起業や新規事業にはさまざまな壁がありますが、その中でも特に重要な
「マーケットフィット」について今日は語らせてください。
(この記事は、2023年7月に社内向けに発信された内容をもとに編集を加えて公開しています)
石の上に座り続ける覚悟が君にはあるか?
15年ぶりの新作が話題となった「インディ・ジョーンズ」は子供の頃から好きだった映画なのですが、80年代には、今でも新作が出るような面白いハリウッド映画が本当にたくさんありました。
中でも「インディ・ジョーンズ」のように、伝説の秘宝を求めて冒険者たちが挑んでいく系の、わかりやすくてスリルあるアドベンチャー映画が僕らは大好きで。
そのお宝探し道中には、
「この人は最後まで生き残れないだろうなー」とか、
「この崖は絶対崩れるでしょ!」とか、
そういうお決まりパターンがわかってしまうんですが、それもまたエンタメとして一興で、
手に汗握りながら冒険家たちが「難関」に挑む姿をハラハラしながら応援したものです。
0から1を立ち上げる起業家の挑戦というのは、
リスクを抱えながらも到達すべき社会を目指す、
さしづめ冒険家・探検家にも似ているところがあるかもしれません。
ゼロイチ起業を志すアントレプレナーたちの間では、道中数々の難関
・・・「ぶち当たる壁」があるらしいとささやかれ、
「プロダクトリリースの壁」
「マーケットフィットの壁」
「採算化の壁」
「組織化の壁」
・・・などなどが行く先々に待ち構えています。
初期の「リリースの壁」とは、いわゆる商品開発をして世にリリースするまでの道のりですが、これはこれでゼロからイチを生み出すのになかなか苦労の連続で、多くの猛者たちがここにも辿り着けずに消えていきます。
ようやくそれを乗り越えて、晴れて「リリース」の祝福を受けると、すぐに立ち塞がるのが「マーケットフィットの壁」。
「マーケットフィット」とは、商品がお客さんのニーズにマッチして、十分に売れていく状態になることです。
リリースして体力・精神力を使い果たしてしまうと、この壁を越えることは到底できません。
なぜなら、「マーケットフィットの壁」は「リリースの壁」以上に非常に高く険しく、樹海のように先の見えない道なき道だからです。
新規事業では、プロダクトリリース後の初速をぶち上げるために、
プロモーションやらPRやらを「せーの」で合わせてドカンと発射するやり方をする例が多いのですが、僕の最近の考え方では、これはやめた方がいい。
リリースまでにごちゃごちゃ複数のプロジェクトを動かすと、リリースまでの間に疲弊してしまい、リリースの壁を越えた途端に燃え尽きてしまいます。
マーケットフィットする前に、お金と労力をつぎ込んで目立ったとしても、
結局あとになっていろいろ変更になって、全部修正で作り直しで無駄になり、また疲れてしまいます。
ものづくりをするとき、PRを仕掛けるとき、
「バズるにはどうしたらいいか?」
から逆算してあれこれ戦略を立てようとしている人がいます。
これは少し前は当たってたかもしれないが、それももう終わりじゃないかなと。
「バズり」がまるで魔法のように感じられてしまって、
自分がこつこつ真面目にやっている横目で、突然隣で爆発的にバズっている人を見ると、どうしても羨ましくなってしまう。
でも、そんなものはしょせん虚像。
F&Pもかつて、毎週テレビ番組が取材に来て止まらない時期がありました。
それで、あたかもブランドを確立したかのような気になっていました。
数年後、ブランド認知率のアンケートを取ってみました。
「F&P」なんて、誰も知らない。
毎日、店の前を通っている人でさえ、です。
露出もフォロワー数も、マウントの材料には一切ならない。
テレビに出てうつつを抜かすくらいなら、少しでもマーケットフィットを目指す努力をしなきゃいけないんです。
見栄を張る必要がないなら、小さくダラダラとβ版リリースして、コアなファンを育てながらちょこちょこ直してだんだん広げていく。
小さく小さく、育てて行くべきだと思います。
マーケットフィットの道のりはとても険しいので、事業者はカンフル剤になる甘い刺激がほしくなります。
そして、一刻も早くのフィットを目指すために「高速でPDCAを回す」とか、「すぐ切り替えてピボット(方向転換)する」とか、「ダメなら即撤退」とか言うのですが、、
フィットしてないから、壁を越えられずにすぐ諦めたり、早々に方向転換する奴が多すぎる。
「しつこくやり続ける」ことが何よりも大事で、石の上にも3年座らないと、ぶっちゃけ何も見えてこないし、
5年座らないと何の判断材料も足りない・・・くらいに思っています。
ここの目線がステークホルダー (企業を取り巻く利害関係者) 同士で合っていないと、なかなかうまくいきません。
F&Pは、マーケットフィットするまでに、
toB事業では約3年。店舗事業では恥ずかしいことに約9年かかりました。
決して、誇れるものではありません。
泥だらけ、傷だらけになって辿り着いた場所ですし、いつまたこの到達点から振り落とされてしまうかもわかりません。
ブランドは、打たれてもぶたれても最後まで立ってる奴が結局1番強いと思います。
「ポカリスエット」や「栃木レモン」や「ペヤング」なんで今でもずっと強いか、
「ガリガリくん」や「ブラックサンダー」がなんであんなにブランド力があるのか、を考えればわかります。
結局、やり続ける奴が強い。
僕は、下積み時代が少々長すぎましたが、
下積みなくぽっと出てくる奴らを見ると、嫉妬とは別に自分自身の苦い経験が蘇り、ついつい行く末を案じてしまいます。
ペラッペラのメッキ塗って内容の伴わない、見た目だけキラキラしたスタートアップが僕は大嫌いなので、自分は謙虚に足下を見ていたいです。
そして、よそ見をしている時間なんてないので、せっせと自分自身の冒険に戻ります🤠
(この記事は、2023年7月に社内向けに発信された内容をもとに編集を加えて公開しています)