こんにちは!Contrea株式会社のMedicalチームでインターンをしているMinorinです。2025年7月15日付けのプレスリリースの通り、コントレアがこの度リリースした「MediOS 動画説明」は大規模なアップデートを経て、インタラクティブな「触れる動画」として生まれ変わりました。患者さんの深い理解と医療現場の負担軽減を目指すこの革新的なプロジェクトは、どのようにして生まれたのでしょうか。
今回は、発案者であるMedicalチームのTsukuruさん、そしてMedicalチームマネージャーのAikoさんにその制作秘話について伺いました。ぜひ最後までお付き合いください!
~「触れる動画」とは~
従来のMediOS動画説明は、一方的に再生されるため「動画のスピードについていけないこと」や「医療用語が理解できないこと」といった課題がありました。今回の「触れる動画」は、これらの課題を解決し、患者さんが自分のペースで、より深く情報を理解できるよう設計されています。具体的には、動画をシーンごとに区切り、ページをめくるように自由に前後へ移動できる「前へ戻る、次へ進むボタン機能」を搭載。これにより、患者さんは自身の理解度に合わせて動画を繰り返し確認できるようになりました。さらに、動画の字幕にある専門用語をタップすると、その場で詳しい説明が表示される「語句説明機能」も加わり、難しい言葉でつまずくことなくスムーズに理解が進みます。
まず、「触れる動画」開発のきっかけについて、Tsukuruさんに伺いたいです。
Tsukuruさん:
実は、コントレアに正社員として入社が決まった日に提案したアイディアなんですよ。もともと、私は業務委託の動画クリエイターとしてコントレアの動画制作に従事していたんですが、その頃からずっと心の中に引っかかっていたことがあって。それがこのアイデアの源になりました。
動画を作る仕事、特に医療の説明動画に携わっていると、「5分や10分の動画を、患者さんが一度で完全に理解するって本当に難しいな」と、常々感じていたんです。もちろん、いち視聴者としてもそう思っていましたし、何より動画を編集ソフトで作る立場だからこそ、その難しさを痛感していました。
動画を作る最終工程って、作ったものを確認する「チェック作業」があって、これが結構重い作業で。何度もチェックするのに、どうしても動画の内容が「一発で頭に入る」ってことがなかなかないんですよ。動画を作ってる自分ですら頭に入ってこないんだから、病院で見る患者さんって、もっと頭に入ってこないし、理解しづらいだろうなって、業務委託時代にずっと思っていました。
そのために、当時は動画の表現方法を工夫したりしてきましたが、社員になるにあたって、ふと立ち止まって考えたんです。コントレアはSaaSプロダクトを作っている会社で、 だからこそできる動画のソリューションって何なんだろう?って。
ずっと動画を作ってきたからこそ、動画の持つ「一方通行性」、つまり一方的に情報を与えるある種の“暴力性”みたいなものに、ずっと疑問を感じていました。動画の限界を肌で感じていたからこそ、社員になって「そこをシステムなら解決できるんじゃないか?」と考えたのが、今回の「触れる動画」の発想のきっかけです。
~患者さんの「理解」に寄り添う操作性と双方向性~
今回の「触れる動画」の開発で、Tsukuruさんが特にこだわった点はありますか?
Tsukuruさん:
主に2つあって、まず一つ目は、患者さん一人ひとりの理解度に合わせて、動画を「自分のペースで」見られるようにすることです。従来の動画だと、理解が早い人にとっては「遅いな」と感じるし、逆に理解が追いつかない人にとっては「待ってくれ」ってなりますよね。たいていは、みんなが理解しやすいために理解が遅い人に合わせたスピードで作ることになる。でも、もともと医師から患者さんへの説明をサポートするためにあるMediOSにとって、時間を平等に奪うという性質って、本来の目的からかけ離れているんじゃないかって思ったんです。
現実の医療現場では、医師は理解が早い患者さんにはスピーディーに説明できますし、ちょっと理解が遅い患者さんには噛み砕いて説明することができる。なのに、動画が時間を平等に奪うことによって、その「個々に合わせた説明」が抜け落ちてしまうのはどうなんだろう、と考えていました。
だから、基本的な機能にはなるんですが、「進む・戻る」がパッと見て理解できるプロダクトにすること。これを一番大事にしましたね。画面を見たら「一時停止はここだ」「次の説明に行くにはこうすればいい」「この説明をもう一度見たいならここだ」って、本当に直感的に分かってもらうこと。こういうインタラクティブなプロダクトはまだ世の中に少ないからこそ難しいんですが、そこはプロダクトチームとも密に連携を取りながら、うまく設計できたんじゃないかなと思います。
二つ目は、情報伝達の「一方向性」への課題意識です。これもインフォームドコンセントの現場に照らし合わせると明らかで、医師から患者さんに一方的に情報を伝えるだけではないですよね。患者さんからの質問や、「何が分からないんだろう?」というのを、言葉だけでなく表情やしぐさからも把握しながら説明するのが、医療現場での説明行動だと思うんです。それが動画の一方向性によって抜け落ちてしまうのは良くない。
そこで、「語句説明機能」を付けることに強くこだわりました。「触れる動画」の着想時点では、実はこの機能は思いついていなかったんです。でも、やっぱり医療現場での双方向な説明に近づけるためには、患者さんが分からない語句をその場で知ることができる機能は絶対に必要だなって。そこは開発途中から「これは必ず実現させたい」と強く思って、こだわって作ったポイントです。
~Valueが支えた新規プロジェクト立ち上げの舞台裏~
全社を巻き込む大きなプロジェクトを進める上で、どのようなことが大変でしたか?また、どのようにして乗り越えましたか?
