- 2025年10月、記憶のプラットフォーム「Monoxer(モノグサ)」を提供するモノグサは、シリーズCラウンドで総額約18.5億円の資金調達を実施しました。
- 本ラウンドでは、リード投資家である住友商事と資本業務提携を締結。
住友商事は、グループ傘下に「トモズ」「サミット」などのリテイル事業会社を擁し、生活者に密着した事業を推進しています。 - 「『記憶の定着』によって店舗の生産性を高めるだけでなく、その先にいるお客さまの生活を豊かにすることができると思っています」
- こう語るのは、住友商事でリテイル事業を手掛ける山元淳平さん。今回の資本業務提携の背景や、そこに込めた期待について、モノグサ取締役CFOの細川慧介がお話を聞きました。
「記憶の定着」は生産性向上に直結する
- 細川:初めて山元さんとお会いしたのは、2025年2月頃でしたね。私の知り合いが住友商事で働いていて、彼から山元さんをご紹介いただきました。
- 山元:モノグサの話を聞いたとき、率直に「面白いな」と思いました。
- 住友商事株式会社 ライフスタイルグループ リテイルSBU長 山元 淳平さん
- 山元:住友商事は総合商社であり、その中で私はリテイル事業を手掛けています。リテイル事業は裾野が広く、いわば生活の全てに寄り添う事業。すなわち、少子高齢化や人手不足、フードロスなど、さまざまな社会課題に向き合っています。
- 特に人手不足の問題は深刻であり、限られた人数で生産性を高めることは急務です。そのためにデジタルやAIを活用した生産性向上を図ってきました。また、リテイル事業そのものへの投資を行うと同時に、リテイル周辺領域の社会課題解決に取り組む企業とタッグを組む動きも進めています。
- そうした中でモノグサを知り、「生産性を高める観点で、リテイル業界にとって面白いチャレンジになり得る」と感じたのです。ぜひ深く話を聞きたいと思い、代表の竹内さんと細川さんと、面談の機会をいただきました。
- 細川:人材育成や生産性向上に関するサービスは世の中にたくさんあります。その中で、なぜモノグサに興味を持ってくださったのでしょう?
- モノグサ取締役CFO 細川慧介
- 山元:まず「記憶の定着」という言葉に強く引かれました。記憶するだけで終わらず、それが体に染み込むことで「使える知識」になる。そんな意味が込められているのだろうなと。
- マニュアルを一夜漬けでただ覚えるのと、自分の中に定着した知識として理解するのは別物です。仕事で求められるのは後者であり、知識が体に染み込んでいるから自分の言葉で説明したり、臨機応変に作業をしたりできるわけです。
- つまり、記憶の定着は生産性向上に直結するのだと思います。
- また、モノグサが考える記憶の定着の仕組みにも納得感があり、スマホで手軽に、いつでもどこでも学習できる点もいいなと。思想からサービス設計、UI/UXまで一貫して「記憶の定着」への思いがプロダクトに込められているのを感じました。
- 細川:ありがとうございます。モノグサは「記憶の定着」によって学び手に価値をお返しすることにずっとこだわってきました。
- 学び手の貴重な時間を預かる以上、「きちんと記憶できた」という体験を届けたい。そんな思いを込めてプロダクトを設計してきたので、そこを感じ取っていただけてうれしいです。
- ただ正直に言うと、本当に興味を持っていただけるのか、面談前は不安もあったんです。大きなインパクトを出せるだろうという自信はありつつも、Monoxerはリテイル事業と分かりやすくマッチするわけではない。だから期待半分、不安半分で訪問したのを覚えています。
そうしたら、山元さんは竹内が書いた『営業スキル検定』という、結構なボリュームの本を読んでくださっていて。事業についても丁寧に調べていただいた上で共感してくださり、良い意味でのサプライズでした。 - 山元:こちらとしても「想像していた以上にモノグサには将来性がある」と感じられたのはうれしいサプライズでした。
- モノグサが描く成長ストーリーに興味を持っていたのですが、BtoBにとどまらず、子どもや高齢者、学習意欲の高い社会人など、個人に直接価値を届ける未来像をお互いお話する中で意気投合し、まさにリテイル事業同様、生活者と直接向き合う領域まで広がる可能性を強く感じました。
- 加えて、モノグサはEdTechからより広い領域へと展開する成長戦略を描いていました。だからこそ、BtoBでの生産性向上や人材の戦力化といった分野にも、モノグサの強みが発揮できるのではないか。それであれば、当社のリテイル事業とも親和性が高いと判断しました。
- 正直なところ、モノグサのポジショニングがEdTechの世界だけに留まるのであれば、今回の出資の決断はしていなかったと思います。
Monoxerは「暮らしを豊かにする」仕掛けでもある
- 細川:今回の資本業務提携では、まずドラッグストア「トモズ」とスーパーマーケット「サミット」で取り組みを進めていきます。
具体的に何をするのか、せっかくなので山元さんからご説明いただけますか? - 山元:すでにトモズでは、登録販売者や薬剤師の資格取得支援に対し、「Monoxerでどのようなサポートができるか」という観点で実証実験が始まっています。ドラッグストアや調剤薬局では、登録販売者や薬剤師などの資格保持者がお店にいることが前提となりますから。
