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世界で加熱する遺伝子検査サービスを日本のスタンダードに。「バイオ×IT」ハイブリッド起業家の思い

私達は遺伝子解析サービスを開発・提供しているスタートアップ。世界的には年々市場が拡大しているヘルスケア業界ですが、日本はまだそれほどの盛り上がりは見せていません。
その背景には、海外と比べて予防医学に対する意識が低いことが挙げられます。

日本にも遺伝子解析サービスはありますが、価格の高さや診断結果の複雑さから、一般的に普及したとまでは言えません。代表の井上も、過去に遺伝子解析サービスを手掛け失敗したうちの一人。
Zeneでは当時の課題をカバーしたサービス設計を行っています。

今回は井上と共同創業者の有地に、起業の背景やこれからのビジョンについて話を聞きました。

過去の失敗による悔しさが、起業の原動力に

まずはこれまでのキャリアと起業のきっかけについて教えてください。

井上:私は生物系の大学院に通っていて、バイオ業界を中心に就職活動をしていました。しかし、バイオ業界では就職先が決まらず、IT業界で就職先を探したところ、入社できたのがヤフー株式会社(以下Yahoo)です。もともとエンジニアリングが得意だったのと、ものづくりがしたかったので。

Yahooでは2010年に代表が宮坂に代わり、ITを使ったヘルスケアサービスの立ち上げに注力することに。30人ほどのチームを立ち上げ、私はその開発責任者としてチームを率いることになりました。

最初はOEMで始めたヘルスケアサービスでしたが、2014年にはさらに本格的に事業展開するため、自社での開発にシフト。しかし、6年ほど続けたものの、事業が軌道にのることなくクローズする結果に。

責任者としての悔しさから、当時Yahooの執行役員で定年退職する予定だった別所(現zene取締役)に相談したところ「一緒にやろう」と言ってくれたのです。その言葉が起業のきっかけになりました。

有地:私も井上と同じく、生物系の大学院に通っていました。もともとはアカデミアに残って研究を続けるつもりだったのですが、親にこれ以上の負担をかけるわけにもいかなかったので、社会に出て働くことに。

しかし、気がつくと就活シーズンは終わっており、受け入れてくれる企業はパチンコ業界かIT業界のみ。
もともとテクノロジーが好きだったこともあり、大手のSIerに入社しました。

働き始めてみるとスキルや知識が磨かれていくのが楽しくて、やがて受託の仕事に満足できなくなり転職を考えるようになりました。その時に見つけたのがYahooです。やりたいことをやらせてもらえる環境に惹かれ、実際に入社した後も、手さえ挙げれば好きな事業に携わらせてもらいました。

井上が責任者をしていたヘルスケアサービスは、私のこれまでの経験を最大限活かせる仕事。最初はお手伝いとして関わっていたものの、事業がクローズし井上が起業する際には、迷わずついていくことにしました。

ヘルスケアサービスが売れない日本でどう戦うか。過去の失敗から学んだ教訓

ヘルスケアの会社に転職する選択肢もあったと思いますが、なぜ起業を選んだのですか。

井上:最初は転職も視野に入れていました。しかし、自分が目指す世界を実現するなら、自分で会社を立ち上げた方が早いと思ったのです。

また、Yahooで失敗した経験に責任も感じていました。おこがましいかもしれませんが、「アメリカで4,000万人もの人が使っているサービスを、私のせいで広めることができなかった」と思ってしまったのですね。そのような思いから、改めて遺伝子解析のサービスを育ててみたいと思ったのです。

一度はYahooで失敗しているとのことですが、今回成功できると思った要因があれば教えて下さい。

井上:アメリカの戦略を参考にしていることですね。アメリカの遺伝子解析サービスが4,000万人ものユーザーを獲得できたのは、赤字覚悟で価格を下げ、データの獲得にコミットしたことにあります。日本の大企業の場合、目先の利益も追う必要もあり、アメリカと同じような大規模な投資でデータを獲得する戦略を描けている企業はありません。

また、日本ではC向けにヘルスケアサービスを展開するのが難しいと学んだことも大きいですね。日本人がヘルスケア商品を買う際の上限は、だいたい5,000円だとデータで立証されています。いくらいいサービスを作っても、日本では高いヘルスケア商品は普及しません。

そこで私達が取った戦略は、日本の皆保険制度を活用し、事業者向けにサービスを提供すること。社員の健康を守るために、事業者と一緒に価値を最大化しようと思ったのです。一度目の失敗から学んだことを活かして、事業を再構築したことが今回の勝機ですね。

項目数で勝負してきた従来の遺伝子検査サービス

海外の戦略を参考にしているとのことですが、世界的にはヘルスケア産業はもりあがっているのですか。

有地:明らかに盛り上がっています。なぜかというと、アメリカやヨーロッパを中心に、遺伝子解析の技術が安価で使えるようになっているからです。最初は高額で一部の人しか使えなかった技術も、市場が成熟するにつれて価格は下がっていくもの。特にアメリカは技術へのアプローチが早く、いち早く市場を拡大しました。

