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日本最大級の再生可能エネルギーのプラットフォーム「みんな電力」を運営する私たちUPDATERは、2023年12月に、「顔の見える電力」をより具体的に実装するブロックチェーンのトークンの仕組み「Enection3.0」について、特許を出願しました。
プレスリリース:https://www.updater.co.jp/news/pressrelease/20231208
今回は構想から3年、開発に1年半をかけた「Enection3.0」について、本プロジェクトに携わった3名から、開発ストーリーをお届けします。
構想は3年前、100万人を超える「顔の見える電力」の計画を描く
ーEnectrion3.0の特許出願、お疲れ様でした。改めて、今回の開発の裏側について聞かせてください。開発期間はどれくらいかかったんでしょうか?
橘:開発そのものにかかった期間でいうと、1年半ほどです。ただ、構想自体は3年前からありました。およそ100万人の発電事業者・需要家を繋ぐ「顔の見える電力」のプラットフォームです。※下図
このプラットフォームを実現させるためには、発電量と需要量をマッチングさせるだけでなく、処理できる数的なキャパシティも、処理するスピードも求められます。従来のEnection2.0から、仕組みも変え、かつ利用するブロックチェーン技術もアップデートすることが必要でした。
そのため、この3年間のうち、最初の1年は技術選定に奔走しました。その後はサービス設計も並行して行っていたため、サービス側の意見も取り入れつつ、デモ環境を構築し、どのようなサービスであればユーザーに満足いただけるのか、技術的な課題にもぶつかりながら、検討する日々が続きました。そうしておおよそサービスの枠組みが決まったところで、本格的な開発に着手、最終的には個人向けのシェアPPAサービス「ピーパ」のローンチができ(※)、特許出願にも至りました。
※参考:https://minden.co.jp/news/2023/12/07/8727
ー3年前から動いていたのですね!
鈴木:そうですね。全体の構想からすると、今は大体5割くらいの進捗率かなと思います。ピーパは個人向けですが、現サービス含め企業のお客様向けのサービスでも活用が模索されており、ユーザー拡大に向けて、さらに技術開発もしなければと考えているところです。特許出願は一つの成果ではありますが、まだまだ先の長いプロジェクトです。
新たなチャレンジに集まったブロックチェーンチーム、開発は手探りの連続
ー今日お伺いしているお三方はどのようにプロジェクトに関わることになったんでしょうか?
橘:この構想を実現させるチームの最初のメンバーが私でした。その次にジョインいただいたのが、松風さんです。パートナーとして3年前に参画いただいてからずっと一緒に取り組んできて、基本的にはずっと2人で日々やりとりをして、やってきました。
松風:3年、あっという間ですね。途中サポート的にメンバーが加わったこともありましたが、2人でずっとやってきました。2人なので役割を明確に分担するというよりも、ざっくりとしたゴールに向かって、どう実現できるのか、2人がそれぞれリサーチし、手を動かし、検証するーー。その繰り返しでしたね。
鈴木:私は開発に直接携わるというよりも、開発の計画や進捗の調整などを行っています。また本プロジェクトは、環境省の委託事業に採択されています。事業は今年の3月末で終了になりますが、環境省への報告やフィードバックの反映などの折衝面も担当していました。
ー皆さん、それぞれの役割があったんですね。本プロジェクトに参加されたきっかけについて教えてください。
橘:それは私が当時のみんな電力株式会社に転職したタイミングでした。私は前の会社に25年程在籍していて、エンジニアとして働いていました。キャリアの最後のほうはエンジニアといっても、手を動かすことはほぼなく、プロジェクトの管理をしていたのですが、そうなると最新の技術には、前より疎くなっていっていたことに気がついたんです。「技術者としていいのか?」といった思いも募ってきたため、そこで一念発起して、当時まだそこまで普及していなかったブロックチェーンを学ぶことにしました。ブロックチェーン大学校に入校したのですが、後から聞いたら、松風さんも通われていたのですよね?
