「ゲーム業界で働きたいけれど、未経験の自分には遠い世界だろうな」……そう思って、最初から諦めてはいませんか。
今回お話を伺ったのは、株式会社ユニコーンテクノロジーの辰野さん。今や世界的な知名度を誇る世界的人気コミックIPのゲームタイトルに携わり、過去には数億単位の売上を左右するディレクションも経験してきた、同社を代表する精鋭エンジニアです。
しかし、その華々しいキャリアのスタート地点は、第一志望だったメガベンチャーでの不採用。一度は夢を諦め、製造系エンジニアとなった彼がいかにして憧れのプロジェクトを手中に収めてきたのか。その背景には、代表の廣瀬さんも太鼓判を押す「マニアックなやり込み気質」がありました。
辰野さん / ゲームプランナー・ディレクター
専門学校のゲームサイエンス学科を卒業後、大手製造系企業にてエンジニアとしてキャリアをスタート。1年半後、夢だったゲーム業界への挑戦を再開し、ユニコーンテクノロジー(当時:前身企業)へ入社。SESという仕組みを活かし、国内屈指のメガベンチャーグループをはじめ、国内大手ゲームパブリッシャーといった名だたる企業で、有名IPタイトルの開発に携わる。現在はディレクターとして現場を牽引する傍ら、社内の新人研修の講師も務め、後輩の育成に尽力している。趣味は、映画とキャンプ。
挫折からの再スタート。SESに見出した「憧れの現場」への最短ルート
──辰野さんは現在、誰もが知る有名タイトルの制作に深く関わっていらっしゃいますが、かつてはゲーム業界の選考でかなり悔しい思いをされたとお聞きしました。
そうなんです。専門学校時代、本気で志望していた超大手のITメガベンチャーの社長面接が、自分の甘さを痛感させられるような厳しい技術面接だったんです。当時の技術力不足を見透かされたようで、結果は不採用。それが本当にショックで、一度はゲーム業界そのものを諦めてしまったんです。
──そこから再び、ゲームの世界を目指された理由は何だったのでしょうか。
一社目は総合電機メーカーに就職し、私は製造ラインでものづくりを行うロボットを制御するアプリケーションの運用保守をしていました。コードを書くこと自体は楽しかったのですが、土日に趣味でゲーム制作を続けるうちに「やっぱりこれを仕事にしたいな」っていうのが自分の中ではっきりしたんですよね。一度は諦めた道でしたが、やりたいことをやらないまま終わるのは違うなと思い、もう一度挑戦しようと決めました。
──数あるIT企業の中からユニコーンテクノロジーを選んだ決め手を教えてください。
当時の「創業メンバー募集」という言葉に強く惹かれたこともありますし、SESという仕組み自体にも魅力を感じました。SESという働き方なら一社に縛られず、憧れのゲーム会社の複数社で経験を積める可能性がある。その仕組みが、キャリアを再スタートさせる自分にとって非常に面白そうで、大きなメリットだと感じたんです。
「やり込み」が信頼へと変わる瞬間。誰もが知るゲームの開発へ
──ゲーム業界でお仕事をスタートしてから、現在の業務に至るまでの変遷を教えてください。
運命的なことに、最初の案件はかつて新卒時に不採用になったメガベンチャーの子会社でした。形は違えど、一度は諦めかけた場所に現場の一員として関われるようになったのは感慨深かったですね。そこでは、プランナーのアシスタント業務からスタートしました。具体的にはキャラクターの登場演出の制御や、シナリオのテキストデータの流し込みといった、ゲームの土台を支える基礎的な実務です。
2年目には、親会社であるメガベンチャー本体のプロジェクトにレベルデザイナーとして参画し、100万ダウンロードを超えるタイトルのガチャ排出比率やパラメータ調整を任せていただけるようになりました。さらにその数年後には、IPもののタイトルでゲームディレクターに。企画書の作成から、フルボイス作品のアフレコ台本の執筆、現場の立ち会いまで一貫して統括しました。
その後は家庭用ゲームの世界にも広げ、2作品の制作を担当し、累計2億ダウンロードを突破している大規模な作品にも関わってきました。
──とても華々しいキャリアですね……!
