道路通報システム- My City Report(MCR)
道路通報システム- My City Report(MCR)
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/road/mcr.html
アーバンエックステクノロジーズ(以下、アーバンエックス)は、代表の前田が東京大学の大学院在籍中に行っていた「スマートフォンを用いた深層学習による道路損傷検出に関する研究」をベースに立ち上がった企業です。2016年〜2018年の約3年間は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究として、その後は東京都の「大学研究者による事業提案制度」に採択されたことでスタートアップ企業としての第一歩を踏み出しました。
これまで、アーバンエックスの成り立ちについてお話しするブログはありませんでした。カジュアル面談に進まれる方をはじめ、アーバンエックスにご興味をお持ちいただいた全ての方に向け、会社のこれまでの歩みについてお伝えできたらと思います。
アーバンエックスが株式会社としてスタートしたのは2020年4月7日。初めての”緊急事態宣言”が出され、世の中が少しずつコロナ禍へと進んでいる時でした。代表の前田の学生時代からの研究を事業にすべく、3年間のプロトタイプ開発・実証実験を経て、東京大学から関係する技術の独占ライセンスを受けての創業でした。
この時の従業員数はまだ4人。契約書・見積書なども手探りのまま研究者とエンジニアしかいないままで走り出しました。東京都の委託事業をはじめ、初年度から売上はあり、現在の「RoadManager損傷検知」の開発を通じて、社会に役立ちそうな実感はわいていました。
この時から、自治体だけでなく大手モビリティ企業や建設会社との実証実験のような取り組みも始まっていました。
最初のオフィス。代表の家族からのお祝いの木と机が数個。広すぎて集中できないのが課題でした
この年は前年から従業員数が倍に増え10名の組織になりました。組織が大きくなるとできることは増えるものの、コミュニケーションミスや意思決定フローなどが曖昧になり、オペレーションフローを整えることの大切さを痛感しました。マニュアル整備や契約書管理、損傷検知に使うためのデバイスのSIM管理等、徐々にオペレーションの確立が進んだのはこの年です。
その他、徐々に採用活動に挑戦する中で、ミッション・ビジョン・バリューやOKRと言った目標共有の仕組みの必要性を感じ、取り組み始めたのもこの年でした(MVVについては、別のブログの機会に記事を作成します。)。
2019年度からスタートしていたある東京都との実証実験も3年目となり、実証実験ができる最後の年でした。何とか無事に正式に「RoadManager損傷検知」の導入が決定し事業も軌道に乗り始めた年です。
その後も東京都とは、「盛土」や「市民投稿」など他のプロダクトでも協働させていただく機会に恵まれています。
2021年10月には、三井住友海上火災保険(株)様との共同事業であるドラレコ・ロードマネージャーをリリースしました。マチ中を走り回る数万台の自動車保険の通信型AIドラレコから、道路路面の損傷データを自動で抽出する取り組みです。保険のドラレコとしての機能を損なわないように設計された軽量なエッジAI、たくさんのドラレコからの膨大なデータを処理する部分にエンジニアリング的な面白さが詰まっています。創業2年目のスタートアップ企業の技術が、大手損害保険会社のドラレコに搭載され、当社の技術力を示すものと考えています。
結果的に、既存のプロダクト磨きに加え、企業とのプロジェクトも含めると、合計約30ものプロジェクトを手がけました。スタートアップ創業2年目としては比較的スムーズなスタートかもしれません(渦中の頃はそんな風に考える余裕はなかったと思いますが…)。
この年はさらに社員数が増え20名も目前に。首都高技術様など、強力な企業様とのコラボレーションの中で新たな事業の芽がたくさん生まれてきた年でした。徐々に増えてきた事業は大きく3つ、5カテゴリーにまで拡大し、業務提携を行う等、事業拡大もスピードアップしています。
開発組織の拡大を目指しPythonのカンファレンス「PyCon JP」への出展にトライしたのもこの年。
自治体で道路維持管理を担当されている方をはじめとした「道路損傷による事故を未然に防ぎたい道路管理者」向けのAIによる道路損傷検知サービスです。スマートフォンを車に載せて走るだけで、事故につながる損傷を個人の判断によらず画像から自動で検知できます。また、検知した損傷はWEB管理画面で検索し、作業指示書を出力することができます。
道路の状態を把握して補修計画の根拠づくりをしたい道路管理者向けのAIによる路面評価サービスです。スマートフォンを車に載せて走るだけで、撮影した動画やセンサー情報から国際的な道路舗装の管理基準であるひび割れ率・IRI・MCIを指標化することができます。低コストで簡易的な路面性状調査が実施できることを目標に、2024年度の本格提供に向けて自治体と協力しながらサービス性能の向上に取り組んでいます。
三井住友海上と協業で運営しているサービスです。大手小売や物流事業者等の車両に設置されている全国のドライブレコーダーで収集した路面データを活用して、道路損傷検知を行うことができます。これにより、道路損傷の検出に必要なデータの収集を、自治体で実施する必要がなくなります。
「My City Report for citizens」は、市民と自治体が協働してまちの課題に取り組むことを仕組み化する、市民協働投稿サービスです。2014年から千葉市で運用を開始した旧「ちばレポ」が基になっています。市民から、道路・公園遊具・河川/水路等の不具合について投稿してもらい、市民と行政が協働して合理的・効率的な解決を目指す仕組みです。専用のスマートフォンアプリを通じて、市民は自治体に写真や位置情報、コメント付きで情報を提供し、自治体は、対応を投稿者へ返信することができます。アプリのみならず電話やメールで提供された情報や自治体自ら見つけた地域の情報を、投稿管理画面を用いて一元管理することも可能です。
危険な盛土を早期に発見したい盛土の管理者の方に向けたサービスです。危険な盛土を規制し、災害を防止するための法律「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)」が令和4年5月に成立したことにより、自治体の盛土管理業務に求められる水準は高まっています。アーバンエックスがこれまでに培った「RoadManager損傷検知」でのデータ収集の技術や「My City Report for citizens」で市民協働の実績をもとに、システムを通して盛土の情報収集や一括管理を行うことができます。
これからも「都市インフラをアップデートし、すべての人の生活を豊かに」のミッションからブレることなく、人口減少社会における都市インフラを持続可能なものにするために、我々の技術を応用していきます。
スタートアップとはいえ複数のプロダクトを展開しているのは、最初の事業である「損傷検知」のサービス提供を通し、自治体をはじめたくさんのペインを伺うことができたからです。都市インフラは道路だけでなく、盛土、公園、河川、等たくさんあり、それぞれがDX化に対するペインを抱えています。当社のビジョンである「しなやかな都市インフラ管理を支えるデジタル基盤をつくる」ことで、ありとあらゆる都市インフラを当社のソフトウェアで安価に安全に長く使っていける、そんな世界を目指します。
また、その技術やデータを活用し、自治体向けだけではなく一般企業等でも活用いただけるサービスの開発についても、いくつかの企業の方々と議論を開始しました。これからも新たなプロダクトを模索し、日本中の自治体、企業、ひいては海外にも価値提供していきたいと考えています。
まだまだ道半ばですが、ぜひ皆さんの力をお貸しください!