「新しいことに挑める自分になりたい」という思いから、複数のメガベンチャーの内定を辞退し、仙台に本社を置くリスペクトに2019年に入社した山下 航希さん。
営業として500名を超えるマーケター・Web担当者と接する中で、「BtoB企業の抱える問題を解消したい」と感じたこともあり、BtoBマーケティングの情報を発信するメディア「BeMARKE(ビーマーケ)」の立ち上げにプロジェクトマネージャーとして参画し、その後事業部長に就任しました。現在は事業計画の検討、予実管理、メンバーのマネジメント全般を行っています。
今回は、BeMARKEを立ち上げた経緯、BeMARKEを通して実現したい世界を事業部長にお聞きしました。
1.「自己変革できること」がリスペクト入社の決め手
――どうして山下さんは大手企業の内定を辞退してリスペクトに入社したのでしょう?
入社の決め手は「どの企業よりも自己変革できる場所」だったからです。
今までの自分を振り返ると、大学で法学部を選んだ理由も、将来やりたい職業も「なんとなく」考えていたと思います。ただ、就活が始まる直前に、後遺症のリスクがある手術を経験したことで、気持ちに大きな変化がありました。「挑戦できる自分になりたい」と。
手術が終わった大学3年生の夏頃、多くの社会人と話す機会を求め、OB訪問したり、仙台にあるまちづくり系のNPOでインターンに参加したりしました。特にインターンでは、自分の進みたい道を見つけられた有意義な時間だったと思います。「震災をきっかけにリスタートするこの町を自分たちでつくる経験がしたい」と話す経営者の方々と出会い、「自分で事業を立ち上げて民間の立場から問題解決する生き方をしたいな」と考えるようになりました。
ただ、いざ就活が始まってみると大手ばかり受けていました。だめですよね。(笑)インターン先の代表からも「挑戦したいと言っていたけど、一番無難な道を選んでいないか?」と言われました。
そんなタイミングで、リスペクトからオファーメールが届きました。事業はもちろん、挑戦できる風土があることを知って「ここなら自己変革できる」と感じましたね。正直悩みましたが、リスペクトを選ぶこと自体が自己変革の第一歩だと思い、入社を決めました。
2.営業を通して気付いたBtoB企業の抱える問題を解決するためにBeMARKEを立ち上げる
――入社後はどのような業務を経験したのでしょうか?
営業に配属され、営業はもちろん、コンサルティング業務も経験しました。正直「どうして営業をやるのだろう」と思っていましたが、とてもいい経験になったと思います。
面接で「自分で事業を立ち上げたい」と代表の小原に伝えていましたが、入社した時点では具体的にどのような社会問題があり、どうやって解決すればいいのかといった具体的なイメージを持っていませんでした。
ただ、営業として500人以上のBtoBマーケター・Web担当者と接する中で、BtoBビジネスの問題に気付きました。「多くのBtoB企業で営業部門とマーケティング部門の連携がうまくいっていないこと」「商品・サービスを提供する側からの強引な営業が多いこと」ですね。
「BeMARKE」という固まったイメージはまだできていませんでしたが、こういった問題を解決できるサービスを作りたいと思うようになりましたし、代表に対して「ユーザーニーズがあるからやってみましょう」と提案するようになりました。
――その後、BeMARKE立ち上げにはどのように至ったのでしょうか?
「会社として新事業に投資できる余力ができたこと」「マーケティング全般のメディアを作るアイデアを小原が持っていたこと」「自分の中で解決したい問題が見つかったこと」の3つが重なった結果だと思います。
代表に提案していたこともあり、「マーケティング領域で新規事業をやろうと思っているから、山下やってよ」と声をかけていただきました。4年目になるタイミング。挑戦したいという思いから「やります」と伝えましたね。
その後、BeMARKEをどのような事業にすべきか中心メンバーで何度も議論しました。マーケティング全般なのか、Webマーケティングに絞るか、業界に特化するかといった内容です。議論を重ねるうちに「顧客解像度の高い領域で勝負すべきだ」という話にまとまりました。そこで、自分たちが支援してきた「BtoBマーケティングにしよう」という結論になり、BeMARKEがスタートしました。
3.BeMARKEを通してBtoBマーケティングにある分断を解消する
――どのような世界を実現したいと思いBeMARKEを立ち上げたのでしょうか?
「営業部門とマーケティング部門の不仲をなくしたい」「強引な営業を減らしたい」の2つですね。
――なぜ営業とマーケティング部門の不仲を解消したいのでしょうか?