自分でも、一見華々しいキャリアだと思います(笑)。ただ、裏側では寝る間を惜しんでキャッチアップし続けるという相当泥臭い日々を送っていましたね。
当時、他職種の方々と対等に話すための知識すらままならないうちにプランナーになったので、まずはエンジニア以外の領域の知識の穴を埋めることに必死でした。デザイナーさんに何かを依頼する際も、具体的にどう伝えればイメージが形になるのかすら分からなかったんです。
だから、仕事が終わった後や合間の時間をすべて使い、自主的に毎日学び続けました。例えば、歴史が絡むタイトルの時はその時代の食文化や環境といった周辺情報も把握するために、自費で専門書や資料集を買い漁ってデスクに積み上げていました。そして、毎日寝る直前まで、週に何冊もの資料を読み潰すまで自分の中に叩き込みましたね。期待されている役割に応えるために、自学自習という「やり込み」で、自分の基準を急ピッチで引き上げていった感覚です。
──業務時間外でもかなりの時間を費やして努力されたことが伝わります……。そうして培われたご経験から、現在はどのような業務を担当されているのでしょうか。
現在は国内大手ゲームパブリッシャーのプロジェクトに参画し、世界的人気コミックIPのゲームタイトルにプランナーとして携わっています。プロジェクト全体では150人規模という非常に大きなチームで、その中で開発実務を担っています。
世界中にファンがいる作品ですから、中途半端な知識は通用しません。キャラクター一人ひとりの背景や世界観を深く理解した上で、ファンの方々に「わかっているな」と納得していただけるものを形にする。これまでの経験や「やり込み」で培った土台を活かしながら、大きな責任とやりがいを持って現場に向き合っています。
──そこまでの裁量を任されるようになったのはなぜでしょうか。
まずはルーティーンワークをいかに効率よく、正確に完遂できるかを考えました。そして自ら作り出した「空き時間」を使って、「何か手伝えることはありませんか?」と現場の先輩方に積極的に働きかけていきました。
そうした基礎的な実務の積み重ねと、並行して続けていた独学でのインプットが、結果として重要工程を任せていただくきっかけになったと感じています。代表の廣瀬自身がゲームを誰よりやり込む人なので、突き詰める姿勢を正当に評価してチャンスをくれる社風ということにも救われて、今のキャリアに繋がったんだと思います。
スタッフロールに載る喜びの先にある、「市場の反応」という熱狂
──辰野さんが感じる仕事のやりがいや、面白さはどこにありますか。
キャリアの初期は、シンプルに「スタッフロールに自分の名前を載せたい」という夢がありました。実際に初めて自分の名前が流れてきたときは、やはり震えるものがありましたね。
ただ最近は、それ以上に「売上」という数字を出すことに面白さを感じています。
──「売上」に面白さを感じるようになったきっかけは?
実は以前は「これをやったら面白いから」という自分の感覚だけで企画を考えていた部分がありました。そんな時に、当時の上司に「その面白さは、どうやってマネタイズに繋がるの?」と突きつけられたんです。
当時は「ユーザーに寄り添いたい」という想いが強く、数字を追うことに葛藤もありました。でも、数字が出なければ、それはただの独りよがりで終わってしまいます。
その葛藤を経て、今は、売上という数字を「どれだけ多くの人がそのゲームを楽しんで、お金を払うほどに熱狂してくれたか」という、ユーザーさんからの反応の結果だと捉えるようになりました。自分が考えた企画に対して、数字という明確な形で手応えが返ってくる。それが多くのファンに届いた証拠だと思うと、一番熱くなれるポイントですね。
──なるほど。その数字を出すためにこだわっていることはありますか?
まず、自分が誰よりもその作品のファンでなければいけないと思っています。ファンとして違和感があるものは出したくないし、自分が納得いかないまま形にするのが嫌なんです。
キャラクターの衣装を決める際も、デザイナーさんに任せきりにせず自分でも徹底的に調べます。設定資料集や画集を何冊も読み込んで、ドレスの構造や髪飾りの正しい飾り方まで研究しました。そうやって細部までやり込むことで、ファンの方々に「わかってるな」と納得してもらえる。その積み重ねが結果に繋がると思っているので、この「やり込み」の部分だけは誰にも負けたくないですね。
「やり込み」の先に、憧れのキャリアがある。未経験から「つくる側」へ踏み出すあなたへ
──辰野さんは現在、社内の新人研修の講師も担当されているそうですね。
研修では技術的なこと以上に、「仕事に向き合う姿勢」を大切にするよう伝えています。ゲーム業界って、外から見ると華やかに見えるかもしれないですけど、実際は地味な作業の繰り返しなんですよ。最初はキャラクターの名前を間違えてないかチェックしたり、延々とデータを流し込んだり。でも、その基礎的な実務をいかに突き詰められるかが、結局は良いものづくりに繋がるんですよね
ユニコーンテクノロジーは、そうやって一つのことを突き詰めようとする姿勢を正当に評価してくれる会社です。まずは目の前の実務を一つの「やり込み」として捉え、大切にできるような視点を、研修を通して伝えていければと思っています。
──最後に、未経験から一歩を踏み出そうとしている読者へメッセージをお願いします。
「自分に向いているかどうか」なんて、正直やってみないと一生分からないと思います。僕だって一度は挫折して別の道を歩みましたし、最初は自分がディレクターになるなんて想像もしていませんでした。
ただ、少しでも「やってみたい」という気持ちがあるなら、まずは飛び込んでみてほしいです。僕達は、頑張りたい人にはそのための場所を用意したいと思っています。自分がやりたいことを信じて、泥臭い作業も一つの「やり込み」として楽しめる人と、いつか現場で一緒に面白いものを作れたら嬉しいですね。