松風:実はそうなんですよね。完全に偶然ですが(笑)。私が本プロジェクトに参加したのは、橘さんがみんな電力にジョインされて、数ヶ月後だったと思います。橘さんがブロックチェーンのプロジェクトを動かし始めて、それがブログ記事になっていたんですよね。
私は前職でブロックチェーンのプロジェクトに携わっていたこともあり、ブロックチェーン×エネルギーは面白そうな取り組みだと思い、Wantedlyから応募しました。
ー実際にプロジェクトを進められてきて、苦労されたことはありましたか。
橘:ブロックチェーンの参考文献の少なさでしょうか。
松風:そうですね。
橘:そもそもブロックチェーンを使ったサービスの開発は、他の開発の数に比べたら、そう多くはありません。ということは参考になる文献や資料の数が少なくなるので、自分たちで、本当に手探りで開発するしかありません。日本語で参照できる情報がなければ英語でも探してみたりと、このハードルには今でも苦労しています。
松風:私は以前もブロックチェーンに関わる開発に携わっていたと言いましたが、やはりブロックチェーンは、従来の開発だとできないこともあるなど、癖が強いと感じています。いざ運用をしてみても、思ったほどパフォーマンスが出ず、その都度私たちで対応するということも多々ありました。
鈴木:思ったより、トランザクションの量を捌けないなというのも、話していましたよね…(苦笑)
橘:そうですね…(苦笑) 今は環境省からのリクエストでもある一定基準のトランザクション数と処理スピードをクリアできていますが、それに辿り着くまでかなり苦労しました。
みん電のブロックチェーンを世界へ。真のプラットフォーマーを目指して
ー今回のEnection3.0の開発で、構想はどの程度まで実現しているのでしょうか?
橘:先ほど鈴木さんからお伝えした通り、目標ユーザー数は100万人としていますし、現在は個人向けに展開しているサービスを法人向けにも展開する計画ですので、まだまだです。サービス設計チームからは、クラウドファンディングや他にもいろいろなアイデアが出ています。本当にそれらを実装しようとすると、さらに話が大きくなりますね(笑)。
もともとは代表・大石の発想から脱炭素や再エネ×ブロックチェーンの組み合わせに行き着いたわけですが、それは自然な成り行きだったと言えます。個人から個人へ電気を渡すというのが、ブロックチェーンの特徴ととても相性が良いんです。もちろん難しさは少なくありませんが、それに敢えてチャレンジしているところに面白さを感じていますね。
ー今後は対象となるユーザーを増やしていくのが目下の目標になるのでしょうか?
鈴木:そうですね、受容できるトランザクション数、スピードを向上させるのは継続して進める計画です。
もう少し先の青写真を描くとすると、みんな電力ユーザー以外の電力会社さんにもこの仕組みを使ってもらい、様々なデータでみんな電力とそれ以外の電力を使うユーザーの方々と繋がることも面白いと思っています。私たちは再エネや脱炭素を推進・支えるプラットフォーマーになりたいと常々言っているわけですが、顔が見える電力の広がりとともに、真のプラットフォーマーになっていくのではないかと期待しています。
ー期待が高まりますね。実現のために、今後の開発体制を強化していくと伺いました。どういったエンジニアに仲間に入ってほしいと思いますか。
橘:今までもそうですが、少数精鋭チームでやっていくことになると思います。参照できるドキュメントも少なく、そもそも開発に取り組むハードルがあると言えますので、自走できる方がいいですね。
松風:そうですね。ドキュメントがなければソースを直接読み解くのを厭わない方が向いているのかと思います。
鈴木:そういう意味では、ブロックチェーンの経験がある方は少ないですし、スキルというよりは、学び、開発に取り組むための基礎体力が大事ですよね。
ー自らの知識や経験をUPDATEしていくエンジニアが求められるということですね。みんな電力の仕組みを支えるブロックチェーンチームらしいカルチャーです。
本日はお忙しいところありがとうございました!