東大医学部の助教は、なぜ医療AIスタートアップに飛び込んだのか 〜「ITバブルで乗り遅れた後悔」が背中を押した〜
こんにちは! OptimAIze Consultingの採用担当です。
今回は、東大医学部で分子生物学の研究者として助教を務めた後、当社にデータサイエンティストとしてジョインした栗川さんにお話を伺いました。オートファジーやタンパク質分解という超ミクロな世界の研究者が、なぜ医療AIスタートアップに飛び込んだのか。
「AIの波に乗りたかった」と語る栗川さんのキャリアストーリーには、研究者としての葛藤、家族との対話、そして「研究をよくしたい」という変わらない想いが詰まっています。キャリアの転機について考えている方にとって、きっとヒントになるはずです。
プロフィール
- 名前:栗川 義峻
- 役職:チーフデータサイエンティスト
- 経歴:東大医学部にて分子生物学(オートファジーや細胞小器官の測定方法の開発)を専門に研究。助教として研究キャリアを積んだ後、2025年10月よりOptimAIze Consultingに参画。現在はデータサイエンス、患者データ分析、ドラッグリポジショニングなどを担当。
「ずっと、このままでいいのかと思っていた」——アカデミア時代
――まず、東大医学部ではどんな研究をされていたんですか?
細胞の中で起きている現象を研究していました。分子生物学とか細胞生物学の領域で、具体的にはタンパク質分解やオートファジーが専門です。本当にミクロな世界ですね。オートファジーでどのようなタンパク質が分解されているのかとか、ありとあらゆる細胞内小器官(ミトコンドリアとか小胞体とか)を一斉に測定する実験系を作る、みたいなことをずっとやっていました。
――助教というポジションにいて、キャリアの先にはどんな景色が見えていましたか?
一般的には、独立した研究者——つまりPIになることを目指すキャリアパスですよね。でも正直に言うと、ずっと「このままでいいのか」と感じていました。結構ずっと。
――「結構ずっと」ですか。それは、研究がうまくいっていなかった?
率直に言うと、低空飛行でした。研究対象として興味があることに対して、今いるラボの環境では難しい部分があって。ラボを移るという選択肢もあったんですけど……。
「小学生の時、ITバブルに乗れなかった後悔がある」——転換点
――アカデミアを離れるって、大きな決断だったと思います。不安はなかったですか?
不安はなかったです。 低空飛行していたのは家族も知っていたので、妻も賛成してくれました。次のキャリアが見えなかった、というのが正直なところです。
――でも、ラボを移るという選択肢もあった中で、なぜスタートアップだったんでしょう?
研究とは別の話なんですけど、AIが確実に来ていると感じていたんです。それで、AIの波に乗りたくなった。
実は、僕には原体験があるんですよ。小学生の時にITバブルが来たんです。高校生の頃には同世代で起業している人もいた。当時も興味はあったんですけど、結局その波には乗れなかった。で、あの時頑張っていた人たちは今や億万長者になっている。小学生とか高校生で起業するなんて今振り返っても無理だと思いますが、あの時なんでやらなかったんだろうという謎の後悔があるんですよ(笑)。
――それは悔しいですね(笑)。その経験があったからこそ、今回のAIの波は逃したくなかった。
そうなんです。今度こそ乗る、と。しかもこんだけAIが騒がれているのに意外と周りでもAIをどんどん使っている人は少なかったので、チャンスはまだまだ十分あると思いました。
――OptimAIzeとの出会いについて教えてください。
代表の関戸くんとは、彼が医学部3年生の時に出会いました。実習で僕の担当の班に関戸くんがいたんです。ただ、入学年度がズレていて。「何してたの?」って聞いたら、「会社やって、売却して、ちょっくら遊んでました」って(笑)。
――それは気になりますね(笑)。
めちゃくちゃ面白いなと思って、結構話し込んで仲良くなりました。それで、関戸くんがOptimAIzeを立ち上げた時から勧誘が来ていたんです。でも、ちょうど研究をやっている時期だったので、すぐには動けなかった。
――最終的に、入社を決めたきっかけは?
