はじめに

GEOTRAインターン生の伊藤です。
現在、日本では、政府が発表した2030年までの15万台のEV充電施設の整備という目標のもと、充電スポットの拡充を推進しています。
各国が、同様の目標に向けて、EV充電設備の導入を進めており、特に北欧ノルウェーでは、EV及びEV充電器の導入が先行して進んでいます。

本記事では、ノルウェーにおける、電気自動車（以下、EV: Electric Vehicle ）の充電スポットが増加してきた背景について、ご紹介します。

背景

ノルウェーは、1990年代以降、乗用車の、ガソリン車からEVへの移行を推進し、2022年3月時点で、新車販売に占めるEVの割合は、86%に到達しました。
EVの増加に伴い、2009年以降、街中に無料EV充電スポットの導入を推進してきました。
ノルウェー政府は、EV充電器を導入するための助成金を各地域に支給し、首都のオスロ市では、市政府が、充電スポットの設置にかかるコストの60%までを負担しています。

図1,2は、ノルウェー全土におけるEV所有者の割合、及び充電スポット数の増加の推移を示しています。図1の通り、首都オスロを中心に増加していることが分かります。

図1：電気自動車所有者の割合及び、充電スポットの分布数
出典：Public charging infrastructure and electric vehicles in Norway

図2：ノルウェーにおける電気自動車の充電スポット数
出典：statistaのデータを基に当社作成

ノルウェーでは、政府参加にある公共団体の「ENOVA」が充電ネットワークの拡大を、民間企業と協力しながら推進しています。

当初、首都のオスロ市では、市民の提案を踏まえながら、需要が多い場所での配置を推進したところ、市内の中心部に充電スポットが集中しました。市政府は、通勤や、週末の買い物における移動経路を分析し、市の郊外まで、幅広く充電器を設置してきました。主に、街中の駐車場や、郊外の燃料需要が減少したガソリンスタンドなどが設置場所の対象になっています。

加えて、長距離移動におけるEVの航続距離不安を解消するために、高速道路に約50km間隔で、充電スポットを設置してきました。

ノルウェー政府による、EV利用推進施策が功を奏し、2012年から2014年までの3年間で、EV利用者が、3倍近く増加しました。その結果、EV充電器の需要の増加に、充電スポット数が対応できず、各地で「充電渋滞」と呼ばれる、電気自動車の充電待ちの自動車の列が、頻繁に見られました。

現在は、設置場所のみならず、時間帯に応じて変化する充電需要をコントロールして、円滑にEV充電スポットにアクセスできる環境を、EV利用者に提供することが、ノルウェーでの課題となっています。

ノルウェーでは上記課題を踏まえて、以下の4つの施策に重点的に取り組んでいます。

１．急速充電器の設置
短時間で充電可能な急速充電器の設置数を増加させています。

２．カフェやレストランなどを併設した充電施設の充実化
カフェフェやレストランに立ち寄る副次的な目的としての充電スポットの利用を目標に、民間企業が協力して、充電施設の充実化に取り組んでいます。

３．自動車利用から公共交通へのシフト
街中での自動車利用の減少を目的に、公共交通の充実化を推進しています。

４．公営のインターネット・充電所データベースを利用した充電所のリアルタイムでの利用状況の情報提供
EV利用者が、リアルタイムで他の電気自動車利用者の充電状況や空き充電スポット、周辺道路の通行量等を、「NOBIL」という公営のインターネット・充電所データベースを通じて、把握できるようにしました。

図4：「NOBIL」が提供するインターネットデータベースのイメージ
出典：NOBILのHPより

主に、これら4つの施策を通じ、EV充電スポットの更なる増加・改善に取り組んでいます。

最後に

本記事では、ノルウェーのEV充電スポットの増加・充実化の経緯をご紹介しました。GEOTRAでは、独自の個人情報保護技術により、人々の動きや行動目的などが高粒度に可視化された人流データ、GEOTRA Activity Dataをご提供しています。更に人流データのご提供に留まらず位置情報データ全般に関する利活用促進のためのご支援を行っております。

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