Tsukuruさん:
思い返すと、入社していきなり開発の最前線に立って「旗振り役」をやるということ自体が大変なことだったなと思います。実は、今までスタートアップやベンチャーのような環境に身を置いたことがなかったので、最初はアイデアを伝えることにすらビクビクしていたんです。でも、コントレアは、入社何年目とか経験の浅さとか関係なく、「良いアイデア」を取り上げて、こんなにも早く動ける組織なんだと思い知りました。
今まで、プロジェクトをやり遂げた経験が自分になく、会社にとっても前例のないプロジェクトだったので、自分なりに0から手探りでやり方を考えて進めていかなければいけなかったわけです。仕事の区分上はPdM的な仕事だったと思うんですが、「自分がやっている仕事って、これでいいんだろうか?本当に正しいんだろうか?」って、誰も教えてくれるわけではないし、成功するかどうかも分からないけど、突っ走るしかない、という状況は正直不安はありましたね。
また、最初は入社したばかりで、誰が何をしていて、どういう役割かもわからず、まだ話したこともない人がほとんどで…。そんな状況から、「『触れる動画』はTsukuruさんが旗振ってやってるんだ」という、全社からの期待のベクトルを自分一人で受け止めて、やり遂げなければいけないというのはプレッシャーではありました。ただ、それを初めてでもやらせてもらえるという環境、そしてReach Handsを奨励してもらえる、こういうMake Domino Waveのような動きを後押ししてもらえるということが、やっぱり乗り切れた大きな要因ですね。
そして、何より大きかったのは、部署を超えたコントレア全体での「チームの後押し」でした。特に、Productチームには、多くの実践的なアドバイスをもらい、プロダクトを実際に形にする部分で多大なサポートを受けました。また、検証フェーズでは、私たちだけでは手が回らない部分をBizチームが担ってくれて、お客様から期待以上に多くの声を集めてきてくれました。本当に、コントレア全体で支えられてこのプロジェクトを推進できたと感じています。
それを最後まで遂行できたTsukuruさんの原動力は、何だったのでしょうか?
Tsukuruさん:
「コントレアに恩返ししたい」という気持ちが一番大きかったですね。
正直な話、コントレアに入社するまでのキャリアでは、「自分にとって仕事ってなんだろう」とか、「こういうキャリアを歩みたい」という方向性や価値観、仕事の哲学みたいなものが、ずっとグラグラなまま仕事をしてきたんです。そんな中で、会社員時代やフリーランス時代、様々な仕事をしてきましたが、「この仕事をやっていて一番楽しい!」と心から思えたのが、コントレアでの映像制作の仕事でした。仕事の価値観が不安定だった自分にとっては、「仕事をしていて楽しい」と思える心のオアシスのような存在だったんです。それはなぜかというと、自分の得意な映像制作というスキルを活かして、「確実にこの世の中を良くしているものを作っている」という実感ができたからなんです。しかも、コントレアは本当に業務委託のクリエイターに対しても親身で、配慮があり、リスペクトを持って接してくれていたので、「この会社との仕事は大事にしたいな」と強く思っていました。
そうした思いを持ってコントレアに社員として入社させてもらって、その矢先に自分が提案したプロジェクトに期待をかけてもらい、「頑張れよ」と背中を押してもらった。仕事の楽しさを自分に教えてくれた場所にそんな風に期待されたら、「これはやり遂げないと筋が通らないな」という気持ちが湧くじゃないですか。
コントレアだからこそ、今回の新規プロジェクトが実現できたと思えることはありますか?
Tsukuruさん:
それは間違いなく、コントレアに浸透している3つのValueのおかげだと感じています。何か新しいことを始めるときって、どんな組織でも少なからず抵抗ってあると思うんです。でもコントレアには、「Make Domino Waveを起こす人は、Valueを体現している人だよね」という考え方や、「Go V flightができる人が、Valueを発揮できている人だよね」という共通認識があります。さらに、「Go V flightしている人に、積極的に巻き込まれに行くReach handsは素晴らしいことだよね」という価値観も強く根付いている。この文化が非常に大きいと思っています。
コントレアの中にいると、すごく当たり前のことのように感じてしまうんですが、世の中には新しいことを口に出すだけでも、とてもためらわれたり、ハードルが高い組織ってたくさんあると思うんです。それが、コントレアではValueという共通言語でつながり、そのハードルが下がっている。しかも、それを全員がちゃんと理解し、実践しようとしている。これはやっぱりコントレアならではですし、今回「触れる動画」を最後まで走り切らせてもらえた、最大の要因であり、コントレアの文化の強みだと感じています。
「触れる動画」として、医療現場にはどういう変化を、患者さんにはどういう体験を届けたいですか?
