今回のインタビューは、創業して1年足らずのARAVの「これから」にスポットを当て、創業者白久の考える「仕事そのものに対する価値観」や、自社商品が担う建設業界における使命を中心に語ってもらいました。
ARAVが実現していきたい「建設機械の遠隔操作」に対する想い、ぜひご覧ください!
白久レイエス樹(しろく れいえす たつる)
東京大学大学院修了後、学生時代の同級生らとスケルトニクス株式会社創業。ドバイ首長国オフィスへのロボット販売など受注販売および派遣事業を牽引。
2016年株式会社SUBARUに入社。アイサイト開発部署において、アイサイトツーリングアシスト開発業務に従事。
2018年米国シリコンバレーにてYanbaru RoboticsInc.を創業。既存自動車への後付自動運転キットを開発。米国CA州高速道路にて自動運転試験を成功。
2020年ARAV株式会社を創業。東京大学FoundX、東大IPC、東大アントレプレナーラボ等のスタートアップ支援を受けながら、重機の遠隔・自動化で現場のアップデートを実現するBtoBソリューションを提供中。
――そもそも、ARAV社設立のきっかけは何ですか?
シリコンバレーにて、自動運転技術をはじめとした自動車業界の変革を目の当たりにし、スタートアップとしてチャレンジしたいと思ったことが一番のきっかけです。
2018年にYanbaru Robotics Inc. というベンチャーを起業しました。そこでは、高速道路におけるトラックの後付自動運転の実用化を目指し、一般乗用車を用いてプロトタイプ開発を一人でコツコツと進め、時速90kmで高速道路を自動走行するMVP(Minimum Viable Product)を完成させました。
シリコンバレー現地で何回かピッチをし一定の評価を得たものの、公道での自動運転という事で思った以上にビジネス化のハードルは高かったです。
そのなかで、建設業界の人からSNSで「自動化のプロジェクトを手伝ってほしい」、「自社の遠隔化のプロジェクトを手伝ってほしい」と言われたりすることが度々ありました。
関わる中で建設業界において、ロボット工学を用いた遠隔化・自動化のニーズがあまりにも強いと感じ、日本に帰国し、東京大学産学協創推進本部の支援を受けて、東京大学アントレプレナーラボに当社を設立しました。
――そんなARAV社の大きなミッションでもある、「建設機械の遠隔操作」を普及させたい目的は何ですか?
建設という仕事は、人が生きていくためには欠かせないものです。
一方で、その仕事環境は本当に危なくて一歩間違えると命を失うかもしれない危険に溢れ、その成り手も年々減っています。
我々の使命は、生み出す商品で少しでも建設現場のリスクを減らし、より働きやすい場所にアップデートすることだと思っています。その目的を達成する手段が、私がこれまで携わってきた機械の自動操縦であると考えます。
今後の日本でより大きな問題になるであろう、建設現場の安全性の確保。それを実現するために自分自身の知見を活かすとともに、自分自身もさらにアップデートしていきたいですね。
以前崖面に重機を固定させ、それに作業員の方が乗り込んで作業を行っている事例を見ました。
このような危険な事例を無くして、働きやすい環境や作業員の安全の為に、1日でも早く自動操縦化を実現したいなとも思いました。
――キャリアを歩んでこられた中での、白久さんの「仕事の価値観」を教えてください。
まず根底にある価値観のひとつは、目的の為に手段を実行するということですね。
「目的と手段が逆転している組織」という話をよく耳にします。私自身も「手段にこだわりすぎるプロジェクト」に関しては良い思い出がありません。
目的を明確にして、その実現のために徹底的に努力し、顧客が喜ぶ最高の商品を作り上げることが大事だと思っています。
もう一つの価値観は、技術を磨き上げたり、知識を増やすことと同時に、それを自分以外の多くの人に理解してもらうためのコミュニケーションを大事にすることです。
私自身幼い頃にロボットに強い興味をもち、高専、大学とロボット工学にのめり込んだ「技術畑」出身です。そして今は「技術者」の肩書きと、自社の商品の価値を伝えて価値を感じてもらえるセールスマンとしての役割も担っています。
良い技術を持ち、その価値を心から感じてもらえたら最高ですよね!
現在は、昼は営業、夕方は研究開発という充実した生活です。
――自社の商品はどうあるべきだとお考えでしょうか?
まずは、顧客の喜びにつながることが一番大事だと思っています。
作業員の方が安心安全な環境(快適な環境である自宅やオフィス)で建設作業を行える。今はまだ実現できていませんが、これが実現した社会ってすごくないですか。
それに本人だけでなく家族の方も嬉しいですよね。技術を持った人がそのパフォーマンスを存分に発揮できる環境があるだけで、みんなが幸せになるって素晴らしいですよね。
商品に関しては、見た目の豪華さなどに目を向けるのではなく、シンプルで使いやすく、壊れない質実剛健さが大事だと思います。
以前、車椅子に乗る人向けの「大型トラックのコックピットへの昇降機」を見る機会がありました。これは無駄の無い最高のプロダクトだと思いました。
私たちもこんな風に、目の前の顧客を喜ばせ、その先にある社会に対する大きな価値を生み出せるような商品づくりを目指していきたいと思っています。
――最後に、このページを見てくれた方へメッセージをお願いします。
ARAVには、技術者同士が交流しやすい雰囲気と、ロマンだけ追いかけるのではなくてちゃんと世の中の役に立つロボットを作ろうという共通意識があります。
たとえば、ARAVの特徴の一つとして、「20%ルール」というものを設けています。
「この20%の中から事業になるものが生まれたりする」と私自身考えており、業務とは関係なく自分が単純に面白いなと思ったものをDiscord上にアップするチャンネルです。
実際にチャンネルにアップした内容に対し、社内のメンバーからいろんなコメントをもらえて、前向きに検討することにもなっています。今集まっているメンバー同士、人間性も含めお互いを尊重しあっているからこそこうした動きが起こっていると思いますし、他の会社ではなかなかできない環境ではないですかね。