父の借金が、会社をつくった。——代表・横井雄次の原点
人材事業を始めたきっかけを教えてください。
綺麗な理由じゃないんですよ、正直に言うと。
「社会をよくしたい」とか「採用で日本を変えたい」とか、そういう話が先にあったわけじゃない。最初にあったのは、もっと個人的な話です。
父が借金を抱えて、家庭が崩れていったんです。
もう少し詳しく聞かせてもらえますか。
子どもの頃の話なんですが、父親の仕事がうまくいかなくなって、借金が膨らんで、結果として離婚になった。
当時は何が起きているか、よく分からなかった。でも、雰囲気は分かる。家の空気が変わって、母親の表情が変わって、生活が変わっていく。子どもって、大人が思っている以上にそういうことを感じ取るんですよね。
どうすることもできなかった。それだけは、ずっと覚えています。
その経験が、今の仕事につながっているんですね。
そうです。ただ、当時すぐに「だから人材の仕事をしよう」とはならなかった。気づくまでに時間がかかった。
大人になってから改めて考えたとき、「あのとき何が壊れたのか」を整理したんです。収入が途絶えたこと、信頼関係が崩れたこと、将来の見通しが立たなくなったこと——全部、仕事が根っこにあった。仕事がうまくいかないことは、本人だけの話じゃない。配偶者の人生が変わり、子どもの未来が変わる。そういうことなんですよね、仕事って。
だから「仕事をどう選ぶか」「どんな環境で働くか」「誰と出会うか」は、人生そのものを変えるんだと、自分の家庭を通じてリアルに学んだ。
兄さんの話も、影響が大きかったと聞きました。
大きかったですね。兄は海外で働いて、国際結婚をしたんですよ。
同じ家庭で育って、同じ原体験を持っているのに、「どこで働くか」を選んだだけで、出会う人が全然変わった。価値観が変わった。人生の選択肢が広がった。
それをリアルに目の当たりにしたとき、「仕事の選択って、こんなにも人生を変えるのか」とあらためて思った。自分の家のことも含めて、「仕事と人生はセットなんだ」という確信が強くなっていきました。
採用の仕事に入ったのは、その確信からですか。
そうです。人材・採用の仕事に就いたとき、「これが自分のやるべき仕事だ」という感覚がありました。
企業が一人を採用するということは、その人の人生に新しい起点をつくることだと思っています。良い出会いは人を変える。挑戦できる環境は人を大きくする。逆に、ミスマッチな採用は、求職者の時間と人生を削ってしまう。
だから採用を、軽く扱えない。
でも、採用支援会社はたくさんありますよね。なぜ独立して、バディデータを創ったんですか。
採用支援の会社の多くが、「商材を売ること」に特化しているんです。企業の採用課題が何かを考える前に、「この求人商材を使いませんか」という話になる。
でも、商材を変えても採用は変わらない。本質は、企業の魅力が言語化されていないこと、ターゲットが定まっていないこと、求人票の訴求がずれていること——つまり「設計」の問題なんですよ。
それを変えずに、手段だけを増やしても何も変わらない。そこに、ずっとモヤモヤしていました。
そのモヤモヤが、創業の原動力になった。
そうです。課題の本質から向き合える会社を作りたかった。「なぜ採れないか」を特定して、「企業の本当の魅力」を言語化して、最適な手段を選んで実行する。そういう仕事をしたかった。
それと同時に、もう一つやりたいことがあって。
求職者の側にも、ちゃんと向き合いたいと思っていた。
キャリア支援事業ですね。採用する企業側だけでなく、転職する個人の側も。
転職エージェントの多くは、求人紹介と内定獲得に力を入れる構造になっているんですよね。求職者が入社後に辞めても、紹介料は変わらない。だから「この人に合っているか」より「早く内定を出せるか」が優先されやすい。
でも、求職者って、本当の意味での判断材料を持っていないまま動かされているんですよ。求人票の「教育体制充実」が実態と違うこと、「年収アップ可能」の条件が曖昧なこと——入社してはじめて気づく。そのミスマッチは、防げたはずのものなんです。
現場視点と、採用コンサルタントの企業理解があれば、求職者が「納得して選ぶ」ための情報を届けられる。それをやりたかった。
内定承諾率85%という数字は、そのスタンスの結果ですね。
数字は結果でしかないんですが、でも大事な数字だと思っています。多く内定を出すことを目指したら、この数字にはならない。納得できる1社に絞り込む支援をした結果として、承諾率が上がった。
信頼が、数字に表れていると思っています。
最後に、バディデータで実現したいことを教えてください。
「出会いで、日本の未来を前進させる」というビジョンがあります。
企業と求職者の出会いの質を変えたい。採用する側も、される側も、「本物の出会い」ができる環境をつくりたい。
父の家庭が崩れたのは、仕事がうまくいかなかったからだった。でも逆に言えば、仕事がうまくいけば、人生は変わる。その出発点にいる会社でありたいんです。
採用できない企業を変えること。転職で迷っている人が納得して選べること。その両方に向き合い続けることが、バディデータの存在意義だと思っています。