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「Otonami(特別な感動体験に出会える予約サイト)」や「Wabunka(日本の魅力を世界へ届けるインバウンド向け予約サービス)」を介し、日本の魅力を国内外に発信するJ-CAT。今回は、前職でEXITを経験した3人にお集まりいただきました。取締役COOの山下 有紀さん、最高営業責任CSOの牧野 雄作さん、国内事業部門マーケティング部マネージャーの三森 大輔さんにM&A・IPOによる会社の変化や当時の想い、J-CATにジョインした背景、またJ-CATで成し遂げたいことを伺いました。
<プロフィール>
取締役COO 山下 有紀
慶應義塾大学商学部を卒業。2013年に株式会社Voyaginに創業メンバーとして参画。入社以降CSチームの立ち上げやインバウンド事業者の開拓、メディアやOTAとのアライアンス業務を含む事業開発業務に従事。2019年に同社の執行役員に就任。楽天株式会社への売却を機に国内の観光体験サービスの立ち上げに従事。2022年1月にJ-CATに参画(山下さんの過去の記事はこちらです)。
最高営業責任CSO 牧野 雄作
2005年に株式会社日比谷花壇に入社し、ホテルや海外ブランドの空間装飾デザインを担当。その後「一休.com」を運営する株式会社一休のベンチャー期に参画。一流旅館の予約事業責任者や日本初の高級別荘予約サイト「一休.comバケーションレンタル」を立ち上げる。訪日・海外旅行予約のVoyagin(現:楽天グループ)にてゼネラルマネージャーとして勤務。インバウンド向けの官民連携事業に従事。その後、富裕層向けの不動産開発を行うNOT A HOTEL株式会社に勤務。2022年にJ-CATに入社(牧野さんの過去の記事はこちらです)。
マーケティング統括 三森 大輔
東京理科大学工学部を卒業。2007年に株式会社キャリアデザインセンターに入社。転職サイトの法人営業やマーケティングを経験後、新規事業開発に従事。2017年に創業3年目のフィンテック関連企業のウェルスナビ株式会社に参画し、マーケティングチームの立ち上げからプロモーション、キャンペーン企画、CRM施策と幅広く業務を担当。2023年にJ-CATに入社(三森さんの過去の記事はこちらです)。
前職でM&A、IPOを経験した3人が集結
― 皆さんがJ-CATに入社するまでのご経歴をお聞かせください。
山下:私が社員第1号として入社したVoyaginは、海外観光客向けのツアーやレストラン、チケットの予約サイトを運営するOTA(オンライン・トラベル・エージェント)です。カスタマーサポートチームの立ち上げに携わった後、事業開発チームで施設やレストランといった事業者の開拓や、掲載プランを拡充するための営業のほか、カード会社や航空会社とアライアンスを結んでインバウンド向けのPRを担当しました。Voyaginが楽天グループに加わり、コロナの影響でインバウンドが停止したため、執行役員として国内向けの体験サービスを立ち上げました。その頃にJ-CATを創業したばかりの飯倉と知人を介して出会ったのがきっかけです。
牧野:新卒で入社した日比谷花壇に勤務した後、宿泊・レストラン予約事業を運営する一休に転職しました。高級ホテルの予約営業を担当した後、旅館予約責任者として全国各地の高級旅館の営業に携わりました。2016年に一休がヤフー(現:LINEヤフー)に買収された後、私はバケーションレンタル事業を立ち上げ、高級別荘やコンドミニアム、古民家を提供するサービスを開始しました。一休がヤフーの傘下に入った後も、新規事業を推進するために全国各地を飛び回っていましたが、各地域の課題に直面し、インバウンドを巻き込んで観光業界を盛り上げたいと考えるようになりました。2018年に一休を退職してVoyaginに飛び込み、そこで山下と出会いました。
