現在の学校教育の基盤となった明治時代から150年以上の時を経て、社会は大きく変わったにもかかわらず、教育現場の“ものさし”はアップデートされないままでした。
代表の山崎は、昔から変わらない画一的なシステムに馴染めず、かつて生きづらさを感じていた一人です。学生時代に生きづらさを抱えていた経験が原動力となり、Edv Futureを設立しました。
テストの点数だけでは測れない「非認知能力」に着目し、一人ひとりの個性を輝かせる。その挑戦の裏側にある、山崎の想いに迫ります。
既存の教育システムへの違和感と非認知能力の可能性
── まずは、2019年の創業に至るまでの経緯を教えてください。
山崎:創業のきっかけは、学生時代の原体験と、社会人になってからの経験が結びついたところにあります。
もともと、私自身が既存の学校教育に馴染めなかったんです。学校の中にある評価軸は、勉強と部活くらい。5教科中心の勉強をひたすら詰め込み、決められた時間割をこなす毎日。なぜ勉強するのかもわからないまま、点数が悪いと指摘され、平均点以下だとまるでおかしいことのように扱われる。そういった環境に、ずっと強い違和感を覚えていました。
私は子供の頃、落ち着きがなかったので、授業中に教室を抜け出すこともあり、先生によく怒られていました。
自分の「こうしたい」という気持ちに従って行動しても、失敗すればマイナスの評価を受け、周りと違うことをすれば「あいつはおかしい」と言われ、すごく生きづらかったことを今でも覚えています。
学校という閉じた世界がすべてだから、息苦しさを感じながらも、主体性なんて持てずに過ごしていました。
── 学生時代の経験が今の事業につながっているんですね。社会人になってからは、どのような経験をされたのでしょうか。
山崎: 社会人になってからは、一貫してHR領域の仕事をしてきました。新卒で就職した会社は総合人材サービスの会社で、エンジニア派遣の事業部からキャリアをスタートし、その後は中途採用や契約社員、業務委託の方々の支援にも携わりました。
社会人1年目に表彰を受けた際の写真
働く中で気づいたのは、雇用形態に関わらず、生産性が高く、自分らしくいきいきと働いている人がいるということです。派遣社員というと、世間的には少し低い立場に見られがちですが、素晴らしい能力を持った方がたくさんいらっしゃいます。
── 「自分らしく生きる人」たちには、何か共通点があったのでしょうか?
山崎:いきいきと働いている方は、「メタ認知能力が高く、自分の人生をどう生きたいかを自分で決めている」ことに気がつきました。
また、独立前に働いていたIT企業でEQ(心の知能指数)を使って組織マネジメントをした経験も大きかったですね。EQを意識するようになってから、メンバーが目に見えて変わっていくのを実感しました。
そんな時に、海外の論文で「ウェルビーイングや自己意思決定は、非認知能力や好奇心と強い相関関係がある」という内容を目にしたんです。
メンバーの変化を目の当たりにしていたこともあり、「EQをはじめとする非認知能力が、人が自分で意思決定をして生きていくうえで、非常に重要な要素なんだ」という確信に変わりました。
「非認知能力の可能性を世の中に広めていきたい」と思ったことが、創業の直接のきっかけです。
19歳で描いた人生プラン。教育への情熱が事業の核となるまで
── 「非認知能力を広めたい」という確信を抱いてから、実際に創業するまでにはどのようなステップがあったのですか?
