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明日も行きたくなる職場!? 穏やかな心を育み続ける鞆の浦・さくらんぼの秘密 ーー作業療法士 東潤音さんに聞く

「仕事に行きたくないと思った日は一度もないですね」と笑顔で即答してくれたのは、広島県鞆の浦にある放課後等デイサービス・さくらんぼで働く東 潤音(あずま・ますね)さん。東さんは、沖縄県石垣市出身の作業療法士さんです。

さまざまな土地や文化で人の暮らしに向き合い、現在はさくらんぼの職員として自ら鞆の浦で暮らしながらノーマライゼーションに取り組んでいます。そんな彼女の考える『地域共生のまちづくり』とは何なのか。お話を伺いました。

東さん(左下)

■ 東 潤音 / 放課後等デイサービス・さくらんぼ作業療法士
沖縄県石垣市出身。沖縄で作業療法士免許を取得後、福岡県の病院で急性期、回復期、訪問リハビリに従事。その後、石垣市のデイケアと老健施設にて認知症の方のリハビリに従事し、広島県の精神科病院で勤務。2020年夏より鞆の浦・さくらホームに就職し、放課後等デーサービスさくらんぼにてリハビリ業務に従事している。


まずは、東さんがリハビリの道に進まれたきっかけや、放課後等デイサービス・さくらんぼでのお仕事についてお話を伺います。

作業療法に未来を感じて

ーー 東さんが作業療法士を目指したきっかけを教えてください。

福祉や医療の道に進みたいと思うようになったのは、中学校の時に介護老人保健施設(老健)へボランティアや職場体験に行ったのがきっかけです。もともと鍵っ子で、放課後はよく近所のおじいちゃん・おばあちゃんの家に遊びに行っていました。高齢者と関わることが好きだったので、職場体験を終えた後も頻繁に老健施設へ遊びに行くようになりました。

その後、高校生で進路選択する際に、どうしようかなぁと悩んでいた私はたまたま2つ上の姉が持っていた資料を手にします。それが、リハビリスタッフに関するパンフレットでした。言語聴覚士、作業療法士、理学療法士それぞれの役割について一通り見た後、直感的に「何だか楽しそうだな」と作業療法士に惹かれたんです。

作業活動の内容がそのままリハビリになるんだということに感動し、その手段の幅広さに未来を感じました。高校卒業後は、沖縄にある作業療法士養成校へ進学。免許取得後は、総合病院、デイケア、老健、精神科病院などさまざまな職場で経験を積みました。



ーー 地域リハビリテーションに興味を持ったのには、何かきっかけがあったのですか?

はじめに「自分らしく過ごすことのできる家っていいな」と興味を持ったのは、福岡の病院時代です。急性期や回復期病棟、訪問リハビリなどさまざまな部署に配属されましたが、家での生活を直接見ることのできる訪問分野にとても面白みを感じました。

多職種・家族との密な連携や利用者様のお看取りなど、病院内では学べなかった多くのことを経験します。なかなか上手くいかず悩むこともありましたが、患者さんと一緒に旦那さんの好きなコーヒーを買いに行ったり、散歩中に近所の人と立ち話をしたり、家での役割や好きな事を楽しんでいる姿を見たりする中で、次第に「その人らしい姿」が見える家でのアプローチに興味を持つようになりました。


ーー 現在のさくらんぼでの働き方を教えてください。

放課後等デイサービス・さくらんぼでは、長期休暇(夏休みや冬休み)以外は仕事が午後から始まるので、午前中は自分の時間として自由に使えます。

時間に余裕があると自分のやりたいことが見つかったり色々と考えられたりするので、自分自身が穏やかになっている気がしています。さくらんぼの職員の中には、午前中を使ってヨガや畑作業をしたり、有意義に過ごしている方が多い印象です。

私自身は、自然療法や薬膳など、食事や自然の物を使ってケアすることに興味があります。 知らない世界を覗くことが大好きなので、本を読んだり、常に新しい情報を探したりして学びたいことを見つけています。


心からの笑顔で過ごせる職場

ーー さくらんぼで働き始めてちょうど1年が経過した東さんですが、これまで働いてきた中で印象に残っていることは何かありますか?

働き始めて最初に驚いたのは、職員全員が子ども達と対等に関わっていたことです。やっていることや考え方もすごく素敵で、子どもがしたいという事を全力で応援していました。一緒に楽しみ、注意する場面ではちゃんと注意をして。そんな環境で、さくらんぼの子ども達はのびのびと成長し、自然と自信をつけていっていました。

さくらんぼで働くようになり、一日が笑って終わるのがとても良いなと感じています。これは冗談のように聞こえるかもしれませんが、「仕事に行きたくないな」と思った日は一度もありません。私は、さくらんぼの子ども達や職員さんと一緒に過ごす楽しい時間がとても大好きです。病院で働いていた頃は、いつも何かに追われていたのでもっとトゲトゲした感じでしたが、今はずっと笑っています。

自分が休みの日でも、さくらんぼの職員連絡で子ども達の成長を感じたり楽しそうなことをしているのを知ったら「今日仕事行きたかったー!」って思うんです(笑)


子どもたちに対しては、普段は大人の友達として接していますが、やはり、子どもたちの成長を感じられた瞬間が一番嬉しいです。

子ども達の成長は写真におさめて保護者の方へ共有します。送迎の際に、新たにできるようになったことなどをお話しするととても喜ばれるんです。また、3ヶ月に1度「さくらんぼ通信」というお便りを作成し、さくらんぼの活動報告をしています。親御さんが喜んで下さることもやりがいの一つです。


ーー 保育士や介護福祉士、看護師など多職種と関わる中で、作業療法士の東さんが大切にされていることは何ですか?