Voyaginが吸収合併されて楽天グループになったことを機に、私は富裕層向けの不動産開発を行うNOT A HOTELにジョインし、高級ホテルの開業を担当しました。コロナが落ち着いて全国各地に人を送り込むサービスを始めたいと考えていた矢先、山下からJ-CATの話を聞き「Voyaginでやり残したことをJ-CATで挑戦する」と決意して入社しました。
三森:ウェルスナビに入社した2017年当時、会社にマーケティングチームがあるかどうかという状況だったため「足りないことは何でもやります」と、チームの立ち上げや広告の運用、プロモーション、キャンペーンに従事しました。会社がIPOを達成した後、マーケティングチームはチームを分割して新規獲得とLTVの最大化へ対応することになり、私は後者を担当しました。
大企業化すると通じない、スタートアップのカルチャー
― 山下さんが前職で経験した、M&Aに至るまでのプロセスをお聞かせください。
山下:Voyaginは2015年夏に楽天グループに加わりました。これは「2段階EXIT」として実施され、最初に楽天がVoyaginの株式の過半数を取得して大株主となり、残りの株式は次の2年間の業績に応じて買い取るという条件がありました。楽天には既存のトラベルサービスがありましたが、Voyaginが楽天の資金提供を受けてインバウンド市場に参入・拡大することになりました。
― EXITに関する業務が増えて大変だったのではないでしょうか?
山下:スタートアップだった頃は組織の管理が甘く、ほころびが生じても成長を最優先に突っ走ってきましたが、大企業の論理やガバナンスの要求が高まっていきました。ファイナンス系の方が加わって整え始めたものの「これが管理できていない」「これも分かっていない」と、マトリョーシカのように新たな課題が次々と出てくる有様でした。
― Voyaginが楽天の傘下に入り、以前と変わったことはありますか?
山下:Voyagin単体のビジネスロジックだけでなく、楽天グループとしてシナジーを最大化することも重要だったため、社外よりも社内での調整や稟議が増えて業務スピードが落ちたように感じました。一方、そのやり方は大企業の会員基盤を使って大きなインパクトを残すために必要な所作だと理解し、慣れない中でも懸命にキャッチアップしました。
― 牧野さんは一休とVoyaginのそれぞれでM&Aを経験しています。一休のM&Aに至るまでのプロセスをお聞かせください。
牧野:一休は創業者の森さんが設立した会社で、皆で人生をともに過ごし「このまま一緒に行くぞ」といったファミリーのような経営形態を取っていました。一休がヤフーの傘下に入ると決まった時、森さんが社員全員を会議室に集めて退任を宣言し、その瞬間から私たちはヤフーの社員になりました。
― 一休がヤフーの傘下になり、現場ではどのような変化がありましたか?
牧野:一休は引き続きトラベル部門の主導権を握り、Yahoo!トラベルの運営も担当することになりました。ヤフーとグループ体制を整備したことで、ベンチャー気質の一休と大企業のヤフーの人材が交わって戸惑いもありました。徐々に大企業化していく中でその変化を受け入れられず離れていった方もいましたが、ポジティブな面も増えましたね。例えば、Yahoo!ニュースのトップに一休.comを掲載した結果、それまで取り込めていなかったユーザーの獲得につながりました。
また、新規事業を立ち上げる際は、一休だけでなくグループの役員の方々にもプレゼンして承認を頂くことが必要になりました。他にも、社員の間で働き方に対する多様な価値観が交錯して「このサービスを大きくするぞ」というメンバーだけでなく、さまざまな目的を持って働くメンバーも増え、全員が同じ方向を見る難しさを感じました。
― 三森さんはウェルスナビ在籍時に上場を経験しましたが、大変だったことはありますか?
