「会社を辞めたら自由になれる。」
「フリーランスなら、好きなことだけして生きていける。」
昔の私は、本気でそう思っていました。
ある日、関西コレクションを見に行った時のことです。
ランウェイを歩くモデルを見て、
「私も、あそこを歩きたい。」
そう強く思いました。
その想いだけで、小さなモデル事務所に所属しました。
ところが、初日に言われた一言。
「身長160cmなら、ランウェイモデルは難しいね。」
夢は、初日で終わりました。
それでも諦めきれず、
雑誌、フリーペーパー、サロンモデルなど、できる仕事にはすべて挑戦しました。
でも心の奥には、ずっと同じ想いが残っていました。
「いつかランウェイを歩きたい。」
そんなある日、参加していたコミュニティで大きなファッションイベントの募集がありました。
会場は幕張メッセ。
衣装は、日本を代表するファッションデザイナーの丸山敬太さん。
スタイリングは渡辺直美さんのスタイリスト。
メイクは世界で活躍するメイクアップアーティストののぼるさん。
一流のクリエイターが集まる現場でした。
「絶対に歩きたい。」
そう思って応募した結果、
私は、念願だったランウェイを歩くことができました。
長年の夢が叶った瞬間でした。
でも、その夢が叶っても、
人生は変わりませんでした。
仕事が急に増えたわけでもない。
収入が安定したわけでもない。
むしろ私は、
モデルだけで生活することの厳しさを知りました。
芸能やモデル業界は、若さが武器になる世界。
有名人が起用されることも多く、一般のモデルが仕事を取り続けるのは簡単ではありません。
そんな時、事務所の社長から言われた言葉があります。
「モデルが一番替えがきく仕事なんだよ。」
悔しかった。
でも、その言葉は現実でもありました。
その後、私はフリーランスとして働き始めました。
そこで、もう一つ大きな勘違いに気づきます。
フリーランスは、思っていたほど自由ではない。
会社に属さないということは、
すべて自分で責任を負うということでした。
朝起きる時間。
仕事を取ること。
営業。
クライアントとのやり取り。
スケジュール管理。
請求書。
確定申告。
税金。
全部、自分。
誰も管理してくれません。
誰も「頑張れ」と背中を押してくれるわけでもありません。
だからこそ、
セルフマネジメントができなければ続けることは難しい。
それが、実際に経験して感じたことでした。
さらに意外だったのは、
会社員だった頃より自由な時間が少なくなることもあるということです。
仕事をしていない時間も、
営業のことを考え、
SNSを更新し、
次の仕事を探し、
将来への不安と向き合う。
24時間、自分が経営者。
会社員とは違う責任が、そこにはありました。
私は身をもって学びました。
会社を辞めることと、自由になることは同じではありません。
フリーランスとは、
自由な働き方というより、
自由と引き換えに、すべての責任を引き受ける働き方です。
だから私は、
「自由そうだから。」
それだけの理由でフリーランスを選ぶことは、おすすめしません。
大切なのは、
どの働き方が自由かではなく、
どの働き方が、自分の理想の人生につながるか。
それを考えて選ぶことだと思っています。
ランウェイを歩いた経験は、私にとって大切な思い出です。
でも、人生を変えたのはランウェイではありませんでした。
「働き方」と「自由」は別物だと知ったこと。
その気づきこそが、私にとって一番大きな財産になりました。