目次
- このストーリーについて
- 組織設計
- タッチモデル設計と運用
- 重要KPI=カバー率について
- さいごに
このストーリーについて
※過去ストーリーを読んでいただいた方は重複しますので読み飛ばしていただけると幸いです。
UPWARD CCO (Chief Customer Officer/最高顧客責任者)の剣持と申します。このストーリーではUPWARD Customer Successの戦略を複数回にわたって公開していきます。UPWARDのCSは「日本のSaaS企業からベンチマークされるCustomer Success組織」を本気で目指しており、そこに至るノウハウを広く公開することにより今後CS組織を構築、進化させていく方々の参考となり、日本からより優れたCS組織が多く生まれることの一助になりたいと考えております。
第1回では現在のUPWARD CSチーム立ち上げの歴史、第2回では戦略策定のために行った現状分析、第3回では、組織のMissionと、策定した基本戦略について書かせていただきました。今回第4回は、第3回で書いた戦略に基づいて、具体的なオペレーションをどのように設計の根幹部分について書かせていただきます。
過去分ストーリー
第1回:組織立上げの軌跡
第2回:実行施策の策定に向けたChurnと既存顧客状況の分析
第3回:組織Missionの定義と基本戦略の策定
オペレーションの根幹となるのは、組織設計、タッチモデル設計、KPI設計の3点です。
組織設計
まず、オペレーションを実行する組織についてです。UPWARDのCSは以下の3チームで組成しております。このチーム組成は後述するタッチモデル(ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチの区分けと対応方針)と密接に関連しています。
- ストラテジックマネジメント部
- コーポレートマネジメント部
- カスタマーサクセスイネーブルメント部
ストラテジックマネジメント部は特にレベニューまたはポテンシャルが大きい、いわゆるハイタッチ顧客を専任で支援するチームです。対象の顧客はエンタープライズ(大企業)中心となり、まさに名前の通りですが、一社一社の顧客に対し1to1でより戦略的なプランニングの下活動することが求められるチームです。一人一人が担当する顧客数は数社から十社以内と少なめになります。
コーポレートマネジメント部は中堅層であるロータッチ顧客を支援するチームです。対象の顧客はSMB(中小企業)中心となります。一定の質を担保しつつ、標準化、仕組化による効率的な対応が求められるチームです。一人一人が担当する顧客数は20社~30社となり、ストラテジックマネジメント部より多くなります。
さらに、コーポレートマネジメント部はさらにオンボーディングチームとアダプションチームの2つのサブチームに分けています。両チームとも名前の通りですが、オンボーディングチームは新規顧客の受注後からプロダクトの利用開始までのオンボーディングのご支援を行い、アダプションチームはオンボーディングチームからオンボーディングが完了した顧客を引き継ぎ、継続的な支援や契約更新業務を行っていきます。
最後にカスタマーサクセスイネーブルメント部は、特定の担当顧客によらない1:Nのテックタッチ業務を行います。例えば、テクニカルサポート業務や、ユーザーマニュアルのメンテナンス、社内的なナレッジ蓄積などを行います。ストラテジックマネジメント部やコーポレートマネジメント部のメンバーがより顧客ごとの複雑性の高い課題解決や踏み込んだ提案に注力できるように後方支援や仕組みの整備を行うような立ち位置になります。
組織の組成については、一つのチームでなるべく同じような業務特性の仕事に特化することが効率的であるという考え方に基づいて決めています。一方で、細分化しすぎることもまた組織間の隙間が増え効率が落ちるので、そのバランスも考慮しこのような組成に落ち着いています。ハイタッチ顧客の対応は一社一社の導入が比較的大規模で複雑なプロジェクト推進になるため各担当がオンボーディングからアダプションまでを一気通貫で顧客を担当する形に、ロータッチの場合はハイタッチよりは比較的推進がシンプルであり、オンボーディング、アダプションという2フェーズにわけられ、かつそれぞれのフェーズで業務特性が大きく異なるためチームを分ける形に、ただし、様々な顧客からくる同じような問い合わせを各顧客担当者で対応したり、マニュアル整備などのテックタッチタスクを顧客対応の片手間で行うのは非効率的なため、そのような業務は切り出して別チームで専任で対応、といった具合です。
これは、TheModelにおける分業の考え方の一つにも共通しています。一人の担当者がリードの獲得、商談推進、受注後のフォローといった様々なリズム、難易度の業務を同じ担当者がパラレルに実行するのではなく、分担して同じ特性の業務に集中することで一人一人の生産性が高まるという考え方と同様です。
組織構成
タッチモデル設計と運用
先述の通り、CS全体のリソースを最適に投下するために、顧客をハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3セグメントに分解し運用しています。セグメントのクライテリア(基準値)は非常にシンプルかつオーソドックスで、①ACV(年間契約金額)と②顕在化しているポテンシャルACVの合計です。〇円以上はハイタッチ、〇円~〇円はロータッチ、それ以下はテックタッチという形です。ACVをクライテリアにするのはもちろん、Churnが発生した場合の事業インパクトが大きいためで、よりACVが大きい顧客にはよりリソースを割き、Churnのリスクを抑えるという考え方に基づいています。加えてポテンシャルACVを考慮しているのは、ポテンシャルを確実に収益に結び付けるべく確実に定着化の支援をするということと、ACV拡張後のChurnインパクトが大きくなるため、拡張前からリスクの低減化をしておくべきという考え方です。