実際にアメリカトップのバイオ企業を訪問したことがありますが、すごい規模で活気がありました。世界では大きな需要があるので、日本でも社会実装さえできれば大きなサービスに成長するはずです。

いつかは世界のトップを目指していますが、まずは世界に追いつくことが私達の目標ですね。

なぜ日本ではヘルスケアサービスが普及しなかったのでしょうか。

井上:一つは先程も言ったように、高額なサービスが普及しないこと。皆保険制度が充実していないアメリカでは、病気にならないよう予防に対する意識が高いです。比べて日本は皆保険制度が充実しているため、予防への意識がどうしても薄れがち。
お金を出してまでヘルスケアサービスを使う人は多くありません。

また、これまでの遺伝子検査サービスを見ていると、項目数で勝負している節がありました。しかし、300項目の検査項目があっても、実際にそれらの検査結果に目を通す人はいません。利用者は、検査をしてもその後の行動として何をしていいか分からず、価値を提供できていなかったのです。

私達は項目数を増やすのではなく、一つひとつの健康課題に注目し、どのように生活を変えればいいのかにフォーカスします。それぞれに寄り添い、具体的な提案をもって価値を提供していきます。

「働きながら、研究をしても論文を書いても構いません」組織づくりにかける思い

これからどのような人を採用していくのか教えて下さい。

有地:最も優先度が高いのは、私達のように「大学でバイオを学んでいたけど、就職先がなくてIT業界に行った人」です。もう一度バイオの道に戻りたいと思っている方にぜひ戻ってきてほしいですね。

私達の仕事はバイオの知識もITスキルもどちらも必要です。どちらかを入社してから学ぶこともできますが、どちらも持っている方は大歓迎。バイオとITのスキルを活用できる仕事はそう多くありません。今のスキルを最大限活用したい方は、ぜひ私達と一緒にチャレンジしてください。

井上:研究がしたいのであれば、研究をしていただいても構いません。私達は多くの大学と共同研究をしており、人が足りない現場もあるので研究できる環境はいくら提供できます。論文を書いても結構ですし、サポートしてくれる専門家も大勢います。ぜひ自分の極めたい分野を極めてください。

私もエンジニアをしながら、研究を続けています。できる限り、一人ひとりのやりたいことを重視したいと思っているので、やりたいことがあれば遠慮なく言ってください。会社都合ではなく、個人都合で働ける組織体制を作っていきたいと思います。

副業でもいいのでしょうか。

有地:副業でも構いません。私達はまだ小さなベンチャーなので、大企業から転職してくるのは抵抗があると思います。まずはダブルワークから始まり、徐々に会社のことを知ってください。

会社を知ってもらった上でジョインしてもらっても、副業の稼働時間を増やすのでも構いません。それぞれの都合に合わせた働き方に柔軟に対応できますし、現在のメンバーも様々な働き方をしています。興味のある方は気軽に相談してください。Zeneは、個々のライフスタイルに合わせた働き方を実現する、時代に合った新しい組織を作っていきたいと思っています。

エンジニアが働く魅力があれば教えて下さい。

井上:CTOがYahooの元黒帯(Yahoo全社員のトップ1%のスペシャリスト)で、彼が技術のリードをしてくれることです。新しい技術も積極的に取り入れており、初めての技術にも安心してチャレンジしてもらえるはずです。

また、大きな会社ではシステムが整備されているため、ミドルウェアを触る機会がほとんどありません。私達はまだ小さな会社だからこそ、ミドルウェアに触る機会も多く貴重な経験になると思います

有地:スクラッチで作る経験も今ではなかなかありませんよね。1から設計してリリースするまで一貫して携われるのは、貴重な経験です。今のフェーズならではなので、チャレンジできるフィールドとして使ってもらえると嬉しいです。

また、ゲノムのデータはとても大きく、これから膨大な量のデータを扱わなければいけません。本当の意味でのビッグデータをいかにして扱うか、やりがいのあるチャレンジだと思います。

最後にZeneに興味のある方へのメッセージをお願いします。

井上:遺伝子解析は直接人の役に立てる仕事です。もちろん多くの仕事が人の役に立つ仕事だと思いますが、これほど直接的に人の命を救える仕事はそうないのではないでしょうか。より人の役に立ちたい、感謝される仕事をしたい方はぜひ一緒に頑張りましょう。

昔はやりがいがあっても、需要がなくて仕事として成り立たかなったヘルスケアの分野ですが、今は時代が追いついて魅力的な市場になってきました。人の役に立ちながらインパクトの大きい仕事をしたい方は、まずは話を聞きに来てみてください。

有地:かつての井上や私のように、バイオ系の仕事がしたくてもできなかった方からの応募をお待ちしています。IT業界は刺激的で楽しい分野ですが、学生時代に熱中した研究にもう一度チャレンジしたいという方とぜひ一緒に働ければ思います。

もしも専門知識が大学時代で止まっていても構いません。入社してからキャッチアップの機会は作りますし、最新の情報は惜しまず提供していきます。
もう一度バイオの道で頑張りたいという熱意がある方は、ぜひ悩まずにチャレンジしてみてください。

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