「仕様書が手元に届く前に、動くプロトタイプができている」 「CSチームからの相談が、魔法のようなスピードで解決される」社内のメンバーからそんな驚きと賞賛の声が上がる開発チームが、株式会社BaseMeにはあります。就職活動において「価値観マッチング」を重視したZ世代向けAIキャリア支援プラットフォーム「BaseMe」。従来の条件マッチングではなく、求職者の本質的な価値観と企業のマッチングを実現するため、技術的な挑戦を続けています。
今回は、創業期からエンジニアとして参画し、現在はプロダクトエンジニアとして開発を牽引するキム・リー(Kim Ly)氏にインタビュー。なぜBaseMeの開発は圧倒的に速いのか? AIを用いた「価値観のマッチング」という難題にどう挑んでいるのか?10年前に来日し、英語教師やHRを経てエンジニアになった異色のキャリアを持つ彼が語る、BaseMeの開発カルチャーと技術的挑戦の全貌に迫ります。
異色のキャリアを経て辿り着いた、「人生の岐路」を支えるプロダクト
インタビュアー(以下、Q):まず、キムさんのこれまでの経歴と、BaseMeに入社したきっかけを教えてください。
Kim(以下、A): 私はアメリカ出身で、大学卒業後に来日してから今年でちょうど10年になります。もともと日本の昭和歌謡、例えば安全地帯や山下達郎といった渋い音楽が好きで、日本の文化に惹かれてやってきました。キャリアとしては、最初は小中学生向けの英語教師として働き、その後HR(人事)などを経験してから、約3年前にソフトウェアエンジニアに転身しました。まだプロダクト名がBaseMeではなく、「エシカル就活」だった最初期の頃から関わっています。
BaseMeを選んだ一番の理由は、「65年間変わっていなかった就活の仕組みを刷新する」というミッションに強く惹かれたからです。
これまでの就活市場は、キーワード検索や条件マッチングが主流でした。でもBaseMeは、もっと深い部分、つまり「人のキャリア全体に寄り添う価値観のマッチング」を解決しようとしています。
私自身、小中学生の英語教師からHR、そしてエンジニアへとキャリアチェンジをする中で、転職活動にはとても苦労しました。紙の上の条件は良くても、実際に働いてみると「何かが違う」と感じることがありました。自分が模索していた時期にBaseMeのようなサービスがあったら、迷う時間をかなり省けたはずです。だからこそ、このプロダクトを作ることに大きな意義を感じています。
また、すでにPMF(プロダクトマーケットフィット)が証明されていて、これから1→10へとビジネスが急成長していくフェーズであることも魅力でした。単に機能を作るだけでなく、「どうスケールさせるか」という開発体制そのものを形作っていける。そこに強いオーナーシップと責任感を感じて、ジョインしました。
「完璧な計画」よりも「まず動くモノ」を。AI活用で開発スピードは3倍に
Q:今までのメンバーインタビューを通じて、開発スピードの速さが度々話題になります。なぜそれほどスピーディに動けるのでしょうか?
A: BaseMeの開発チームでは、「完璧な解決策を何週間もかけて計画するよりも、まずは動いてみる」ことを大切にしています。失敗を恐れずに、異なるアプローチを素早く試す。とにかくプロトタイプを作って、実際に何が効果的かを検証する。その方が、机上で議論するよりも遥かに良い結果に繋がるからです。
最近の例で言えば、AIキャリアプロダクト「ReMe」の新機能を開発したときのことです。学生が自己分析をする際、どう深掘りすればいいか分からず、回答が表面的になってしまうという課題がありました。
そこで、「良いキャリアカウンセラーのように、回答が曖昧な時にAIが自動で深掘り質問を生成する機能」があれば役立つのではないかと考えました。また、自己分析という終わりの見えないプロセスに達成感を持たせるため、進捗を可視化するUIフィードバック機能も必要だと感じました。
このアイデアを思いついてから、わずか2〜3日で全てのプロトタイプを作り上げ、すぐにユーザー検証まで行いました。
Q:2〜3日ですか!? そのスピード感は驚異的ですね。
A:これを可能にしている理由の一つは、最新のAIツールを徹底的に活用しているからです。私はCursor、Claude、CopilotなどのAIツールを駆使して開発しています。これらを同時並行で使いこなし、AIに指示を出してコードを書かせることで、開発スピードは従来の3倍ほどに上がりました。また、PdMやCS、セールスチームとの距離が非常に近いことも大きいです。
CSから「ユーザーがこんな問題に直面している」と聞けば、形式ばった会議やドキュメント作成は省略します。すぐに直接話して問題を特定し、その場で修正作業に入ります。もし問題の80%を解決できるシンプルな方法があれば、まずはそれを実装してリリースし、フィードバックをもらって高速で改善サイクルを回します。
また、PdMの彦坂さんは、私の技術的な判断を信頼して任せてくれます。「これくらい時間がかかる」「別のアプローチの方がいい」と提案すれば、ちゃんと耳を傾けてくれます。従来の「PdMとエンジニア」という上下関係ではなく、「ユーザーを助ける最良の方法を一緒に探すパートナー」としての信頼関係があるからこそ、このスピード感が実現できています。
BaseMeのUI/UX。デザインとコーディングを横断し、手触り感を追求する
Q:開発だけでなく、UI/UXデザインもキムさんが担当されることがあると聞きました。
A: はい、特に新機能や改善については、自分でUIをデザインすることが多いですね。
ただ、私のやり方は一般的なデザイナーとは少し違います。Figmaなどのデザインツールを使わず、最初から直接コードでデザインを行います。
すでにデザインシステムやコンポーネント(色やボタンのルールなど)は整っているので、それらを組み合わせてコードを書く方が、私にとってはFigmaを操作するよりも倍くらい速いんです。
コードで直接作るメリットは、「実際に動くもの」の手触り感をすぐに確認できることです。作ったものを操作してみて、違和感があればその場でコードを修正できる。後から「デザインを実装コードに翻訳する」という工程も発生しません。
もちろん、これは私がエンジニアだからできる手法ですが、これから入社されるUI/UXデザイナーの方にも、ある程度のコーディング知識や、AIツールを使ってデザインをコード化するスキルがあると嬉しいですね。そうすれば、エンジニアとの共通言語が増え、アイデアを形にするまでの時間を劇的に短縮できるはずです。
文脈依存の価値観を多次元的に解釈する難しさ
Q:現在取り組んでいる技術的な課題の中で、特に難しいと感じていることは何ですか?