「製薬企業の案件で助けてください」という話が来て。それと合わせて自分の中でAIの波に乗らなきゃって気持ちが大きくなって——二週間で入社を決めました。 最初は関戸くんからフルコミットで入ると思われていなかったみたいなんですけど、僕は入ろうと思って入りました。
ミクロからマクロへ——研究者の経験が活きる現場
――現在はどんな業務をされているんですか?
データサイエンス的なことをやっています。患者さんのデータ分析が中心ですね。あとは既存の薬を別の疾患に使えるかどうかを調べるドラッグリポジショニング。これは研究者時代にやっていたミクロな領域と直結しているんです。どの分子にどうターゲットを決めて……という知識がそのまま活きています。
――アカデミアでの研究経験が、ダイレクトに仕事に繋がっているんですね。
そうですね。アカデミアではミクロ(細胞・分子レベル)をやっていて、学部学生の時はマクロ(個体や集団レベル)を中心に勉強しました。ミクロからマクロまで全体的に学び、やってきた経験を今はフルに活用しています。
――まさに、アカデミアでの積み重ねがスタートアップで花開いている感じですね。
はい。最近はGoogleが発表した論文を読んで、それをAIエージェントにやらせてみたり、OpenClawのようなツールを触ったり。今まで興味はあったけれどなかなかハードルが高くてできなかったことをAIの助けを借りてやってみるとか。AIで自分の力がパワーアップさせられて、AIの波に乗れているなっていう感覚はありますね。AIがあるとできることも増えるし、やりたいこともどんどん思い浮かんで毎日楽しいです。
3歳の子どもと、リモートワークという選択
――お子さんがいらっしゃるんですよね。
はい、今3歳です。
――研究者時代はラボに出勤する必要があったと思いますが、働き方は変わりましたか?
変わりました。 以前はどうしても実験するために物理的にラボにいなきゃいけなかったんですけど、今はリモートでできるのが大きいですね。子どもがいる生活との両立という意味では、助かっています。でも基本的には出社します。やっぱりコミュニケーションをとるべきだと思うので。最近はiphoneからPCのターミナル(黒い画面)を操作して、24時間仕事ができる環境を構築しました。考えたことをストレスなくすぐ実行できるので最高ですね。
――チームの雰囲気はどうですか?
雑談がある環境で、いい雰囲気ですよ。少人数でどんどんメンバーが増えている段階なので、距離感が近い。堅苦しくない感じで仕事ができています。
「財団を作りたい」——研究者を辞めても、研究への想いは変わらない
――栗川さん個人として、今後どんなキャリアを描いていますか?
ちょっと大きな話になるんですけど、財団のようなものを作りたいんです。
――財団ですか?
はい。資産を作って、その運用益を自分の周りの研究者たちがやっている良い研究に還元したい。日本の研究環境って、お金の問題がすごく大きいじゃないですか。元手の作り方はいろいろあると思うんですけど、この会社で一発当てる可能性があるとも思っています。上場だったり。
――研究者を辞めたけど、研究をよくしたいという想いは変わっていない。
そうなんです。日本の研究環境をよくしたいという気持ちはずっと続いています。 アカデミアの中からじゃなくても、外から自分のできる範囲でできることがあるんじゃないかと思っています。
応募を検討している方へ
――OptimAIzeに向いているのは、どんな人だと思いますか?
バックグラウンドが似ている人……医学部出身とか。ただ、優秀な人はどうせたくさんいると思うんですよ。その中で、「自分でいろいろやろう」という気概がある人。それから、AIを使える人。
あとは、いないかもしれないけど(笑)、医学部の人で大学入試の時に数学が得意だった人。数学とか統計に興味がある人は、個人的には欲しいなって思います。
――最後に、転職やキャリアチェンジを迷っている方に一言お願いします。
AIの波は確実に来ています。僕はITバブルの時に乗り遅れた後悔があるから、今回は絶対に乗ると決めた。迷っているなら、乗ったほうがいい。 うちはそれができる環境だと思います。
編集後記
「低空飛行だった」と率直に語る栗川さんの言葉には、研究者としての誠実さがにじみ出ていました。研究への想いを持ち続けながら、新しいフィールドで挑戦する姿。その根底にある「日本の研究をよくしたい」という志を強く感じるインタビューでした。