穏やかな瀬戸内海に、たくさんの島々が浮かんでいる、広島県福山市。観光名所「鞆の浦」にほど近いところに今年で創業70年になった「本瓦造船株式会社」があります。
創業以来70年にわたって造船事業を営む中、特にケミカルタンカーの製造に置いて信頼と数多くの実績を獲得しています。今回はそんな本瓦造船で働く方々に本瓦造船の魅力と造船業界のこれからについてお話をお伺いしました。
ー創業して今年でちょうど70年ですが、本瓦造船様のこれまでと現在について教えてください
創業当時は、木造船や漁船の製造が中心でした。鉄産業が盛んになった高度経済成長期以降から船は鉄製が主流になり、当社も鉄製の船に変わっていきました。現在では化学薬品を載せるケミカルタンカーという船が建造船全体の半分以上を占めています。
現在は主に国内向けの物流を主とした貨物船が中心ですが、本土と離島を行き来する旅客船も建造しています。近場では、広島県の走島と鞆を結ぶ旅客船を建造しました。東日本大震災前から、宮城県の気仙沼と大島を結ぶフェリーも建造・運行しており、震災後も新たに建造したことがあります。これまで600隻余りの船舶を海に送り出してきた豊富な経験と実績で培われた小型船建造ノウハウにより、多くのお客様から長年に渡ってご愛顧をいただいています。
ー今後の造船業界の変化に本瓦造船様はどのように対応していきますか?
船の世界には、外航船(国同士での輸出入で使われる船)と内航船(国内だけで運行する船)があります。造船業界の変化は外航船と内航船で状況が異なります。全体的に言うと、外航船の数は人口増加に伴い世界的には増えています。一方内航船は、ここ数年前で中国や韓国が力をつけて日本を逆転している現状です。
内航船の数としては国内は減少傾向にあります。物流数自体は年々増加していますが、海上の物流数と相対的に陸上の物流が大きくなった影響で隻数は徐々に減っています。また、高齢化の影響で廃業した造船所の数が多くなったの影響もあります。
そんな造船業界の中、生き残れる造船所は減っていくだろうと推測しています。当社としては競争環境が厳しくなる中、シェアを広げていくことが今後の課題になって来ます。将来的に厳しい状況になっても生き残れるように当社では建造可能な船の種類を増やしていくことを考えています。時代の変化に合わせられるように、ケミカルタンカーだけでなく他の種類の船を建造する技術を磨いていく予定です。現在もすでに、海外の内航船(東南アジア方面)や車の自動運転の様な船の自動運行を開発中です。
ー今後の造船業界の変化に対応していくために今後はどんな人材が必要になりますか?
当社の強みは、液体化学薬品などの取り扱いが危険な荷物を運ぶために厳しい安全基準が要求されるケミカルタンカーの製造能力です。高い技術力が必要なこの船の建造を続けていくためには、船の知識がなくても「船が好き」「もの作りが好き」という強い気持ちを持った次の世代が必要です。
「好き」という気持ちが時代の変化に合わせて必要な技術を磨き続けるために必要なものだと考えているので、我々の船を好きんびなってくれる方との出会いを強く願っています。