山崎:実は、もっと昔に遡る話があります。19歳の時、人生に絶望し、本気で人生を終えようと思ったことがあったんです。いろいろなことがうまくいかず、すべてを周りのせいにしていました。でも、あるきっかけで「自分の人生は自分の責任だ。自分で変わらなきゃいけない」と思い直したんです。
人生を変えようと決意してから、人に会う、本を読む、歴史から学ぶ、という3つのことを徹底的にやりました。その結果、「人に影響を与える人間になるか、影響を与えるものを作りたい」という目標ができ、明確な人生プランを作ったんです。
「26歳で独立して、30歳で自分の事業を作る」と決めました。そのため、もともと起業したいという想いは強く持っていました。新卒で人材会社に入ったのは偶然でしたが、「選んだ道を正解にするのは自分だ」と決めて、がむしゃらに働きましたね。
人材会社を退職して、フリーランスを経験した後、労働集約型のビジネスモデルに限界を感じ、一度IT企業に転職しました。Webマーケティングやプロダクト開発など、テクノロジーを使った事業を学ぶためです。IT企業で働いている期間も「教育」への想いは消えませんでした。
夜遅くまで自分の仕事をした後、毎日1時間、他のメンバーの仕事内容を必死に勉強しながら、高校生向けのWebメディアを自分で作ることもしていました。
── 文字通り、がむしゃらに働かれたんですね。
山崎:当時働いていた会社が上場を目指すことになったんですが、社会に与えるインパクトを考えると、会社員のまま上場を目指すよりも、自分が本当に変えたいと思っている教育の領域で挑戦すべきだと感じたんです。その方が社会にインパクトを与えるだけでなく、自分の情熱を注げると確信し、会社を辞めて起業しました。
辞める時には、「EQ(非認知能力)を広める」「高校生をターゲットにする」「学校がインフラとして導入できるようなSaaSモデルで事業を行う」という、弊社の主力事業であるEdv Pathの原型となる事業構想は、すでに固まっていましたね。
ビジネスモデルが評価され、グッドデザイン賞を受賞
── 「Edv Path」について、解説をお願いします。
山崎:「Edv Path」は、生徒のアンケート回答をもとに、SEL/EQ(心の知能指数)・GRIT(やり抜く力)を9つの項目で分析することで、生徒一人ひとりの特性をデータとして可視化し、生きる力を育む成長型支援サービスです。
測定結果をもとに、授業で利用する教材や個々のコーチングプランを提供しているため、導入いただく学校では、生徒の指導やキャリアパスサポート、面談など、教員がさまざまな場面でデータを活用いただけます。
山崎:事業を作るにあたり、さまざまな学校の方々にヒアリングをさせていただいたところ、「自分たちの教育活動の成果が分かりづらい」「コロナ禍で自己表現が苦手になる生徒が増え、何を考えているのか分からない」といった課題が出てきました。
そこで、「Edv Path」を使って生徒の変化を可視化し、教育効果を測定するという価値を提案したんです。「効果測定」と「クラスマネジメント」という2つの側面が現場のニーズに刺さり、全国の学校が導入してくださるようになりました。
今では、全国の中学・高校で数百校、10万人以上のユーザーが利用してくださっています。
── 教育の現場からはどんな声があがっていますか?
山崎:導入校からは、「生徒との面談の密度が上がった」「保護者との関係構築がしやすくなった」「自分たちの教育に自信が持てるようになった」といった嬉しい声をたくさんいただいています。
また、生徒からは「自分自身を内省するためのツールとして使っている。日々内省ができていることもあり、大学の志望理由書も自分の言葉でスラスラ書けるようになった。自分の強みや特徴を理解できたのは、Edv Pathのおかげ」という声もいただいています。
2022年には、そのコンセプトやビジネスモデルが評価され、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「グッドデザイン賞」を受賞することができました。
山崎:私たち自身、日々事業をおこなっている中で、「教師の勘や経験」をデータで補完し、学校全体の教育力を引き上げる仕組みが当社の強みだと考えています。
自ら意思決定できる人を増やすために、学校教育のスタンダードを創る
── ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)についても教えてください。
山崎:Edv Futureのミッションは、「未来ある子供たちの情報格差をなくして、自ら意思決定できる人を増やす」です。
