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山形ホップの贅を尽くしたビール造り!

湯坊いちらくは、旅館の館内に、TENDO BREWERYという直営ビール工場を持つ、全国でも稀有な温泉宿です。

きっかけは1996年のこと。

当時の旦那衆が『湯上がりといえば、ビールだべした~』という、自分たちの欲望の赴くままに、ベルギーへ渡り研修をする等を経て、3年がかりで準備。1999年の夏に、小さなビール工場を開業し、今年創業23年目を迎えます。

創業当時から『湯上がりに、一杯。』をコンセプトに、一貫してラガービールを醸造。のど越し重視の王道ピルスナーや、国内で初めてさくらんぼのビールを造る等、フルーツビールを研究してきました。

そして2022年夏

新たな挑戦として、地元山形県、白鷹町のホップを使ったビールづくりに挑戦しています。

白鷹町は、戦後の減反政策において、米に代わる新たな作物としてホップを栽培を開始。60年以上に渡るホップ栽培の歴史があります。山形県全体としても、冷涼な気候が良質なホップの栽培に適しており、一時は全国トップクラスの一大ホップ産地でした。

しかし、現在は後継者不足問題の影響により、県内の生産者さんの数が激減。この度は、ご縁に恵まれ、白鷹町で残る唯一のホップ農家さんのご協力を経て、夢のプロジェクトに繋げることができました。

ホップは、麦と並んでビールにとって最も大切な原料であり、ビールに独特の香りと苦みを与え、清く済ませる。また、雑菌の繁殖を抑え腐敗を防ぐなど『ビールの魂』ともいえる重要な要素です。

この度用いる白鷹産のホップは『カスケード』という、アメリカンホップの代表種ともいえる品種です。苦み成分が少ない代わりに、エッセンス成分が極めて高く、フローラル且つスパイシー。そしてグレープフルーツのような爽やかな香りが特徴です。

この貴重なホップの魅力を最大限に引き出すため、TENDO BREWERYのマイスターたちは圃場に足を運んだり、逆に生産者さんを宿にお招きする等交流を深め、活発に情報交換を進めてまいりました。

そして、来る7月31日。

ブルワリーチームは2班に分かれ、Aチームは早朝から圃場へ収穫に。Bチームは、工場で仕込み準備をし、朝摘みのホップを使ってその日のうちにビール仕込みに挑戦。

まずは約3時間かけて、手摘みで繭玉を収穫します。

辺り一面、爽やかなシトラスの香りに包まれます。摘みたてのホップは、しっとりしていてとてもきれいですが、蔓から切り離されると、程なくして萎れて変色してしまうとてもデリケートな作物です。大型の保冷バックを6台準備し、輸送中の品質管理にも気を使います。

そして、13時。

白鷹からまっすぐ工場に輸送されたホップは、直ちに粉砕し、予めBチームが仕込んでおいたモルトジュースに投下されます。収穫から僅か2時間後。最高なコンディションを保ちつつ、フレッシュホップビール造りの最重要の工程へ突入です。

これはドライホッピングという工程。ホップを熱殺菌しながら徐々に温度を下げ、丸3日間にわたってカスケードの豊かな香りを引き出します。通常のビール造りでは、ホップは、2回に分けて投下されますが、この度の白鷹ホップでは、芳醇な香りを最大限に引き出すため、3回以上に渡り大量の生ホップを投入。この工程を経ることにより、IPL(インディアン・ペール・ラガー)という珍しいビアスタイルに変貌します。

因みにこの度の僅か500ℓのビールを造るのに使用した生ホップの量は、軽トラック1台分。採算度外視の、クラフトマンなら誰しもが憧れる、夢のような時間です。

写真は、仕込みから一夜明けた”どぶろく”状態のビール。これまでに嗅いだことのない、みずみずしいフレッシュフルーツのような爽やかな香りがとても印象的です。因みに、この段階では糖度が高いので、甘酒のような甘さを感じます。今後、数週間かけて、酵母が糖分を食べることでアルコールが精製されます。完成は9月中旬。白鷹を駆け抜けるそよ風のような爽やかなビールが完成します。最初の一杯は、白鷹のホップ農家さんと乾杯することとします♪

湯坊いちらくでは、このように、地域の皆さまと密接にかかわったサービス造りを心掛けています。この度の一連のビール造りは、仕事というより、ただただ至福のひとときでした。

好きを仕事に!自分の特技を伸ばせる、活かせる職場がここにあります。

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