出版社がオフィシャルに出店する「オンデマンドプリントTシャツモール」、pTa.shop(ピーティーエー・ショップ)
pTa.shop(ピーティーエー・ショップ)は出版社が各屋号をもってオフィシャルに参加する「オンデマンドプリントTシャツモール」です。各出版社が文学、ミステリ小説や絵本、雑誌など様々な書籍ジャンルからプリントTシャツを提供します。公式だからこそ、オンデマンドだからこそできる点1点が面白い、唯一無二のTシャツモールです。
https://p-t-a.shop
出版業界の中で新しい挑戦を絶えず続けているインプレスグループ。次なる挑戦の舞台は、紙でもデジタルでもない全く新しいステージでした。
業界の中に存在するパラダイムを刷新し、30年の歴史から織りなされる新たな編集の概念。それを生み出すことこそが明日の出版業界を変える起点になり、出版業界を大きく飛躍させることになる。
そう話すのは、新会社となる「IPGネットワーク」でプラットフォーム事業の責任者を務める井爪さん。これまで創り上げてきたコンテンツを、これまでにない形でユーザーに届けることができるプラットフォームはどのようなものなのか、どのように推し進めていくのか、これまでの井爪さんのキャリアと共にお伺いしました。
井爪 敦 / 株式会社IPGネットワーク プラットフォーム事業推進部 部長
新卒で株式会社リットーミュージック(インプレスグループ)に入社。ストリートダンス関連の雑誌編集やDVD制作に携わる。その後、ファッション通販サイトのマガシークにてメンズ部門の責任者、「d-fashion」の立ち上げに関わったのち、株式会社AMSに入社。1,000億規模のアパレル企業ECの統括PMとして従事。2018年、株式会社ファインドスターへ入社し、デジタルDM事業部 事業部長、執行役員として従事。2022年2月株式会社インプレスホールディングス 社長室に入社し、同年7月に株式会社IPGネットワーク所属となる。
新会社である株式会社IPGネットワーク(以下、IPG)はもともと存在していた「Impress Professional Works(以下、IW)」を母体としています。ちなみに、「IPG Network」という呼称は株式会社インプレスが当時アメリカで事業を展開していた時代に使用していた名前みたいです。
IWはバックオフィスのプロを集約していた会社だったので、そこには事業を推進する機能がありませんでした。今回はそこに「プラットフォーム事業」が入り、グループの事業会社を横断し、事業開発できるようにする意図があります。
会社全体にそこまで大きな変化はなく、従業員数で言うとおよそ20名ほど。そこに私が進めていくプラットフォーム事業推進部が参加する形になり、私たちの事業は現在2名。ここに新卒の方を数名採用したいと考えているのと、グループ内公募も並行して進めている状態ではありますが、直近では10名を超えるような規模にはならないかなと思ってます。
現在伝えられるものだと「pTa.shop(ピーティーエー・ショップ)」という、出版社が参加するオンデマンドTシャツモールのサービスが該当します。出版社が作ったコンテンツを「紙媒体」や「デジタル」だけではなく、「Tシャツ」という形で2次利用していこうという試みから始まりました。
実際にコンテンツをTシャツにしたものがこちら。『飯を喰らひて華と告ぐ』 / 白泉社
普通の出版社が起点になってコンテンツをつくっていると、「紙での発信はしたし、次はデジタルかな」で終わってしまうことが多い。せっかく自分たちが自信を持ってつくったコンテンツだからこそ、最大限活かしていきたいですよね。
しかも、自らがユーザーでもある編集者が自信を持ってつくったコンテンツなので、面白いことは間違いない。「これを活かせば絶対に面白いサービスになる」と私は確信しています。
編集者が行っている編集という行為は「数多ある情報から、本物の情報を抜き出して伝えること」だと考えています。これを言い換えると、世の中にある情報の中から、編集者が「これがイケている」という印を付けて発信しているということ。この行為が一昔前までは「雑誌」をはじめとする「紙」を媒介して行われていました。
ただ、ここで忘れてはいけないのが、「紙」や「ウェブ」はあくまでも人に情報を届ける「手段」である、ということなんです。しっかりと情報・コンテンツを人々に届けることができるのであれば、その手段なんて本当はなんだっていい。先ほどお伝えしたTシャツも、その一つの手段になりえる。
時代は少しずつ変わってきていて、世の中にはさまざまな媒体・媒介手段が存在するようになりました。そんな中で多くの紙媒体は、デジタルに移行しようとしています。でも冷静に考えてみると、紙媒体を完全にデジタルに移行できるはずがない。誌面の完成度が高すぎるんです。
