生成AIの進化に最も敏感なのは、エンジニアかもしれない。ChatGPTの登場以降、プロダクト開発も、チーム運営も、かつての常識が一気に塗り替えられつつあります。フライルのCTO荒井が率いるプロダクト組織は、生成AIを積極的に取り入れるスタイルで組織の生産力の底上げに取り組んでいます。技術、組織、マインドセット──すべてが激変するこの時代に、CTOが何を考え、どう動いているのか。その核心を共同創業者である取締役CTOの荒井利晃に話を聞きました。
荒井利晃/取締役CTO
電気通信大学大学院卒業後、ビズリーチの新卒1期生として入社。入社後は、複数の採用サービス、従業員向けサービスなど、幅広いHRサービスの開発を牽引し、従業員向けプロダクトのプロダクトマネージャーとして事業立ち上げにも携わる。エンジニア・デザイナーの新卒採用リーダーも経験し、財部優一、相羽輝と3人でフライルを創業。
「人生の代表作」を追う決断
ーCEO財部さんとCOO相羽さんと創業することになった経緯を教えてください。
元々、財部と相羽の2人は学生時代からの知り合いで、起業に向けた準備を進めていました。私は別の道を歩んでいましたが、たまたま共通の知人を通じて紹介されたのがきっかけです。当初提示されたビジネス構想には正直あまり興味が持てず、一度はお断りしました。ただ、議論を重ねる中で、彼らの誠実さと、私にはない領域でしっかり成果を上げている姿勢に人として惹かれました。
私は今までのキャリアにおいて一貫して「ものづくりで人を喜ばせたい」という想いはあり、起業したいという考えも持っていましたが、私一人ではビジネスやマーケティングの知識が浅く、今私達が考えているようなスケールのビジョンは描けなかったと思います。大きな挑戦をするには、異なる強みを持つ仲間がいること、またこの2人であれば背中を預けることができると感じ、一緒に会社を立ち上げる決断をしました。
生成AIとともに進化したプロダクト組織
ー生成AIの誕生によって、プロダクト開発に影響はありましたか。
2022年の末にGPT-3.5が登場し、世のエンジニアの間でも話題になっていました。チーム内でも活発に検証を行い、お客様から要望のあった大量の顧客フィードバック(Voice of Customer。以下、VOC)をどう扱うかという課題に、生成AIを使えば突破口が開けると感じました。知人のデータサイエンティストさえ驚く程の精度があると検証できたこと、現テックリードの山下が開発したプロトタイプによって利用イメージが湧いたことを踏まえ、すぐに生成AIへのリソース投資とプロダクトへの組み込みを開始しました。
プロジェクトとして私と山下の2名体制で、プロダクト仕様を議論しながら試作を進めました。以前より「膨大なVOCがあるが、うまく活用できていない」と問い合わせをいただいていたお客様と何度も検証を重ねた上で、生成AIを活用したいくつかの機能をリリースすることができました。
ー生成AIの活用を社内文化にどう浸透させていますか。
ChatGPTのTeamプランや生成AIによる開発支援ツール(GItHub Copilot、Cursor、Devinなど)も導入しています。また、開発チームだけでなく、デザインやPdMでもAI活用を推奨しています。生成AIを活用することで自分たちの業務を大きくアップデートできるため、「どうすればこの業務をAIによって代替できるだろう」という視点で考え試してみるマインドが大事だと思っています。3ヶ月ごとにAIツールの「棚卸し」を実施し、生産性向上への貢献度をエンジニア一人一人に評価してもらっています。結果的に、ROI(投資対効果)が高いツールを残す取り組みを行っています。
3年ほど前から、月1回プロダクトチーム全員で集まって社内ハッカソンを実施していますが、特に最近はAI技術のキャッチアップと活用方法を模索する場となっています。出てきたアイデアの中から実際にプロダクトに組み込まれる機能も生まれています。積極的に新しい技術を取り込んでいく文化を組織全体で醸成している取り組みの1つです。
「マイクロマネジメントを必要としない組織」で個々の想像力を開放する
ー急成長している中で、プロダクト組織の運営において意識していることは何ですか。
「マイクロマネジメントを必要としない組織づくり」を強く意識しています。目的地は全員で握りますが、誰かに到達方法まで指示するよりも、目的地だけ握って、到達手段は任せる方が良いものが生まれると信じています。本人が思考錯誤するからこそ結果も出るし、その過程で組織が強くなると考えています。チームのミッションや目標といった「目指すべき方向性」は明確に共有した上で、その実現方法については、メンバー一人ひとりの創意工夫や試行錯誤、そしてチーム内での相互支援に一定の自由度を持たせています。
上記のようなスタンスでいられるのも、採用でバリューフィットを妥協しないからだと考えています。同じ方向を向いている仲間なら、細かな管理は不要だと考えています。さらに、リモートワークを前提としたチームビルディングやコミュニケーション文化作りにも力を入れています。Slackの「times」を利用することで普段の自分の考えや困りごとを発信したり、毎スプリント終了時にチームで振り返りを行っており、誰もが声を上げやすく、継続的な改善が可能になる土台を築いています。
また他社と比べてビジネス側とプロダクト側の垣根が圧倒的に低いと言われることが多いことも特徴だと思います。新しく参画したビジネスメンバーからも「こんなにエンジニアと話しやすい会社は初めて」と言われます。これは我々のバリューである「ユーザーの理想に、活路を見出す」を会社全体で意識しているからだと思います。
より「試してみる力」が求められる
ー生成AI時代において、どんな方がフライルで活躍できますか。
エンジニアとしての基本的な開発力は大前提ですが、その上で生成AIを使いこなす感度と意欲が大切だと考えています。エンジニアの生産性は人によって数十倍〜百倍変わりますが、生成AIの登場によってその差はさらに広がると考えています。「自ら触って試す」ことができるか、また「難しいけど面白そう」と思えるかどうか、この感覚がある人はフィットすると思います。正解がない課題に向き合い、成功と失敗から学び続けられるポジティブで好奇心旺盛な方が活躍できると思います。
また生成AI時代においては、生成AIツールを活用してチームの生産力を劇的に向上させるアプローチが可能となります。どのようなAIツール・知識・仕組みに投資することでよりチームを強くすることができるかを考え、実践できる方とぜひ最高のプロダクトチームを作っていきたいです。
求む、難題を楽しめるポジティブな人材
ー応募されるエンジニア/デザイナー/PdMの皆さんへメッセージをお願いします。
フライルで働く魅力は「お客様のプロダクトづくりに関わり、価値を届けられる」ことです。例えば、大企業のお客様のサービス・プロダクトづくりの課題に触れ、それを解決する一助を担うことで、世の中により良いプロダクトやサービスが生まれる支援ができています。業種を問わない多くの大企業をご支援できており、本当にエキサイティングです。
また、生成AIの活用も特徴的です。プロダクトへの実装に加えて、組織全体で積極的に取り入れる工夫をしており、作る/使う両面でAIに本気で投資しているスタートアップは国内でも珍しいと思います。
「ユーザーの理想に、活路を見出す」という価値観に共感し、難題を楽しめる仲間を待っています。技術力だけでなく、ポジティブに困難を乗り越えたいと思う方は、ぜひご応募ください。