哲学者プラトンのイデア論とオブジェクト指向プログラミングの意外な共通点 | 株式会社 Tuber Vision
AIの進化が進む中、文系AIエンジニアの活躍が期待されています。彼らは文章を通じて意図を正確に伝える能力が高く、これがプロンプト作成において重要だからです。私自身オブジェクト指向プログラミング(...
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前回は、プラトンのイデア論とプログラミング言語のオブジェクト指向(OOP)の類似性について触れました。今回は、さらに哲学的な視点からOOPとAIを比較し、もしOOPがプラトン的な静的世界観を反映しているのだとすれば、AIはアリストテレス的な動的な世界観を反映していると言えるのではないか、というテーマで考えます。
OOPは、現実の複雑さを抽象化し、整理するための手法です。「クラス」という普遍的な設計図を基に、具象化されたオブジェクトが生成されます。これは、プラトンのイデア論における「イデア(普遍的な本質)」と、その具体的な反映である物質世界との関係に似ています。
イデアは変わらず永遠に存在し、それを反映する物質はその一時的な表現にすぎません。同様に、OOPのクラスは一度定義されると固定され、そのクラスに基づいて様々なオブジェクトが生み出されますが、その基本的な設計は(人の手でクラスを再設計しない限りは)変わりません。
これがOOPの静的な特徴であり、プラトン的な視点を反映していると言えるでしょう。
対照的に、AIは動的な学習を通じて進化します。データを取り込み、モデルを更新しながら自己改善していくAIは、アリストテレスの「形相と質料」の哲学に近いものです。
アリストテレスは、物事は常に変化し、経験を通じてその本質が見出されると考えました。AIも、過去のデータや現実世界の経験から学習し、そのモデルを常にアップデートし続ける存在です。
この動的な特性は、アリストテレスが現実の変化を重視した哲学的アプローチに通じています。
OOPが静的な設計に基づくのに対し、AIはデータに基づいて絶えず進化します。これはプラトン的な理想主義とアリストテレス的な現実主義の対比に似ています。
OOPは「一度定義されたクラスは変わらない」という性質を持ち、普遍的な真理を追求するのに対し、AIは新たなデータを取り込み、絶え間なく進化し続けます。
この違いが、OOPが理想的な静的な設計を重視する一方で、AIは現実に適応し続ける柔軟なシステムであることを表しています。
AIに見る動的な知識体系は、特にAIのように学習し続けるシステムにおいて顕著ですが、人間の知識や意識にも当てはまります。
ビジネスにおいても、変化の激しい現代に適応するためには、この動的な知識体系が不可欠です。固定された知識だけに依存するのではなく、新しい情報や市場の変化に迅速に対応し、組織全体で知識を更新し続けることが求められます。
また、「生涯学習」の重要性もこの動的な知識体系の一環です。個人が新しいスキルや知識を学び続けることで、キャリアや業務において常に最新の知識に基づいた判断ができるようになります。
ビジネスや組織においても、動的な知識体系を取り入れることで、持続的な成長を可能にしていることから、AIのそれはより現代的と言えるでしょう。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
今回のコラムでは、OOPがプラトン的であり、AIがアリストテレス的であるという対比を示しました。ちなみに、前回のコラムでプラトンとアリストテレスが描かれた画家ラファエロの「アテナイの学堂」を紹介しました。プラトンの手は天を指していて、一方アリストテレスの手は目の前に出されています。見えない本質を指すプラトンと、目の前の現実こそがと言わんばかりのアリストテレス、これを表現できる画家ラファエロは素晴らしいですね。