そうなると、次に必要なことは、完全に新しい形で「編集」や「出版」という行為を再定義することだと考えています。それらの行為を再定義する中で、紙やデジタル、Tシャツなど、さまざまなものを媒介させてコンテンツをアウトプットしていく体制を、このプラットフォーム推進事業で作り上げることができたら理想的だなと考えています。
私は大学に在籍していた時から、リットーミュージックでストリートダンス関連の雑誌制作とDVD制作に携わっていました。そのまま新卒でリットーに入社し、朝から晩まで仕事漬けの日々。私生活と仕事が一体化していて、現代だったら考えられないような生活スタイルだったんですけど、とにかくダンスが好きで、特に「仕事をやらされている」という感覚もなく、「ただただ楽しい」という理由だけでたくさん働いていました。
そうですね。本当にダンスが好きで、ダンスをしながら、雑誌の編集もして、楽しい日々でした。そこから「マガシーク」というファッション通販サイトに転職することになって、メンズ部門の責任者を経験しました。
ただその直後、会社がdocomoに買収され、「d-fashion」の立ち上げメンバーに入れられました。立ち上げには私だけではなく、誰でも知っているメジャーな戦略コンサルから10名ほどのコンサルタントもアサインされ、その人たちと一緒に働くことになったんです。
コンサルタントと一緒に仕事をすることなんてこれまでになかったので、もう本当に衝撃で。「これまでにやっていたことは、仕事と呼べる代物ではないな」とまで思うようになりました。
本当の衝撃は、そのあとに着任した事業部長でした。メンバー全員の役割とKPIをいちから再設定し、「それ以外のことはしなくていい、とにかくこの数字を追うことに集中しよう」と。その通りに実行すると、どんどん数字が上がっていく。
しかも、数字が伸びていかないのは「それを実行している人間」に問題があるのではなく、全て「戦略や目標設定」が悪いんだということを常々言っていました。最初にKPIを渡されて、数日経って数値を確認し、次の施策を提示されて、そしてまた数値を確認して、という、ここのチューニングがとにかく細やか。目指すべき姿ではありますが、ちょっと難しいと思います(笑)
何か提案をするときや計画策定の際は、彼らがどのように仕事をしていたのかを思い返しますし、今でも参考にしています。
その経験があったからこそ、次の会社で、ECシステムの開発ベンダーであるAMSでは自信を持って仕事ができていましたし、統括として関わらせていただいたプロジェクトは、200%以上の売上伸長に貢献できたと思っています。そこから縁あってファインドスターに入社することになります。
新規事業をやったり、既存事業の責任者をやったり、とにかくたくさんの領域を管轄させていただきました。関わりのあるメンバーの数も50人は越えていたと思います。新規事業でやっていたのは「デジタルで分析されたデータをもとに、アナログでアウトプットが自動で発信される」というもの。
具体的には、SalesforceなどのMAツールとシステム連携させ、ユーザーのカスタマージャーニーに基づいて自動でDMが送付されるというような形ですね。100人いたら100通りのデザインで発送でき、パーソナライズされたDMでアプローチすることができるので、高い成果を得られるのがサービスの特徴でした。
「事業づくりだけに集中できる」ことでしょうか。グループには本当にたくさんの資産(コンテンツ)が蓄積されていて、それら全部を活用する方法を0から考えることができます。
「コンテンツ自体を生み出す」ことは本当に難易度が高く、命を削るようなプロセスです。そこは編集者というプロフェッショナルに任せながら、自分たちはそれをプラットフォームに乗せながらどのように発信していくのかだけを考えていくことをメインミッションとして担っていきます。コンテンツをどう活用するか、ということだけに集中できる。これほどまでに事業づくりに集中できる環境はないですよね。私自身も、ずっとワクワクしています。
まさにおっしゃる通りだと思います。1番ありがたいなと感じるのは、この事業に取り組むことが「インプレスグループの悲願」だということ。
今回の取り組みは、現代表も前代表も、これまでにずっと「やりたい!」と言い続けてきたことなんです。もちろん事業として成り立たせることはものすごく大変なことです。それでも、ただひたすらに「自分たちが生み出したい事業作りに、全力で向き合うことができる」という環境は、なかなかないことだと考えています。
とにかく"意思がはっきりとしている人"と仕事をしたいです。思っていることをはっきりと伝えてくれて、仮に自分が間違えているということがあれば、それをちゃんと伝えてくれると嬉しいですよね。あとは、出版はこれからどこに向かい、どんな未来をつくることができるのか。それを考えたことがある人は、雑誌や小説などの出版物は好きだけど、なんとなくネガティブなイメージを持っている人なのかもしれない。そんな人ほど、一緒に働きたいです。そしてこの環境を全力で楽しんでくれる人なら最高だと思ってます。