今回はIVAのビジョンである「70兆円市場をハックし、経済のポテンシャルを解放する」について、真贋鑑定サービス「フェイクバスターズ(FAKEBUSTERS)」の視点から紹介したいと思います。
偽物は「日常の中」に入り込んでいる
「この値段、ちょっと安すぎない?」「品薄なのに手に入れられちゃうの?」
フリマアプリやリセールサイトを見ていると、このような違和感を覚えることがあります。皆さんにも「きっと大丈夫だろう」と思って購入したり「本物だといいな」と願いながら取引をした経験があるのではないでしょうか。
ニュースやSNSでも偽物の話題が増え続けており、現在では「欲しいものを手に入れる期待感」とともに「少しの不安」を抱えながら商品を購入することが当たり前になりつつあります。
OECD(経済協力開発機構)の報告によると、世界の偽造品取引は貿易の約2.3%を占める規模に達し、日本円にして約70兆円(約4,670億ドル)の規模にまで拡大しています。さらに、その多くはアパレルやスニーカー、革製品など、私たちに身近なカテゴリーに集中しています(*1)。これは対岸の火事ではなく、気づかないうちに「偽物が忍び込む環境」が日常化しているといえます。
*1:OECD「Mapping Global Trade in Fakes 2025」
リセール市場の成長と、偽物という課題
スニーカーやアパレルなどのブランド品は、定価で手に入らない商品がリセール市場で流通することが一般的になりました。抽選販売や数量限定が定番化したこともあり、リセール市場は「欲しいものを手に入れるための重要な選択肢」として多くの人に利用されています。
そして、この市場は大きな成長を遂げています。たとえばアパレルでは約14.4兆円(960億ドル)規模に達し、今後は約3倍となる約43.5兆円(2,900億ドル)まで拡大すると予測されています(*2)。スニーカーに限っても約1.5兆円(約100億ドル)規模の市場となっており、今後も年率10%以上で成長が続くとされています(*3)。国内でもメルカリを例にすると、現在の取引総額は1兆円規模に及びます。
一方で取引量が増え、市場が拡大するほど偽物が紛れ込む余地も広がっています。人気商品が高値で取引される構造の中では、偽物を流通させるインセンティブも同時に高まっているのです。
ただし、リセール事業者や出品者自身もこの問題の当事者です。「意図せず偽物を仕入れてしまうリスク」や「信頼低下による売上や評価への影響」、「ユーザーとのトラブルやクレーム」といった被害も市場と同じスケールで拡大していると考えられます。
これは市場の構造的な課題であり、同時にリセールに関わるプレイヤーにとっても成長を阻害する大きなリスクになっています。
限りある資源を有効活用するサーキュラーエコノミー(循環型経済)の発展においても、「価値の分かる人へ価値あるものが届く」という世界の実現においても、リセール市場は健全に成長する必要があります。だからこそ「いかに商品の信頼を担保するか」が、市場や事業そのものの価値を左右する重要なテーマになっています。
*2:Maximize Market Research「Global Apparel Resale Market」
*3:Growth Market Report「Sneaker Resale Market Research Report 2033」
偽物が変えてしまう「ショッピング体験」
この問題は私たちの体験も確実に変えています。本来ショッピングとは「欲しいものを選ぶ」というシンプルで楽しい行為のはずですが、今では「これは本物か?」というネガティブな判断を踏まないと成り立たなくなっています。価格も「高いから安心、安いから危険」とは言えず「価格=価値」という指標が崩れつつあります。
さらに本物を持っていても偽物と疑われたり、証明を求められたりする状況も生まれています。これは不便という枠を超えてブランドや市場の価値そのものを揺るがす問題に発展しています。
なぜ、見抜けなくなったのか
現在の偽物は単なる粗悪品ではありません。素材や縫製、付属品の精度は年々向上し、見た目だけでは判別が難しいレベルに達しています。
たとえばスニーカーの偽造品は、過去には誰が見ても偽物と分かるものばかりでしたが、現在では専門の鑑定士しか判断できない本物そっくりのものが市場に現れています。少し専門的な話になりますが、偽造品は完成度によって下からC・B・A -(マイナス)・A・S・N級品に分けられます。IVAの真贋鑑定サービス「フェイクバスターズ」ではN級品の中でも更に完成度の高いモデルを「クローン品」と呼んでいますが、これらの中には正規品を作る工場からパーツを横流しして組み立てられるものが存在するのです。
さらにOECDの指摘通り、偽造品はグローバルな流通網に入り込み、正規品と同じような経路で市場に出回るケースも増えています。また、税関の検査から逃れるためにパーツ毎に小分けにして輸送し、販売先の近くで組み立てる手口も横行しています。その結果、個人の知識や経験だけで見抜くことは現実的に不可能になっています。
IVAの取り組みと、目指している未来
こうした状況の中で重要になるのが「信頼をどのように担保するか」という視点です。IVAでは、鑑定士の専門知識とAIによる鑑定を組み合わせることで商品の真贋を判定し、この課題に取り組んでいます。
鑑定士は偽造品や工場が多い東アジアを中心に、偽造対象のブランドを多く有する米国など、独自のネットワークによって世界中から集めています。ひとつの商品に複数人の鑑定士を割り当て、それぞれの判定を総合して真贋を導き出しています。
また、鑑定結果をAIに学習させることで、言語化が難しい鑑定士の経験値を体系化し、より効率的で迅速な鑑定を実現しています。人による鑑定とAIによる鑑定を組み合わせることで、鑑定精度は2026年4月時点で99.99%以上(99.9998%)を維持し、累計200万件以上の実績を誇ります。
この鑑定サービスは、個人向けに加え、フリマアプリやオークションサイトなどのリセールマーケットプレイス、リユースショップ・ブランド買取販売店といったリセール事業者様にも提供しています。現在では国内外500店舗以上で活用されていますが、多様な規模・形態に導入が進むことで、偽造リスクを排除し、安心して取引できるインフラを構築できると考えています。この取り組みを通して健全なリユース市場の発展を推進し、将来的には経済のポテンシャルが解放された活気のある社会を実現できると信じています。
この思いをIVAのビジョンとして示したのが「70兆円市場をハックし、経済のポテンシャルを解放する」です。
単に偽物を見抜くのではなく、安心して商品を購入し、取引できる状態をつくること。そうした状態が当たり前になることで、市場は本来の健全な姿を取り戻します。IVAは、そのための「信頼のインフラ」をつくっています。
さいごに
安心を揺るがす偽物は私たちの生活に忍び込み、静かに広がっています。IVAでは鑑定士を含めたさまざまな役割を担う人材が、この課題に向き合い挑戦を続けています。もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度お話しできれば嬉しいです。