サミットはまだ検討段階ですが、例えば外国人技能実習生の研修や日本語学習の仕組みをMonoxerに変えることで習得スピードやクオリティが上がれば、サミットと技能実習生の双方にとって大きな価値があります。もちろんバックグラウンドを問わず、従業員の皆さんのさまざまな面におけるMonoxer利用の可能性についても、モノグサの皆さんと一緒に議論を進めたいですね。 - トモズやサミットが向き合う社会課題は、日本中のリテイル事業者が向き合っている課題でもあります。だからこそ、まずはトモズとサミットで実績をつくり、それを他のリテイル事業者にも展開することで、業界全体の人にまつわる問題を解決していきたいです。
- 細川:住友商事さんとの業務資本提携は、モノグサだけでは辿り着けなかったであろう未来への道筋をつくれたことに大きな意味があると思っています。
- 我々は記憶や学びに関するプロフェッショナルではありますが、リテイル事業の解像度はまだ高くありません。そういう中で同じビジョンを共有し、未開拓の地を一緒に歩んでくださるパートナーとなっていただいたことを本当に感謝しています。
- 同時に、資金を投じてリスクテイクしていただいた分、リターンをしっかりお返しするのは経営者として果たすべき責任であり、その意識をブレずに持ち続けなければと身が引き締まる思いです。
- まずは店舗で働く皆さんの学びの支援からスタートしますが、店舗の製品を製造する工場の人手不足や生産性向上の課題解決に取り組んだり、トモズやサミットのお客さまの暮らしを豊かにするための動きを考えたりと、一緒にできることはいろいろありそうで、夢が広がります。
- 山元:トモズやサミットのお客さまがMonoxerを使う世界観まで一緒につくれれば、現場の生産性向上という課題を超え、より大きな価値が提供できますよね。
- レシピを例に挙げれば、「塩〇グラム、醤油〇ミリ」と分量を覚えるのは記憶そのものです。一方、「煮物ならこの調味料の組み合わせ」「この食材ならあの味付けが鉄板」という料理の方程式を理解できているのは、記憶の定着だと思っています。
- つまり記憶の定着ができたら、応用が利くわけです。そう考えれば、記憶の定着は人の暮らしや価値観を豊かにする仕掛けであり、モノグサのすごみはそこにあると私は感じています。
- 細川:ありがとうございます。うれしいです。
- 山元:私たちはお客さまにとって、双方向でコミュニケーションができる存在でありたいと思っています。お客さま一人一人がMonoxerを通じて新たな学びを得て、再び買い物に来て普段と違う商品を購入し、それによって暮らしが豊かになっていく。そんな未来を一緒に目指したいですね。
- 細川:例えばレシピや栄養に関する知識が記憶として定着することで、「いつもの食材に加えて、今回はこれを使ってみよう」などの行動変容が生まれる。社会的インパクトは大きいですね。
- 山元:何より「Monoxerを使うと暮らしが豊かになる」というのは、単純に楽しいじゃないですか。それは「健全な事業活動を通じて豊かさと夢を実現する」という住友商事の経営理念や、「生活者目線で、食と健康に関する社会課題に向き合い、暮らしを豊かにする」という住友商事ライフスタイルグループが掲げるグループミッションにもつながると考えています。
- 我々が儲かるだけでなく、人々の暮らしや社会を豊かにするビジネスを構築する。それが結果としてモノグサのような仲間を増やし、住友商事の世界を広げることになると思っています。
「勉強しよう」から「Monoxerしよう」へ
- 細川:モノグサがさらに成長していくためのアドバイスがあれば、ぜひお願いしたいです。
- 山元:長期的には、人をどれだけ分厚くできるかだと思います。モノグサの経営陣の皆さんは信頼できる方々であり、すでに素敵な仲間もいらっしゃいますが、事業基盤を拡大するには同じ価値観を共有できる仲間がもっと必要ですよね。
細川:おっしゃる通りです。今のモノグサは第二創業期に立ちつつあると感じています。教育領域からスタートし、現在は社会人領域へと踏み出していますが、この領域を拡大し、価値を最大化した先にBtoC領域への進出があると考えています。 - そういうタイミングだからこそ、次世代のリーダーが不可欠です。社会人領域といっても産業により課題はさまざま。産業ごとに事業をつくり、それをリードできる人にぜひ仲間になってほしいですね。将来的には経営に近いところもお任せしたいですし、会社を引っ張る存在になる余地はまだまだあります。
- 山元:最近はAIがバズワードのように語られ、知的労働がAIに置き換わるという話もあり、大袈裟にいえば人類は岐路に立っているのだと思います。
- AI活用が広がれば、学びを通じて自分を高めることの重要性は増していくでしょう。その際、Monoxerは頼れる相棒のような存在になれると思っています。羅針盤として、拠り所として、また学びのきっかけとして、学ぶ意欲を持つ人を支える存在であってほしいですね。
- 細川:私たちは「記憶を日常に。」をミッションとしていますが、私の中で一つのゴールが見えた瞬間がありました。高校生と思われる方が「勉強せずにMonoxerをやっていたら英語のテストで100点が取れた」とSNSに投稿していて、「これだ!」と思ったんです。
- 勉強はどうしても腰が重くなりがちですが、その学生はMonoxerを勉強とは別の何かとして捉えてくださっている。まさにそういう存在になれるといいのだろうなと思いました。
- 山元:気軽に学びの世界へ足を踏み入れるきっかけづくりができれば、勉強の概念が変わりますよね。「勉強しよう」ではなく「Monoxerしよう」となるのが理想だと思います。
- そんな未来に向けて、まずはリテイルの現場で描いているビジョンを一緒にかなえる道を探っていきましょう。
文章:天野夏海
写真:上野裕二
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