A: 最も難しく、かつ面白いのは、「価値観(Values)」という主観的で曖昧なものを、AIにいかに理解させるかという点です。
従来の求人サイトのような「Pythonが使える」「営業経験3年」といったスキルマッチングなら簡単です。しかし、価値観は文脈に依存します。
例えば、「人を助けることを大切にする」という価値観一つとっても、人によって意味する内容は全く違います。 ある人にとっては「目の前の一人を直接サポートすること」かもしれないし、別の人にとっては「大規模なシステムを作って社会全体の役に立つこと」かもしれない。AIは単なるキーワードマッチングではなく、こうした人間の微妙なニュアンスや文脈を理解しなければなりません。
そのために、プロンプトエンジニアリングには多くの時間を費やしています。AIがユーザーの回答をどう解釈し、どう深掘りすれば、その人が言葉にできていない「真の価値観」を引き出せるか。その微調整を繰り返しています。
目指しているのは、単にテキストを生成するだけのAIではありません。ユーザーの経験や人生のマイルストーンを記憶し、「あなたが誰であるか」を理解して、人生と共に進化していくエージェントAIです。
「AIが生成した文章だけど、なんだか一般的で自分らしくない」ではなく、「まさにこれが自分の言いたかったことだ」と学生が感じるレベルまで体験を高めていきたいです。これは、世界中の何億人ものユーザーに使われるプラットフォームを目指す上で、絶対に解決しなければならない技術的挑戦です。
技術で「キャリア」を切り拓く。BaseMeエンジニアが手にする、血の通った開発体験
Q:BaseMeではエンジニアもユーザーイベントに参加すると聞きました。
A: はい、月に1回ほどのペースでユーザーイベントに参加したり、週に1回はユーザーインタビューの動画を見たりしています。
日々の開発において、ユーザーはつい抽象的な「数値」に見えてしまいがちです。ですが、実際にプロダクトを使う学生の姿を間近で見守ることで、画面の中のロジックが、血の通った一人の人間の体験へと変わる。その瞬間に、自分が作っているものの真の価値を再認識できるんです。
学生が自己分析の画面でどこで詰まっているのか、どの質問で手が止まるのか。そして、自分の価値観が言語化できた瞬間に、パッと表情が明るくなる瞬間。そういった「感情の動き」は、データ分析やバグレポートからは決して得られない情報です。
私たちが作っているのは、彼らが自分の将来について真剣に考え、人生のキャリアを切り拓こうとしている、その瞬間を助けるツールなんです。
学生たちが救われたような顔をするのを見ると、「ああ、この仕事には本当に意味があるんだ」と心から感じますし、どんなに難しい実装でもやり遂げようというモチベーションが湧いてきます。
Q:その感覚は、以前の英語教師の経験とも繋がっているのでしょうか?
A: まさにそうです。小中学生に英語を教えていた時も、ただ教科書の内容を教えるのではなく、「どうすれば退屈せずに、楽しく学べるか?」を常に考えていました。
就職活動も、多くの学生にとっては不安で、面倒で、できればやりたくないことかもしれません。だからこそ、ゲーミフィケーションの要素を取り入れて、ワクワクする体験に変えたいと思っています。
自己分析が進むにつれてバッジを獲得できたり、自分のキャリアパスが可視化されたり。ゲームをプレイするように楽しみながら、気づけば自分自身を深く理解できている。そんな「前向きで楽しい体験」を作りたいという想いは、教師時代も今も変わっていません。
求める人物像:好奇心とオーナーシップ、そして「優しさ」
Q:最後に、これからどんなエンジニアやデザイナーと一緒に働きたいですか?
A: 一番大切なのは、「好奇心」と「学ぶ意欲」です。
今の時点で全ての技術を知っている必要はありません。特にAI技術は日進月歩で変化しているので、未知のことに対して「面白そう!やってみたい!」とワクワクできるかどうかが重要です。進みながら学び続ける姿勢がある方と一緒に働きたいですね。また、「ユーザーへの共感」も欠かせません。技術的な難題を解くことだけに夢中になるのではなく、その画面の向こうにいる学生のことを常に想像できる人であってほしいです。
BaseMeはまだ少人数のスタートアップです。誰かが手取り足取り指示してくれるのを待つのではなく、自ら問題を見つけ、解決策を提案し、実行する「オーナーシップ」が求められます。
そして最後に、これはスキル以上に重要なことですが、「親切で、一緒に働きやすい人」であることです。私たちは小さなチームで、多くの時間を共有します。どんなに技術的に優秀でも、コミュニケーションがとりづらければチームとしての力は発揮できません。社内では困っているメンバーがいれば自然と助け合い、役職やチームに関わらず、思ったことを率直に伝え合えるオープンな環境です。「こんなこと聞いていいのかな?」と心配する必要はありません。みんなで一つのゴールに向かって助け合うカルチャーが根付いています。