さくらんぼの子ども達は、遊びの中から多くのことを吸収し成長しています。その中で、私は作業療法士として「評価」と「実践」というのを大切にしています。例えば、身体の使い方を分析した上で、成長につながる良い動きを遊びの中にどう組み込み展開していくか、といったことを考えます。

その時に、他職員の経験や勘は非常に参考になります。さくらんぼの職員は個々で強みを持っているので、私が思いつかないことをたくさん教えてくれます。例えば、図画工作やゲーム、海遊びなど、個人の得意とする分野が人それぞれによって違います。さくらんぼの職員は、職種という棲み分けではなく個人の得意なことを活かし、支え合っています。そのような職員間の文化も非常に素敵だなと感じます。

また、子どもたちに教えてもらう事もたくさんあります。子どもたちの発想力は大人よりも遥かに豊かで、一つの道具からいろんな遊びを展開していくのを見ると「遊びの天才だな」と感心します。これは難しいかな、と思うことも、やりたい気持ちが上回ると、子どもたち同士で知恵を出し合って何とかしようとするんですよね。心が動くと体も動くといいますが、本当にそうなんだな〜と見ていて感じます。 同じ遊びでも「その子らしさ」が見えるのも面白いですね。




自ら鞆の浦に住み、一住民としても地域共生にチャレンジしている東さんに、鞆での暮らしや今後に描く未来について伺います。

鞆の浦・さくらんぼから発信する"地域共生"のまちづくり

ーー 実際に鞆に暮らしながら働くことで、新たな気づきや変化はありましたか?

鞆に引っ越しまだ数ヶ月ではありますが、少しずつ町に溶け込めてきたかなとは思います。仕事を終えて帰った時に、近所の人に「おかえり〜」と言ってもらえるととても癒されます。

また、鞆ではよく回覧板が回って来るのですが、「鞆学便り」という鞆の浦学園(小中一貫校)のお便りなんかも一緒に回ってくるんです。地域のことがこんなにも網羅できるものがあるんだと、回覧板で繋がる町にとても感動しました。

さくらんぼは地域とともに成長しています。その様子を、鞆の一住民としても肌で感じながら暮らせることがとても嬉しいです。

さくらんぼでの働き方や職場の環境、そして、あたたかい鞆のまちの中で穏やかに過ごせていることが、多種多様な人やものを受け入れられる心の余裕に繋がっているかもしれません。


ーー さくらんぼで今後チャレンジしていきたいことや、未来に描くことがあれば教えてください。

お金の学びとして商店や駄菓子屋に買い物にいったり、子どもたちだけで計画を立てて目的地へ行ったり、お祭りなどを企画したりしたいです。 地域の遊び場など鞆の資源を最大限に活用し、様々な経験を積んでもらいたいと思います。経験を通して得たことや感じたことが、その子らしさの土壌になると考えるからです。(子どもたちの経験といいつつ、私が楽しみたい気持ちがあることは否定できません...笑)

また、今後はさくらんぼの子どもたちがもっと地域に出ていくために、町に車いすの子どもたちも一緒に遊べる遊具が欲しいと考えています。さくらんぼには地域の子どもたちもよく遊びに来てくれますが、さくらんぼの子どもたちがどんどん町に出ることが必要だと考えます。地域の人や子どもたちと自然と顔見知りになり繋がっていく場が作れたらいいいなと思っています。

さくらんぼの強みは、何といっても「遊び」です。 遊びながら得意なことを伸ばし、苦手なことも自然といつの間にかできるようになっているのが理想です。「できた!」が増えると自然と自信がつき、チャレンジする気持ちも沸いてきます。楽しい、悔しい、困ったなぁ、という様々な体験を一緒に分かち合える身近な大人であり続けたいです。手を出しすぎず、見守りすぎずを意識し、これからも子どもたちに全力で関わります。


代表(羽田冨美江さん)はいつも明るくいろんな素敵なアイデアを話してくれるのですが、それを傍で見ながら、私も一緒に叶えていきたいなと思います。代表のアイデアには、いつもワクワクをもらっているからです。

正直、地域共生に関して私はまだまだです。ここで働きながら、いつか「私はこんなことがしたい!」と胸を張って代表に言えるようになったらいいなと思っています。

今はさくらんぼの職員としてのミッションもこなしながら、そして、その日の最後に「今日こんなことがあったんですよ」と、子どもたりの小さな変化や面白かったことなどを話して笑い合える日々に感謝しながら、目の前の子どもたちに全力で向き合っていたいと思います。

さくらんぼの作業療法士コンビ(右:下畠さん)


これからもっとフィールドが広がっていくのを楽しみに、子どもたちに全力で向き合う。

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