エンタメの現場の「裏側」を覗くこの連載。第2回のテーマは、「企画の生まれ方」 です。
アニメ、VTuber、グッズ、イベント——ジャンルを問わず企画を手がけてきましたが、面白いアイデアって、結局どこから来るかを少し話したいと思います。
アイデアって、どうやって生まれるか
よく「シャワーを浴びてたら降ってきた」みたいな話があるじゃないですか。あれ、半分本当で半分嘘だと思っていて。降ってくる瞬間は確かにあるんですけど、降ってくるための「雲」を、その前に何ヶ月もかけて自分の中に溜めているんですよ。
雲がない空から雨は降らない。だから僕がやっているのは、ひらめきを待つことじゃなくて、雲を溜める習慣を仕組み化することなんです。
雲を溜める、というのは。
一番大きいのは「現場に行くこと」ですね。僕がエンタメ業界に入りたいと思った時は学生だったのですが、コミックマーケットや展示会イベントでとにかく仕事をするようにしてなるべく業界の事を「知ろう」としてました。18歳からエンタメ業界に入りましたが幸いな事にずっとイベント現場や秋葉原などでの展示会イベント等とにかくデスクにいることが少なく現場が多かったです。
そうした経験を経て、机の上だけで考えた企画はどこかで見たことのあるものになる、という実感でした。
秋葉原の店頭でグッズを手に取るお客さんの表情、配信のコメント欄の温度、イベント終わりの物販列の空気。ああいう一次情報が雲になる。ネット記事の要約を100本読むより、現場に1回立つほうがアイデアの材料としては濃いんです。
面白さの正体は「既知 × 既知 = 未知」。
インプットした材料は、どうやって企画に変わるんでしょう?
僕の中の方程式はシンプルで、「みんなが知っているものを、誰もやっていない掛け算にする」。完全にゼロから生まれた企画って、実はほとんど存在しないんですよ。
たとえば「レトロアニメ調のイラスト」も「キャラクターグッズ」も、単体では昔からある。でも「今の感性でレトロを再解釈したキャラ」×「本気の印刷クオリティ」という掛け算にした瞬間、見たことのない棚ができる。VTuberのボイスコンテンツも同じで、「シチュエーション」×「そのキャラにしか言えない一言」の掛け算を探す作業なんです。アニメ宣伝だと「思わずクリック、アクセスしたくなる」きっかけ作りで考えると「最高クオリティのアニメ!」よりも「決して押さないで下さい」とかの方が少し興味出るかもなぁとか、そのアイディア自体は探せばあるだろうし、心理学的な要素も入ってくるので「知識」と「見たもの」の材料を掛け算になります。
掛け算の相手は、どうやって見つけるか
自分の「好き」の解像度を上げることですね。「アニメが好き」で止まらずに、「このカットの、この0.5秒の間が好き」まで分解する。解像度が高いほど、掛け算のパーツが細かくなって、他人と被らない組み合わせが作れる。
オタクであることは、企画者としての最強の武器です。これは断言できます。
制約は敵じゃなくて、企画の「型枠」
とはいえ現実には、予算や納期の制約がある
むしろ制約がないほうが怖いです(笑)。「何でもやっていいよ」と言われた企画会議って、大抵ふわっとしたまま終わるんですよ。
「予算はこれだけ」「納期は2週間」——一見ネガティブに見える条件が、実はコンクリートを流し込む型枠になる。制約の中で「それでも面白くするには?」と考え始めた瞬間から、企画は具体的に動き出します。
エンタメの裏側って、実は地味な条件との格闘の連続なんです。でもその格闘の中で見つけた抜け道が、そのまま企画の個性になる。
倉光流・アイデアの探し方 3ヶ条
最後に、明日から真似できる形でまとめてもらいました。
1. 現場の一次情報を雲として溜める。 ひらめきは在庫からしか出ない。要約記事より、店頭・イベント・ユーザー目線でコンテンツやその業界を見て聞くことが後々の財産に必ずなります。
2. 「好き」を0.5秒単位までコマ送りに分解する。 解像度の高い好きは、誰とも被らない掛け算のパーツになる。
3. 制約が来たら「型枠が来た」と喜ぶ。 条件と格闘した跡が、そのまま企画の個性になる。
どうでもいいですが、5月で35歳になりました。40代が近づいてきました。
一緒に「裏側」をつくる人へ
企画って、才能のある一人が密室で生むものだと思われがちですが、実際は雑談から生まれることのほうが多いんです。「これ面白くないですか?」と気軽に言える空気が、チームの最大の資産だと思っています。
RACZでは、エンタメの「裏側」を一緒に面白がってくれる仲間を探しています。この記事を読んで「自分の好きの解像度なら負けない」と思った方、まずは気軽に話を聞きに来てください。
次回 Vol.03 もお楽しみに。