こんにちは!NBSグループ広報の東(あずま)です。
今回は、北海道・富良野にあるホテルで支配人を務めながら、全国に展開するホテルの統括支配人も担う服部勝美(はっとりかつみ)さんにお話を伺いました。
「形にする瞬間が、いちばんワクワクするんです」
静かに熱く、現場と経営の間に立ち続ける服部さんの言葉からは、ホテル業の奥深さと、宿づくりの本質が滲み出ていました。
ひとつの場所に落ち着くより、次へ進みたいタイプ
服部さんがNBSに入社したのは、2021年3月。前職では14年間、山形県のホテルで支配人や統括支配人を務めていた。
「同じホテルに長くいると、すべてが繰り返しに感じてしまうんです。春が来たな、夏が来たな、って。予測がついてしまうことに虚しさを感じるタイプなんですよね」
服部さんのモチベーションは、「ゼロから始める」「立て直す」「次へ引き継ぐ」こと。一定の成果が出たら、新しい誰かにバトンを渡したくなるという。
「同じ目線で見続けると、慣れてしまって気づけないことがある。でも、慣れていない人の新しい視点で宿がまた成長していく。それが理想だと思ってます」
そんな服部さんの言葉からは、ホテルを「成長する生き物」として見ているような感覚が伝わってくる。
きっかけは、“直接のありがとう”が聞きたかったから
ホテル業界に入る前、服部さんは工場で働いていた。看板をつくる仕事は楽しかったが、やがてあることに気づいた。
「どんなに綺麗に作っても、誰かから直接『ありがとう』って言われることがない。それが虚しくなったんです」
学生時代の接客アルバイトの記憶がよみがえった。「ありがとう」がダイレクトに返ってくる。その喜びが忘れられなかった。
「自分の存在意義を感じられるんですよね。それで“やっぱり接客がやりたい”と思ってホテル業に飛び込みました」
そこからは現場での猛修行が始まった。営業、皿洗い、布団敷き、接客、掃除、、、全部を一人でこなしながら、3年後には支配人へ。紆余曲折ありながらも、ホテルと共に成長してきた。
「気づいたら、そこが宿の未来を決める」
服部さんのエピソードには、ホテル業の本質が詰まっている。
「アクセントスローってありますよね。ベッドの足元にある布。あれがちょっと汚れてたんですよ。気づいてたけど、“まあこんなもんだろう”って放置してたら……それだけじゃなくて料理のことまでクレームが来るようになったんです」
小さな見過ごしが、ホテル全体の印象を揺るがすことがある。
「逆に、そういうところを丁寧に整えていくと、不思議とクレームは起きなくなるんですよね。お客さまって、“整っているかどうか”を感じ取るんです」
服部さんの仕事の根幹には、「見て見ぬふりをしない」という姿勢がある。ホテルという空間が“無言の会話”で構成されていることを、日々の現場で実感してきたからだ。
スタッフの想いが、形になる場所をつくりたい
ホテル支配人としてのやりがいを聞くと、「やっぱり“形になった瞬間”ですよね」と答える。
たとえば、「ラベンダーを使ったドリンクを出したい」というアイデアを起点に、スタッフと一緒にアイデアを出し合って、シロップやレモン、ライムを使ってデトックスウォーター風に進化させたウェルカムドリンク。
あるいは、スタッフが発案した、動物型のアロマストーンにラベンダーオイルを垂らして貸し出す“香りのサービス”など、小さなチャレンジが宿の個性へと昇華していく。
「お客様の反応がダメだと思えばすぐやめる。でも、正解は“お客様の中”にしかないから、まずはやってみるんです」
スタッフがチャレンジしやすいように、月5,000円まで自由に使える“トライアル予算”も導入している。挑戦の背中を押し、形になった喜びをチームで分かち合う。それが服部さん流の現場づくりだ。
富良野という土地に根を張って
現在は、北海道・富良野に単身赴任中。自然に囲まれた街での生活を心から楽しんでいる。
「町の人がとてもフレンドリーで。すごく溶け込めました。富良野はよそ者を排除しない土地なんです」
趣味のバイクで芝桜の名所・東藻琴まで走ったり、地元の人との交流を楽しんだり。仕事だけでなく、暮らしもまた服部さんにとって大切なモチベーション源になっている。
ガチだけど、やさしい。そんなプロたちと働く日々
NBSで働く人の印象を聞くと、少し照れくさそうに笑いながら、こう語ってくれた。
「クオリティも意識も、すごく高い。プロ集団だなと思いました。でも“私は仕事できます!”みたいな突っ走る人はいないんです。声をかけてくれるし、歩み寄ってくれる」
北海道に拠点を置きながら、AI研究チームのリーダーにも就任。自分が“支配人以上”の存在として求められていることに気づき、少しずつ領域を広げている。
「僕、システムには詳しくないんですよ。でも、だからこその目線でやってみようって言ってくれて。こんな僕でも、少しずつ分かってきたんです」
挑戦を歓迎し、育てる。それがNBSという組織の魅力だ。
「支配人って、経営者みたいな仕事」
ホテルの現場で働く面白さを語るとき、服部さんは「自由さ」と「裁量」を何度も口にする。
「支配人って、現場とオーナー、現場とマネジメント会社の“間”に立つ存在なんですよ。現場だけを見ていればいいわけじゃない。利益や継続性も考えなきゃいけない」
だからこそ、経営感覚が必要になる。自由にアイデアを形にできるけれど、それを“事業”として成り立たせる力が問われる。
「売上があっても利益がなければ意味がない。でも利益を前面に出すと、変な“いやらしさ”も出ちゃう。そのバランスが難しいんです」
ホテルは、お客様にとっての“非日常”を提供する場所。だからこそ、“整えること”が大切になる。お客様が来る前に、どれだけ準備できているか。そこが勝負だ。
正解がないからこそ、面白い
最後に、未来の仲間たちへのメッセージを聞いた。
「ホテル業って、“生きてる意味”を直接感じられる仕事なんですよ。お客様の反応がすぐ返ってくる。そこに面白さがある」
支配人という仕事に、正解はない。宿にとっての“色”を塗るのはスタッフひとりひとり。服部さんの役目は、そのパレットを整えてあげることだという。
「僕が支配人になったばかりの頃、何をどうしていいか分からなかった。でも今思うと、あのときから自分の“爪痕”を残せる仕事だったんですよ」
ホテルの未来をつくる人材に、過去の経験や知識は必須ではない。必要なのは「整えることへのこだわり」と「挑戦する勇気」だけ。
“今”を積み重ねたその先に、未来のホテルがある。
インタビュアー・東の感想
服部さんのお話を聞いていて、「支配人って経営者みたいな仕事」という言葉が、すごく胸に残りました。現場に根を張りながら、経営の視点も持って挑戦を続けていく。その姿勢に、ただただ感服するばかりです。
「正解はお客様の中にしかない」という言葉も印象的で、ホテルという“生き物”をどう整えて、どう育てていくのか――支配人という仕事の奥深さを改めて感じました。
静かに熱く挑戦を続ける服部さんと一緒に、これからのNBSがどんな未来を描いていくのか、とても楽しみです。
貴重なお話をありがとうございました!