AIに特化したファブレス半導体企業であるEdgeCortixは、この度、シリーズAラウンドにて、800万米ドル(約10億円)以上の資金調達を実施したことを発表しました。
EdgeCortixの再構成可能なDynamic Neural AcceleratorプロセッサアーキテクチャおよびAIアクセラレーションSAKURA(TM) SoCは、インフラストラクチャや組み込みエッジデバイスにおいて、最高クラスの電力効率とクラウドレベルに近いパフォーマンスを実現できます。EdgeCortixのソリューションは、リアルタイムアプリケーションの低遅延を実現し、既存のGPUベースのソリューションと比較して、1ワットあたりのフレームレート(FPS/Watt)を10倍以上向上させることができます。
エッジコンピューティング用のAIが急速に普及する中、現在のAIソフトウェアやディープニューラルネットワークと、CPUやGPUなどの汎用プロセッサとのミスマッチを克服することが課題となっています。また、環境に優しくよりエネルギー効率の高いソリューションの開発に対するニーズと注目も高まっています。EdgeCortixの創設者兼CEOであるサキャシンガ・ダスグプタ博士は、次のように述べています。
「今回の資金調達ラウンドの完了とパートナーシップの拡大は、当社のチーム、技術、および製品の成長牽引力を証明するものとなりました。私たちは、独自のソフトウェアファーストのアプローチを用いて、今日のニューラルネットワークと、さまざまな機械学習フレームワークやデバイスのアプリケーションをシームレスに処理するための基盤となる省電力のドメイン固有のハードウェア間に緊密なカップリングを形成するDynamic Neural Accelerator プロセッサIPを開発しました。この1年間で国内外で7件の特許を取得し、毎月1件以上の新規特許出願を申請するまでに事業は加速しています。また現在は、防衛、自律走行車、衛星通信、スマートシティ、半導体設計・製造など様々な分野において、世界的に有名な20社以上の顧客やパートナーと協業しており、当社のIPを活用頂くことで、エンドユーザー様に高い価値を提供頂けるよう支援してまいります。」
また、EdgeCortixの顧問委員会の一員であり、トラストキャピタル株式会社の代表取締役兼CEO、シリコンバレー・ジャパン・プラットフォームのエグゼクティブ・コミッティーである藤井 ダニエル氏は次のように述べています。
「EdgeCortixは、市場において実にユニークなポジションにあります。主要な産業分野でAIアクセラレーションを活用した大規模なビジネスニーズを活用していることに加え、ソリューションの開発方法と独自の市場参入に関するビジネス戦略が真の差別化要因となっています。(私の経験では)半導体企業は少し近視眼的傾向があり、コードの配信に専念している企業もあれば、半導体の設計と製造に専念している企業もあります。しかし、EdgeCortixの特徴は、ソフトウェアとハードウェアIPの協調設計を行い、顧客のニーズに応じたソリューションを提供するというアプローチにあります。ソフトウェアについては、FPGA、サードパーティのカスタムシリコン、EdgeCortixのSoCなど、異機種混在のプラットフォームを独自にサポートしています。ソフトウェア中心のハードウェア・エコシステムで提供するこのアプローチこそが、同社の成長のキーであり、AIアクセラレーションの分野では他に類を見ない企業です。」
EdgeCortixは、独自のプロセッサの開発と共に、FPGA(Field-Programmable Gate Array)の主要企業と積極的に連携し、エッジおよびサーバアクセラレーション用のAIハードウェアおよびソフトウェアIPのライセンスを供与しています。
また、この資金調達の発表と同時に、EdgeCortixは、大手エンタープライズクラスのFPGAアクセラレーションメーカーであるBittware社(Molex企業)との業務提携を発表しました。両社は、2022年にBittware社の厳選されたハードウェアソリューションとして、EdgeCortixの超低遅延AI推論IPと堅牢なソフトウェアを市場に導入する予定です。
Bittwareのマーケティング担当副社長、Craig Petrie氏は次のように述べています。
「エッジにおける高度なAIソリューションのデプロイに適したプラットフォームとして、EdgeCortixにインテルAgilex FPGAを搭載したBittwareのエンタープライズクラスのアクセラレータをお選びいただき嬉しく思います。Molexのグループ会社として、私たちは技術革新を可能にし、顧客がリスクおよびコストを削減しながらFPGAベースのソリューションをデプロイ出来るようサポート致します。」
シリーズAでは、米国のVajra Directをリード投資家とし、Monozukuri Ventures(日本)、FuturePlay(韓国)、シンガポールおよび日本のファミリーオフィスにご参加頂きました。このラウンドには前回参加いただいた投資家の皆様にもご参加頂き、最終的には投資枠を超えました。
今回の資金調達をもとに、販売チャネルの拡大と、製品の革新に努めて参ります。また技術面においては、日本の堅牢なエンジニアリング部門を引き続き拡大させるとともに、米国での販売・マーケティングチームを増強し、EdgeCortixの高性能・省電力のAIコプロセッサチップSAKURAをグローバル市場に提供する予定です。Vajra DirectのマネージングパートナーであるMichael Sands氏がEdgeCortixの取締役に就任しました。Sands氏は次のように述べています。
「私たちは、世界最高峰のエッジAI半導体企業を構築するというサキャシンガ博士のビジョンに非常に感銘を受けました。世界でチップ需要が高まる中、EdgeCortixが達成しようとしている性能とエネルギー効率の向上は画期的だと考えています。」
また、Monozukuri Venturesの最高投資責任者の関 信浩氏は次のように述べています。
「Monozukuri Venturesは、シンガポール、日本、米国とグローバルに活動する革新的なファブレス・スタートアップであるEdgeCortixに参画できることを嬉しく思います。私たちは、日本と北米の製造業のネットワークを最大限に活用し、EdgeCortixが世界的に有名なパートナーや顧客と提携できるよう支援致します。また、私たちは自動車やロボットなど日本の強みである産業がEdgeCortixのエネルギー効率の高いエッジAI技術を用いて、スマート社会の構築に向けての動きを加速させるだろうと考えています。」
今回の調達とパートナーシップの提携を踏まえ、さらなる成長を目指します。
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