福井園芸は徳島県阿波市の農家さんです。
出会ったのは五月に東京で行われた食品展示会でのこと。
華やかなPOPに彩られた大手メーカーとは違って、少しは見劣りするブースだったのを覚えています。しかし、そのシンプルさが逆に自然からの恵を大事にしているような印象を受けました。
こういった海外向けブースの出展料は決して安くありません。農家さんは、自治体が借り上げたブースに間借りするのが一般的だと思いますが、福井園芸さんは単独で出展していました。意識が高いというより、それだけ自分の商品に自信を持っていらっしゃるのだと思います。
僕の目に留まったのは、もち麦をポン菓子にした「もちポン」という商品でした。裏返して原材料を見ると、そこには「もち麦」とだけ書かれていました。
展示会が終わった後、電話とメールで訪問のアポを取り、自宅がある神戸から3時間ほど車を運転し、福井園芸の畑を尋ねました。
その時、目の前でもちポンを作ってくれたのですが、本当にもち麦だけを原料として製造していることを知りました。
一度、皆さんも普段食べているお菓子の成分表を見てみてください。
私はこれだけ思い切った原材料表をみたことがありません。
袋を開けて口に入れてみると、何だか徳島の空の下で、麦畑に忍び込み、こっそりと麦をかじっているような感覚に陥ったのを覚えています。
しかし、一方である疑念が私の頭の中で浮かびました。
「こんなに淡白なお菓子がアメリカの人に好かれるのだろうか?」と。
サンプルを持ち帰り、神戸在住のアメリカ人にテイスティングをしてもらいました。
「これなら僕の2歳の娘にも安心してあげられるよ」
そう言うと彼は、リュックサックにもちポンを詰め込んで、意気揚々と帰っていきました。
家族の誰もが安心して食べられるお菓子の探求はまだまだ続きます。