三森:お二人とは異なり、私はいち社員として上場を経験しましたが、社内ルールが劇的に変わりました。ウェルスナビでは、もともと金融事業特有の内部統制への意識が高かったものの、上場に伴ってコンプライアンスやガバナンスのルールがさらに厳格化されました。私が入社したばかりの頃は激務が続き、できることをひたすらやっていましたが、上場に向けて過去の契約書や書類を1件ずつ確認して格納するなど、散らばった業務を整理するのも苦労しました。
また、エンジニアは監査体制の強化とセキュリティの重視に関する業務が増え、本業のマーケティング業務をストップせざるを得なくなりました。その上、個人情報取り扱いのルールが経営企画からチームに課された時などは、スタートアップ黎明期から在籍しているメンバーには事業の拡大にベクトルを持つ方が多かったため、新たに採用された内部統制やセキュリティの担当者たちと話し合うこともありました。
EXITや上場を経験後、J-CATに飛び込んだ理由
― EXITを終えた後の、会社やご自身の変化をお聞かせください。
山下:起業家やスタートアップには、自分の人生を事業に投影する方が比較的多いと実感しました。また、自分がやりたいフェーズや得意なフェーズを改めて考えた時、上手くいくのかが分からないアイデアにリソースやマインドをベットしてゼロから価値を作っていく重要性に気づきました。
牧野:EXIT前の一休では、自分たちでサービスを大きくしている自負がありましたが、ヤフーになってからはグループのシナジー効果もあって事業規模が拡大していきました。また、従来の会員だけでなくパブリックにも向けた、社会的価値のあるサービスへと変わっていったように思います。個人的には、以前の「ともに戦うファミリー」から大企業の一員となったことを機に「自分がやりたいことにチャレンジしよう」と退職しました。
― ウェルスナビが上場した後、社内ではどのような変化がありましたか?
三森:マーケティングの視点では、上場企業になったことで社会的信頼やブランドへの信頼が格段に上がり、年齢層の高いユーザーが増えてプラスの影響を感じました。人材採用では大企業からの応募者が増え、社員のワークライフバランスを重視した環境も整っていきました。業務では、J-SOX(内部統制報告制度。財務報告において企業に内部統制を求め、不正会計を防ぐことを目的としている)への対応として、新たに仕組みを作るのが大変でした。
また、上場前は投資家や起業家から詳細な説明を、上場後は株主から具体的な金額や利益への貢献度を求められるようになり、利益目標の範囲内、あるいは長期的視点で投資することが多くなりました。
― EXITや上場でさまざまな経験をした後、J-CATに挑戦したいと思った理由をお聞かせください。
山下:理由は3つあります。まず、J-CATでは、飯倉の意思に共鳴してくださる事業者とともに、これまで世の中になかった体験をつくっていることです。私が在籍していた頃のVoyaginでは、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のチケットや新幹線のチケットといった旅行者にとって馴染みのある商品を、マーケティングチャネルを通じて効率よくスケールさせる戦略が取られていました。一方、当時のJ-CATでは、2万円のスカーフ作りや1万円の和菓子作りといった体験の売れ行きが好調でした。私は約10年間観光の体験領域にいましたが「これが売れるのか!」と未知の領域を発見したんです。
2つ目は、J-CATが旅行業界の薄利多売で儲からないイメージを打破し、ユーザー・事業者・従業員の三方よしのビジネスモデルの構築を目指していることです。
3つ目は、飯倉が本気で取り組んでいることです。コロナで旅行業界が売上ゼロに陥っていた頃、Voyaginではコロナ後に向けて新たな商品やプロダクトを仕込んでいました。一方、飯倉は総合商社を退職して起業し、エンジニアを集めて開発に勤しんでいました。そんな彼を見て最初は「こんなタイミングで商社を辞めて、何をしているんだろう」と思いましたが、書道家のお母様が書道の魅力を伝える難しさに直面した原体験から事業に取り組んでいると知り、私自身も創業当時のVoyaginでマンションの一室でがむしゃらに挑戦していた頃を思い出し「彼と観光業界を盛り上げていきたい」とJ-CATにジョインしました。