クライテリアの金額の決め方ですが、大まかな基準としてACV+ポテンシャルACVのTop10%の顧客をハイタッチ、その下30%をロータッチ、以下60%をテックタッチとしています。加えて、上述したハイタッチを担当するストラテジックマネジメント部が一人5~10社程度、ロータッチを担当するコーポ―レートマネジメント部が20~30社程度担当するというのが適正値だと考え、最終的にはマネージャー間で微調整して決めています。また、顧客の構成は常に変わるため、半年に一回基準金額の見直しを行っています。
決めた基準は厳格に適用することは心がけています。例外的に個別の顧客のセグメントを上げたりということはよほどのことがない限りは行いません。実運用においては営業サイドからこの顧客に対して支援をコミットしたいからクライテリアを上げてほしいという要請を受けることはありますが、これをケースバイケースで応じていると基準があいまいになり、公平性が担保できなくなることに加え、都度調整し、協議し、判断するということも、積み重なると相当なコストになるためです。
具体的なオペレーションですが、セグメントごとに、KPIと商談管理レベルに差をつけています。KPIに関しては次の章で詳しく触れますが、セグメントごとにChurnRate目標を設定していることに加え「カバー率」という活動KPIを定めています。商談管理レベルについては、高セグメントほど重点的、厳格に商談管理を行う、という形になっています。各CS担当者は自身の各担当顧客に対し、それぞれどのように契約更新を受注するかというClosingPlanを立て、SFA(salesforceの商談オブジェクト)に登録することになっています。このPlanは定期的に各チームのマネージャーと進捗レビューを行うのですが、このチェック頻度や1商談のレビューにかかる時間がハイタッチはより高くなっています。
タッチモデルのオペレーションイメージ
重要KPI=カバー率について
先述の通り、各セグメントごとに目標ChurnRateとカバー率というKPIを設定しています。ChurnRateに関しては非常にわかりやすく、高セグメントのほうがよりリソース注力する分目標値が低く設定されているという形になっています。そして、このChurnRate目標を実現するための実活動KPIとしてカバー率というKPIを設定しており、これを超重要KPIと位置付けてして運用しています。
カバー率とは、「顧客に対して、一定期間中にどれだけ網羅的に接点を持てているか」つまり顧客接点頻度を示す指標です。この「一定期間」を何か月に設定するかと、目標を何パーセントにするかというのをセグメントごとに設定しています。例えばハイタッチの場合は、設定期間を1か月、目標率を80%にしています。ハイタッチの顧客が50社いたとして、過去1か月間に接点を持てた顧客が40社であれば80%、30社であれば60%、といった算出です。また、このカバー率は個人別、チーム別で常にsalesforceのダッシュボードで可視化され、全員が高水準に保つように日々活動を行っています。つまり、接点頻度を非常に重要視しており、常に高い網羅率で顧客と接点を持てている状態を維持するための仕組みとして取り入れているのがカバー率です。
接点頻度を重要視している理由は、CSがChurnRateを下げるために行えることを一言でいうとコンサンプションギャップの最小化であると考えていて、コンサンプションギャップの最小化のために接点頻度を高く保つことが重要であるためです。コンサンプションギャップとは「プロダクトを通じて顧客が得られていると感じている価値」と「プロダクトが提供できる最大価値」の差異のことです。CSはどんなに努力してもプロダクトの価値以上の価値提供を顧客にすることはできませんので、日々の活動を通じて、プロダクトが提供できる価値をなるべく顧客が享受できている状態を作り出すことが責務であるといえます。コンサンプションギャップを小さくするために継続的に顧客と接点をもち、状況を把握し、さらなる活用を促す提案が必要ですし、顧客のビジネスやニーズ、課題は日々目まぐるしく変わりますので、半年前に満足してUPWARDを使っていた顧客が、今も満足して使えているとは限らないので、気づかないうちにコンサンプションギャップが増加していたということがないようにも定期接点は非常に重要です。
Customer Successが目指すのはコンサンプションギャップの最小化
社内資料「Customer Success Ground Rule」より
また、CSを経験した人であればわかると思いますが、接点のコントロールは実は非常に難しい業務です。まずそもそも担当を20社近く抱える中でどの顧客に最後いつ接点を持ったのかを常に把握する必要があります。また、当然顧客も忙しいので直近でアポが取れるケースはあまり多くなく、計画的な調整が必要になります。さらに、当然何のアジェンダもなくアポは取れないので何かしらのネタを準備する必要がありますので、プロダクトの利用状況をレポート化したり、最新機能の紹介を行ったりとその顧客がどのようなアジェンダなら話を聞いてくれそうか、知恵を絞ってアポを取得することが必要になります。
さいごに
今回も長文となりましたが最後まで読んでいただきありがとうございます。
今回はUPWARD CSの具体的なオペレーションの根幹部分について触れさせていただきました。
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