BtoBマーケティングは、マーケティング部門が見込み顧客の獲得やアポイントメントの獲得まで行い、営業部門がそれ以降の工程を引き継ぐ流れが一般的です。しかし、実際にはマーケティング部門が作成したリストやアポを営業部門が活用しないケースが横行しています。
営業部門としては「リストを渡されてもアポの確度が低い」「数字に囚われて負担が大きい」と不満や不安を感じているものの、マーケティング部門は「どうして営業はやってくれないのか」と気付けていません。両部門の目線が合っていないのです。大企業においては、マーケティング戦略を考える本社と営業支店との対立構造も見られます。
どちらも商品・サービスを「売る」という目的で動いているはずなのに、協力できていないのはもったいないと思いませんか?
――確かにそうですね。ではBeMARKEがどうやって不仲を解消できるとお考えですか?
正しいBtoBマーケティングの手法を解説することで、お互いの行動を理解し、歩み寄れると思っています。
「正しい」というのは、全体最適とほぼ同義です。世の中に出回っているBtoBマーケティングに関する情報の多くが、MAやSFAなど特定の領域の企業の視点から語られています。つまり、「マーケ担当者のための~」「Web担当者のための~」という記事ばかりになっており、営業に向けた内容となっていないのです。
BeMARKEでは、どちらかの視点に偏らず「売る」ということ全般について語るメディアであり続けようと考えています。両部門の知識レベルが向上し、目線がそろい、自社の商材を「売る」ために協力できる企業が増えてほしいですね。
――次に、強引な営業を減らしたいと思う理由を教えてください。
マーケ担当者が資料請求したり、セミナーに参加したりすると、営業メールや営業電話が大量に来るようになります。あまりに大量に連絡がくるため仕方なく商談した結果「やはりこのツールは不要だな」となれば、お互いに時間の無駄になってしまうだけです。
もちろん、購買を前向きに考えている段階であれば、営業メールや電話が役立つケースもあります。ここで問題なのは、マーケ担当者の置かれている状況を考えず、闇雲にアウトバウンドセールスする企業が本当に多く存在していることです。日本全体の生産性を落としていると感じますね。
――強引な営業を減らすためにどのような仕組みを考えているのでしょうか?
先ほど説明した、正しいマーケティング知識を理解することで強烈なアウトバウンドセールスは減らせると思っています。
これに加えて、BeMARKEでは掲載社(売る側)に手厚い情報を提供することも有効だと考えています。これは僕の仮説ですが、「売る側が顧客をきちんと理解できていない」ことで、強烈なアウトバウンドセールスが横行しているのではないかと思っています。自社の商材と相性の良い見込み顧客が定義されていなかったり、見込み顧客の置かれている状況を判断する術を持っていなかったりするわけですね。
BeMARKEには、大小かかわらずBtoBマーケティングに関するさまざまな相談を受けるナビゲーターという機能があります。相談を受ける中で把握した温度感や課題感を掲載社に提供することで、どの見込み顧客にアプローチすべきか分かりやすくなると考えています。
また、BeMARKEでは、ユーザーから資料請求があったとき、どういった導線で資料請求に至ったのかを掲載社が把握することも可能です。見込み顧客が何に興味を持っているか把握することで、ニーズにマッチした営業電話やメールになり、歩み寄りを実現できると思います。
4.BeMARKEを「良いチーム」にするため、求める人材
――BeMARKEを立ち上げて約1年。率直な感想を教えてください。
BeMARKEを立ち上げる前は、良い商品を作るか、強い営業組織があれば事業って成り立つだろうと考えていました。でもこの1年やってきて気付いたことは、「良いチーム」作りが事業を進める上で一番大切な要素だということです。
まだ正解は分かっていませんが、良いチームというのは、事業部長の構想通りに動くチームではなく、各メンバーが主体的に創意工夫できるチームかなと思っています。どれだけ素晴らしい構想があったとしても、構想通りに物事が進むことはほとんどありません。だからこそ、試行錯誤しながら、ちょっとずつ軌道修正して正しい方向に進めるチームを目指したいです。
――より良いチームを目指すために、BeMARKEではどのような人材を求めていますか?
人のことが好きな人材ですね。言い換えると、相手の言動の裏側を探ることが習慣化されている方です。マーケティングや営業をテーマに扱うメディアなので、人の行動原理に興味がなければ、どの職種でも良い仕事はできないと思います。
また、自走できる人材も求めています。新規事業だからこそ、分からないから止まるのではなく、「まずやってみよう」「分からないから聞こう」と行動できる能力を持っている方がBeMARKEに来てくれたら嬉しいなと思っています。