牧野:これまでのキャリアにおいて、さまざまなステージでチャレンジを重ねてきましたが「まだやりきっていない」とも感じていました。Voyagin時代、清水寺を貸し切った体験を数十万円でインバウンド向けに販売し、ヘリコプターに乗って上空から富士山や桜を見るツアーや、世界的に注目されているシェフの調理や研究室を見学できるバックヤードツアーを企画しましたが、コロナで事業は停滞しました。そんな中、私が手がけたことのある清水寺の体験がJ-CATに掲載されていて、大きなシナジーを感じたんです。
私は年間100泊しながら全国各地を見てきて「日本の魅力的な場所や風景、文化を後世に残したい」「インバウンドに高付加価値な体験を適正価格で売り、地域経済に寄与したい」と願っていたため「飯倉や山下とだったらJ-CATでいいものをつくれる」と確信してJ-CATに飛び込みました。
三森:ウェルスナビではビジネスモデルとプロダクトが優秀だったため、マーケターとしてユーザー数の増加やLTVの向上などは実現できましたが、私自身の売上への貢献度には疑問を持っていました。また、チームの立ち上げなどから、当時のCMOのもとで社会人として成長させていただき、業務で培ったスキルや知見で日本社会を盛り上げたかったんです。加えて、J-CATが社会にまっすぐ働きかけようとしていることや、成長期の事業ならじかに貢献できることから入社を決意しました。
スタートアップには、まずは飛び込んでみよう
― 皆さんがこれからJ-CATで成し遂げたいことをお聞かせください。
山下:これまでは主要都市を中心に、ユーザーが想起できる体験やツアーを提供するプラットフォームに携わってきましたが、J-CATでは、事業者やメンバーたちの想いのこもった体験プランがご好評いただいています。J-CATがなければ実現しなかったかもしれない「地域・事業者とユーザーの出会い」を増やすことで、新たなデスティネーションを創出できると確信しています。地方創生が謳われる昨今、人の流れが変わることで地域の魅力が再発見され、土地土地の文化や歴史、風景が受け継がれていく。J-CATはそんなサイクルを担っていきます。
牧野:私もデスティネーションを作っていきたいです。いい経験は人生を豊かにすると思います。日本には素敵な体験ができる場所がたくさんあることを、より多くの方に知ってほしい。普段会えない人に会える、普段見られない美しい風景を楽しむといった感動体験へのアクセスをより身近にしていきます。
三森:日本のさまざまな事業者を盛り上げていきたいです。それを実現するために、一つひとつに高付加価値を与えられるようにマーケティングスキルを磨きます。
― 最後に、スタートアップに挑戦したい、起業したい、ゆくゆくは経営者になりたいと検討している方へメッセージをお願いします。
山下:自分の人生を事業に投影できて、それを自分の言葉で表現できるのであれば、大企業でもフリーランスでもいいですよね。スタートアップには自分の想いをビジネスに落とし込み、ストーリーを語れる方々が集まっています。現在の職場に違和感を覚えるなら、パッションを持つ方がいる場所を選んだ方が気持ちよく働けると思います。
「これができたら起業しよう」「準備ができたらスタートアップに入ろう」という方もいますが、スタートアップは考えたとおりに進むことが少なく、行動して初めて学ぶことが多いです。まずは、飛び込んでみるのがいいのではないでしょうか。その中で観光に興味を持ち、私たちのビジョンに共感していただける方はぜひ、J-CATで一緒に観光業界を盛り上げていきましょう!
牧野:「課題を解決したい」「社会がこうなってほしい」という気持ちに素直になることが大切です。大企業にいながら違和感を覚えているなら「もっとこんなことをやりたい」という直感を信じるといいのではないでしょうか。ご自分の内面が抵抗を示すのはポジティブなことで、それに真摯に向き合うことがステップアップにつながります。やらなかったことによる後悔は大きくなるため、関心のある分野や解決したい課題など、どんな道でも飛び込んでみるのがいいと思います。
三森:私自身は起業したい、経営者になりたいとは思っていないんです(笑)。ただ、スタートアップで働くことや起業することの醍醐味は、変化を楽しむことに尽きます。それを楽しみたい方はぜひ、私たちと一緒に日本社会を盛り上げていきましょう。