Aikoさん:
最終的には、「自分の健康を、自分で舵を取ることができるようになったら本当にいいな」と思っています。今は、医療情報とか体のことって、難しいと感じる方が多いと思うんです。だけど、「触れる動画」を通して、自分の身に起きていることが、より「手触り感」を持って知ることができるようになれば、その情報にアクセスしたり、知ろうとするハードルを下げられるんじゃないかと。そして、「触れる動画」の力と、医療現場にいる方々の力、そして患者さんご自身の力が加われば、医療がもっともっと扱いやすくなって、より良い結果を生むと信じています。最終的には、今よりもっと良い結果を、患者さんご自身の手で引き寄せられるような状態を築けるといいなと、それが「触れる動画」の大きなゴールとして考えています。
最後に、今後「触れる動画」をどのように進化させていきたいですか?
Aikoさん:
そうですね。まず、できれば紙媒体の良さも動画と融合させたコンテンツにしていきたいと思っています。私たちが考える「紙の良さ」というのは、今のMediOSのような画面で見る動画やデジタルメディアにはない、特有のユーザー体験です。例えば、動画は動きや音声で情報を伝えるのが得意ですが、画面という枠に収まる制約があります。一方、紙媒体は「見たいところに一瞬でアクセスできる」「ページを手でめくる感覚」「どこに情報があるか直感的に把握できる」といった強みがあります。
また、デジタルシステムは「システムが用意した順路」でしか情報にアクセスできないことが多いですが、紙は受け取った瞬間から、どこにアクセスするのも自由自在です。好きなページにいきなり飛んだり、いくつでも付箋を挟んだり、複数の資料を同時に広げて見比べたりもできます。タブレットで二つの動画を同時に見比べるのは難しいですよね。こうした、ユーザーが情報を自在にコントロールできるという点が、デジタルがどれだけ進化しても紙に及ばない、大きな魅力だと考えています。だからこそ、動画の持つ分かりやすさと、紙の持つこうした操作性・情報へのアクセス自由度を融合させた、新しいコンテンツの形を追求したいんです。
そしてもう一つ、病院側がある程度、コンテンツを「操れる」状態に発展させていけたらな、と思っています。説明動画を使う理由は、大きく二つあると考えていて、一つは説明業務の「タスクシフト」、つまり医療従事者の負担軽減。もう一つは、患者さんにとっての「説明補助」、つまり予習や復習、他者への共有といった役割です。これら二つの目的を本当に満たすためには、できるだけ病院に近い場所で、医療従事者が話したい内容や、患者さんに合った内容をある程度カスタマイズした状態で動画を使えないと、タスクシフトとしては成り立たないだろうな、と。また、説明補助の側面でも、「この患者さんにはこの説明までにしておこう」とか、患者さんにとって必要な情報を取捨選択できる状態じゃないと、使いこなしてもらえないと思うんです。
説明の標準化という意味では、一つの動画を皆が使うというのも一つの答えではあります。しかし、最終的な目的である「タスクシフト」や「説明の補助」という役割を考えると、ある程度病院側で動画を操作できる柔軟性が不可欠だと考えています。例えば、患者さんの理解度に合わせて説明の粒度を変えたり、表現を変えたりといったことも考えられます。入院案内であれば、「何歳以上の方には介護保険についても案内しておこう」といったように、柔軟に対応できると、もっと使いやすくなるはずです。
編集後記:
実は私自身も、インターンとしてこの「触れる動画」プロジェクトの制作に一部関わらせていただいています。アイデア段階から、それがプロダクトとして少しずつ形になっていく過程を間近で見てきたからこそ、今回のリリース、そして今回のインタビューで伺ったお二人の熱い想いに、改めて深く感動しました。
入社直後のTsukuruさんが未経験のプロジェクトリーダーとして走り抜けられたこと、そして「コントレアだからこそできた」という言葉の裏側には、コントレアの「Reach Hands」「Go V Flight」「Make Domino Wave」といったValueが深く浸透していること、そして部署を超えて互いを支え合うチームの強みがあることを改めて実感しました。
コントレアの文化がどのように形成されているのか、さらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください! (コントレアの文化に関するWantedly記事)
このインタビューを通して、普段の業務では聞くことのできないお二人の原体験や、コントレア、そして医療への深い情熱を知ることができ、私自身も非常に刺激を受けました。Tsukuruさん、Aikoさん、貴重なお話を本当にありがとうございました!