生まれた場所や家庭環境にかかわらず、すべての子供たちが、自分の価値観や目標に沿って人生を選べる。社会の同調圧力や画一的な進路から解放され、多様な生き方が尊重される社会を実現したいという強い想いが込められています。
── 「自ら意思決定できる」とは、具体的にどういう状態を指すのでしょうか。
山崎:最近、「生きがい(IKIGAI)」という日本語が世界で使われるようになってきました。「好きなこと」「得意なこと」「需要があること」「お金になること」の4つが重なる部分が「生きがい」だと言われています。
これまでの日本の教育では、「得意なこと(ミスしない力)」を伸ばし、「需要があること(製造業)」に応え、「お金になる」ことには長けていました。しかしながら、「好きなこと」に着目する視点が欠けていたんです。
生きがいチャート。引用:Ikigai: Your Purpose and Reason for Being | Rethinking Learning
私たちは、「Edv Path」を通じて、子供たちが自分の特性や「好き」を知るきっかけを提供したい。偏差値や親の期待、同調圧力といった外部の要因ではなく、自分自身の内なる声に耳を傾け、自分の人生を選択できる。そんな「自立した個人」を育んでいきたいんです。
自立した個人が増えることで、結果的に、多様な生き方が尊重される社会につながると信じています。
── ビジョンやバリューについても教えてください。
山崎:ビジョンは「テクノロジーとイノベーションで学校教育のスタンダードを創る」です。非認知能力という、まだ価値が定まっていない新しい概念を、当たり前の文化として根付かせたいと考えています。
そのために、私たちは“協働”と“自律”のバランスを体現する自律分散型の組織形態をとっています。トップダウンではなく、メンバー一人ひとりが専門性を活かし、教育への持論を持ってプロダクトや顧客対応に反映していく方が、スピード感とイノベーションが生まれると信じているからです。
その組織を体現するための行動指針が、「Always challenging」「Move fast」「Simple is best」「Keep Learning」「Beyond Collaboration」「Knowledge Sharing」という6つのバリューです。
── 最後に、山崎さんはどんな方と一緒に働きたいですか?
山崎:何よりもEdv Futureのミッションに心から共感してくださる方と働きたいですね。その上で、いくつか重視している点があります。
一つは、仕事の価値観が「社会軸」であること。自分の利益のためだけでなく、Edv Futureで取り組む事業を通じて社会をどう良くしていくか、という視点を持てる人であれば楽しく働けると思います。また、個人の成果よりも、チームでの成果を大切にできる人がいいですね。
他には、「これまで利益を追求する仕事をしてきたけれど、子どもが生まれて、教育のあり方に疑問を持つようになった」とか、「ある程度稼いできたけれど、これからはもっと社会的な意義のある仕事に自分の能力を使いたい」と考えているような方には、ピッタリの環境だと思います。
もちろん、「教育を変えたい」という情熱は不可欠です。しかし、情熱だけでは150年変わらなかった巨大な仕組みは変えられません。
今、まさに教育界は変革の時期にきています。GIGAスクール構想によって1人1台端末というインフラが整い、新学習指導要領では「総合的な探究の時間」が必修化されました。教育現場は、「生きる力」や「非認知能力」といった、これまで曖昧だった価値に向き合うことを強く求められています。
一方で、その指導や評価は教員の経験則に委ねられ、DX化も遅々として進まず、新たな負担となっているのも事実です。私たちは、この変革期のカオスを「テクノロジー」で解決したい。「Edv Path」による非認知能力の可視化は 、そのための強力な武器です。
Edv Futureがおこなっている事業は単なるSaaS提供ではありません。これまで“感覚”で語られてきた教育の効果を“データ”で支え、誰もが再現性を持って個性を伸ばせるようにする、日本の教育の根幹を支える新しい社会インフラを創る挑戦です。
だからこそ私たちは、「教育を事業として変える」意志を持ったプロフェッショナルを求めています。社会的意義の大きさと、ビジネスとしての成長の両面をテクノロジーの力で本気で実現します。
「教育×ビジネス×テック」の視点を持つ方にとって、Edv Futureは自己実現を叶える最高の環境だと確信しています。